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裏切り者のジョバンニ
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「つまり……負傷者には王国に帰らせて、自分達は我々についていくと?」
「はい。それしか無いのです」
キサラが状況の確認をする。
ジョバンニは自分の置かれた状況の説明を始める。
「現在、我々は魔王派へついた佐切殿を匿っていたことで裏切ったのではと疑いをかけられております。その疑いを払拭する為に此度の戦に参陣したのですが、負けて帰ったとあれば、処断されるでしょう」
「それで、生き残るためには俺達に下るしか無いと……」
「はい。そもそも、王国のやり方にはついていけなかったので、世を正すため、我々も魔王軍として参加することを認めてほしいのです」
そこで、少し気になったことを尋ねる。
「……何故捕虜になったということにするんですか? 死んだ事にすればよいのでは?」
「……私が死ねば、悲しむ者が……いえ、私の後を追って死ぬと断言した女性がいるのです。私は、彼女を死なせたくはない」
成る程。
惚気話の気配だ。
これは深堀りしてみよう。
「ほうほう……なるほどなるほど。それで、お相手の名前は? 年齢は? ジョバンニさんの歳上? それとも下? どういうご関係で?」
「……やけに聞いてきますね。佐切殿もお会いになられた筈。近衛騎士団長のロームです。私の年齢は三十五、彼女は三つ下ですね。幼き頃より共に武を磨いておりました」
成る程、あの時俺に第六騎士団の詰所を出ていくように言った近衛騎士団長か。
あの赤髪の女性……ロームがジョバンニさんの想い人か……。
「……両想いか……良いね」
「佐切様?」
「……何でもない」
思わず本音がこぼれてしまう。
実は、自分の事はさておいて、他人の色恋沙汰は大好物なのである。
「……で、貴方が捕虜になったのならば、彼女が自ら命を絶たないという保証はあるのですか?」
「その為、負傷者を王国へ返すのです」
ジョバンニは説明を続ける。
「負傷者達は副官のタインに指揮をさせます。そこで、私が捕虜になったと言うことをロームに伝えて貰うのです。それと同時に、相手は決して捕虜の命を奪わないと言っていたと。そうすれば、私を取り戻す為、彼女自ら前線に出てくるでしょう」
「……そのロームさん……スキルを持っているのでしょう? 近衛騎士団長ならば、さぞかし強いスキルを」
フィアナの言葉にジョバンニは頷く。
「はい。彼女のスキルは『神速』と『危機察知』です。その名の通り、すさまじい速度で動くスキルと、自らに降り注ぐ危機を事前に察知することのできるスキルです」
「……半端ないな。スキル複数持ちか。……勝ち目は見えんな」
それに、ジョバンニさんの幼馴染というのであれば、純粋に武力も強いのだろう。
敵に回れば恐ろしい事この上ない。
「そこは、私が彼女を説得してみせます。私が、必ず彼女を魔王軍側へ引き込んでみせます」
「……その言葉、信用します」
「佐切様!? よろしいのですか!?」
フィアナは俺の決定に驚く。
フィアナの、いや、皆の驚きは承知の上だ。
「あぁ。この人は裏切らないよ。まぁ、王国を裏切ってはいるんだけど」
「それを言われると辛いですな……」
かくして、ジョバンニと第六騎士団の半分に当たる兵力、二千五百名が仲間になった。
これは、魔王軍にとって非常に大きな前進だろう。
……自分自身に、不安は残っているが。
「はい。それしか無いのです」
キサラが状況の確認をする。
ジョバンニは自分の置かれた状況の説明を始める。
「現在、我々は魔王派へついた佐切殿を匿っていたことで裏切ったのではと疑いをかけられております。その疑いを払拭する為に此度の戦に参陣したのですが、負けて帰ったとあれば、処断されるでしょう」
「それで、生き残るためには俺達に下るしか無いと……」
「はい。そもそも、王国のやり方にはついていけなかったので、世を正すため、我々も魔王軍として参加することを認めてほしいのです」
そこで、少し気になったことを尋ねる。
「……何故捕虜になったということにするんですか? 死んだ事にすればよいのでは?」
「……私が死ねば、悲しむ者が……いえ、私の後を追って死ぬと断言した女性がいるのです。私は、彼女を死なせたくはない」
成る程。
惚気話の気配だ。
これは深堀りしてみよう。
「ほうほう……なるほどなるほど。それで、お相手の名前は? 年齢は? ジョバンニさんの歳上? それとも下? どういうご関係で?」
「……やけに聞いてきますね。佐切殿もお会いになられた筈。近衛騎士団長のロームです。私の年齢は三十五、彼女は三つ下ですね。幼き頃より共に武を磨いておりました」
成る程、あの時俺に第六騎士団の詰所を出ていくように言った近衛騎士団長か。
あの赤髪の女性……ロームがジョバンニさんの想い人か……。
「……両想いか……良いね」
「佐切様?」
「……何でもない」
思わず本音がこぼれてしまう。
実は、自分の事はさておいて、他人の色恋沙汰は大好物なのである。
「……で、貴方が捕虜になったのならば、彼女が自ら命を絶たないという保証はあるのですか?」
「その為、負傷者を王国へ返すのです」
ジョバンニは説明を続ける。
「負傷者達は副官のタインに指揮をさせます。そこで、私が捕虜になったと言うことをロームに伝えて貰うのです。それと同時に、相手は決して捕虜の命を奪わないと言っていたと。そうすれば、私を取り戻す為、彼女自ら前線に出てくるでしょう」
「……そのロームさん……スキルを持っているのでしょう? 近衛騎士団長ならば、さぞかし強いスキルを」
フィアナの言葉にジョバンニは頷く。
「はい。彼女のスキルは『神速』と『危機察知』です。その名の通り、すさまじい速度で動くスキルと、自らに降り注ぐ危機を事前に察知することのできるスキルです」
「……半端ないな。スキル複数持ちか。……勝ち目は見えんな」
それに、ジョバンニさんの幼馴染というのであれば、純粋に武力も強いのだろう。
敵に回れば恐ろしい事この上ない。
「そこは、私が彼女を説得してみせます。私が、必ず彼女を魔王軍側へ引き込んでみせます」
「……その言葉、信用します」
「佐切様!? よろしいのですか!?」
フィアナは俺の決定に驚く。
フィアナの、いや、皆の驚きは承知の上だ。
「あぁ。この人は裏切らないよ。まぁ、王国を裏切ってはいるんだけど」
「それを言われると辛いですな……」
かくして、ジョバンニと第六騎士団の半分に当たる兵力、二千五百名が仲間になった。
これは、魔王軍にとって非常に大きな前進だろう。
……自分自身に、不安は残っているが。
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