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彼を知り己を知れば
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「まんまと掛かってくれたな」
その後、人類側は足の速い部隊だけで追撃。
しかし地の利もあったのと、夜目のきく者を先頭にしたおかげで追いつかれること無く、目的の場所へ誘導できた。
三方が山に囲まれた盆地。
その三方の山にそれぞれ兵を配置し、人類側は完全に囲まれる形となっていた。
「まぁ、それも俺がジョバンニ殿に誘い込まれるだろうが、スキルを使えば大丈夫だからとスキルを用いた策を教えたからだろうがな」
「全く……恐ろしい奴だ」
第二案の時点で向こう側に配置されていた魔王派の仲間達も合流し、茂みの中で密かに機を待つ。
自分達は今、敵軍に最も近い茂みの中にいる。
つまり、山から降りているのだ。
既に日は昇り、松明の明かりは消している。
気づかれては居ない。
「フィアナ、レナ。絶対にここから出るんじゃないぞ」
「はい」
「ん」
二人は頷く。
二人はどうしても側を離れたく無いらしい。
「さて……キサラさん。皆準備は良いみたいです」
既に『念話』でそれぞれの山の指揮官に準備の確認を取っている。
それぞれの部隊は準備万端らしい。
「はい。私達もいつでも可能です」
後の指示はキサラに一任している。
無論、『念話』による伝令は俺が担っていたが。
すると、敵軍先頭の護が剣を高く掲げた。
「皆! 皆のことは俺が守り抜く! だからこの戦は勝ち戦だ! 進め!」
そして、軍が足を進める。
全てが思い通りに進んでいた。
「……孫氏曰く」
「今です! 放て!」
キサラの合図で、三方の山から一斉に矢が放たれる。
「……彼を知り己を知れば」
「『シールド』!」
そして、それらはすぐに例の如く防がれる。
しかし、第三案はそれが狙いである。
(この距離なら外さないぞ……)
茂みから立ち上がり、矢をつがえる。
狙いは数メートル先の勇者、真田護。
「どうよ! これが俺のスキル『シールド』だ!」
護は全く気づいていない。
そして、スキルを使うために、護は動きを止めている。
「っ! 危ない!」
矢を放つ直前、ジョバンニがこちらの事に気が付いた。
しかし、時すでに遅し。
「百戦、危うからず」
矢を放つ。
放たれた矢は真っすぐに護の喉を貫いた。
一瞬、護はこちらの事を認識していたが、矢を防ぐ事は無かった。
「かはっ……」
「勇者様!」
そして、空中に停止していた矢が一斉に降り注ぐ。
勇者の死に混乱していた兵達は防御の姿勢をとることが出来ておらず、少なくない被害が出ていた。
「くっ……やられた……」
「流石はジョバンニ殿。矢を払ったか」
すると、ジョバンニかこちらをしっかりと確認する。
「あれは……佐切殿!? 裏切られた……いや、あの境遇ならば仕方が無い……ならば、ここまでの流れ……全て罠か!? ……流石だな」
どうやら、ジョバンニは全てを理解したようだった。
その様子をみて少し嬉しく思い、思わず笑みが溢れる。
「今だ! この一瞬の隙を逃すな!」
「あ……か、かかれぇ!」
キサラの一声で茂みに潜んでいた魔王軍が一斉に襲いかかる。
その軍は人類側の軍の背後にも潜んでおり、半ば包囲する形で攻め寄せた。
「やった……やったぞ……」
拳を握りしめ、気が付けば薄っすらと涙が流れていた。
果たしてそれは勝ったことの喜びか、これまでの努力が実を結んだからなのか、分からなかった。
ただ一つ確かなのは、今この瞬間、俺はこの世界の常識を覆したのである。
「これからだ……スキルの優劣なんざ、俺が覆してやる!」
その後、人類側は足の速い部隊だけで追撃。
しかし地の利もあったのと、夜目のきく者を先頭にしたおかげで追いつかれること無く、目的の場所へ誘導できた。
三方が山に囲まれた盆地。
その三方の山にそれぞれ兵を配置し、人類側は完全に囲まれる形となっていた。
「まぁ、それも俺がジョバンニ殿に誘い込まれるだろうが、スキルを使えば大丈夫だからとスキルを用いた策を教えたからだろうがな」
「全く……恐ろしい奴だ」
第二案の時点で向こう側に配置されていた魔王派の仲間達も合流し、茂みの中で密かに機を待つ。
自分達は今、敵軍に最も近い茂みの中にいる。
つまり、山から降りているのだ。
既に日は昇り、松明の明かりは消している。
気づかれては居ない。
「フィアナ、レナ。絶対にここから出るんじゃないぞ」
「はい」
「ん」
二人は頷く。
二人はどうしても側を離れたく無いらしい。
「さて……キサラさん。皆準備は良いみたいです」
既に『念話』でそれぞれの山の指揮官に準備の確認を取っている。
それぞれの部隊は準備万端らしい。
「はい。私達もいつでも可能です」
後の指示はキサラに一任している。
無論、『念話』による伝令は俺が担っていたが。
すると、敵軍先頭の護が剣を高く掲げた。
「皆! 皆のことは俺が守り抜く! だからこの戦は勝ち戦だ! 進め!」
そして、軍が足を進める。
全てが思い通りに進んでいた。
「……孫氏曰く」
「今です! 放て!」
キサラの合図で、三方の山から一斉に矢が放たれる。
「……彼を知り己を知れば」
「『シールド』!」
そして、それらはすぐに例の如く防がれる。
しかし、第三案はそれが狙いである。
(この距離なら外さないぞ……)
茂みから立ち上がり、矢をつがえる。
狙いは数メートル先の勇者、真田護。
「どうよ! これが俺のスキル『シールド』だ!」
護は全く気づいていない。
そして、スキルを使うために、護は動きを止めている。
「っ! 危ない!」
矢を放つ直前、ジョバンニがこちらの事に気が付いた。
しかし、時すでに遅し。
「百戦、危うからず」
矢を放つ。
放たれた矢は真っすぐに護の喉を貫いた。
一瞬、護はこちらの事を認識していたが、矢を防ぐ事は無かった。
「かはっ……」
「勇者様!」
そして、空中に停止していた矢が一斉に降り注ぐ。
勇者の死に混乱していた兵達は防御の姿勢をとることが出来ておらず、少なくない被害が出ていた。
「くっ……やられた……」
「流石はジョバンニ殿。矢を払ったか」
すると、ジョバンニかこちらをしっかりと確認する。
「あれは……佐切殿!? 裏切られた……いや、あの境遇ならば仕方が無い……ならば、ここまでの流れ……全て罠か!? ……流石だな」
どうやら、ジョバンニは全てを理解したようだった。
その様子をみて少し嬉しく思い、思わず笑みが溢れる。
「今だ! この一瞬の隙を逃すな!」
「あ……か、かかれぇ!」
キサラの一声で茂みに潜んでいた魔王軍が一斉に襲いかかる。
その軍は人類側の軍の背後にも潜んでおり、半ば包囲する形で攻め寄せた。
「やった……やったぞ……」
拳を握りしめ、気が付けば薄っすらと涙が流れていた。
果たしてそれは勝ったことの喜びか、これまでの努力が実を結んだからなのか、分からなかった。
ただ一つ確かなのは、今この瞬間、俺はこの世界の常識を覆したのである。
「これからだ……スキルの優劣なんざ、俺が覆してやる!」
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