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シルヴェイン王国
49話 揺らぎ
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焚き火の明かりが落ち着き、
赤い火の粉がふわりと夜空へ昇っていった。
森は深く静まり葉のこすれる音すら、ひとつの鼓動のように響いた。
ノエルは火のそばで目を閉じていたが、
ふいに風が頬をかすめた気がして、顔を上げた。
ほんの一瞬だが、確かに空気が動いた。
森の息が、戻ってきたような……そんな気配。
「……何か、聞こえた?」
アリアも焚き火越しに周囲を見回している。
火に照らされた横顔は少し緊張していた。
「音か?」
ガルドが腰の剣に手を置いた。
森の奥で、葉の束が擦れるような微かな音。
風ではない。
誰かが歩いたような、ほんの短い揺らぎ。
セイヴが立ち上がった。
「動くな。」
低い声だったが、
その一言に緊張が走る。
彼は周囲へ視線を走らせるように目を細め、
森の闇に耳を澄ませた。
「……今のは、里の者じゃない。」
「え……? でも、里の人は眠ってるんじゃ……」
セイヴの表情は、わずかに強張っていた。
感情を隠すようにしているが、
その肩はかすかにこわばっている。
「眠っている者たちは、夢の中だ。
だが森には――“何か”がいる。」
ノエルは息を呑む。
「何か?」
「……分からない。
ただ、ここ数日、奥から変な気配が続いている。」
そう言うと、セイヴは焚き火の端にある枝を拾い、
短く折った。
ぱき、と乾いた音が闇に吸い込まれる。
「火を消す。……明るいと目印になる。」
「でも、真っ暗じゃ……」
「大丈夫だ。俺がいる。」
セイヴは手をかざし、火を押さえるようにしてしゃがんだ。
次の瞬間、炎が静かに小さくなり、
やがて消える。
熱だけが残り、あたりはゆっくりと闇に沈んでいった。
ノエルは、闇が肌に寄り添ってくるような感覚に身を固くした。
だが、その奥で――
微かな風が、森をなでる。
ふっと、さざ波のような音が走り、
遠くの葉が揺れた。
それを最初に感じたのはノエルだった。
「……また、風が動いた。」
アリアが驚いたように振り向く。
「ノエル……どこで?」
「森の奥のほう。」
セイヴの視線が鋭くノエルへ向く。
「本当に聞こえたのか。」
「うん……なんか、息を吸うみたいな……。」
「息……?」
セイヴはほんの一瞬だけ、表情を失った。
驚きか、警戒か、それを隠すように目を伏せる。
「……行くぞ。確かめなければならない。」
「今から?」
「森が動いているなら、夜の方が分かりやすい。」
セイヴは闇の中に踏み入ろうとする。
ノエルたちも立ち上がり、その背に続いた。
夜の森は凍えるほど静かで、
木々の影がゆっくりと揺れている。
その時――
さらに奥から、また風が吹いた。
冷たく、長く、
眠る何かを呼ぶように。
ノエルの胸の奥で、短剣が微かに震えた。
それはまるで、森のどこかで――
誰かが目を覚まそうとしているようだった。
赤い火の粉がふわりと夜空へ昇っていった。
森は深く静まり葉のこすれる音すら、ひとつの鼓動のように響いた。
ノエルは火のそばで目を閉じていたが、
ふいに風が頬をかすめた気がして、顔を上げた。
ほんの一瞬だが、確かに空気が動いた。
森の息が、戻ってきたような……そんな気配。
「……何か、聞こえた?」
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「音か?」
ガルドが腰の剣に手を置いた。
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風ではない。
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低い声だったが、
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「……今のは、里の者じゃない。」
「え……? でも、里の人は眠ってるんじゃ……」
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感情を隠すようにしているが、
その肩はかすかにこわばっている。
「眠っている者たちは、夢の中だ。
だが森には――“何か”がいる。」
ノエルは息を呑む。
「何か?」
「……分からない。
ただ、ここ数日、奥から変な気配が続いている。」
そう言うと、セイヴは焚き火の端にある枝を拾い、
短く折った。
ぱき、と乾いた音が闇に吸い込まれる。
「火を消す。……明るいと目印になる。」
「でも、真っ暗じゃ……」
「大丈夫だ。俺がいる。」
セイヴは手をかざし、火を押さえるようにしてしゃがんだ。
次の瞬間、炎が静かに小さくなり、
やがて消える。
熱だけが残り、あたりはゆっくりと闇に沈んでいった。
ノエルは、闇が肌に寄り添ってくるような感覚に身を固くした。
だが、その奥で――
微かな風が、森をなでる。
ふっと、さざ波のような音が走り、
遠くの葉が揺れた。
それを最初に感じたのはノエルだった。
「……また、風が動いた。」
アリアが驚いたように振り向く。
「ノエル……どこで?」
「森の奥のほう。」
セイヴの視線が鋭くノエルへ向く。
「本当に聞こえたのか。」
「うん……なんか、息を吸うみたいな……。」
「息……?」
セイヴはほんの一瞬だけ、表情を失った。
驚きか、警戒か、それを隠すように目を伏せる。
「……行くぞ。確かめなければならない。」
「今から?」
「森が動いているなら、夜の方が分かりやすい。」
セイヴは闇の中に踏み入ろうとする。
ノエルたちも立ち上がり、その背に続いた。
夜の森は凍えるほど静かで、
木々の影がゆっくりと揺れている。
その時――
さらに奥から、また風が吹いた。
冷たく、長く、
眠る何かを呼ぶように。
ノエルの胸の奥で、短剣が微かに震えた。
それはまるで、森のどこかで――
誰かが目を覚まそうとしているようだった。
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