歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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侵攻軍出陣

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「では佐切よ。何かあれば『念話』ですぐに伝えてくれ。私も何かあればすぐに知らせよう」
「あぁ。そうしてくれ」
 
 ようやく俺が率いる侵攻軍の編成が整った。
 途中に敵の攻撃もありすんなりとは行かなかったが、ようやく侵攻作戦の準備が整ったのだ。
 
「編成は、指揮官は俺、補佐……副将にキサラ、フィアナ。将としてジョバンニさんとサナン、そしてローム。回復役としてレナだな」
「あぁ。兵としては全て魔族。騎兵としてケンタウロス五百。主力のホブゴブリンが千。散兵としてゴブリン五百。そしてお前の選出した大型のサイクロプスやオーガ、大型の者が三百。そしてハーピーが四百のコボルトが三百か。総勢三千。第六騎士団が寝返ってくれなければここまで戦力を捻出出来なかったな」
「あぁ。それに魔王派の皆だな。侵攻軍は出来る限り機動力のある種族で統一した。ハーピーやコボルトは本来なら偵察や斥候として使われるが、その辺りの役目は俺の『俯瞰』で補える。彼等には敵に隠蔽スキルを持つものが現れたり、俺の『俯瞰』が使えなくなった時の予備として動いてもらう」
 
 ハーピーについては他の使い道も考えてはいるが、状況次第だな。
 俺の言葉にサティスは頷いた。
 
「うむ。私では……いや、この世界の人間では到底思いつかぬ編成だな。それにしても、第六騎士団は良いのか? 主力として申し分ない力だと思うが」
「……あぁ。搦手砦の戦いで彼等が人と戦うのを躊躇する傾向があるのが分かった。それは戦場では命取りだ。だから主力は人間と体格も近いホブゴブリンにした。実力は訓練とか見させてもらったし、申し分ない。敵の内情についてはジョバンニさんとロームがいるから問題ないしな」
 
 それに加えて、弓も配備する。
 ホブゴブリンは歩兵五百の弓兵五百で編成されている。
 これで三兵戦術……諸兵科連合の概念も補っている。
 諸兵科連合とは、各分野の兵が互いの弱点等を補い合う編成の仕方である。
 この概念を魔王軍に持ち込めただけでも上出来だろう。
 
「……佐切。死ぬなよ?」
「……あぁ。勿論分かって……」
「本当か?」
 
 サティスは食い気味に聞いてくる。
 俺のかけていた保険は気付かれていたようだ。
 
「……フィアナを侵攻軍に編成させたのはそのためか?」
「あぁ。そうだ。無理矢理にでも生きて帰らせるためにな。お前が死んだ後の保険なんぞ知った事か。生きていれば万事解決だからな」
 
 当初、俺はフィアナを侵攻軍に連れて行くつもりは無かった。
 本人には反対されるだろうから直前まで黙っていたが、その前にサティスに猛反対された。
 というのも、万が一俺が死んだ後に、未来の戦略の知識を受け継ぐ者がいれば魔王軍も安泰だからだ。
 フィアナならば次の勝つ為の策を捻り出してくれると信じたからだ。
 はっきり言ってこの侵攻作戦が成功する確率は低い。
 俺だって完璧じゃないので、敗北して死ぬ可能性のほうが高いのだ。
 その為の保険を、サティスは見抜いていたのだ。
 
「……わかったよ。生きて帰ってくるさ。必ずな」
「ああ。頼んだぞ」
 
 そして、門が開かれる。
 
「総員! 前進! これより搦手砦を超えて要塞街ファレスへ向かう! 迅速に行動せよ!」
 
 本格的な反攻作戦が今、始まるのであった。
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