ノエル

ひなた

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砂漠の国

16話 初依頼

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カウンターの前に並び、順番を待つ。
前の冒険者が報酬袋を受け取って去ると、ようやく僕たちの番になった。

「ようこそ、ダリアン宿場町ギルドへ。」
受付嬢は落ち着いた笑顔を見せたが、その目の奥には疲れがにじんでいる。
「ご依頼ですか、それとも登録?」

ガルドが一歩前に出て、木札を差し出す。
「依頼を受けに来た。国境近くまで行く護衛仕事はあるか?」

受付嬢は頷き、後ろの棚から依頼書を取り出した。
「ちょうどよいものがあります。
 商隊が明後日、ハルミードへ向けて出発します。
 最近は国境沿いで盗賊や魔物の襲撃が増えており、護衛の人数を増やしたいとのことです。」

アリアが眉をひそめる。
「そんなに頻繁に襲撃が?」

受付嬢は声を落とした。
「ええ……ザハル王国とヴァルガン帝国がここ数年戦争を続けているせいで、
 資源不足と貧困がひどく、国境付近の治安は最悪です。
 正直、最近はこの町でも国境方面への依頼が急増していて……。」

僕は依頼書を手に取り、赤いインクで書かれた報酬額を見た。
決して少なくない金額に、喉がひとりでに鳴る。

「どうする?」
アリアが小声で僕を見る。
ガルドは腕を組んでにやりと笑った。
「ちょうどいいじゃねぇか。いい稼ぎになるし、腕試しにもなる。」

僕は迷わず頷いた。
「受けます。この依頼、引き受けたいです。」

受付嬢は満足そうに笑い、依頼書に判を押した。
「では、明日の朝、広場に集合してください。
 商隊の隊長に挨拶をして、護衛として同行していただきます。」

こうして僕たちは、初めての正式な護衛任務を引き受けた。
その先に待つものが何かも知らず、胸の奥が高鳴っていた。

翌朝、広場はすでに活気で満ちていた。
荷馬車が数台並び、商人や荷運びの男たちが忙しそうに荷を積み込んでいる。
樽、麻袋、箱……それらを覆う帆布が風にはためいていた。

「お、あれが今回の護衛か。」
声をかけてきたのは、日焼けした顔の男だった。
胸には隊長の証である革の腕章が巻かれている。

「俺はベルク。この商隊の隊長だ。よろしく頼む。」
がっしりとした手を差し出され、僕は思わず握り返した。
力強い握手に、少し緊張がほぐれる。

「こっちは護衛仲間だ。」
ベルクが後ろを指さすと、若い槍使いの男と、フードをかぶった弓使いの女が頷いた。
「ケインだ。よろしく頼む。」
「私はリア。護衛は何度もやってるわ。無茶はしないでね。」
ケインは人懐っこい笑みを見せ、リアはそっけないがどこか頼もしい。

「馬車は全部で三台。道中は交代で見張りを頼む。
 最近は国境近くで盗賊や魔物が多い、気を引き締めていけよ。」
ベルクがそう言うと、ガルドがにやりと笑った。
「心配いらねぇ。こっちは剣も斧もあるぜ。」

僕はアリアと目を合わせ、頷いた。
いよいよ、本格的な護衛任務が始まる。

出発の前夜、三人で宿屋の酒場に集まった。
広間は商人や冒険者で賑わい、笑い声とグラスの音が飛び交っている。
壁際では旅の吟遊詩人が弦をつまびき、砂漠の歌を歌っていた。

「国境近くは最近きな臭いって噂だぜ。」
隣の席の男が、ビールのジョッキを傾けながら話している。
「ザハルとヴァルガンの連中がまた小競り合いしてるらしい。
 兵士が足りなくて、盗賊どもが好き放題してるんだと。」

「……やっぱり危険なんですね。」
僕が思わず呟くと、ガルドが肩をすくめた。
「危険だからこそ、報酬も悪くねえってわけだ。」

アリアはグラスを置き、少し真剣な顔をした。
「気を抜かないようにしましょう。明日からは私たちが商隊の命綱になるのよ。」

僕は頷き、胸の奥が熱くなるのを感じた。
明日から始まる旅は、きっとこれまで以上に厳しい。
でも、見たことのない景色が、その先に広がっている気がした。
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