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新兵器

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「初弾が着弾したな。」
「分かるんですか?」
 
 スミスがモニターを見ながら喋る。
 その様子が気になったのか、柏木がスミスのモニターを覗く。
 
「……これがあったら前進観測班のいる意味無いんじゃないてすか?」
「このカメラを持っていっているのはその前進観測班だ。」
「成る程。」
 
 通常カメラなどは持っていかないのだが、俺達の部隊は円滑な情報の交換の為使っている。
 無線、有線が死んだ場合の保険として持っていっていたが、途中からこっちのほうが楽だということに気付いた。
 
「ん?」
 
 すると、モニターが突如として砂嵐となり、通信が途絶した。
 
「着弾の衝撃か……。無線は生きてる。効力射の座標を伝えるぞ。」
「あぁ。頼む。」
「効力射?」
 
 柏木が疑問を頭に浮かべているのが分かる。
 
「砲兵は基本的に認識出来ない箇所から攻撃する。つまりはこちらからもどこに落ちたか分からないんだ。その為の前進観測班だ。」
「その前進観測班が弾着地を報告し、もう少し前だの後ろだのを俺達指揮所に伝える。それを聞いた俺達が砲班にそれを伝えるんだ。」
 
 スミスの説明に補足する。
 
「うーん……つまり、前進観測班が目で、ここの指揮所が脳、砲班が手みたいな感じですか?」
 
 柏木のその発言に俺とスミスは顔を見合わせた。
 
「成る程な。それが一番分かり易いかもな。」
「たまには素人目線からの話も聞いておいた方が良いかもな。スミス、今後の新隊員教育に組み込んでおけ。」
「そ、そんなに凄い事言いました?」
 
 そのまま効力射の情報を伝える。
 然程時間を置かずして砲声が鳴り響く。
 無線から弾着の報告が来る。
 そこで、弾着を映していたモニターが砂嵐となったことを思い出す。
 
「さて、砲班は既に陣地変換を行っている。問題は弾着が見えないということだ。昔ながらに無線でやり取りしても良いが、正直面倒臭いな。」
「……じゃああれ使うか。」
 
 俺は他の隊員に目で指示を出す。
 
「スミス。お前も今回アレを使いたかったんだろ?」
「ん?あぁ、まぁな。」
 
 やはり、使いたかったのか。
 だが、少し歯切れが悪い。
 
「アレってなんですか?」
 
 柏木の質問もご尤もだ。
 
「あぁ。付いて来い。」
 
 天幕の外にでると、そこには無人航空機があった。
 
「ドローン、UAV……てすか?」
「あぁ。最新鋭のな。」
「……はぁ。」
 
 初めて見るのか柏木は目を輝かせている。
 しかし、スミスの顔は暗い。
 
「これでまた暫くは貧乏生活を余儀なくされるな……。」
 
 成る程、それでか。
 
「だが、こいつの購入を決定したのはお前だぞ?」
「いや、人件費削減になるかと思ったんだが……。撃ち落とされることを考えたら人間はやはり必要だ……。」
「……ちょっと良いですか?」
 
 悲しむスミスをよそに柏木はパソコンとUAVをいじり始める。
 
「うん、行けそう。」
「おい、UAVに何をしたんだ?」
 
 スミスが聞く。
 こいつは恐らく壊していないか気になっているだけだろう。
 
「いえ、気にしないで下さい。」
「そうか?」
 
 まぁ、通常に使用するなら問題は無いのだろう。
 そろそろ陣地変換も終わりだ。
 さっさと飛ばすとしよう。
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