サラリーマンのパン巡り

赤花雪夜

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疲れた時には甘いパン

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会社に出社して自分のデスクで仕事をこなす日常。ミスが無いか資料を確認して上司に提出。     
  時々後輩から分からない所を聞かれてそれを直して教えてあげたり。正直に言うとつまらない。
   仕事をつまらないと言ったら贅沢な事を言っているかもしれないが、自分のやりたい事が思い浮かばずこの会社を辞めたくても辞めれない。残業は多い、ミスを失敗し隠す後輩は多い、それでも手伝ってくれる同期や礼儀正しい後輩もいるからなんとかやっていけている。(精神が)
    それでもやっぱり体は疲れるし、疲れも溜まる。私だって一人の人間なのだから。
   午前中の仕事を終わらせ今は同期とランチタイム。疲れた体は甘い物を欲しており私は甘い菓子パンを食べながらノートパソコンで資料作りに勤しんでいる。
「せっかくのお昼なんだからパソコンじゃなくてパンを見ながら食べなよ」
   同期は私の向かいの席に座りながら目の前にデカイ弁当を食べながらそう言う。
「私だってせっかくのランチタイムに仕事を持ち込みたくありません。ですが、どっかのクソが、
いえ、先輩が私に資料作りを丸投げして自分は優雅にランチタイムを取っているのはムカつきますがこんなのも出来ないのかと言われる方が一番腹が立ちます」
「あ~あの人ね。僕も一回やられたな。でも時間までに出来なくて役立たずって言われてから一回もこっちに仕事持ってこなくてなったな」
    そう言いながら大盛りご飯をリスのように頬張って食べる同期を見て思わず羨ましいと私は思った。だが、押し付けた癖に役立たずとは。
「今夜、何か奢りましょうか?」
「じゃあ焼き肉!」
    即答で遠慮も無く言う同期に「もう少し声を抑えて下さい」と言いパンを一口。後一口でパンが無くなってしまう。後ニ三個買っておけば良かった。
    それに今日はとても疲れる。何か甘い物も食べたくなった。
「ごちそうさま! じゃあ僕は先にデスクに戻るね」
「そうして下さい。君はタイピングが遅いですから」
「あはは、確かに」
   嫌味を言ってもああやって笑って済ますのは彼らしいがもっと怒ってもいいと思う。私も残り一口のパンを食べてデスクに戻る前に自販機で飲み物を買おうと立ち寄ると先程私に仕事を押し付けたクソ先輩と他の人がいた。気分が悪いからさっさと買って立ち去りたい。
「でさ、あいつほんと言ったら何でもやってくれるの。おかげで楽して出世出来そうなんじゃね」
「そ、そうなんか」
「それにこの前坂木に仕事押し付けたらあいつ全然出来なかったんだよ。ほんと役立たずだよな」
「あ、ああ」
   立ち聞きは良くないが、クソ先輩の言葉に気分が悪い。押し付けておきながら役立たずとは。それもしっかり坂木の事を。私は自販機のボタンを押してガタッと落ちて来た水のペットボトルを持って先輩の前に現れる。
「お疲れ様です」
   私の声に先輩以外の人は何故かビクッとまるで怯えるかのような反応をし先輩は相変わらずバカな顔をしている。
「あ、なんだお前か。頼んだ仕事は出来たか?」
「えぇ、出来ましたよ」
   私は出来た書類を先輩に渡した。確認もせず先輩は「おつかれおつかれ」と書類をヒラヒラさせて立ち去ろうとするが私は彼の肩を掴み止めた。
「あっなんだ……」
「お言葉ですが、確かに彼は小さなミスはしますしタイピングは遅いです。ですが誰にでも分け隔てなく優しく力がある彼は誰かを助けそれで皆は助かっています。私もその一人です。先輩みたいに仕事が出来る訳ではありませんが私としては彼の方がこの会社を大きく動かす人材だと思います。あなたのようなゲスと違って」
   手に持っていたペットボトルのキャップを空けて先輩の頭から水をかける。頭から靴まで水が行き渡り私は最後に「あなたより彼の方がよっぽど優秀ですよ」と言ってやった。
    あっけらかんとした先輩が正気に戻って私を殴り掛かろうとしたが先輩と一緒に居た二人がそれを止めた。流石に暴力はヤバイと悟ったのだろうか。そんな事を気にせず私はオフィスに戻り自分のデスクに座る。
「海風おかえり。戻ってくるの遅かったね」
「少し用がありましてね。それも済みました」
「そっか!」
   お互いに仕事に戻りパソコンと向き合っていると疲労で目が疲れに出てくる。常備している目薬をさして仕事にまた集中すると坂木(一緒に昼を共にした同僚)が袋を持って私のデスクに何も言わずに置いた。袋の中には菓子パンが三つ入っていて三つのうち一つは付箋が貼ってあり「今夜は焼肉がいいな!」と書いてあった。彼の仕事姿を見ていると彼らしいと言ったら彼らしかった。
   仕事を早めに終わらせ誰もいないスペースで坂木から貰った菓子パンを食べる。お昼はあれだけで物足りないと思いどう空腹から逃れようかと必死に考えていたが今は菓子パンを食べられるのでどうでもよくなった。貰った菓子パンはあっという間に無くなり自分の持ち場に戻ると坂木はニヤニヤと笑いながら「どこ行ってたの?」等と聞いてくる。本当は分かっているくせに。
「少し、小腹が空きましてね」
「そっか!」
「それより今日は奢るのですから早めに終わらせて下さいよ」
「分かってるよ。僕も結構タイピング上手くなったから今日は早めに終わるよ!」
    笑顔で走り去りまるで嵐が去って行ったような気分。私も自分のやる事をいつもより早めに終わらせ切り上げる。

    早めに終わったのはいいが、肝心の同僚が未だに終わらず私は待たされている。焦りながらなんとか早く終わらせようとしているのは伝わるがそれが終わらないと意味がない。私は店の予約をして同僚を待つ。申し訳ないと心から思っているのか「ごめんよ~」と今にも泣きそうな顔で言ってくる。いい大人がこれしきで泣いてどうするのやら。
「本当に申し訳ないなら先に終わらせて下さい。謝るのはその後」
「……おっしゃる通り」
   集中し出したのか目つきが変わる。腕時計を見るとかれこれニ十分は経ち坂木はようやく終わらせた。
「終わった!」
「遅かったですね」
「……返す言葉もありません。お腹減ったし早く行こ!」
「予約は取ってありますのでそんなに急ぐ必要は無いですよ」
「僕がお腹減ってるから急ぐ」
   彼の食いっぷりは昼を共にして散々見てきたが、食べ放題にして良かった。オフィスを出て廊下を歩くとエレベーターで後輩二人とバッタリ会った。
「お疲れ様です海風先輩。坂木先輩」
「お疲れ様です」
「お疲れ様です。珍しいですね二人が一緒にいるのは」
「こいつと意気投合してそれから何度か一緒にメシ食いに行くんすよ」
    この二人は私と坂木の後輩、五十嵐逞夜(いがらしたくや)と後輩の後輩、兎虎刃(うとらじん)君。兎虎君はとても愛嬌がありこの会社の癒しと女性の社員の中で一役人気の後輩。
  主に坂木が兎虎君を指導し私は五十嵐君の指導をしているがたまに私も兎虎君の指導を少ししていた。それから何故か妙に懐かれたような気がするが。
「お二人はこれからどっか行くんすか?」
「今から焼肉!  海風の奢り!  後輩二人もどう一緒にさ」
「良いんすか!」っと二人揃って目を輝かせ私を見てくる。思わずため息が出てしまうが二人は結構頑張っているしご褒美と思えば良い。それに二人三人増えた所で一緒だ。
「では、後輩二人も連れて行きましょうか」
   後輩二人と同僚三人がハイタッチをして喜びながらエレベーターに入る。こうして見てると彼等が学生のように見えてしまう。童顔で幼く見えてしまうからか。
    そして四人で焼肉屋に向かって(勿論私の奢りで)焼肉を食べて酒を飲んでは五十嵐君がいきなり私の事を話し始めてそれに兎虎君が乗っかって二人だけで話が盛り上がったり。坂木がご飯を十杯も頼んで完食したり。焼肉があるのだから肉を食って欲しいです。なんだかんだで楽しい時間でした。それぞれタクシーを呼んで私は兎虎君と坂木は五十嵐君と同じタクシーに乗って帰った。
   タクシーに乗る前の五十嵐君は私に引っ付いて「まだ海風さんの事語りたい」等言っていた。引っ付いた彼をひっぺ剥がすのに坂木は息を切らしてタクシーに押し込んでいたが後輩の扱いが雑だったとは言え何とも言えなかった。兎虎君は酒を飲んでいないからまだ良かったがこれで飲んでいたらもっと大変だった。彼と共にタクシーに乗り彼の家から向かってもらう。
「今日は本当にご馳走さまです」
「沢山食べたのならなによりです。気が向いたらまた誘います」
「ありがとうございます!」
   元気良くお礼を言って彼はタクシーから降りた。彼の家の近く迄止まったタクシーはまた動き出し次は私の家に向かう。肉も食って酒も少し飲んで酔いが少し回った頭を必死に起こす。酒を少し飲んだだけなのに少し眠くなってしまった。余程疲れが溜まっていたのかもしれない。だが、明日も忙しいしから気を引き締めていかないといけない。私は必死に頭を起こし続けるとようやく家に着いた。タクシーの運転手さんにお金を払って車から降り家に向かって進む。今日はシャワーだけにしよう、明日のパンは甘いものを多めに買おう。そんな事を考えているといつの間にか家に着いていた。
    鞄から鍵を出して玄関を開け家に入る。靴を脱いで寝室で鞄と服を脱いで速攻風呂場に向かった。それからは時間が早かった。
   シャワーを軽く浴びて水分補給に水を飲み、寝室のベッドで横になるだけだったが寝室に入ってから携帯を覗くとメールの通知が三件来ていた。
   坂木と五十嵐君と兎虎君からだった。五十嵐君はまずあの状態で打てたのかと内心思っていたが通知を見てみると「今日は御馳走さまでした。それと色々すみません」と送られていた。どうやら酔いは冷めたようですね。
    坂木からも「今日はありがとう! 今度は僕が奢るよ」と書いてあり私からの返事は「なら坂木オススメの美味しいパンを奢って下さい」と送ってやった。すぐに既読が着いて返信は早く「もちろん! おやすみ!」と返ってきた。私も「おやすみなさい」と返し次は兎虎君のメールも見る。
「タクシーでも言ったけど今日は本当にご馳走様でした! 明日俺のオススメのパン奢るよ!」
    彼なりのお返しのつもりでしょうかつい頬がニヤけてしまう。
「楽しみにしてますっと」
   兎虎君にも返信してベットで横になる。
   腹もいっぱいで会社でも疲れたせいか今日の夜はぐっすり眠れる。
   明日はいつも以上に頑張らなくては。
   皆さんも頑張るのは良いですが頑張り過ぎないように頑張って下さい。
   では、おやすみなさい。
  
    
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