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迫る決戦

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「遅い!秀忠は何をしておる!」
「はっ!既に上田は出たと報告はありましたが……。」
 
 美濃赤坂。
 徳川家康は未だ赤坂を離れられずにいた。
 秀忠が訪れないからである。
 三郎の活躍によって東軍の兵力は大きく削られ、このまま関ヶ原に望めば負けることは明らかであった。
 
「殿、これ以上ここに留まれば味方についた者達の心が離れるやも知れませぬ。ここは軍を西に進ませては?」

 東軍の諸将には豊臣恩顧の将も多く、家康としてはあまり時間をかけたくは無かった。
 東軍の諸将の心変わりを警戒しての事だった。

「……仕方無いか。」
 
 直政の言葉を受け、家康は重い腰を上げた。
 
「これより、関ヶ原へ向かう!者共、支度せい!」
「はっ!」
 
 決戦の時は刻一刻と近付いていた。
 
 
 
「おお!これは立花殿!お待ちしておりましたぞ!」
「三成殿、間に合ったようで、良うございました。」
 
 家康が西進を決めた頃、西軍の陣には大物が到着していた。
 西国無双、立花宗茂。
 秀信、その実は三郎だが、書状を受け、着陣していた。
 
「主力は大津城を陥落させたばかり、大軍でもあるが故、到着が遅れておりまする。されどこの立花宗茂、三千の兵を率いて、先に参陣致した。決戦の時が近いと存じまするが故、我等だけが急ぎ、参りもうした次第。」
 
 立花宗茂は秀信の方を見る。
 三郎が送った書には秀信が書状を送ったことは内密にして欲しいと頼んでいた。
 三成の不信を買わないためである。
 その事は秀信にも伝えてある。
 
「いや、助かりまする。立花殿、この三成とともに、逆賊徳川を討ち果たしましょうぞ!」
「必ずや!」
 
 立花宗茂と三成は握手を交わす。
 
「ご報告申し上げます!」
「如何した!?」
 
 突如、伝令が駆け込んでくる。
 
「徳川勢、西へ向け進軍を開始したとのこと!」
「……どうやら、我等が着陣したのは丁度良かったようですな。」
 
 三成は頷く。
 
「いよいよ決戦じゃ!各々方!気合をいれようぞ!」
 
 長宗我部盛親が立ち上がり、声を上げる。
 
「うむ、此度の戦、我等宇喜多勢が最も兵が多い。我等が敵を引き付けましょうぞ。」
「では我等小西勢、宇喜多様に取り付いた敵を横から攻めましょう。」
「では、儂と長束勢もそのようにいたそう。」
 
 長宗我部と長束正家は共に陣を敷いている。
 すると、三成の横から島左近が出てくる。
 
「敵は恐らく三成様を狙って動く者がおるでしょう。我等はそれを防ぎます。大谷殿は?」
「我等は小早川殿の抑えとして、陣を動かさずにいようと思いまする。もし寝返れば我等が対応致しましょう。」
「では、我等立花勢は隙をみて徳川本陣に迫りましょう。」
「……その役目、我等島津もお供して宜しいか?」
 
 島津義弘の問いに立花宗茂は頷く。
 
「では、お二方は敵に隙が出来る直前まで動かず、いつでも動けるようにしておいて下され。……織田様は如何致しますかな?」
 
 皆の視線が集まる。
 
「……我等は……。」
 
 秀信は小早川が陣取る位置を指差す。
 
「頃合いを見て、あそこを攻めまする。」
「……どういう事ですかな?」
「三成殿には、戦が始まると同時に小早川殿に徳川を攻めるように言って貰いたい。それでも動かぬならば、小早川殿の陣に向け、銃撃を放ちまする。」
 
 その言葉に三成はすぐに答えなかった。
 
「……些か危なくはありませぬか?もしそれで逆に我等に攻めかかってきては……。」

 史実、徳川家康は小早川に対して銃撃を行っている。
 それをやろうというのだ。、

「ですので、頃合いを見計らいます。状況によっては動かず、大谷殿と共に備えまする。」
 
 三成は頷く。
 
「分かり申した。では各々、力を合わせ憎き徳川めを討ち果たしましょうぞ!」
 
 決戦の時は近い。
 勝つのは、西軍か、東軍か。
 未来の知識を得た信長こと三郎の知略がどれほど大勢に影響を与えたのかはまだ誰にも分からない。
 
(……いよいよ決戦だ。俺の望みはただ一つ。織田の再興。そのためになら、何でもしてやろう。決して織田家を終わらせはしない。)
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