歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

行動開始

「……賑わっているな」
　
　要塞街ファレスの広場。
　そこには大量の街の人が群がっていた。
　街中の全ての人が集まっているのでは無いかと思うほどの群衆だ。
　
「それもそうでしょう。いきなり街の管理官が変わる……それも自分の国のノージリアから来るのではなく、同盟関係を結んでいるとは言え、他国の人間が管理官に変わるというのだから気になるのは当然でしょう」
「……その管理官の話、ロームさんの方で聞いてたりしないんですか？　噂程度でも……」
「知らないわね。そもそも知ってたら情報共有するわ」
　
　それもそうだ。
　しかし、何となくロームさんからは距離を感じる。
　念の為聞いてみただけだ。
　
「で、新任の管理官の容姿は分かってるのか？」
「サナン殿……その辺りの話は先の最終確認で話してましたが……何も分かってません。男か女か、それすらも分かってません。……やはり寝てましたか？」
「い、嫌だなぁ……ジョバンニさん、俺が寝る訳無いじゃないですか！」
　
　いや、寝ていた。
　作戦開始前に寝る余裕がある程作戦を理解しているのかと感心したが、ただ抜けていただけだったか。
　……不安になってきた。
　
「……まぁ良い……。皆、群衆に紛れて管理官の姿を確認しましょう。その後、一人……にならなくても、孤立した所を確保します」
　
　皆は頷く。
　そして群衆をかき分け演説を聞きに行く。
　だが、まだ演説は始まっておらず、皆は待っている状態てあった。
　念の為、フードを深く被る。
　
「……まだ、か……じれったいわね」
「カルラさんの情報では既に始まっている筈の時間ですが……」
　
　すると、演説台の上が眩く光り始める。
　
「っ！？　何だ……」
「ジョバンニさん。今は民衆に紛れて下さい。我々はただの群衆の一部です」
　
　咄嗟の出来事にジョバンニさんが剣に手をかけたが、それを制止する。
　すると、眩く光った演説台に男が現れた。
　
(あれは……まさか、『転移陣』か？)
　
　演説台の上は見えなかったが、文献で見た『転移陣』の現象ににている。
　魔法陣のような物が眩く光り、光に紛れて人が現れるという。
　その気になれば視界に収まる範囲を転移させることも可能だという。
　ザルノール国の、俺たちの前でスキルの力を見せつけた……エリスと言ったか、あの姫。
　あの姫の『炎陣』や『水陣』と同じ種類なのだ。
　そして、そのスキルを持っている勇者と言うことは……。
　
「やぁ、皆様。お待たせしたね」
「……あれは……」
　
　俺はフードをさらに深く被り慌てて顔を隠す。
　何故ならば、その顔には見覚えがあったのだ。
　
「僕はザルノール国の勇者、樫本大樹。本日よりこの街の管理官として任命された。今後は僕の指示に従ってね？　さもないと……死ぬよ？」