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2 最後に名前を呼んでくれた
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その後も状況は変わることはなく、公爵様、母、異父妹エミリアが領地でエミリアのお披露目会をすると言って領地へ旅立った。私は学園があるので行けなかった。私のことは考えてくれないのかしら、ね?
そして、侍女やメイドたちの噂話で聞いた話だが、アーサーお義兄様も遠征後領地に合流し4人でお披露目会をしたとのことだった。そしてエミリアを中心にした4人が描かれた素晴らしい家族の絵画が出来上がったと聞いた。
私のことを思い出したかのように王都でも5人の家族の絵画を描いた。画家が言うには、領地の4人の家族の絵の方が温かみがあって幸せそうだという話を漏らしたらしい。
お母さまに一度聞いた方がある。
"お母さまは私がいなくなっても悲しまないですよね。お母さまには愛する家族がいるのですから"
お母さまからの答えはなかった。その後も顔を合わせることはなかった。
私はアーサーお義兄様と婚約をしているので身動きが取れない。もう、いっそのこと婚約破棄してくれた方が楽だった。アーサーお義兄様は偉丈夫なので、女性に人気がある。
最近、夜会などは赤いドレスを着た美しい女性を伴って参加するという噂を聞いた。お茶会など参加すると、影で私に嫌味を言う人が多数いる。いつも赤いドレスを着た女性を同伴していることを教えてくれる人たちだ。それでも耐えた。もしかしたらアーサーお義兄様が結婚したら愛してくれるかもしれないとはじめは思って耐えていた。
状況は全く変わらないではなく酷くなった?私が近寄るのも嫌なのかもしれない。話をしようとして手を差し伸べたら、手を弾かれた。あぁ、触られるのも嫌なほど嫌われているのかと思った。
「触らないでくれ!」
「ご、ごめんなさい。あの、今度夜会のエスコートをしていただけると伺ったのですが、本当ですか?私を同伴して夜会に出席していただけるのですか?」
「ああ、その夜会はエスコートをする。ドレスやアクセサリーもこちらで用意する」
「は、はい」
そして、すぐに立ち去ってしまった。その夜会はエスコートするか。本当に私のことが嫌いなのね。心が荒んでいく私。この屋敷に居場所がない。逃げ出したい。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを愛してくれない。私は一体どうすればいいの。
ドレスが届いたが、私に似合わなそうな真っ赤なドレスだった。お義兄様の同伴する女性はいつも赤のドレスを着用している人だと聞いたので、その人に送るドレスだったのだろう。お直しが必要なドレスだったので、その人に送るはずのドレスだったようだ。
夜会ではアーサーお義兄様は黒の燕尾服。お揃いの色を着用というわけではなかった。アーサーお義兄様が赤を着るわけないか。ふふ。
私のドレスを見たお義兄様はびっくりしたような、バツの悪い顔をしたと思ったが気のせいだろう。
二度目のエスコート。一曲踊っただけで、お義兄様はどこかにいってしまった。また1人、壁の花。デビュタント以来、久しぶりの夜会だったが周りを見ると大人びた雰囲気のある人たちばかり。同年代の人達がいない。
この夜会はどんな夜会なのだろう?
この夜会自体、私にとって場違いな感じがした。皆、大人の雰囲気なのだ。ガラス越しに赤いドレスをきた自分が映った。この夜会には合うドレスだが私に全く似合わないドレス。なぜ私を連れてきたのだろう?この夜会には伯母様達がいないので、私は、隅の方の目立たないところに隠れるように過ごしていた。早く終わってほしかった。
ぼんやりと赤いドレスを見下ろした。私には似合わない派手やかで光沢のあるドレス。赤いドレスが好きな恋人さんなのだろう、良い生地だわ。こんな美しい生地、初めてだわ。それに初めてアーサーお義兄様からのプレゼントね。
ふと影が差した。見上げると黒装束の人が立っていた。何?いきなり腕を取られた。痛い!頬を殴られ床に倒され、髪の毛をつかまれた。お腹を蹴られた。
「お前たちの目論見はすでにバレているんだよ!これに懲りて、我々の組織を摘発しようとするな。お前は見せしめだ」
振り降ろされるナイフを見た。
♢♢♢
物々しい部屋。逃げ惑う人達。
「不審者を確保しろ!全員無事か?けが人の状況を報告しろ」
そこに部下が無事の確認に来た。
「隊長、大丈夫ですか?内通者がいてバレていたようです。関係者は全て確保しました。黒装束の暗殺者部も紛れていました。体調の命を狙っていたようです。何事もなくよかったです」
「そうか、内通者がいたか。組織の本拠地の第一部隊は大丈夫だったのだろうか」
「制圧したと伝令が入ってます」
「そうか、よし、このパーティーの主催者も取り押さえているな。参加者の名前を聴取し帰宅させろ」
「かしこまりました。あっ、そういえば、隊長は婚約者といらっしゃいましたよね?説明しなくて大丈夫ですか?こんなに長い時間一人にさせて、寂しい思いをしているのではないですか?捜査ばかりで、優しくしないと捨てられますよ」
「バカなことを言っていないで仕事しろ!はぁ、ティアナはどこに行った?帰ってしまったのか?」
赤いドレスが見えなかった。帰ってしまったのだろうか?ふと隅の方を見ると赤いドレスが見えた。なぜ床に?俺は人ごみをかき分け走った。こんな時に人がごった返している。カーテンをどけるとティアナが倒れていた。
「ティア、どうした?」
体を抱えると、顔を殴られた状態だった。お腹の赤いドレスに黒いしみがある。そっと触れると血が手に着いた。
「ティア、ティア、大丈夫か?治癒士を呼べ。すぐ呼んでくれ」
部下が数人やってきた。
「隊長、暗殺者の一人が、戒めだ、隊長がいつも連れている赤いドレスの女を殺したと言ってましたが、今日は副隊長は来ていないですが・・」
「すぐ治癒士をよこしてくれ。早く!ティア、もうすぐ治癒士が来る。頼む、頑張ってくれ」
私は意識が遠のきそうになっていた。話し声はなんとなくわかる。意識が遠くなり、可能な限り話せるだけ話した。
「アーサーお義兄様、心配していただけるのですね。もし私が生きていたら婚約を白紙にしてください。私はあの家を出ます。そしてもし私が死んだら、祖父母と伯父伯母にありがとうと伝えてください。あ、あとネリーだわ。ネリーに自分の道を生きてほしいと伝えてほしいです。あなたも今度は愛する人と幸せになってくださいね。このドレスを送ろうとした人とお幸せに。私はできることなら、今度生まれ変わったら、私を愛してくれる家族のもとに産まれた....い」
「ティアナ、ティア。治癒士はまだか?ティア、目を開けてくれ!頼むから、話を聞いてくれ!逝くな、話をきいてくれ!頼む。ティア」
意識が遠のくなか、最後にアーサーお義兄様が名前を呼ぶ声が聞こえた。それだけが嬉しかった。
そして闇に包まれた。
そして、侍女やメイドたちの噂話で聞いた話だが、アーサーお義兄様も遠征後領地に合流し4人でお披露目会をしたとのことだった。そしてエミリアを中心にした4人が描かれた素晴らしい家族の絵画が出来上がったと聞いた。
私のことを思い出したかのように王都でも5人の家族の絵画を描いた。画家が言うには、領地の4人の家族の絵の方が温かみがあって幸せそうだという話を漏らしたらしい。
お母さまに一度聞いた方がある。
"お母さまは私がいなくなっても悲しまないですよね。お母さまには愛する家族がいるのですから"
お母さまからの答えはなかった。その後も顔を合わせることはなかった。
私はアーサーお義兄様と婚約をしているので身動きが取れない。もう、いっそのこと婚約破棄してくれた方が楽だった。アーサーお義兄様は偉丈夫なので、女性に人気がある。
最近、夜会などは赤いドレスを着た美しい女性を伴って参加するという噂を聞いた。お茶会など参加すると、影で私に嫌味を言う人が多数いる。いつも赤いドレスを着た女性を同伴していることを教えてくれる人たちだ。それでも耐えた。もしかしたらアーサーお義兄様が結婚したら愛してくれるかもしれないとはじめは思って耐えていた。
状況は全く変わらないではなく酷くなった?私が近寄るのも嫌なのかもしれない。話をしようとして手を差し伸べたら、手を弾かれた。あぁ、触られるのも嫌なほど嫌われているのかと思った。
「触らないでくれ!」
「ご、ごめんなさい。あの、今度夜会のエスコートをしていただけると伺ったのですが、本当ですか?私を同伴して夜会に出席していただけるのですか?」
「ああ、その夜会はエスコートをする。ドレスやアクセサリーもこちらで用意する」
「は、はい」
そして、すぐに立ち去ってしまった。その夜会はエスコートするか。本当に私のことが嫌いなのね。心が荒んでいく私。この屋敷に居場所がない。逃げ出したい。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを愛してくれない。私は一体どうすればいいの。
ドレスが届いたが、私に似合わなそうな真っ赤なドレスだった。お義兄様の同伴する女性はいつも赤のドレスを着用している人だと聞いたので、その人に送るドレスだったのだろう。お直しが必要なドレスだったので、その人に送るはずのドレスだったようだ。
夜会ではアーサーお義兄様は黒の燕尾服。お揃いの色を着用というわけではなかった。アーサーお義兄様が赤を着るわけないか。ふふ。
私のドレスを見たお義兄様はびっくりしたような、バツの悪い顔をしたと思ったが気のせいだろう。
二度目のエスコート。一曲踊っただけで、お義兄様はどこかにいってしまった。また1人、壁の花。デビュタント以来、久しぶりの夜会だったが周りを見ると大人びた雰囲気のある人たちばかり。同年代の人達がいない。
この夜会はどんな夜会なのだろう?
この夜会自体、私にとって場違いな感じがした。皆、大人の雰囲気なのだ。ガラス越しに赤いドレスをきた自分が映った。この夜会には合うドレスだが私に全く似合わないドレス。なぜ私を連れてきたのだろう?この夜会には伯母様達がいないので、私は、隅の方の目立たないところに隠れるように過ごしていた。早く終わってほしかった。
ぼんやりと赤いドレスを見下ろした。私には似合わない派手やかで光沢のあるドレス。赤いドレスが好きな恋人さんなのだろう、良い生地だわ。こんな美しい生地、初めてだわ。それに初めてアーサーお義兄様からのプレゼントね。
ふと影が差した。見上げると黒装束の人が立っていた。何?いきなり腕を取られた。痛い!頬を殴られ床に倒され、髪の毛をつかまれた。お腹を蹴られた。
「お前たちの目論見はすでにバレているんだよ!これに懲りて、我々の組織を摘発しようとするな。お前は見せしめだ」
振り降ろされるナイフを見た。
♢♢♢
物々しい部屋。逃げ惑う人達。
「不審者を確保しろ!全員無事か?けが人の状況を報告しろ」
そこに部下が無事の確認に来た。
「隊長、大丈夫ですか?内通者がいてバレていたようです。関係者は全て確保しました。黒装束の暗殺者部も紛れていました。体調の命を狙っていたようです。何事もなくよかったです」
「そうか、内通者がいたか。組織の本拠地の第一部隊は大丈夫だったのだろうか」
「制圧したと伝令が入ってます」
「そうか、よし、このパーティーの主催者も取り押さえているな。参加者の名前を聴取し帰宅させろ」
「かしこまりました。あっ、そういえば、隊長は婚約者といらっしゃいましたよね?説明しなくて大丈夫ですか?こんなに長い時間一人にさせて、寂しい思いをしているのではないですか?捜査ばかりで、優しくしないと捨てられますよ」
「バカなことを言っていないで仕事しろ!はぁ、ティアナはどこに行った?帰ってしまったのか?」
赤いドレスが見えなかった。帰ってしまったのだろうか?ふと隅の方を見ると赤いドレスが見えた。なぜ床に?俺は人ごみをかき分け走った。こんな時に人がごった返している。カーテンをどけるとティアナが倒れていた。
「ティア、どうした?」
体を抱えると、顔を殴られた状態だった。お腹の赤いドレスに黒いしみがある。そっと触れると血が手に着いた。
「ティア、ティア、大丈夫か?治癒士を呼べ。すぐ呼んでくれ」
部下が数人やってきた。
「隊長、暗殺者の一人が、戒めだ、隊長がいつも連れている赤いドレスの女を殺したと言ってましたが、今日は副隊長は来ていないですが・・」
「すぐ治癒士をよこしてくれ。早く!ティア、もうすぐ治癒士が来る。頼む、頑張ってくれ」
私は意識が遠のきそうになっていた。話し声はなんとなくわかる。意識が遠くなり、可能な限り話せるだけ話した。
「アーサーお義兄様、心配していただけるのですね。もし私が生きていたら婚約を白紙にしてください。私はあの家を出ます。そしてもし私が死んだら、祖父母と伯父伯母にありがとうと伝えてください。あ、あとネリーだわ。ネリーに自分の道を生きてほしいと伝えてほしいです。あなたも今度は愛する人と幸せになってくださいね。このドレスを送ろうとした人とお幸せに。私はできることなら、今度生まれ変わったら、私を愛してくれる家族のもとに産まれた....い」
「ティアナ、ティア。治癒士はまだか?ティア、目を開けてくれ!頼むから、話を聞いてくれ!逝くな、話をきいてくれ!頼む。ティア」
意識が遠のくなか、最後にアーサーお義兄様が名前を呼ぶ声が聞こえた。それだけが嬉しかった。
そして闇に包まれた。
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