安瀬乃片敷六丁目六番地六号より

takaue.K

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第五十五話 隙間

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 我が家はそれほど躾に厳しい家ではなかった。
 しかし、唯一。

「扉や襖は必ずしっかり閉めろ」

 それだけは厳しくしつけられてきた。
 子供の頃、テレビをはやく視たくてリビングの扉がちゃんと閉まりきっておらず、親指程度の隙間を開けたままにしてしまった記憶がある。
 そのとき洗濯から気づいた母親がそれまで見たことの無いほど鬼気迫った動きで扉を閉じると、私をひたすら殴りつけた。

「あんたは! 何度も! 言ったでしょ! ちゃんと! 扉を! 閉めろと!!」

 折檻は父親が帰宅するまで続いたが、最初驚いた彼が事情を聞いた後は首を振って扉を見やった。

「…アレは?」
「気づいたのが早かったようで」
「そうか。それは良かった…本当に」

 そう言い合う父母は、こちらをちらとも見ない。その日一日、私は存在しないかのようだった。
 それまでは自分で言うのも何だが、それなりに仲のいい家族だったはず。
 事実、翌朝目が覚めた後は普段通りの家族に戻っていた。

 そして、たまたま気づいてしまったこともある。
 廊下側の外枠に、三つ、縦に黒い焦げ跡のようなものがいつの間にかついていた。
 まるで指のように見えたそれが、先日まで間違いなかったことを私は間違いなく覚えている。

 これらの奇妙な符号はずっと心に残っていたけれど、当時の鬼気迫る母の様相が忘れられず詳細を聞くタイミングを逸しつづけていた。

 そんな父母だが、先日亡くなった。
 旅行に行った先で。

 なお、死んでいたのは父母だけではなかったそうだ。
 警察曰く、どうやら泥棒と見張り、そしてそいつらと組んでいたと思しき合い鍵を持っていた扉抑え役の従業員も死んでいたそうだ。
 そして、無理を言って確かめてもらったのだが…廊下側の外枠についていたという黒い指の焦げ跡は、五つ、縦に並んで付いていたという。

 どうやら父母が怯えていたそいつは、家ではなく家系に憑いているらしい。


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ツギハ9ニチ19ジ
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