歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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ファレス潜入作戦会議

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「よし……総員、ここで待機だ」
 
 俺は侵攻軍を、かつて俺達が抜けて来たファレスの娼館へと繋がる抜け道近くに潜ませた。
 この付近には敵も居ない筈なので、そこまで心配する必要は無かったが、念の為である。
 
「ここからはどうするつもりですか? いくら内部にエルフの味方がいるとしても総攻めは……」
「そうですね。要塞街ファレス……その名の通り、防御力は凄まじい筈です。キサラさんの言う通りに総攻めしたら被害は甚大でしょうし、勝てる保証もありません。……さて、フィアナならどうする?」
 
 唐突に振られたフィアナは少し困惑しつつも答える。
 
「え、ええと……抜け道を使って内部にも手勢を送り込んで内外から攻める……とかでしょうか」
「そうだな。その辺りが妥当だろうな。俺も同じような事を考えていた」
 
 フィアナは見事正解を導き出した。
 改めて作戦の説明を始める。
 
「まず、街の中に忍び込んでも怪しまれない人間全員で街に忍び込む。つまりは俺達魔王派とジョバンニさんとロームだな。まぁ、抜け道の中までは忍ばせておいても良いな。そして、カルラ達エルフと協力してこの街の最高権利者の位置を特定する」
 
 恐らく最高権利者……この要塞街ファレスの管理者は目立つ場所にいる筈だ。
 しかし多忙であるのは容易に想像がつく。
 市庁舎のような本丸に居ないことは大前提で、カルラから情報を買うのだ。
 
「そして内部に潜入した俺達と場合によってはエルフ達とも協力して管理者を無力化して武装解除を指示させる。もしくは始末する。指揮系統を乱せられれば十分だ。そこから、敵の守備隊を内外から攻める。別に全部始末しなくても良い」
「そうなのか? 敵は全滅させた方が良い気もするが……」
 
 サナンがそう言う。
 確かに、普通に考えればそれが真っ先に思いつくのも無理はない。
 勝つということはそういう事だ。
 
「まぁ、サナンの言うことも分かる。だが、俺達の戦力から考えれば無理に戦う必要は無い……いや、死ぬ危険を犯す必要は無いんだ。フィアナ、分かるか?」
「はい。私達の戦力は三千。無理に戦って戦力を減らすのは避けたい。そこで、敵を完全に包囲して逃げ道を無くし、戦って死ぬという選択肢しか残さないのではなく、逃げられる選択肢を残してやれば、敵は無理せず逃げる筈。それによってこちらは被害少なく占領出来るはずです」
 
 フィアナは百点満点の解答を出してくれた。
 やはり、俺の代わりは務まるな。
 
「よし……食料などの物資はグンローグ要塞とは違い常に魔王領から供給されるものでない! 常に現地調達となるが、現地住民に対して略奪を行うことは禁止とする!」
 
 この侵攻作戦の大事な所は現地の戦力を吸収して徐々に戦力を増強して侵攻すること。
 住民に対して暴力を振るえば全てが無駄になる。
 
「食料について、その辺りについては俺に考えがある。俺に任せてくれ。作戦の開始はこっちに残るキサラに『念話』で伝える。指示があるまで待機してくれ!」
 
 ついに侵攻作戦が始まる。
 魔王軍が勝てるかどうかはこの初戦にかかっているのだ。
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