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砂漠の国
28話 出陣の合図
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数日が過ぎた。
港の火はようやく鎮まり、街の通りにも少しずつ人の声が戻り始めていた。
けれど王都全体に漂う空気は重い。
兵の列が街を行き交い、鐘の音が昼夜問わず響いていた。
「……また動きがあるみたい。」
アリアが報告板を見上げた。
「王城直属の防衛隊が再編されるって。義勇兵も一部、正式に編入されるらしい。」
「つまり、俺たちも本格的に戦うってことか。」
ガルドが腕を組んで息を吐く。
掲示板の紙には、ぎっしりと名前が書かれていた。
その中に、確かに──“ノエル、アリア、ガルド、ヴァルン”の名前が並んでいた。
「……僕たちも、か。」
「だろうな。港で生き残った連中の中じゃ、十分戦える方だ。」
ガルドが苦笑する。
「運が良かったんじゃなく、次に繋がるってことだ。腹くくれ、坊主。」
「もう“坊主”じゃない。」
そう返すと、ガルドが一瞬驚いたあと、にやっと笑った。
「言うようになったじゃねぇか。」
城の一角にある軍議の間。
義勇兵代表としてノエルたちは招集された。
円卓の上には王都の地図が広げられ、
防衛線と補給路、避難経路が赤い線で引かれていた。
指揮官の女性──ナディア提督が説明を続ける。
「帝国の船団は南東海上で再編中。
前回の奇襲は陽動の可能性が高い。
本隊は──陸路から来る。」
「陸路……だと?」
ガルドが眉をひそめる。
「砂漠を越えて、ヴァルガン帝国軍が進軍しているという報告がある。
王都東門を中心に防衛線を築く。君たちはその一部に加わってもらう。」
ノエルは地図を見つめた。
東門──あの焦げ跡の残る港から、そう遠くない場所だ。
「……また戦いになるんだね。」
「守るためならな。」
ガルドが答える。
アリアは真っ直ぐナディアを見る。
「私たちにできる限りのことをします。」
提督はわずかに微笑み、
「頼もしいな。君たちのような者がいてくれて、王都はまだ立っていられる。」
そう言って敬礼した。
王都の空が夕焼けに染まる。
広場では再編された義勇兵たちが装備を整え、
それぞれの班に分かれていた。
ノエルたちの隊には十数人の新しい顔が加わった。
その中には、傷だらけの鎧を着た青年もいれば、
手に祈りの印を刻んだ修道士もいた。
「……俺たち、本当に“軍”になっちまったな。」
ガルドが呟く。
ヴァルンは静かに頷く。
「この国が立ち続ける限り、戦う意味はある。」
その言葉の中に、ほんの一瞬だけ“何かを確かめるような響き”があった。
ノエルはそれに気づいたが、口にはしなかった。
⸻
夜、出陣前の最後の休息。
アリアが火を見つめながら、静かに言った。
「ねぇノエル……怖い?」
「……うん。怖いよ。でも、それでも行く。」
「どうして?」
ノエルは空を見上げた。
「だって、この空を……この街を、失いたくないから。」
アリアの瞳が優しく揺れた。
「……そうね。私もよ。」
その時、遠くで鐘が鳴った。
それは“出陣の合図”だった。
港の火はようやく鎮まり、街の通りにも少しずつ人の声が戻り始めていた。
けれど王都全体に漂う空気は重い。
兵の列が街を行き交い、鐘の音が昼夜問わず響いていた。
「……また動きがあるみたい。」
アリアが報告板を見上げた。
「王城直属の防衛隊が再編されるって。義勇兵も一部、正式に編入されるらしい。」
「つまり、俺たちも本格的に戦うってことか。」
ガルドが腕を組んで息を吐く。
掲示板の紙には、ぎっしりと名前が書かれていた。
その中に、確かに──“ノエル、アリア、ガルド、ヴァルン”の名前が並んでいた。
「……僕たちも、か。」
「だろうな。港で生き残った連中の中じゃ、十分戦える方だ。」
ガルドが苦笑する。
「運が良かったんじゃなく、次に繋がるってことだ。腹くくれ、坊主。」
「もう“坊主”じゃない。」
そう返すと、ガルドが一瞬驚いたあと、にやっと笑った。
「言うようになったじゃねぇか。」
城の一角にある軍議の間。
義勇兵代表としてノエルたちは招集された。
円卓の上には王都の地図が広げられ、
防衛線と補給路、避難経路が赤い線で引かれていた。
指揮官の女性──ナディア提督が説明を続ける。
「帝国の船団は南東海上で再編中。
前回の奇襲は陽動の可能性が高い。
本隊は──陸路から来る。」
「陸路……だと?」
ガルドが眉をひそめる。
「砂漠を越えて、ヴァルガン帝国軍が進軍しているという報告がある。
王都東門を中心に防衛線を築く。君たちはその一部に加わってもらう。」
ノエルは地図を見つめた。
東門──あの焦げ跡の残る港から、そう遠くない場所だ。
「……また戦いになるんだね。」
「守るためならな。」
ガルドが答える。
アリアは真っ直ぐナディアを見る。
「私たちにできる限りのことをします。」
提督はわずかに微笑み、
「頼もしいな。君たちのような者がいてくれて、王都はまだ立っていられる。」
そう言って敬礼した。
王都の空が夕焼けに染まる。
広場では再編された義勇兵たちが装備を整え、
それぞれの班に分かれていた。
ノエルたちの隊には十数人の新しい顔が加わった。
その中には、傷だらけの鎧を着た青年もいれば、
手に祈りの印を刻んだ修道士もいた。
「……俺たち、本当に“軍”になっちまったな。」
ガルドが呟く。
ヴァルンは静かに頷く。
「この国が立ち続ける限り、戦う意味はある。」
その言葉の中に、ほんの一瞬だけ“何かを確かめるような響き”があった。
ノエルはそれに気づいたが、口にはしなかった。
⸻
夜、出陣前の最後の休息。
アリアが火を見つめながら、静かに言った。
「ねぇノエル……怖い?」
「……うん。怖いよ。でも、それでも行く。」
「どうして?」
ノエルは空を見上げた。
「だって、この空を……この街を、失いたくないから。」
アリアの瞳が優しく揺れた。
「……そうね。私もよ。」
その時、遠くで鐘が鳴った。
それは“出陣の合図”だった。
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