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友田、苦難の3か月
第10話 氷織との初対面 1
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名波さんの数字が見えるようになったものの、悩みの種はまだ大きい。とりあえず休み時間にフラフラと歩いていると、偶然にもヒロインの1人を見かけた。
「あ、あれって……」
前に入学式で生徒会長として挨拶をしていた、瀬戸氷織会長がそこにいた。一目でわかる、圧倒的な高嶺の花。ただ廊下を歩いているだけなのに、辺りが凛とした雰囲気に包まれているように見える。誰もが話しかけるのを躊躇っていた。
(何かを運んでいる……、 これっていい機会なんじゃ?)
彼女は、段ボールを抱えている。恐らくだけど、生徒会の仕事だろう。俺はきっかけを作るため、勇気を振り絞って話しかけた。
「あの、瀬戸会長」
「……私は今、生徒会の仕事で忙しいの。後にしてくれる?」
やはり、断られるとは思っていた。こうなると、当然数字は見えないままだ。この時俺は、気持ちが焦っていたからか、どうにか食い下がろうとした。
「その、段ボール運ぶの手伝いますよ」
「いえ、これは生徒会の仕事だから――」
「なら、ただの人手として使ってください。お役に立ちたいんです」
「……」
瀬戸会長は俺の言葉に目を見開いた。碧い瞳が、日光に反射して美しさがより際立っている。しまった、接点を作るためとはいえ、ちょっと強引すぎただろうか。初対面で引かれてしまったら、元も子もないというのに。後悔と緊張で心臓がバクバクと強く鳴っている。
「そういうことなら、お願いするわ」
意外な返答だった。彼女の無表情さは変わっていないけれど、手伝うことを許してくれた。少しだけ心臓のうるささが止んだ気がする。
「わかりました。これってどこまで運ぶんですか?」
「生徒会室よ。あと5箱あるから、往復になるわ」
「え、それ一人でやるつもりだったんですか……?」
そんな事をしていたら、日が暮れてしまう。俺にとっての会長に対するイメージが、雪女からどこか危うい人に変わり始めた。
段ボールを運び終えた後、なし崩し的に書類作業も手伝うことになった。俺には簡単な仕分け作業を割り振ってくれた。作業中は黙々と時間がすぎると思っていたのだけれど、実際には少し違っていた。
「瀬戸会長、ここ記載漏れてませんか?」
「……本当ね」
「あら、インク切れ……?」
「良ければ俺のやつ使いますか?」
「え、えぇ……使わせてもらうわね」
なんと、瀬戸会長の手順ミスや不具合等が時々見つかり、それを教えるケースが何度かあった。正直、もっと完璧な人というイメージを持っていた。しかし今の彼女はどうだろう。意外と抜けている部分があるようだ。
どうにか作業は日没前に終わらせることが出来た。固まった肩を回していると、瀬戸会長は俺の前まで来た。表情の変化は特に見られないものの、多少なりとも信頼を向けられているかのような、そんな目線を感じた。
「礼を言うわ。何度も助けてくれて、ありがとう」
「本当ですか。それは良かったです」
まっすぐ目を見て感謝を告げてもらえた。同時に、頭の上にはぼやけた影が浮かび上がってきた。なんとなく色が青い事だけはわかる。青野は既に好感度が低いのかもしれない。
「また何かあったらお手伝いさせてください。それじゃあ俺はこれで……」
とはいえ、まだ正確な数字はわからない。一応顔は覚えてもらえたようだし、また手伝いに来られたらいいなと思っていた。俺は背を向けて生徒会室から出ようと、扉へ歩き出した。
「待って」
透き通るような声を持つ彼女だが、今の言葉は少しだけ喉に詰まりかけていたように思えた。振り返ると、夕日のせいかほんの少しだけ、頬が染まったように見える会長の姿があった。
「その、もしよかったらだけれど。……明日も手伝ってもらえたり、しないかしら?」
「え?」
この時間だけで、瀬戸会長に何度驚かされただろう。まさか、彼女から手伝いを頼まれるとは。もしかしたら、会長の数字が見られるようになる。いや、或いはそれだけじゃ済まないのでは。男として、そんな期待を持ってしまうのはごく自然の事だと思ってしまうのだった。
「あ、あれって……」
前に入学式で生徒会長として挨拶をしていた、瀬戸氷織会長がそこにいた。一目でわかる、圧倒的な高嶺の花。ただ廊下を歩いているだけなのに、辺りが凛とした雰囲気に包まれているように見える。誰もが話しかけるのを躊躇っていた。
(何かを運んでいる……、 これっていい機会なんじゃ?)
彼女は、段ボールを抱えている。恐らくだけど、生徒会の仕事だろう。俺はきっかけを作るため、勇気を振り絞って話しかけた。
「あの、瀬戸会長」
「……私は今、生徒会の仕事で忙しいの。後にしてくれる?」
やはり、断られるとは思っていた。こうなると、当然数字は見えないままだ。この時俺は、気持ちが焦っていたからか、どうにか食い下がろうとした。
「その、段ボール運ぶの手伝いますよ」
「いえ、これは生徒会の仕事だから――」
「なら、ただの人手として使ってください。お役に立ちたいんです」
「……」
瀬戸会長は俺の言葉に目を見開いた。碧い瞳が、日光に反射して美しさがより際立っている。しまった、接点を作るためとはいえ、ちょっと強引すぎただろうか。初対面で引かれてしまったら、元も子もないというのに。後悔と緊張で心臓がバクバクと強く鳴っている。
「そういうことなら、お願いするわ」
意外な返答だった。彼女の無表情さは変わっていないけれど、手伝うことを許してくれた。少しだけ心臓のうるささが止んだ気がする。
「わかりました。これってどこまで運ぶんですか?」
「生徒会室よ。あと5箱あるから、往復になるわ」
「え、それ一人でやるつもりだったんですか……?」
そんな事をしていたら、日が暮れてしまう。俺にとっての会長に対するイメージが、雪女からどこか危うい人に変わり始めた。
段ボールを運び終えた後、なし崩し的に書類作業も手伝うことになった。俺には簡単な仕分け作業を割り振ってくれた。作業中は黙々と時間がすぎると思っていたのだけれど、実際には少し違っていた。
「瀬戸会長、ここ記載漏れてませんか?」
「……本当ね」
「あら、インク切れ……?」
「良ければ俺のやつ使いますか?」
「え、えぇ……使わせてもらうわね」
なんと、瀬戸会長の手順ミスや不具合等が時々見つかり、それを教えるケースが何度かあった。正直、もっと完璧な人というイメージを持っていた。しかし今の彼女はどうだろう。意外と抜けている部分があるようだ。
どうにか作業は日没前に終わらせることが出来た。固まった肩を回していると、瀬戸会長は俺の前まで来た。表情の変化は特に見られないものの、多少なりとも信頼を向けられているかのような、そんな目線を感じた。
「礼を言うわ。何度も助けてくれて、ありがとう」
「本当ですか。それは良かったです」
まっすぐ目を見て感謝を告げてもらえた。同時に、頭の上にはぼやけた影が浮かび上がってきた。なんとなく色が青い事だけはわかる。青野は既に好感度が低いのかもしれない。
「また何かあったらお手伝いさせてください。それじゃあ俺はこれで……」
とはいえ、まだ正確な数字はわからない。一応顔は覚えてもらえたようだし、また手伝いに来られたらいいなと思っていた。俺は背を向けて生徒会室から出ようと、扉へ歩き出した。
「待って」
透き通るような声を持つ彼女だが、今の言葉は少しだけ喉に詰まりかけていたように思えた。振り返ると、夕日のせいかほんの少しだけ、頬が染まったように見える会長の姿があった。
「その、もしよかったらだけれど。……明日も手伝ってもらえたり、しないかしら?」
「え?」
この時間だけで、瀬戸会長に何度驚かされただろう。まさか、彼女から手伝いを頼まれるとは。もしかしたら、会長の数字が見られるようになる。いや、或いはそれだけじゃ済まないのでは。男として、そんな期待を持ってしまうのはごく自然の事だと思ってしまうのだった。
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