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月
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月明かりの夜。一人の男は本を読んでいた。本のタイトルは見えないが、作家名は「赤春雀」と書いてあった。一頁、又一頁と男はすらすらと本を読み進め、掛けている眼鏡が少し傾くと直し、又頁を捲る。
いつの間にか読み終わり、男は本を床に置いた。見ると床は本でいっぱいだった。本棚があるのに直さず本棚二ある本は数冊しかなかった。
男は空いている窓から月を眺め
無造作に、置かれている羽織を取って袖には通さず肩に掛けて家を出た。
家を出て、電車に乗り、また歩くと薄暗い路地を歩き一つの扉の前に足を止めた。扉を開けると目の前には地下に通じる階段があった。男は階段をおりる狭い空間の中にカウンターがあり席には二人の男が座っていた。
そしてカウンターの向かいはバーテン服を着た男がグラスを、拭いていた。
カウンターに座っている二人の男は男に気付き手招きをして男の名前を呼んだ。
「シゲ! 遅いぞ」
「重業、待ちくたびれたぞ。三人集まらないとやっぱり盛り上がらないな」
「遅れて悪いな。心作、テル」
頭を掻きながら反省の色が全くないこの男の名は尾坂重業。(おざかしげなり)
「テルって言うな! 俺の名前は赤津輝修だ。ちゃんと全部言え!」
重業に怒鳴るこの男は赤津輝修。(あかづてるのぶ)
「まぁまぁ、テルって呼び名は僕も良いと思うよ」
輝修を宥めるこの男は小田心作と言う。
「遅れたのは本当に悪いと思っえるよ。だからそんなに怒るなよ、テル」
「だからテルって言うな! どうせ赤春の本でも読んでいたんだろ」
輝修は呆れながら酒を一口飲んだ。
「雀ちゃんの新作か。僕はまだかってないな。金が無くって」
心作は笑いながら煙草をを吸った。
「雀の書いた本は良い。何度読んでも、又読みたくなる。あ、俺はいつもので」
重業は向かいにいるマスターに酒を注文をし心作の隣に座り着物の袖口から煙草とマッチを出して吸い始めた。
「新作って言ったら、二人はどうだ? 新作書いているのか?」
心作は二人にそう聞くと輝修は「全然進まない」、重業は「俺は書く暇がなくってな」と言った。
三人は作家だった。だが心作は作家でもあり詩人でもあった。昔読んだ詩集の本を読みその書いた人物の家に訪れて弟子入りをした。
だが、詩人になったのは良いが詩人になった途端、金の使い方が荒くなり、師匠や兄弟子、弟弟子から金を借りる羽目になる。その結果、破門になり心作は試しに短編の小説を書き応募すると一発で受賞した。それから心作は作家になり、今では心作は小説家でもあり詩人でもある。
そして金の荒らさは二人がよく知っていた。
「俺は奢らないぞ。俺もそんなに手持ちが無いからな」
「じゃあ、今夜は俺が奢るぜ。見返りは二人の新作の作品だ。自分の担当編集者に見せる前に俺に見せろ」
重業は左手に酒の入ったグラスを持ちながら右手で人差し指を立てて言った。
輝修は悩んだが、心作は「乗った! 詩でもいいか?」と重業の提案を受け入れた。
「全然良いぜ、むしろ心作書いた詩が読めるなんて、俺は嬉しいぜ。で、テルはどうする?」
隣で悩んでいる輝修に聞くと「俺はいい、いつ完成するか分かんないし」
「そうか残念だな。……じゃあ、テルの本は気長に待つとするか」
重業は酒を一気に飲んで、煙草を消し、金を出してカウンターに置いた。
「マスター、これ全員分な。釣りはいらねぇ」
「はぁ! 俺はいいって言ったろ」
「今日の俺は気分が良いんだ。大人しく奢られとけ。じゃあな」
重業は店を出た。
店に残された心作は笑い、輝修は怒りながら酒を一気飲みしてまた酒を注文した。
心作はカウンター席を叩き置いてあるグラスが微妙に動く。
「シゲの奴、無駄にカッコつけて」
「でもそこが重業の良い所だ。頼りになる兄貴分って感じで。僕は重業のそういう所が好きだよ」
心作はまた一本煙草に火を付けて吸うと激しい咳をして苦しそうにしていた。
「大丈夫か? 煙草、止めたらどうだ」
「冗談でしょ、止めるわけないじゃん。僕はいいけどテル君は長生きしてね」
「だからテルって言うな! 心作も長生きしろよ。俺、お前の詩も小説も好きだから」
そう言う輝修の顔は何処か不安で悲しそうだった。心作は慰めるかのように輝修の頭に手を置いて優しく撫でた。
「そんな顔しないで笑ってよ。テル君は笑顔が一番だよ」
「だってしょうがないだろ。今にもお前は死にそうな顔をしているのに。何で笑っていられるんだよ」
心作は悲しそうに笑った。
「僕の十八番だからね」
夜の道を歩く重業。電車に乗らず歩いて帰るとそよ風が吹き重業は大きくくしゃみをすると寝ていた犬が起きて鳴き始めた。
「カッコつけて店出たが、テルの奴、怒ってるだろうな。でも、しょうがねぇだろ。心作のあんな顔、見るに耐えねぇんだよ」
重業はそんな独り言を言いながら夜の道を歩き続けた。
いつの間にか読み終わり、男は本を床に置いた。見ると床は本でいっぱいだった。本棚があるのに直さず本棚二ある本は数冊しかなかった。
男は空いている窓から月を眺め
無造作に、置かれている羽織を取って袖には通さず肩に掛けて家を出た。
家を出て、電車に乗り、また歩くと薄暗い路地を歩き一つの扉の前に足を止めた。扉を開けると目の前には地下に通じる階段があった。男は階段をおりる狭い空間の中にカウンターがあり席には二人の男が座っていた。
そしてカウンターの向かいはバーテン服を着た男がグラスを、拭いていた。
カウンターに座っている二人の男は男に気付き手招きをして男の名前を呼んだ。
「シゲ! 遅いぞ」
「重業、待ちくたびれたぞ。三人集まらないとやっぱり盛り上がらないな」
「遅れて悪いな。心作、テル」
頭を掻きながら反省の色が全くないこの男の名は尾坂重業。(おざかしげなり)
「テルって言うな! 俺の名前は赤津輝修だ。ちゃんと全部言え!」
重業に怒鳴るこの男は赤津輝修。(あかづてるのぶ)
「まぁまぁ、テルって呼び名は僕も良いと思うよ」
輝修を宥めるこの男は小田心作と言う。
「遅れたのは本当に悪いと思っえるよ。だからそんなに怒るなよ、テル」
「だからテルって言うな! どうせ赤春の本でも読んでいたんだろ」
輝修は呆れながら酒を一口飲んだ。
「雀ちゃんの新作か。僕はまだかってないな。金が無くって」
心作は笑いながら煙草をを吸った。
「雀の書いた本は良い。何度読んでも、又読みたくなる。あ、俺はいつもので」
重業は向かいにいるマスターに酒を注文をし心作の隣に座り着物の袖口から煙草とマッチを出して吸い始めた。
「新作って言ったら、二人はどうだ? 新作書いているのか?」
心作は二人にそう聞くと輝修は「全然進まない」、重業は「俺は書く暇がなくってな」と言った。
三人は作家だった。だが心作は作家でもあり詩人でもあった。昔読んだ詩集の本を読みその書いた人物の家に訪れて弟子入りをした。
だが、詩人になったのは良いが詩人になった途端、金の使い方が荒くなり、師匠や兄弟子、弟弟子から金を借りる羽目になる。その結果、破門になり心作は試しに短編の小説を書き応募すると一発で受賞した。それから心作は作家になり、今では心作は小説家でもあり詩人でもある。
そして金の荒らさは二人がよく知っていた。
「俺は奢らないぞ。俺もそんなに手持ちが無いからな」
「じゃあ、今夜は俺が奢るぜ。見返りは二人の新作の作品だ。自分の担当編集者に見せる前に俺に見せろ」
重業は左手に酒の入ったグラスを持ちながら右手で人差し指を立てて言った。
輝修は悩んだが、心作は「乗った! 詩でもいいか?」と重業の提案を受け入れた。
「全然良いぜ、むしろ心作書いた詩が読めるなんて、俺は嬉しいぜ。で、テルはどうする?」
隣で悩んでいる輝修に聞くと「俺はいい、いつ完成するか分かんないし」
「そうか残念だな。……じゃあ、テルの本は気長に待つとするか」
重業は酒を一気に飲んで、煙草を消し、金を出してカウンターに置いた。
「マスター、これ全員分な。釣りはいらねぇ」
「はぁ! 俺はいいって言ったろ」
「今日の俺は気分が良いんだ。大人しく奢られとけ。じゃあな」
重業は店を出た。
店に残された心作は笑い、輝修は怒りながら酒を一気飲みしてまた酒を注文した。
心作はカウンター席を叩き置いてあるグラスが微妙に動く。
「シゲの奴、無駄にカッコつけて」
「でもそこが重業の良い所だ。頼りになる兄貴分って感じで。僕は重業のそういう所が好きだよ」
心作はまた一本煙草に火を付けて吸うと激しい咳をして苦しそうにしていた。
「大丈夫か? 煙草、止めたらどうだ」
「冗談でしょ、止めるわけないじゃん。僕はいいけどテル君は長生きしてね」
「だからテルって言うな! 心作も長生きしろよ。俺、お前の詩も小説も好きだから」
そう言う輝修の顔は何処か不安で悲しそうだった。心作は慰めるかのように輝修の頭に手を置いて優しく撫でた。
「そんな顔しないで笑ってよ。テル君は笑顔が一番だよ」
「だってしょうがないだろ。今にもお前は死にそうな顔をしているのに。何で笑っていられるんだよ」
心作は悲しそうに笑った。
「僕の十八番だからね」
夜の道を歩く重業。電車に乗らず歩いて帰るとそよ風が吹き重業は大きくくしゃみをすると寝ていた犬が起きて鳴き始めた。
「カッコつけて店出たが、テルの奴、怒ってるだろうな。でも、しょうがねぇだろ。心作のあんな顔、見るに耐えねぇんだよ」
重業はそんな独り言を言いながら夜の道を歩き続けた。
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