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王国の闇
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「意識を操作……どういう事ですか? 佐切様?」
「あぁ。さっきの戦闘の最中に……顔見知りを殺した時、恐怖を感じた。今考えてみれば、真田護を何の躊躇いもなく殺せた事もおかしい……人を殺したことのない人間が、軽々と人の命を奪えるのなんておかしいんだ」
ジョバンニは静かに話を聞いていた。
彼からすれば、仲間を殺されたのだ。
それでも、話を聞いてくれている。
「ジョバンニさん。この世界でも、新兵特有の病気……俺の世界ではPTSDって言うんだけど、そういうのありますよね?」
「……はい。PTSDがどういうものかははっきりとは分かりかねますが……恐らくはおっしゃる通りです」
PTSD。
心的外傷後ストレス障害。
簡単に言えば、日常生活に支障をきたす程のトラウマ体験による強い不快な状況が続く病気の事である。
それは、一般社会に置いても勿論あるが、戦場に赴いた新兵がよく陥るのだ。
すると、ジョバンニは説明を続けた。
「異世界から来た勇者は、特別な……他よりも優れているスキルを与えられますが、その際心の病までは治せません。予め何かしらの問題を抱えていてもいなくても、戦争の最中で心を病み、いずれ戦えなくなります。それ以前に、過去に召喚された勇者は何かを殺すことを躊躇い、まるで戦力にならなかったと記録されています」
どうやら、ジョバンニさんも当時の詳しい事はわからないらしい。
それでも第六騎士団の団長故に、それらの記録については詳しいようだった。
「それ故に、予め召喚された際に躊躇無く敵を殺せるよう……簡単に言えば、スキルで洗脳するのです。それによって痛みもあまり感じなくなり、何かを殺すことに躊躇が無くなる。最初から優秀な戦力となるのです」
「やっぱりか……」
貫かれた筈の腹を擦りながら思い返す。
「あの時、普通ならショック死しても良い程の、怪我を負ったのに、痛みをそこまで感じなかった。それもそうなんだろう」
「……ですが、通常ならばそれに気づく筈はありません。気づいたということは……」
「洗脳が解けたって事ですか?」
フィアナの言葉にジョバンニは頷く。
「原因は分かりませんが、スキルの洗脳を打ち消せるほどの衝撃を受けたか……これまで、例のないことなので、何も分かりませんが。それと、レナ殿のスキルが目覚めた件ですが……」
「何か分かるんですか!?」
ジョバンニは頷いた。
フィアナは妹の事だから尚更気になるのであろう。
「……事例は少ないですが、突如自力でスキルが目覚めた事例は確認されております。ただ、先ほど言ったように、現在は神官によって洗脳と共にスキルを与えられるので、そういった事例は徹底して隠蔽されております。もしこの事が王国にバレれば……」
「……消される?」
俺の言葉にジョバンニは申し訳なさそうに頷いた。
「まぁ、詳しいスキルは分からないけど、回復系のスキルだったらレナにピッタリだ。人の命を救うスキルなんて立派じゃないか」
「……そうですね。レナは休戦してから両軍の負傷者にもスキルを使っていました。人の命を……佐切様を助けたいと、必死に願った結果でしょうか……」
「……どういった条件でスキルが目覚めるかははっきりしていません。はるかな昔は自力でスキルを得ていたという記述もありますが、それは過去の不確かな記録。このような事例はまだまだ少なく……お力になれずに申し訳ない」
ジョバンニは頭を下げた。
「まぁ……王国の闇が見え始めた所で、ジョバンニさん。あなたはこれからどうするんですか?」
「……その事で、頼みがあります」
ジョバンニは真剣な眼差しでこちらを見つめる。
「どうか、我々を仲間にして頂けませんでしょうか!」
「……はい?」
「あぁ。さっきの戦闘の最中に……顔見知りを殺した時、恐怖を感じた。今考えてみれば、真田護を何の躊躇いもなく殺せた事もおかしい……人を殺したことのない人間が、軽々と人の命を奪えるのなんておかしいんだ」
ジョバンニは静かに話を聞いていた。
彼からすれば、仲間を殺されたのだ。
それでも、話を聞いてくれている。
「ジョバンニさん。この世界でも、新兵特有の病気……俺の世界ではPTSDって言うんだけど、そういうのありますよね?」
「……はい。PTSDがどういうものかははっきりとは分かりかねますが……恐らくはおっしゃる通りです」
PTSD。
心的外傷後ストレス障害。
簡単に言えば、日常生活に支障をきたす程のトラウマ体験による強い不快な状況が続く病気の事である。
それは、一般社会に置いても勿論あるが、戦場に赴いた新兵がよく陥るのだ。
すると、ジョバンニは説明を続けた。
「異世界から来た勇者は、特別な……他よりも優れているスキルを与えられますが、その際心の病までは治せません。予め何かしらの問題を抱えていてもいなくても、戦争の最中で心を病み、いずれ戦えなくなります。それ以前に、過去に召喚された勇者は何かを殺すことを躊躇い、まるで戦力にならなかったと記録されています」
どうやら、ジョバンニさんも当時の詳しい事はわからないらしい。
それでも第六騎士団の団長故に、それらの記録については詳しいようだった。
「それ故に、予め召喚された際に躊躇無く敵を殺せるよう……簡単に言えば、スキルで洗脳するのです。それによって痛みもあまり感じなくなり、何かを殺すことに躊躇が無くなる。最初から優秀な戦力となるのです」
「やっぱりか……」
貫かれた筈の腹を擦りながら思い返す。
「あの時、普通ならショック死しても良い程の、怪我を負ったのに、痛みをそこまで感じなかった。それもそうなんだろう」
「……ですが、通常ならばそれに気づく筈はありません。気づいたということは……」
「洗脳が解けたって事ですか?」
フィアナの言葉にジョバンニは頷く。
「原因は分かりませんが、スキルの洗脳を打ち消せるほどの衝撃を受けたか……これまで、例のないことなので、何も分かりませんが。それと、レナ殿のスキルが目覚めた件ですが……」
「何か分かるんですか!?」
ジョバンニは頷いた。
フィアナは妹の事だから尚更気になるのであろう。
「……事例は少ないですが、突如自力でスキルが目覚めた事例は確認されております。ただ、先ほど言ったように、現在は神官によって洗脳と共にスキルを与えられるので、そういった事例は徹底して隠蔽されております。もしこの事が王国にバレれば……」
「……消される?」
俺の言葉にジョバンニは申し訳なさそうに頷いた。
「まぁ、詳しいスキルは分からないけど、回復系のスキルだったらレナにピッタリだ。人の命を救うスキルなんて立派じゃないか」
「……そうですね。レナは休戦してから両軍の負傷者にもスキルを使っていました。人の命を……佐切様を助けたいと、必死に願った結果でしょうか……」
「……どういった条件でスキルが目覚めるかははっきりしていません。はるかな昔は自力でスキルを得ていたという記述もありますが、それは過去の不確かな記録。このような事例はまだまだ少なく……お力になれずに申し訳ない」
ジョバンニは頭を下げた。
「まぁ……王国の闇が見え始めた所で、ジョバンニさん。あなたはこれからどうするんですか?」
「……その事で、頼みがあります」
ジョバンニは真剣な眼差しでこちらを見つめる。
「どうか、我々を仲間にして頂けませんでしょうか!」
「……はい?」
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