歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
47 / 155

いざグンローグ要塞へ

しおりを挟む
「……そう言えばレナ。お礼がまだだったな。助けてくれてありがとう。君が居なければ俺は死んでたよ」
「……もう無茶しない。約束する」
 
 俺たちの作った砦を後にし、グンローグ要塞へ向かう道中。
 馬車の中でレナに礼を言う。
 
「……あれは無茶というか油断というか……」
「……約束する!」
「はい……」
 
 あの後、レナは目を覚ますと、泣きながら抱きついてきた。
 信頼する者を次々と亡くしてきた彼女が、これ以上人が死ぬのを見たくないと願った結果、スキルを与えられたのかもしれない。
 
「……本当に、もう大丈夫なの?」
「ん? あぁ。君のお姉さんはもう充分立派な軍師だ。俺も教えられる事は教えてきたし、すぐに敵が来るとも考え難い。だからあの砦を任せても……」
「……違う」
 
 そう言うとレナは俺の腹を軽く殴る。
 
「傷の事」
「あぁ、そっちか……」
 
 レナとフィアナは双子だと言うが、レナはフィアナと比べると若干幼く感じる。
 育ってきた経緯か、レナの性格から妹を守らねばとフィアナが自然とそう成長したのか……。
 なにはともあれ、質問に答えよう。 
 
「あぁ。もう全然平気だよ。痛くもかゆくも無い。大量に血を失った筈だが……もうなんとも無いしな」
「……なら良い。……因みにお姉ちゃんなら心配してない」
 
 レナから出た言葉は、少し予想外だった。
 二人は非常に仲が良い。
 レナのことだからてっきり心配しているかと思ったのだが。
 
「勘助が任せても大丈夫だって言うなら、そうだから」

 下の名前で呼ばれる事は少なかったので、若干歯がゆいが、信頼されているらしい。

「……ありがとうな」
 
 フィアナにはグンローグ要塞へと向かう俺の代わりに搦手砦の軍師として防衛の指揮にあたってもらっている。
 搦手砦に残っている兵力はそのまま魔族五百。
 そして魔王派であるサナン達とフィアナである。
 グンローグ要塞へは、こちらについた第六騎士団の仲間二千五百とキサラである。
 自分達は今、グンローグ要塞にて指揮を執る魔王へ傘下となることを報告するため、グンローグ要塞へ向かっているのだ。
 因みに、捕らえたスキル持ちは縛り上げて護送している。
 
「にしても、ジョバンニさん。本当に仲間になってくれたんだな……」
「どういう事?」
「いや、もし俺がジョバンニさんの立場なら護送している俺やキサラ……まぁ、レナもか……を、始末してから引き返す。そして、搦手砦を背後から攻める」
 
 今更だが俺達の作った砦の事は搦手砦と呼称していた。
 
「そして、負傷者だと言って引き返した部隊も戻して搦手砦を包囲して攻め落とす。元々あの砦は侵攻してくる方面、つまり前からの攻撃だけ想定したものだから、背後から攻められれば負けるしか無いんだ」
「……成る程?」
 
 どうやら、レナにはこういう事はあまり向かないらしい。
 だが、それで良い。
 
「まぁ、今襲われてないって事はジョバンニさん達は信頼して良いって事だよ。護送する兵を全て第六騎士団にしたのも、あちらさんに優位な状況を作って試したからだしな」
「……まだ襲われるかも」
「その心配は無いさ。この距離まで進んで襲われないなら、それは無い」

 そもそも、俺達と停戦して砦の内側に入り込んだ時点で裏切れば簡単に突破出来たんだ。
 その時点でそれをしないのならば、そもそもの心配は無かった。

「お二人とも! もうすぐ着きますよ!」
 
 すると、馬車を運転していたキサラの声が聞こえる。
 
「ほらな。地図で大体の距離は分かってたから、もうすぐ着くって予想してたんだ」
「おぉ……」
 
 パチパチと拍手をするレナ。
 こころなしか……いや、明らかに表情豊かになった。
 嬉しい限りだ。
 
「さて……件のグンローグ要塞とやらを……」
 
 馬車から顔を出し、グンローグ要塞を視界に入れる。
 
「……これは……」
 
 それは、もはや要塞と言えるレベルでは無かった。
 驚いている俺を見て、キサラは自信満々に説明を始めた。
 
「これが魔王軍最後の砦。魔王軍史上最強、最高の砦、グンローグ要塞です。これまで幾度と無く人類の……勇者の侵攻を退けてきた、魔王軍最後の切り札なのです!」
 
 目の前のそれに、砦という言葉は似合わなかった。
 
「これは……山……か?」
 
 巨大な岩山。
 この距離からでも分かるが、投石機が見える。
 巨大なバリスタも。
 それが一つや二つではない。
 こちら側からでは良く見えないが、無数にあるのだろう。
 それに、こちら側からは岩山に見えるが、恐らく……。
 
「そうです。岩山を切り出して作ったのがグンローグ要塞。正面からの姿はさらに壮観です。見た者は、理解する前に大量の攻城兵器によって命を落とすでしょう」
 
 これがスキル持ちに長年勝ち続けてきた砦か……。
 面白い。
 隅々まで探索してみたい所だな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...