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めんどくさがりのお医者さん
しおりを挟むコンコン
「先生!ちょいと先生!」
コンコンコンコン
「起きてください先生!」
上から女が先生を呼ぶ声が聞こえた。
しばらくしていかにも不機嫌そうな声が聞こえた。
「……あぁん?なんだ?こんな夜中にわしを起こすなんて、なにがあったんだ?火事か?火事でもないかぎりわしを起こすような事はないよな?……いや、出来れば火事でも起こさないで欲しいがなぁ……ふぁああ」
「先生!それじゃ死んじゃいますよ!!それに火事じゃあありません!」
「ふぅうん……火事じゃなきゃなんだ?恐るべきアンゴルモアの大王でも空から降ってきたのか?」
「いえ?火事でも、アンゴルモアの大王でもありませんよ先生!」
「……じゃあなんだ...…まさかとおもうが」
「そのまさかです先生!急患です!」
「なんだと!医者の所にこんな真夜中に急患がくるなんて!...…普通じゃないか!」
「そうです!普通です先生!」
「わしは普通が大嫌いなのを知ってるだろ?知らないとは言わせないぞ!」
「はい、知ってます、そりゃあ長い付き合いですから嫌ってほど知ってますけど、そんな事より大変な感じなんですよ先生!」
「やだ!お前が診ろ!」
「無茶言わないでください先生!そのへんの風邪なら見ますけどそんな簡単じゃなさそうなんですよ!それに……子供なんです!」
「なに?子供?」
「はい」
「患者が?」
「そう患者が!」
患者じゃなかったら誰が?
と使用人の女は思った。
まさか子供が大人をおぶって来るわけもなかろうにと思ったが、そんな事を宣《のたま》っている暇はなかった。
「それを早くいいなさいよ!」
医者はバタバタと支度《したく》すると眠たい目を擦りながら降りてきた。
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