9 / 14
友田、苦難の3か月
第9話 優紀との初対面 2
しおりを挟む
名波さんと打ち解けるきっかけは、思ったより早く訪れた。
「くっそー! 今日提出だったのすっかり忘れてたぜー!」
「それで、名波さんに土下座してノート借りてたのかよ……」
青野は学校が始まってから出された、最初の宿題を忘れていた。そして名波さんに泣きついたという。本当に好感度を上げる気があるのか、と俺は呆れていた。
「勘違いしないでよね。いつまでも廊下で土下座されてたら、変な噂が立っちゃうでしょ。だから仕方なく貸してあげたの!」
名波さんは一体、誰に言い訳をしているのやら。青野は聞いている余裕もなく、ガリガリと宿題の部分を書き写している。急いでいるから仕方ないとはいえ、字がかなり汚い。これから提出するのに、大丈夫なんだろうか。
その一方で、名波さんのノートを見た俺は、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
「名波さんのノート、めちゃくちゃ綺麗にまとまってるな……」
ただ黒板の内容を移しただけではない。要所に用語の解説や自分なりのまとめまでが詰め込んであり、しかも見やすい。見せる事を意識した一種の作品のようだった。
「ふっふーん。友田はこいつと違って、見る目があるみたいね!」
「おい優紀! 見てないで手伝ってくれよ!」
「嫌! ノート見せてあげてるんだから、文句言わないでよ!」
俺が感心している中、青野はノートを見せてもらった挙句にブーブーと文句を言う始末。名波さんが小さくため息をついたことに、隣にいた俺は気づいてしまった。
「なあ友田! お前は宿題どうなんだよ!?」
「あぁ、俺は友達にノートを貸してるところだぞ」
提出の直前まで友達にノートを貸している、すなわち俺も宿題を終わらせてあるということだ。青野は道連れを作れなかったことに肩を落とす。残り時間は5分、手を止めてたら間に合わないぞ。
「えっ、友田もそうなの?」
俺の言葉に、意外にも名波さんが食いついてきた。確かに、ノートを貸している状態は、彼女と同じと言える。それに気づいた名波さんは、俺に向ける表情が一気に柔らかくなった。
「なーんだ、あなたも私と似たようなことしてたのね」
「あはは、そうみたいだね」
なんだか、彼女の本音を見せてくれているような気がした。
「あんたも、こいつに振り回されないよう気を付けたほうがいいわよ」
「気を付けるよ」
「素直でよろしい。友田は春吉とは大違いね!」
今度こそ、数字がはっきり見えるようになった。数字は60、桜のような薄いピンクで彩られている。名波さんの無邪気な笑みが自分に向けられて、少しドキッとした。
……待て。その数字は青野に向けられたものだ。
浮足立った気持ちが、急速に冷めた。今の彼女の笑みは、あくまで青野の友達として信頼を得ただけだ。俺の方に向いている数字に、思わず勘違いしてしまった。
いつの間にか、友人キャラであることを受け入れ始めている自分がいる。それに気づいた時、胸がチクリと痛んだ気がした。どうしてかは、わからないけれど。
「……どうしたの? なんだか顔色が悪くなったわよ?」
「あ、あぁ。ちょっと昨日夜更かししちゃったからね」
表情には出さなかったつもりなのだけれど、名波さんに心配されてしまった。彼女は世話焼きが得意だ、と青野から聞いてはいたが、想像以上のようだ。ごまかすために、適当な理由を述べる。
「ははっ、俺が誘った『かどつよ』にすっかりハマっちまったみたいだな!」
「いや、宿題忘れるほど熱中してた青野には言われたくないからな」
青野の軽口には、流石に異議有りだった。そもそも昨日は一緒に『かどつよ』をやっていたはずなので、宿題をやっていないなどという言い訳は通用しないのである。
「そうよ! あんたは友田を見習いなさい!」
「くっ、くそぉ……」
青野はしぶしぶ宿題に意識を戻した。名波さんと目が合い、やれやれと同じ気持ちになった気がした。
数字は、1つ減って59になった。
「くっそー! 今日提出だったのすっかり忘れてたぜー!」
「それで、名波さんに土下座してノート借りてたのかよ……」
青野は学校が始まってから出された、最初の宿題を忘れていた。そして名波さんに泣きついたという。本当に好感度を上げる気があるのか、と俺は呆れていた。
「勘違いしないでよね。いつまでも廊下で土下座されてたら、変な噂が立っちゃうでしょ。だから仕方なく貸してあげたの!」
名波さんは一体、誰に言い訳をしているのやら。青野は聞いている余裕もなく、ガリガリと宿題の部分を書き写している。急いでいるから仕方ないとはいえ、字がかなり汚い。これから提出するのに、大丈夫なんだろうか。
その一方で、名波さんのノートを見た俺は、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
「名波さんのノート、めちゃくちゃ綺麗にまとまってるな……」
ただ黒板の内容を移しただけではない。要所に用語の解説や自分なりのまとめまでが詰め込んであり、しかも見やすい。見せる事を意識した一種の作品のようだった。
「ふっふーん。友田はこいつと違って、見る目があるみたいね!」
「おい優紀! 見てないで手伝ってくれよ!」
「嫌! ノート見せてあげてるんだから、文句言わないでよ!」
俺が感心している中、青野はノートを見せてもらった挙句にブーブーと文句を言う始末。名波さんが小さくため息をついたことに、隣にいた俺は気づいてしまった。
「なあ友田! お前は宿題どうなんだよ!?」
「あぁ、俺は友達にノートを貸してるところだぞ」
提出の直前まで友達にノートを貸している、すなわち俺も宿題を終わらせてあるということだ。青野は道連れを作れなかったことに肩を落とす。残り時間は5分、手を止めてたら間に合わないぞ。
「えっ、友田もそうなの?」
俺の言葉に、意外にも名波さんが食いついてきた。確かに、ノートを貸している状態は、彼女と同じと言える。それに気づいた名波さんは、俺に向ける表情が一気に柔らかくなった。
「なーんだ、あなたも私と似たようなことしてたのね」
「あはは、そうみたいだね」
なんだか、彼女の本音を見せてくれているような気がした。
「あんたも、こいつに振り回されないよう気を付けたほうがいいわよ」
「気を付けるよ」
「素直でよろしい。友田は春吉とは大違いね!」
今度こそ、数字がはっきり見えるようになった。数字は60、桜のような薄いピンクで彩られている。名波さんの無邪気な笑みが自分に向けられて、少しドキッとした。
……待て。その数字は青野に向けられたものだ。
浮足立った気持ちが、急速に冷めた。今の彼女の笑みは、あくまで青野の友達として信頼を得ただけだ。俺の方に向いている数字に、思わず勘違いしてしまった。
いつの間にか、友人キャラであることを受け入れ始めている自分がいる。それに気づいた時、胸がチクリと痛んだ気がした。どうしてかは、わからないけれど。
「……どうしたの? なんだか顔色が悪くなったわよ?」
「あ、あぁ。ちょっと昨日夜更かししちゃったからね」
表情には出さなかったつもりなのだけれど、名波さんに心配されてしまった。彼女は世話焼きが得意だ、と青野から聞いてはいたが、想像以上のようだ。ごまかすために、適当な理由を述べる。
「ははっ、俺が誘った『かどつよ』にすっかりハマっちまったみたいだな!」
「いや、宿題忘れるほど熱中してた青野には言われたくないからな」
青野の軽口には、流石に異議有りだった。そもそも昨日は一緒に『かどつよ』をやっていたはずなので、宿題をやっていないなどという言い訳は通用しないのである。
「そうよ! あんたは友田を見習いなさい!」
「くっ、くそぉ……」
青野はしぶしぶ宿題に意識を戻した。名波さんと目が合い、やれやれと同じ気持ちになった気がした。
数字は、1つ減って59になった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
姉の引き立て役の私は
ぴぴみ
恋愛
アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。
「どうしたら、お姉様のようになれるの?」
「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」
姉は優しい。でもあるとき気づいて─
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる