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撤退
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「フィアナ様! 敵軍、撤退して行きます!」
目の前の敵兵を切り倒し、報告を受けたフィアナはその報告に困惑する。
「撤退……? 早すぎる……そのまま攻めれば攻め落とせていたというものを……何故?」
フィアナは初戦ですら守りきれないと踏んでいた。
兵力差は歴然。
勝ち目の無い戦で、三重の防壁を使って撤退と抗戦を続け、ひたすらに時間稼ぎをするつもりだった。
そんな中での敵の動きは魔王軍陣営にとって嬉しい報告ではあった。
だが、不安は拭えない。
「確かに亀甲陣を崩して矢による打撃、混乱している敵を白兵戦で数を減らした……損害は向こうのほうが多いけど……」
「フィアナ様! 只今西門から報告が! 西門でも敵が引いていったとのことです!」
「西門でも? 手際が良すぎる……不自然ですね。でも……」
暫く考えた後、フィアナは士気を上げることに重きを置いた。
「……敵は我々に恐れをなして逃げ出しました! 初戦は我々の勝利です!」
将兵から歓声が上がる。
(士気は高い……でも、やっぱり不安は拭えない……対策は講じ無くては)
「ジョバンニさん。どう思いますか?」
「ふむ……些かこちらにとって有利に働きすぎているな。こちらでも同じような戦況だ。出鼻を挫いた所で敵が引いた。あまり敵を倒せなかったがな」
東西門の敵の損害については殆ど同じであった。
戦況だけ見れば良い傾向だったが、不安が拭えない二人は一度本丸にて合流し、対策を講じる。
「ねぇ。そんなに悪いことなの? 勝ってはいるのでしょう?」
「カレン様……そうですね。我々の目的は時間稼ぎ。ドヴェルグから援軍を連れて戻って来る佐切様を待つのが私達の目標です。そう見れば確かに優位なのですけど……」
「……」
フィアナとジョバンニ、そしてカレンが軍議を進める。
東門にはキサラが入り、不測の事態に対応出来るようにしている。
西門はザイルが指揮し、敵に備えていた。
「そうですね……一度敵の立場で考えてみましょう」
「それが良いでしょう。佐切殿が第六騎士団にいた時、よく言ってました」
フィアナは考える。
可能な限り敵の立場になって。
(もし私が敵ならば……初戦で分かった事は? 初戦で想像以上に敵の抵抗が激しい事が分かった。抵抗が激しいと言うことは……それ相応の兵力があると推測出来る。つまり、他は手薄になる……そして、今回攻めてないのは……)
そして、考えが至る。
「……まさか……伝令!」
「は!」
「今すぐに全軍に第二壁まで下がるように伝え……」
「ご報告申し上げます!」
すると、別の伝令が軍事室に駆け込む。
「敵軍、再度攻め寄せてきました!」
「っ! 早い! 狙いが正確……相手はかなりの手練れですね。即座に全軍撤退……いえ、殿部隊を残しつつ主力は撤退を。編成はスキル使いを中心に。ありとあらゆるスキルを駆使して時間を稼いでください。そして、生きて帰るようにと」
「は!」
伝令は頷き、そのまま去る。
「……この動き……覚えがある。こちらにとって都合の良い事が続き、油断した所で逆に攻められる……まさかな」
「ジョバンニさん。西門へ向かって下さい。撤退を指揮して下さい。私は細かい指示を出してから東門へ行きます」
「分かった!」
ジョバンニは敵の動きに違和感を覚えつつ、西門へ向かう。
フィアナは、祈るのであった。
(……早く来てください。佐切様……)
目の前の敵兵を切り倒し、報告を受けたフィアナはその報告に困惑する。
「撤退……? 早すぎる……そのまま攻めれば攻め落とせていたというものを……何故?」
フィアナは初戦ですら守りきれないと踏んでいた。
兵力差は歴然。
勝ち目の無い戦で、三重の防壁を使って撤退と抗戦を続け、ひたすらに時間稼ぎをするつもりだった。
そんな中での敵の動きは魔王軍陣営にとって嬉しい報告ではあった。
だが、不安は拭えない。
「確かに亀甲陣を崩して矢による打撃、混乱している敵を白兵戦で数を減らした……損害は向こうのほうが多いけど……」
「フィアナ様! 只今西門から報告が! 西門でも敵が引いていったとのことです!」
「西門でも? 手際が良すぎる……不自然ですね。でも……」
暫く考えた後、フィアナは士気を上げることに重きを置いた。
「……敵は我々に恐れをなして逃げ出しました! 初戦は我々の勝利です!」
将兵から歓声が上がる。
(士気は高い……でも、やっぱり不安は拭えない……対策は講じ無くては)
「ジョバンニさん。どう思いますか?」
「ふむ……些かこちらにとって有利に働きすぎているな。こちらでも同じような戦況だ。出鼻を挫いた所で敵が引いた。あまり敵を倒せなかったがな」
東西門の敵の損害については殆ど同じであった。
戦況だけ見れば良い傾向だったが、不安が拭えない二人は一度本丸にて合流し、対策を講じる。
「ねぇ。そんなに悪いことなの? 勝ってはいるのでしょう?」
「カレン様……そうですね。我々の目的は時間稼ぎ。ドヴェルグから援軍を連れて戻って来る佐切様を待つのが私達の目標です。そう見れば確かに優位なのですけど……」
「……」
フィアナとジョバンニ、そしてカレンが軍議を進める。
東門にはキサラが入り、不測の事態に対応出来るようにしている。
西門はザイルが指揮し、敵に備えていた。
「そうですね……一度敵の立場で考えてみましょう」
「それが良いでしょう。佐切殿が第六騎士団にいた時、よく言ってました」
フィアナは考える。
可能な限り敵の立場になって。
(もし私が敵ならば……初戦で分かった事は? 初戦で想像以上に敵の抵抗が激しい事が分かった。抵抗が激しいと言うことは……それ相応の兵力があると推測出来る。つまり、他は手薄になる……そして、今回攻めてないのは……)
そして、考えが至る。
「……まさか……伝令!」
「は!」
「今すぐに全軍に第二壁まで下がるように伝え……」
「ご報告申し上げます!」
すると、別の伝令が軍事室に駆け込む。
「敵軍、再度攻め寄せてきました!」
「っ! 早い! 狙いが正確……相手はかなりの手練れですね。即座に全軍撤退……いえ、殿部隊を残しつつ主力は撤退を。編成はスキル使いを中心に。ありとあらゆるスキルを駆使して時間を稼いでください。そして、生きて帰るようにと」
「は!」
伝令は頷き、そのまま去る。
「……この動き……覚えがある。こちらにとって都合の良い事が続き、油断した所で逆に攻められる……まさかな」
「ジョバンニさん。西門へ向かって下さい。撤退を指揮して下さい。私は細かい指示を出してから東門へ行きます」
「分かった!」
ジョバンニは敵の動きに違和感を覚えつつ、西門へ向かう。
フィアナは、祈るのであった。
(……早く来てください。佐切様……)
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