歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

ドワーフのクーデター

「成る程……そんな事がね」
「あぁ……今ドワーフ国内は極度の緊張状態だ。下手に入らない方が良いぞ。あんたらなんかすぐに殺されちまうさ」
「そうだ！　不意を突かれなかったら俺達だって……」
「へぇ……私一人如きに簡単に打ちのめされたあんた達がどうやって私達を殺すの？」
　
　二人のドワーフを拘束して事情を聞き出す。
　こんな状況でも二人のドワーフはこちらに噛み付いてくるが、二人を打ちのめしたロームによって黙らされる。
　しかし、それでも二人はこちらを睨みつけてきていた。
　
「それにしても革命、か。ドワーフ王が殺されていたとは……」
「軍事クーデターか……ドワーフの国の内情は長らく外交を閉ざされていて知らなかったが、昔から軍事国家だった。王家の権威が落ちてくれば軍が権力を握ってもおかしくはないね」
　
　話によるとドワーフ国内では軍事クーデターが勃発したらしい。
　王家は皆殺され、軍のリーダーであるゴルンという男が実権を掌握しているとのことだ。
　
「それよりも気になるのはクーデターの数日前にここに乗り込んできたという人間の三人。……その内二人は見慣れない服装だと言っていたし……俺のクラスメイト……勇者かもしれないな」
「そうだね……その線が濃厚だ。でも私達エルフと同じくドワーフも勇者は嫌悪している。そうかんたんに口車に乗せられるとは思えないけど……」
「で、どうするの？　ドワーフとの接触は諦める？」
　
　ロームの言葉に俺は首を横に振った。
　
「いいや、もう少し探ってみよう。なぜこんな厳戒態勢だったのか気になるしな」
　
　二人の縛られたドワーフに近付き顔をまじまじと見る。
　
「何かあるんじゃないか？　まだ話していない事が」
「……何も無い。全て話した」
「……そうか」
　
　俺はナイフを取り出す。
　
「俺を脅そうってか？　そんなものじゃ……」
　
　そして、そのナイフを勢い良く、迷いなく自分の手に突き刺す。
　勿論、痛い。

「なっ……」

　痛みに耐えながら、声を絞り出す。
　
「……レナ、頼む」
「ん」
　
　レナを呼ぶとすぐに理解してくれたのか、すぐに治してくれた。
　痛みも引き、傷跡もない。
　掌をドワーフの眼の前に突き出す。
　
「レナは回復スキルを持ってる。ちょっとやそっとのことでは死なない……いや、死ねないぞ。さぁ、ドワーフはどれ程痛みに耐えれるかな？」
「ま、待て！　待ってくれ！」
　
　やめるように懇願するドワーフの言葉を無視し、ナイフをドワーフの手に突き刺す。
　
「ぐっ……」
「まだまだ序ノ口だな」
「ま、待て……」
　
　そのまま鍵を回すように、突き刺したままナイフを回す。
　更にもう一本で腹にも刺す。
　ドワーフは声にならない悲鳴を上げる。
　
「ぐあぁぁぁ！　待て！　止めてくれ！」
「待て、じゃなくて喋ってくれれば止めるんだがな……」
「わ、分かった……言うから……止めてくれ……」
　
　その言葉を聞き、手を止める。
　ナイフを抜き、レナに声を掛ける。
　
「レナ、治してやってくれ」
「うん。……でも、ちょっとやり過ぎじゃない？　勘助、悪役は向いてない。無理しすぎ」
「う……そうか？」
　
　周りを見ると皆が頷いている。
　正直に言うと、罪悪感が凄まじい。
　心が痛む。
　
「……これからはやり方を考えるか……ま、約束は果たしてもらうからな」
「う……分かったよ」