脛かじり生活(願望)を堪能人生録~ゆるく楽しく生活していけるはずだよね?

ブラウン

文字の大きさ
91 / 294

91 精霊様と収穫祭

しおりを挟む
 精霊様が来る日が急に決まった。なぜなら新酒ができてしまったからだ。出来てすぐ来なくてもいいのに、新酒ができたことを感じ取ったのか?恐ろしいぞ。酒蔵に目がついているのではないか?違う、スパイがいるのか。常に見張っている精霊が。

 俺たちは慌ただしく、大量のお菓子とご飯とお酒を用意した。新酒の出来を長老様達に評価してもらわないとかいけない。その評価結果によりランクが決められることになったのだ。精霊印のお酒。一般の人は精霊様がお墨付きなんて知らないだろうし、うまさのランク付けを長老達がしているなんて思いもしないだろう。ただ、その評価値は本当のところよくわからない長老達の基準だからだ。ただの飲んだくれなのに、何が評価だ!

 多分お祖父様達も一緒に飲むのだろう。もう宴会でいいのではないか?そうだ、新酒ができたことと、収穫祭を兼ねて大宴会でいいかもしれない。

 急ぎ領内に伝令し、それをルーアンとトリニティに頼み、馬車を用意してみんなを広場に集合させた。テーブルや椅子を作りまくった。騎士団、魔導士団、魔道具士、使えるものは誰でも使った。総出で準備をした。お疲れ様、みんな。

「ケビン、ここまでやるのか、お前は。本当に行動力があってえらいぞ。その行動力を剣術や狩りの方へ向かないか」
 首を振り、まったく向きませんと豪語した。

「みんなで楽しく飲み食いしましょう!新酒やねかせてあるお酒で飲みましょう」

 領民も精霊様達のことを何となく気づいているので無礼講だ。

 でも、最初の儀式はあった。領民達は平伏。今回は領民もみんな一緒。涙を流す人もいた。カオス!

「ようこそフォーゲリア領地にお越しくださいました。当主を務めております、ルーク ランザルド フォーゲリアと申します」

「父様、良い良い、そんな堅苦しい挨拶は良い。こやつらを紹介しよう。海精霊長老、火精霊長老、風精霊長老、森精霊長老、山精霊長老だ。他にまぁいるな。すまんな、こんな大所帯になってしもうて。海のもの、お土産を持ってきたのじゃろ、渡して料理を作って貰えばいい」

 おいおい、絶対俺が捌かなければいけないような気がしてきた。やだな、めんどくさいなぁ。

「ケビン、大丈夫だぞ、捌くのと砂抜き、毒取りはこちらがするから大丈夫じゃ」

 海精霊の長老様に心を読まれた。

「すみません、海精霊の長老様。めんどくさかったのでありがたいです」

 パコっ、両左右から叩かれてしまった。兄様達ごめんなさい。

「おほん、海精霊様、息子が失礼いたしました。どうぞ、新酒が出来上がりましたのでお召し上がりください」

「「「「おぉーー」」」」

「精霊様。我が領民も一緒に収穫の恩恵にあやがってよろしいでしょうか」

「みんなで一緒に楽しもう」

 土精霊のは長老の一言で、精霊達がみんな舞って光り輝いていた。

「「「「「うぉーーー」」」」
 
 領民達も大盛り上がり。そこからは飲めや歌えやだ。

 俺は厨房で海精霊達と魚や貝などを吟味した。

「すごいや。みんなすごい魚だよ」

 海精霊達がコクコク、シンクロして頷いている。可愛い。

 オリーブオイルを使ってアヒージョだ。にんにくをガツンと入れる。

 ブイヤベース、パエリア、シーフードグラタン、白身魚のフライ、タルタルソース付き、シーフードピザ、シーフードパスタ。大きなエビとカニは茹でて食べよう。今日でなくなるよね、この材料。

「料理長、副料理長、そしてみんな食べに行っていいよ」

「新しい料理を作るのに、飲んでいられません。ワクワクしてきます。海のものを調理なんて王宮ぐらい、王宮でも料理の種類はないですよ」

 トーマスとランドル兄弟は本当に料理が好きなんだね。うちの料理人は向上心があり、楽しく料理をしている。

「料理長、明日の朝はみんな二日酔いだろうから、ポーションと味噌汁を作ろう。胃に優しいんだよ」

 そして山盛りにしたフライやパスタ、グラタンも大皿で取り分け式にした。料理人の分も取っておこう。みんな一緒だよ。

 それから次から次へと催促の嵐。調理場も嵐。

 鰤の照り焼き、白身魚のカレー風味、塩胡椒、ガーリックバター風味、だんだん面倒になってきたのでお腹にガツンと溜まるフィッシュバーガー、照り焼きチキンバーガー、ライスバーガーなど穀物類と一緒に出す。

 もう、みんなお腹いっぱいになってくれ、頼む。外は笑い声が飛び交っている。

 しばらくすると食べる方はやっと落ち着いたのかな。

「やっと、ゆっくりできますね。はぁ、幸せでした。新しい料理ができる至福の喜び」

 料理人達がみんな頷いていた。

「みんなで食べようよ。外に行く?それともここで食べる?」

「外は多分なくなっていますよ」

「みんなの分を取っておいたから大丈夫だよ。ほら」

 テーブルと料理を出して、みんなで食べあった。みんなうまいうまいと食べている。

「ケビン様、ありがとうございます。お酒はちびちび夜飲みます。あとは休暇の時に飲みたいと思います」

「そうだよ、みんなきちんと休暇取ってね。週休2日制なんだから、暇だからと厨房に来ないように!」

「いや、あの心配で。単身寮の食堂ができたのでついつい様子を見に行ってしまうのです。しかしケビン様、ひどいです。新たにそこでオムライス?と言うものを作ったと聞いています。我々も食べたいです。どうやって作るのですか?」

 料理人の目が怖いよ。あれはメメル様とクラウディア姉様と母様が朝昼兼用がいいと言ったので、スープ、サラダ、オムライスそしてデザートを作って出したんだ。すでにバレていた。

「みんなまだ食べられる?みんなで分け合えばそんなに量は多くないかな」

 そしてケチャップライスはオニオンと鶏肉を入れ、ふわふわたまごと薄いたまごの食べ比べをした。

「美味しいです。子供達に人気が出そうですね」

「そうだね、お子様ランチなんていいよね」

「お子様ランチとは何ですか!」

 口が滑った。子供が好きなものをワンプレートにして出す料理。

「今度、ジュリアス坊っちゃまとケビン様に出します」

「少し量を多くするとレディースセットで女性にもいいかもね」

 そこにルガリオ達がやってきて、ずるいずるいと料理の催促が始まった。まだ食べるの?ごめん、みんな。いつも料理人達はルガリオ達におやつやご飯をねだられているから、慣れてしまっているんだよ。

「じっちゃん達もこれが欲しいって、何でわかるんだよ!」

 ルガリオ、絶対スパイがいるよ。君たちにもわからない精霊の隠密がいるんだよ。今度よく目を凝らして、気配を察知しよう。

 結局、料理人達は料理をしましたとさ。いつもありがとう。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

英雄の孫は今日も最強

まーびん
ファンタジー
前世では社会人だったが、死んで異世界に転生し、貧乏貴族ターセル男爵家の3男となった主人公ロイ。 前世のギスギスした家庭と違い、家族の皆から愛され、ロイはすくすくと3歳まで育った。 中でも、毎日一緒に遊んでくれるじいじは爺馬鹿全開で、ロイもそんなじいじが大好き。 元将軍で「英雄」と呼ばれる最強のじいじの血を引いたロイは、じいじ達に見守られながら、今日も楽しく最強な日々を過ごす。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

ライバル悪役令嬢に転生したハズがどうしてこうなった!?

だましだまし
ファンタジー
長編サイズだけど文字数的には短編の範囲です。 七歳の誕生日、ロウソクをふうっと吹き消した瞬間私の中に走馬灯が流れた。 え?何これ?私?! どうやら私、ゲームの中に転生しちゃったっぽい!? しかも悪役令嬢として出て来た伯爵令嬢じゃないの? しかし流石伯爵家!使用人にかしずかれ美味しいご馳走に可愛いケーキ…ああ!最高! ヒロインが出てくるまでまだ時間もあるし令嬢生活を満喫しよう…って毎日過ごしてたら鏡に写るこの巨体はなに!? 悪役とはいえ美少女スチルどこ行った!?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

処理中です...