燕殺しの降る夜に

序章

少年に促されて離れにやってきた刑事は開け放たれた扉から中へ入る際に一応「すみませーん」と声を掛けてみた。

「おじさーん」

少年も声を掛けてみるが返事はない。

「本当に悲鳴が聴こえたんだね？」

刑事は念を押す様に少年に訊ねた。

少年はムッとした様に頷くと少し大胆に部屋の中へと率先して進んで行った。

応接間にも見当たらないと更に奥のアトリエと呼ばれている部屋の扉を開けた。

そこは油絵の具特有の芸術的でどこか排他的な匂いで充満していて中央のイーゼルには若い女性がポーズを取っている絵が飾られていた。

と、そこに彼は居た。

仰向けになって頭から血が広がっている様だった。

少年の後から部屋に足を踏み入れた刑事はすぐに少年の目を塞ぐ様に抱きしめたが、どれくらい効果があったかは定かではない。

少年は

「あの人だ」

と言った。

「え？」

刑事の問いかけに少年は黙って携帯を見せた。

刑事は訳がわからずにいると少年は今朝撮ったばかりの動画を見せた。

動画の最後の方に扉を開けて出てきたセーラー服の、少女がギョッとしたら顔でコチラを見ていた。