歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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撤退戦

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「急げ! 走れ! 第二壁まで駆けよ!」
「スキル持ちは残れ! 殿部隊として敵軍を足止めする!」
 
 ジョバンニが西門の主力部隊を撤退させ、ザイルが殿部隊の指揮をする。
 歴戦の猛将であるザイルが精鋭ファレス騎士団のスキル持ちを率いて時間稼ぎを行う。
 その質で言えば最高級である。
 しかしファレス騎士団のスキル持ちの数は、僅か千である。
 
「よし、敵軍は目と鼻の先だ! 地形を変えられるスキルはすべて使え!」
「よし……『沼地形成』!」
「俺もだな! 『丘陵形成』!」
「『地形操作』!」
 
 次々とスキルが発動され、目の前の地形が変わっていく。
 そこはさながら、地獄のような光景である。
 何人たりとも踏破を許さない極めて厳しい地形の出来上がりであった。
 沼が出来上がり、丘が形成される。
 そしてそれを『地形操作』で思いのままに操る。
 それは、相手がスキル持ちがいない場合の話である。
 
「なんだ。この程度か。『轟撃』!」
「くっ……相手のスキル持ちか。いよいよ本気を出してきたな。怯むな! 地形を操作し敵の侵攻を阻め!」
 
 目の前の地形が吹き飛ぶ。
 戦闘系のスキルで、地形を簡単に吹き飛ばせる『轟撃』によって盛り上がった土が破壊される。
 
「全軍突っ込め! 敵を殲滅しろ!」
「く……隊長! ぬかるみに足を取られて……」
「ふ……丘陵は囮よ。本命は沼地だ!」
 
 ザイルの誘導が嵌り、敵は大きく進軍速度を落とす。
 ザイルは丘陵を敵軍側に多く作り視界を悪くした。
 そして、壁側には沼地を多く置いたのだ。
 丘を破壊した敵は油断して次々と罠にはまる。
 ザイルはその隙を見逃さない。
 
「突っ込め! 敵の出鼻を挫く! こちら側だけ足場を凍らせよ!」
「了解! 『氷結』!」
 
 敵の最前線までの足場が凍る。
 凍ると言っても、あくまで沼地が凍るだけ。
 氷の上を歩くよりは、滑らず歩け、沼地に足を取られた敵を簡単に倒す事が出来る。
 それにそもそもファレス騎士団は滑りにくい靴を履いている。
 足を取られ、体勢を崩した敵はもはや烏合の衆である。
 
「ぐ……まさかこんな……」
「退くに退けない……」

 敵はなされるがまま、殺されていく。
 しかし敵にも地形操作系のスキル持ちがいる事は明白であった。
 相手の士気が落ちた事を確認すると、ザイルはすぐさま決を下す。
 
「よし! ある程度削ったら我々も撤退だ!」

 西門は優勢であった。
 総攻撃を仕掛けられたにも関わらず、ザイルの的確な指示で被害少なく、敵の損害は非常に多く撤退をし始めるのであった。
 
 
 
「『必中』! くそっ……いくら倒してもきりがない! 『必中』!」
「おい落ち着け! お前のスキルは対人向けだ! 体力を温存しとけ!」
「じゃあいつ使うんだよ!」
 
 西門に比べて東門の戦況は悪かった。
 理由は明白である。
 
「指示に従いなさい! 近接戦闘系のスキルを持った者は城門付近で……」
「うるさい! 魔族の言う事など聞けるか! ここは俺達でやる! お前は下がっとけ!」
 
 諸王国連合軍の指揮を魔族であるキサラが取っていた。
 が、やはり魔族と人間は相容れない。
 それを表すかのように諸王国連合軍はキサラの指示に従わなかった。
 フィアナの言葉を伝えた伝令の言葉で主力は撤退したが、殿に残ったスキル使いの部隊達はまばらに抵抗していた。
 
「く……いいから言う事を……」
「スキルも使えないくせに偉そうな事を言うな!」
「下がっとけ! 邪魔だ!」
 
 魔王軍に協力すると言っても差別意識が消えたわけではない。
 この事は、キサラの心に禍根を残す。
 しかし今はそれどころではない。
 城壁の上から声が届く。
 
「敵のスキル持ちが来るぞ! 城門が……」
 
 城門が破られるぞ。
 その言葉を聞き終えるよりも早く、その結果を目の当たりにする。
 
「はっ! こんなものか! この俺、勇者、畠山義和のスキル『剛力・強』にかかればどんな物でもこの有様よ!」
 
 キサラの目の前に、勇者が兵を引き連れて現れる。
 戦況は最悪だ。
 
(これは……ここで死ぬ、のね)
 
 キサラは、覚悟を決めるのであった。
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