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シルヴェイン王国
50話 眠りの底で
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夜の森を、セイヴの足音だけが切り裂いていく。
ノエルたちはその背に続きながら、
闇の奥に感じた“冷たい気配”から目をそらせなかった。
風の止まった森は、音そのものが眠っているようで、
一歩進むごとに世界が沈んでいくみたいだった。
「……この辺りだ。」
セイヴが足を止める。
その先に広がるのは、
昼間よりも深い霧に包まれた場所だった。
光がまったく差し込まず、地面さえ黒く沈んで見える。
「なにか、いる。」
アリアが息を飲んだ。
ノエルも同じものを感じていた。
誰かの──
微かな呼吸。
近づくほどに、胸の奥が締めつけられるような感覚が強くなる。
セイヴが、低く呟いた。
「……この気配。まさか。」
彼の表情がわずかに揺れた。
普段は冷静な彼が、顔を曇らせる。
「セイヴ?」
「静かに。」
その一言で、ノエルたちは口をつぐむ。
霧の奥で、影が動いた。
人影ほどの大きさ。
ゆっくり、こちらに向かって歩いてくる。
足音はしない。
ただ影だけが、ふわりと揺れるように近づいてくる。
やがて──
それは霧の切れ間に姿を現した。
長い髪がばさりと流れ、
白い顔がうつむいている。
エルフの少女だった。
年はノエルと同じくらいに見える。
けれど、その瞳は焦点が合っておらず、
夢の中をさまよう人間のように空を掴んでいた。
小声で、なにかを呟いている。
「……あ……れ……どこ……」
「おい、大丈夫か!?」
ガルドが駆け寄ろうとした瞬間、
少女の身体がぐらりと傾き、倒れ込んだ。
「危ない!」
ノエルが反射的に駆け寄り、抱きとめる。
その瞬間。
冷たい空気がぱっと弾け、
少女の胸元から白い霧が溢れた。
「っ……!」
ノエルの手が一瞬凍える。
少女の身体は驚くほど軽く、体温がほとんどなかった。
「……眠りに、呑まれかけている。」
セイヴが近づき、少女の顔を覗き込む。
彼女の頬に触れた指が微かに震えた。
「知り合い……?」
アリアの問いに、セイヴはすぐ答えなかった。
言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開く。
「……エリュシアの者だ。里の……子だ。」
その声には、
珍しく感情がにじんでいた。
ノエルの胸の奥で、短剣がかすかに震える。
「……この子のせいじゃない。森が、この子を離さなかっただけだ。」
少女は、薄く開いた唇で、
かすれた声を洩らした。
「……さむい……こわ……い……」
その声に、ノエルは息を詰める。
「……助けられる?」
その問いに、セイヴはわずかに目を伏せた。
「……分からない。だが、今ここに置いていけば……目を覚まさない。」
「じゃあ連れて行こう。少しでも安全な場所に。」
ノエルが少女を抱きかかえる。
その腕を、少女の指が弱々しく掴んだ。
冷たい。
まるで、冬の始まりに触れたみたいだった。
セイヴは深く息を吸い込み、静かに頷いた。
「……里に戻る。この子の状態を見れば、眠りの原因にも近づけるかもしれない。」
森の奥で、またひとつ風が揺れた。
その風はまるで少女が「目覚めたい」と願っているように──
弱く、切なく揺れていた。
ノエルたちはその背に続きながら、
闇の奥に感じた“冷たい気配”から目をそらせなかった。
風の止まった森は、音そのものが眠っているようで、
一歩進むごとに世界が沈んでいくみたいだった。
「……この辺りだ。」
セイヴが足を止める。
その先に広がるのは、
昼間よりも深い霧に包まれた場所だった。
光がまったく差し込まず、地面さえ黒く沈んで見える。
「なにか、いる。」
アリアが息を飲んだ。
ノエルも同じものを感じていた。
誰かの──
微かな呼吸。
近づくほどに、胸の奥が締めつけられるような感覚が強くなる。
セイヴが、低く呟いた。
「……この気配。まさか。」
彼の表情がわずかに揺れた。
普段は冷静な彼が、顔を曇らせる。
「セイヴ?」
「静かに。」
その一言で、ノエルたちは口をつぐむ。
霧の奥で、影が動いた。
人影ほどの大きさ。
ゆっくり、こちらに向かって歩いてくる。
足音はしない。
ただ影だけが、ふわりと揺れるように近づいてくる。
やがて──
それは霧の切れ間に姿を現した。
長い髪がばさりと流れ、
白い顔がうつむいている。
エルフの少女だった。
年はノエルと同じくらいに見える。
けれど、その瞳は焦点が合っておらず、
夢の中をさまよう人間のように空を掴んでいた。
小声で、なにかを呟いている。
「……あ……れ……どこ……」
「おい、大丈夫か!?」
ガルドが駆け寄ろうとした瞬間、
少女の身体がぐらりと傾き、倒れ込んだ。
「危ない!」
ノエルが反射的に駆け寄り、抱きとめる。
その瞬間。
冷たい空気がぱっと弾け、
少女の胸元から白い霧が溢れた。
「っ……!」
ノエルの手が一瞬凍える。
少女の身体は驚くほど軽く、体温がほとんどなかった。
「……眠りに、呑まれかけている。」
セイヴが近づき、少女の顔を覗き込む。
彼女の頬に触れた指が微かに震えた。
「知り合い……?」
アリアの問いに、セイヴはすぐ答えなかった。
言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開く。
「……エリュシアの者だ。里の……子だ。」
その声には、
珍しく感情がにじんでいた。
ノエルの胸の奥で、短剣がかすかに震える。
「……この子のせいじゃない。森が、この子を離さなかっただけだ。」
少女は、薄く開いた唇で、
かすれた声を洩らした。
「……さむい……こわ……い……」
その声に、ノエルは息を詰める。
「……助けられる?」
その問いに、セイヴはわずかに目を伏せた。
「……分からない。だが、今ここに置いていけば……目を覚まさない。」
「じゃあ連れて行こう。少しでも安全な場所に。」
ノエルが少女を抱きかかえる。
その腕を、少女の指が弱々しく掴んだ。
冷たい。
まるで、冬の始まりに触れたみたいだった。
セイヴは深く息を吸い込み、静かに頷いた。
「……里に戻る。この子の状態を見れば、眠りの原因にも近づけるかもしれない。」
森の奥で、またひとつ風が揺れた。
その風はまるで少女が「目覚めたい」と願っているように──
弱く、切なく揺れていた。
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