7 / 29
おばちゃんの証言
しおりを挟む
池照がコンビニを出ると、岩井が誰かと話し込んでいた。
相手はどこかの主婦の様であったが…池照はその顔になぜか見覚えがあった。
「あ、あの、岩井さん?そちらの方は?」
「おう、ようやく来たか。そちらもどちらもあらへんがな、さっき見たばっかりやろ?」
「あ、ああ!」
池照はさっきの防犯カメラに写っていたブルーベリーみたいな色の服を着た、いかにもおばちゃんという体型と髪型の主婦を思い出した。
「なに?なんですの?人の顔指でさしてからに、いけすかんわぁー、イケメンじゃなかつたらひっぱたいてる所やわ。」
「す、すみません。ついびっくりしてしまって…こちらのコンビニを利用されてた方ですね?」
「まぁ、そうですけど、なにかありました?そちらの刑事さんにも言いましたけど、私ビールを買いに来ただけですよ。」
「はい、でもトイレを使われましたよね?」
「そりゃ使うわよ。使っちゃダメなの?」
「いえ、全然良いんですけど、そのときの状況を教えていただけないかと…。」
「状況って言ってもねぇ、普通に入っただけだけど…。」
「そこを詳しく。」
「ええ?なにを詳しく話せばいいのよ?」
そこで岩井が口を挟んだ。
「たとえば、どっちのトイレにはいったか?とかです、あとその時誰かいなかったか?」
それを受けて池照も言った。
「そうそう、それと、へんな音は聞こえなかったか?とかもです。」
「そんなに矢継ぎ早に質問されてもねぇ…。」
「ゆっくりでいいので…。」
そういうと池照はニコッと笑った。
池照は自分が女性に好かれやすい事を知っている。
しかし普段は別段気にはしないのだが捜査を円滑に進めるために必要とあらば惜しみ無く使おうと決めているのだった。
女性の名前は山村もみ、と名乗った。名前を聞くたびに岩井刑事が「惜しい!」と謎の雄叫びをあげるのだが池照は無視した。
何でも山村さんは事件や事故に頻繁に遭遇するらしくて近所では評判らしい。
「ほんとですか?」
「ほんとよなのよこれが!この前もほら!タクシー強盗あったでしょ?あの時偶然通りかかってねぇ、逃げる犯人の足を引っ掻けて転ばせたのよ!傑作だったわー!」
「なるほどぉ…それはお手柄でしたね、それはそうと今回の事件の事を聞きたいんですが…。」
「あ、そうそうそうだったわね。」
大方、近所の評判というのも自分から触れ回ってるのじゃないかと池照は思った。
「では、少し思い出してもらってよろしいですか?こちらのコンビニのトイレに山村さんは二回入ってますよね?」
「え?二回?借りたのは一回じゃなかったかしら?まさか私を自宅のトイレの水がもったいないから近所のコンビニ利用してる人みたいに言うわけ?」
「いえ、そうは言ってません。そうじゃなくて、短い時間で出入りしてる様子がカメラに写ってるんですよ。」
「え?カメラに撮ってるの?いやらしい。」
「いやいや、カメラといってもドアの外についている防犯カメラですのでご安心を…。」
ふぅ…。
調子が狂う…。思わずため息をついてしまった。
「あら疲れたの?うちによってく?すぐ近くよ?」
「いえ、結構です、まだやることがありますので…それとも、あまり思い出せない様でしたらまた後日でも…。」
「あ、思い出したわ。」
イケメンの話し相手を逃がさない為なのかすぐになにかを思い出したらしい。
「そういえば、一回目に入ったときはトイレが塞がっててすぐに出てきたのよ。」
「なるほど…それで外で。」
「そうなの誰か出てきたら入ろうと思ってね。そしたら茶髪の女子高生がでて来たんでマジマンジだったわけ。」
「え?どういう意味ですか?マジマンジって?」
「よく知らないけど、よっしゃー!みたいな意味じゃないの?」
「は、はぁ。」
たぶん間違って使っていると思うが触れないで置こう。
「それで、その後トイレに入ったときは何か変わったことありました?」
「え?そうねぇ、うまい具合に女子専用の方が空いたんで用を足してたら、いきなりアラームが鳴り出したくらいかな?」
それだ!アラームの鳴り出した時間がだいたいわかった。
「その後どうしました?」
「どうしたって、まず紙で拭いてから…あ、私ウォシュレット苦手なのよね…。だから紙で直に…。」
「いや、そこははしょって大丈夫です。トイレがすんでから洗面台のあるスペースにでた時に誰かみませんでした?」
「そうねぇ、そういえば丸刈りの坊主頭の男の子が居たわねなんかバツわるそうだったけど…。」
「なるほど、その坊主頭の男の子は見覚えなかったですか?」
「ないわね、あったら覚えてるわよ。だって丸坊主でなかったらジャニーズに居そうな顔だもの…あ、カワイイ系のほうね。」
なに系でも良かったが、だいたい聞くべき事は聞いたかなと池照は思った。
「ありがとうございました。またなにかありましたら御協力をお願いするかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。」
そういって池照は頭を下げた。
「もちろんよ、市民の義務ですものね!なんなら家で話してもいいわよ…あ、主人が居ないときね!」
そういうと山村もみさんはウィンクしてみせた。
苦笑いをする池照を肘で小突いて岩井が冷やかして言った。
「ほんま、おおきになぁ、ここだけの話やけど、この男はこう見えてストライクゾーンひろいさかい、間違いなく期待に応えるでぇ!」
「余計な事言わなくて良いですよ岩井さん。」
そう言った池照の顔は少しひきつっていた。
相手はどこかの主婦の様であったが…池照はその顔になぜか見覚えがあった。
「あ、あの、岩井さん?そちらの方は?」
「おう、ようやく来たか。そちらもどちらもあらへんがな、さっき見たばっかりやろ?」
「あ、ああ!」
池照はさっきの防犯カメラに写っていたブルーベリーみたいな色の服を着た、いかにもおばちゃんという体型と髪型の主婦を思い出した。
「なに?なんですの?人の顔指でさしてからに、いけすかんわぁー、イケメンじゃなかつたらひっぱたいてる所やわ。」
「す、すみません。ついびっくりしてしまって…こちらのコンビニを利用されてた方ですね?」
「まぁ、そうですけど、なにかありました?そちらの刑事さんにも言いましたけど、私ビールを買いに来ただけですよ。」
「はい、でもトイレを使われましたよね?」
「そりゃ使うわよ。使っちゃダメなの?」
「いえ、全然良いんですけど、そのときの状況を教えていただけないかと…。」
「状況って言ってもねぇ、普通に入っただけだけど…。」
「そこを詳しく。」
「ええ?なにを詳しく話せばいいのよ?」
そこで岩井が口を挟んだ。
「たとえば、どっちのトイレにはいったか?とかです、あとその時誰かいなかったか?」
それを受けて池照も言った。
「そうそう、それと、へんな音は聞こえなかったか?とかもです。」
「そんなに矢継ぎ早に質問されてもねぇ…。」
「ゆっくりでいいので…。」
そういうと池照はニコッと笑った。
池照は自分が女性に好かれやすい事を知っている。
しかし普段は別段気にはしないのだが捜査を円滑に進めるために必要とあらば惜しみ無く使おうと決めているのだった。
女性の名前は山村もみ、と名乗った。名前を聞くたびに岩井刑事が「惜しい!」と謎の雄叫びをあげるのだが池照は無視した。
何でも山村さんは事件や事故に頻繁に遭遇するらしくて近所では評判らしい。
「ほんとですか?」
「ほんとよなのよこれが!この前もほら!タクシー強盗あったでしょ?あの時偶然通りかかってねぇ、逃げる犯人の足を引っ掻けて転ばせたのよ!傑作だったわー!」
「なるほどぉ…それはお手柄でしたね、それはそうと今回の事件の事を聞きたいんですが…。」
「あ、そうそうそうだったわね。」
大方、近所の評判というのも自分から触れ回ってるのじゃないかと池照は思った。
「では、少し思い出してもらってよろしいですか?こちらのコンビニのトイレに山村さんは二回入ってますよね?」
「え?二回?借りたのは一回じゃなかったかしら?まさか私を自宅のトイレの水がもったいないから近所のコンビニ利用してる人みたいに言うわけ?」
「いえ、そうは言ってません。そうじゃなくて、短い時間で出入りしてる様子がカメラに写ってるんですよ。」
「え?カメラに撮ってるの?いやらしい。」
「いやいや、カメラといってもドアの外についている防犯カメラですのでご安心を…。」
ふぅ…。
調子が狂う…。思わずため息をついてしまった。
「あら疲れたの?うちによってく?すぐ近くよ?」
「いえ、結構です、まだやることがありますので…それとも、あまり思い出せない様でしたらまた後日でも…。」
「あ、思い出したわ。」
イケメンの話し相手を逃がさない為なのかすぐになにかを思い出したらしい。
「そういえば、一回目に入ったときはトイレが塞がっててすぐに出てきたのよ。」
「なるほど…それで外で。」
「そうなの誰か出てきたら入ろうと思ってね。そしたら茶髪の女子高生がでて来たんでマジマンジだったわけ。」
「え?どういう意味ですか?マジマンジって?」
「よく知らないけど、よっしゃー!みたいな意味じゃないの?」
「は、はぁ。」
たぶん間違って使っていると思うが触れないで置こう。
「それで、その後トイレに入ったときは何か変わったことありました?」
「え?そうねぇ、うまい具合に女子専用の方が空いたんで用を足してたら、いきなりアラームが鳴り出したくらいかな?」
それだ!アラームの鳴り出した時間がだいたいわかった。
「その後どうしました?」
「どうしたって、まず紙で拭いてから…あ、私ウォシュレット苦手なのよね…。だから紙で直に…。」
「いや、そこははしょって大丈夫です。トイレがすんでから洗面台のあるスペースにでた時に誰かみませんでした?」
「そうねぇ、そういえば丸刈りの坊主頭の男の子が居たわねなんかバツわるそうだったけど…。」
「なるほど、その坊主頭の男の子は見覚えなかったですか?」
「ないわね、あったら覚えてるわよ。だって丸坊主でなかったらジャニーズに居そうな顔だもの…あ、カワイイ系のほうね。」
なに系でも良かったが、だいたい聞くべき事は聞いたかなと池照は思った。
「ありがとうございました。またなにかありましたら御協力をお願いするかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。」
そういって池照は頭を下げた。
「もちろんよ、市民の義務ですものね!なんなら家で話してもいいわよ…あ、主人が居ないときね!」
そういうと山村もみさんはウィンクしてみせた。
苦笑いをする池照を肘で小突いて岩井が冷やかして言った。
「ほんま、おおきになぁ、ここだけの話やけど、この男はこう見えてストライクゾーンひろいさかい、間違いなく期待に応えるでぇ!」
「余計な事言わなくて良いですよ岩井さん。」
そう言った池照の顔は少しひきつっていた。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる