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魔王軍最後の幹部キサラ
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「へぇ……ここが……」
魔王派はあの後、キサラとその護衛らに連れられ魔王領へと足を踏み入れた。
しかし連れられたのは町では無く、近くの山中であった。
そこには坑道が設けられており、その中にキサラ率いる魔王軍が駐屯していた。
だが、駐屯していたのは軍人だけでは無かった。
「……女子供もいるんですね」
「……ええ。魔王様の計らいでね」
坑道には戦闘要員も沢山居たが、それと同じか、それ以上に非戦闘員が見受けられた。
「ここは昔の坑道を改良した魔王軍の拠点となっています。奥に私の執務室がありますので、そちらで話をしましょう。ただ、全員入れる大きさではないので、主要な方だけお願いします」
キサラにそう言われ、中に入るのは俺とサナン、フィアナとレナだけになった。
「……そちらのお嬢さん方も来るのですか?」
「……ん」
レナはフィアナの服をギュッと握りしめ、離れようとしない。
「……フィアナは非常に頭がキレます。俺が居ない間の軍師としても活動してもらうため、色々なことを学ばせておきたいのです。彼女の妹であるレナは少々心が不安定でして。慣れない環境でもありますので、姉と一緒に居させてあげて下さい」
そう言うと、キサラは優しい笑顔で答える。
「そう言う事でしたか……それならば問題はありません。お茶でも飲みながらゆっくりしてください。お連れの方々も休憩室を案内させますので」
「魔王様は劣勢となっていながら、降伏することが許されないこの戦争で少しでも皆の士気を保つ為、前線に家族を連れてくることを許可したのです」
執務室に入り、キサラは魔王軍の内情を話す。
「先代魔王様が始めたこの戦は当初は善戦し、王都まで迫る勢いでした。そのおかげで各地に我々の思想を広める事が出来、それは魔王派という形として芽吹いたのですが、次第に押し込まれ、人類側の結束が緩んだことで現在は辛うじて魔王領の維持に努められているという状況です」
「降伏することが許されない……とは?」
キサラの言葉にフィアナが質問をする。
そして、キサラは思い出したかのようにお茶を用意しつつ、質問に答える。
「魔族……意味として、意志を持つ魔物と言うことですが、道中、ウェアウルフに襲われたかもしれません。意志疎通が可能なウェアウルフは魔族に分類され、襲ってきたウェアウルフのように見境無く襲うような、対話が不可能な物を魔物と呼びますが……」
キサラはお茶を配りながら説明を続ける。
「魔物が魔族としてあれるのは、このような文化的な生活を送れているからなのです。住処を奪われた者は魔物へと成り下がります。しかし、勇者を召喚した王国を始め、多くの国は関係なく全て魔物と定義しています。もし我々が降伏すれば、意志疎通が可能な魔族でも魔物として扱われ、徹底して処分されるでしょう」
「……処分……ね」
キサラが意図的に選んだであろうその言葉に敢えて触れず、説明を聞き続ける。
「そうなれば、我々の魔都ゾルガも壊され、今まで以上に魔物が世界に満ち溢れ、世界は混沌とするでしょう……」
「……この戦争が始まったのも、飢饉だと聞いていますが、飢饉によって文化的な生活が送れなくなり、魔物が増えたから……と言うわけですか」
俺の言葉にキサラは頷く。
「ええ。魔族ということで王都からの支援も受けられず、当時も魔物が満ちあふれたと言います。初代魔王様……彼は人間でしたが、彼の判断が無ければ、私も今頃は魔物として殺されていたかもしれませんね。まぁ、体よく聞こえますが、魔王軍の侵攻は世のためでもあったと言うことです」
「……そう言えば、最後の幹部といってましたね?」
今まで黙って話を聞いていたサナンが口を開いた。
つまりは先程の話辺りは魔王派のリーダーであったサナンは知っていたということである。
「ええ。この立場と同等の幹部は他にも四人居たのですが、この長きに渡る戦争で皆死んで行きました。私は先代魔王様の頃はまだ幹部どころか兵でもありませんでしたが、幹部の実力は凄まじい物でした。相手の雑兵を軽々と蹴散らしていました。そんな彼らを人間はスキルを持ってして軽々と倒してしまった……私も、いずれ……」
キサラは体を少し震わせていた。
色々と辛い事を思い出したのか、目から涙がこぼれ落ちそうになっている。
「そんな事はさせませんよ!」
すると、サナンが大きな声を上げる。
恐らく、サナンは美人であるキサラに良い所を見せたいのであろう。
「我々には優秀な軍師がいます! 彼なら、スキルが無くてもそして相手がどんなスキルでも倒す方法を見つけ出してくれます!」
そして、人任せである。
だが、美人の涙は見たくない。
「ええ。お任せください。勇者のスキルは全て知っています。俺が、魔王軍を救ってみせますよ」
魔王派はあの後、キサラとその護衛らに連れられ魔王領へと足を踏み入れた。
しかし連れられたのは町では無く、近くの山中であった。
そこには坑道が設けられており、その中にキサラ率いる魔王軍が駐屯していた。
だが、駐屯していたのは軍人だけでは無かった。
「……女子供もいるんですね」
「……ええ。魔王様の計らいでね」
坑道には戦闘要員も沢山居たが、それと同じか、それ以上に非戦闘員が見受けられた。
「ここは昔の坑道を改良した魔王軍の拠点となっています。奥に私の執務室がありますので、そちらで話をしましょう。ただ、全員入れる大きさではないので、主要な方だけお願いします」
キサラにそう言われ、中に入るのは俺とサナン、フィアナとレナだけになった。
「……そちらのお嬢さん方も来るのですか?」
「……ん」
レナはフィアナの服をギュッと握りしめ、離れようとしない。
「……フィアナは非常に頭がキレます。俺が居ない間の軍師としても活動してもらうため、色々なことを学ばせておきたいのです。彼女の妹であるレナは少々心が不安定でして。慣れない環境でもありますので、姉と一緒に居させてあげて下さい」
そう言うと、キサラは優しい笑顔で答える。
「そう言う事でしたか……それならば問題はありません。お茶でも飲みながらゆっくりしてください。お連れの方々も休憩室を案内させますので」
「魔王様は劣勢となっていながら、降伏することが許されないこの戦争で少しでも皆の士気を保つ為、前線に家族を連れてくることを許可したのです」
執務室に入り、キサラは魔王軍の内情を話す。
「先代魔王様が始めたこの戦は当初は善戦し、王都まで迫る勢いでした。そのおかげで各地に我々の思想を広める事が出来、それは魔王派という形として芽吹いたのですが、次第に押し込まれ、人類側の結束が緩んだことで現在は辛うじて魔王領の維持に努められているという状況です」
「降伏することが許されない……とは?」
キサラの言葉にフィアナが質問をする。
そして、キサラは思い出したかのようにお茶を用意しつつ、質問に答える。
「魔族……意味として、意志を持つ魔物と言うことですが、道中、ウェアウルフに襲われたかもしれません。意志疎通が可能なウェアウルフは魔族に分類され、襲ってきたウェアウルフのように見境無く襲うような、対話が不可能な物を魔物と呼びますが……」
キサラはお茶を配りながら説明を続ける。
「魔物が魔族としてあれるのは、このような文化的な生活を送れているからなのです。住処を奪われた者は魔物へと成り下がります。しかし、勇者を召喚した王国を始め、多くの国は関係なく全て魔物と定義しています。もし我々が降伏すれば、意志疎通が可能な魔族でも魔物として扱われ、徹底して処分されるでしょう」
「……処分……ね」
キサラが意図的に選んだであろうその言葉に敢えて触れず、説明を聞き続ける。
「そうなれば、我々の魔都ゾルガも壊され、今まで以上に魔物が世界に満ち溢れ、世界は混沌とするでしょう……」
「……この戦争が始まったのも、飢饉だと聞いていますが、飢饉によって文化的な生活が送れなくなり、魔物が増えたから……と言うわけですか」
俺の言葉にキサラは頷く。
「ええ。魔族ということで王都からの支援も受けられず、当時も魔物が満ちあふれたと言います。初代魔王様……彼は人間でしたが、彼の判断が無ければ、私も今頃は魔物として殺されていたかもしれませんね。まぁ、体よく聞こえますが、魔王軍の侵攻は世のためでもあったと言うことです」
「……そう言えば、最後の幹部といってましたね?」
今まで黙って話を聞いていたサナンが口を開いた。
つまりは先程の話辺りは魔王派のリーダーであったサナンは知っていたということである。
「ええ。この立場と同等の幹部は他にも四人居たのですが、この長きに渡る戦争で皆死んで行きました。私は先代魔王様の頃はまだ幹部どころか兵でもありませんでしたが、幹部の実力は凄まじい物でした。相手の雑兵を軽々と蹴散らしていました。そんな彼らを人間はスキルを持ってして軽々と倒してしまった……私も、いずれ……」
キサラは体を少し震わせていた。
色々と辛い事を思い出したのか、目から涙がこぼれ落ちそうになっている。
「そんな事はさせませんよ!」
すると、サナンが大きな声を上げる。
恐らく、サナンは美人であるキサラに良い所を見せたいのであろう。
「我々には優秀な軍師がいます! 彼なら、スキルが無くてもそして相手がどんなスキルでも倒す方法を見つけ出してくれます!」
そして、人任せである。
だが、美人の涙は見たくない。
「ええ。お任せください。勇者のスキルは全て知っています。俺が、魔王軍を救ってみせますよ」
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