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いざグンローグ要塞へ
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「……そう言えばレナ。お礼がまだだったな。助けてくれてありがとう。君が居なければ俺は死んでたよ」
「……もう無茶しない。約束する」
俺たちの作った砦を後にし、グンローグ要塞へ向かう道中。
馬車の中でレナに礼を言う。
「……あれは無茶というか油断というか……」
「……約束する!」
「はい……」
あの後、レナは目を覚ますと、泣きながら抱きついてきた。
信頼する者を次々と亡くしてきた彼女が、これ以上人が死ぬのを見たくないと願った結果、スキルを与えられたのかもしれない。
「……本当に、もう大丈夫なの?」
「ん? あぁ。君のお姉さんはもう充分立派な軍師だ。俺も教えられる事は教えてきたし、すぐに敵が来るとも考え難い。だからあの砦を任せても……」
「……違う」
そう言うとレナは俺の腹を軽く殴る。
「傷の事」
「あぁ、そっちか……」
レナとフィアナは双子だと言うが、レナはフィアナと比べると若干幼く感じる。
育ってきた経緯か、レナの性格から妹を守らねばとフィアナが自然とそう成長したのか……。
なにはともあれ、質問に答えよう。
「あぁ。もう全然平気だよ。痛くもかゆくも無い。大量に血を失った筈だが……もうなんとも無いしな」
「……なら良い。……因みにお姉ちゃんなら心配してない」
レナから出た言葉は、少し予想外だった。
二人は非常に仲が良い。
レナのことだからてっきり心配しているかと思ったのだが。
「勘助が任せても大丈夫だって言うなら、そうだから」
下の名前で呼ばれる事は少なかったので、若干歯がゆいが、信頼されているらしい。
「……ありがとうな」
フィアナにはグンローグ要塞へと向かう俺の代わりに搦手砦の軍師として防衛の指揮にあたってもらっている。
搦手砦に残っている兵力はそのまま魔族五百。
そして魔王派であるサナン達とフィアナである。
グンローグ要塞へは、こちらについた第六騎士団の仲間二千五百とキサラである。
自分達は今、グンローグ要塞にて指揮を執る魔王へ傘下となることを報告するため、グンローグ要塞へ向かっているのだ。
因みに、捕らえたスキル持ちは縛り上げて護送している。
「にしても、ジョバンニさん。本当に仲間になってくれたんだな……」
「どういう事?」
「いや、もし俺がジョバンニさんの立場なら護送している俺やキサラ……まぁ、レナもか……を、始末してから引き返す。そして、搦手砦を背後から攻める」
今更だが俺達の作った砦の事は搦手砦と呼称していた。
「そして、負傷者だと言って引き返した部隊も戻して搦手砦を包囲して攻め落とす。元々あの砦は侵攻してくる方面、つまり前からの攻撃だけ想定したものだから、背後から攻められれば負けるしか無いんだ」
「……成る程?」
どうやら、レナにはこういう事はあまり向かないらしい。
だが、それで良い。
「まぁ、今襲われてないって事はジョバンニさん達は信頼して良いって事だよ。護送する兵を全て第六騎士団にしたのも、あちらさんに優位な状況を作って試したからだしな」
「……まだ襲われるかも」
「その心配は無いさ。この距離まで進んで襲われないなら、それは無い」
そもそも、俺達と停戦して砦の内側に入り込んだ時点で裏切れば簡単に突破出来たんだ。
その時点でそれをしないのならば、そもそもの心配は無かった。
「お二人とも! もうすぐ着きますよ!」
すると、馬車を運転していたキサラの声が聞こえる。
「ほらな。地図で大体の距離は分かってたから、もうすぐ着くって予想してたんだ」
「おぉ……」
パチパチと拍手をするレナ。
こころなしか……いや、明らかに表情豊かになった。
嬉しい限りだ。
「さて……件のグンローグ要塞とやらを……」
馬車から顔を出し、グンローグ要塞を視界に入れる。
「……これは……」
それは、もはや要塞と言えるレベルでは無かった。
驚いている俺を見て、キサラは自信満々に説明を始めた。
「これが魔王軍最後の砦。魔王軍史上最強、最高の砦、グンローグ要塞です。これまで幾度と無く人類の……勇者の侵攻を退けてきた、魔王軍最後の切り札なのです!」
目の前のそれに、砦という言葉は似合わなかった。
「これは……山……か?」
巨大な岩山。
この距離からでも分かるが、投石機が見える。
巨大なバリスタも。
それが一つや二つではない。
こちら側からでは良く見えないが、無数にあるのだろう。
それに、こちら側からは岩山に見えるが、恐らく……。
「そうです。岩山を切り出して作ったのがグンローグ要塞。正面からの姿はさらに壮観です。見た者は、理解する前に大量の攻城兵器によって命を落とすでしょう」
これがスキル持ちに長年勝ち続けてきた砦か……。
面白い。
隅々まで探索してみたい所だな。
「……もう無茶しない。約束する」
俺たちの作った砦を後にし、グンローグ要塞へ向かう道中。
馬車の中でレナに礼を言う。
「……あれは無茶というか油断というか……」
「……約束する!」
「はい……」
あの後、レナは目を覚ますと、泣きながら抱きついてきた。
信頼する者を次々と亡くしてきた彼女が、これ以上人が死ぬのを見たくないと願った結果、スキルを与えられたのかもしれない。
「……本当に、もう大丈夫なの?」
「ん? あぁ。君のお姉さんはもう充分立派な軍師だ。俺も教えられる事は教えてきたし、すぐに敵が来るとも考え難い。だからあの砦を任せても……」
「……違う」
そう言うとレナは俺の腹を軽く殴る。
「傷の事」
「あぁ、そっちか……」
レナとフィアナは双子だと言うが、レナはフィアナと比べると若干幼く感じる。
育ってきた経緯か、レナの性格から妹を守らねばとフィアナが自然とそう成長したのか……。
なにはともあれ、質問に答えよう。
「あぁ。もう全然平気だよ。痛くもかゆくも無い。大量に血を失った筈だが……もうなんとも無いしな」
「……なら良い。……因みにお姉ちゃんなら心配してない」
レナから出た言葉は、少し予想外だった。
二人は非常に仲が良い。
レナのことだからてっきり心配しているかと思ったのだが。
「勘助が任せても大丈夫だって言うなら、そうだから」
下の名前で呼ばれる事は少なかったので、若干歯がゆいが、信頼されているらしい。
「……ありがとうな」
フィアナにはグンローグ要塞へと向かう俺の代わりに搦手砦の軍師として防衛の指揮にあたってもらっている。
搦手砦に残っている兵力はそのまま魔族五百。
そして魔王派であるサナン達とフィアナである。
グンローグ要塞へは、こちらについた第六騎士団の仲間二千五百とキサラである。
自分達は今、グンローグ要塞にて指揮を執る魔王へ傘下となることを報告するため、グンローグ要塞へ向かっているのだ。
因みに、捕らえたスキル持ちは縛り上げて護送している。
「にしても、ジョバンニさん。本当に仲間になってくれたんだな……」
「どういう事?」
「いや、もし俺がジョバンニさんの立場なら護送している俺やキサラ……まぁ、レナもか……を、始末してから引き返す。そして、搦手砦を背後から攻める」
今更だが俺達の作った砦の事は搦手砦と呼称していた。
「そして、負傷者だと言って引き返した部隊も戻して搦手砦を包囲して攻め落とす。元々あの砦は侵攻してくる方面、つまり前からの攻撃だけ想定したものだから、背後から攻められれば負けるしか無いんだ」
「……成る程?」
どうやら、レナにはこういう事はあまり向かないらしい。
だが、それで良い。
「まぁ、今襲われてないって事はジョバンニさん達は信頼して良いって事だよ。護送する兵を全て第六騎士団にしたのも、あちらさんに優位な状況を作って試したからだしな」
「……まだ襲われるかも」
「その心配は無いさ。この距離まで進んで襲われないなら、それは無い」
そもそも、俺達と停戦して砦の内側に入り込んだ時点で裏切れば簡単に突破出来たんだ。
その時点でそれをしないのならば、そもそもの心配は無かった。
「お二人とも! もうすぐ着きますよ!」
すると、馬車を運転していたキサラの声が聞こえる。
「ほらな。地図で大体の距離は分かってたから、もうすぐ着くって予想してたんだ」
「おぉ……」
パチパチと拍手をするレナ。
こころなしか……いや、明らかに表情豊かになった。
嬉しい限りだ。
「さて……件のグンローグ要塞とやらを……」
馬車から顔を出し、グンローグ要塞を視界に入れる。
「……これは……」
それは、もはや要塞と言えるレベルでは無かった。
驚いている俺を見て、キサラは自信満々に説明を始めた。
「これが魔王軍最後の砦。魔王軍史上最強、最高の砦、グンローグ要塞です。これまで幾度と無く人類の……勇者の侵攻を退けてきた、魔王軍最後の切り札なのです!」
目の前のそれに、砦という言葉は似合わなかった。
「これは……山……か?」
巨大な岩山。
この距離からでも分かるが、投石機が見える。
巨大なバリスタも。
それが一つや二つではない。
こちら側からでは良く見えないが、無数にあるのだろう。
それに、こちら側からは岩山に見えるが、恐らく……。
「そうです。岩山を切り出して作ったのがグンローグ要塞。正面からの姿はさらに壮観です。見た者は、理解する前に大量の攻城兵器によって命を落とすでしょう」
これがスキル持ちに長年勝ち続けてきた砦か……。
面白い。
隅々まで探索してみたい所だな。
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