歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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近衛騎士団団長 ローム

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「状況は?」
「は! 敵軍が進軍し始めたとのことです! 我らの兵器の射程圏外ですが、すぐに到達するかと思われます!」
 
 報告を聞いたサティスはすぐさま指揮所に到達する。
 そして、代理で指揮を執っていたものから報告を受ける。
 そこからは正面側の戦場がよく見渡せた。
 
「各兵器、持ち場に着け! 点検も怠るなよ!」
 
 サティスは伝声管のような物に声を掛ける。
 俺の視線に気がついたのか、サティスは説明を始める。
 
「ん? これか? これはドワーフが考案したものでな。何でも異世界人の知識を再現したものらしい。これで全体に指示を行き渡らせているんだ」
「……俺の『念話』は形無しだな」
「何を言う。『俯瞰』と『念話』の組み合わせには負けるさ」
「……」
 
 俺には実はもう一つのスキルがある。
 だが、これは使える状況が非常に限られているし、それを持っていると言えば避けられるかもしれない。
 だが、ここまで信頼してくれているサティスには打ち明けても良いかもしれない。
 緊急事態、即座に使う必要があるかもしれない。
 
「なぁ、サティス……」
「報告! 敵陣に動きあり! 敵陣の中から一人出てきています!」
 
 俺の言葉は伝声管からの声に遮られ、サティスには届かなかった。
 その様子を見ていたキサラが声をかけてくる。
 
「魔王様に何か伝える事が? それでしたら……」
「いや、良いんです。今じゃなくても問題はないので」
 
 俺のスキルについては今は打ち明けるべきでは無いということか。
 まぁこじつけだが。
 
「それにしても……一人ですか」
「はい。恐らく、例の彼女でしょう。ジョバンニ殿に準備をさせておきます」
 
 キサラがそう言うと、その場を後にした。
 
「さて……サティス。これは俺が施した策だ。俺に任せてほしい」
「……うむ。ならばこの場はお前に任せよう。頼んだぞ。指示は念話で伝えてくれ。無論、お前の判断で兵器係に指示を出しても構わない」
 
 サティスとは念話の契約をしている。
 いつでも連絡が可能になっているのだ。
 更には各兵器の担当員全員にも念話の契約をしている。
 伝令のタイムラグを無くすための方策であった。
 
「じゃあ行ってくる」
「あぁ。……死ぬなよ」
 
 
 
「私は近衛騎士団団長、ローム! 私の要件は戦ではない! 話し合いに来た! 搦手砦とやらを指揮したという指揮官を出せ!」
 
 敵の大軍の前に赤い髪の近衛騎士団団長のロームが出てきていた。
 やはり、狙い通りに出てきてくれた。
 策はこのまま進められるが、気になる事がある。
 
「似てるな……サティスと髪の色が」
 
 ふと呟いてしまう。
 それ程にロームの髪の色は魔王と非常によく似ていたのだ。
 
「それもそうでしょう。ロームの一族は魔王の一族と遠い血縁関係にあるらしいですから」
「ジョバンニさん」
 
 すると、背後からジョバンニに声をかけられる。
 
「じゃあ……サティスの父親、初代の魔王と血縁関係にあるってことですか」
「ええ。だからといって特段何かがあるわけではありませんでしたがね。それもこれも、彼女の努力の結果でしょう」
「……なにはともあれ、状況は揃いました。後は……」
「ええ。彼女を仲間に引き込みます。説得は、任せてください」
 
 スキル至上主義のこの世界に反旗を翻す。
 それが目的と言っても良い魔王軍にスキルの優れた者を引き込むのは本末転倒だが、優秀な戦力なのは間違いが無い。
 ならば、ジョバンニさんに頑張って貰うしか無いな。
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