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山野親子
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青葉高校を後にした池照は岩井と合流して山野文紀の遺族に会いに行くことにした。
「どうですか?なにか伸展ありました?」
池照は山野宅に向かう車内でハンドルを握りながら岩井に聞いた。
「せやな、ちょっと真理亜の過去について洗ってみたんやけど…結構な苦労人やで」
「苦労人?」
「真理亜が小学生くらいの頃の父親が酒乱だったらしくてな…真理亜も全身に痣《あざ》拵《こしら》えた事があったらしくて一度児相(児童相談所)に連絡が入っとったわ。まあ、父親は否定してたみたいやけど」
「なんと…。それで前の旦那と別れたんですか?友里亜さん…でしたっけ?真理亜の母親」
「いや、それがそれで別れた訳ではないんや」
「え?ちがうんですか?」
「どうやら、その友里亜さんが居ない時に火事があってな…そこで死別しとるねん」
「死別…亡くなったんですか?」
「せや、その時、真理亜は気が付いて逃げられたらしいんやけど…まあ、トラウマになるわな…まだ12歳くらいの時に親が目の前で亡くなってるんやから」
「悲惨ですね」
「で、実はこの話は続きがあってな、この父親に保険金が掛かってたって事で母親の友里亜が疑われたんやけど」
「えぇえ、まさか?」
「アリバイもあったし、保険金殺人にしては額が少ないって事で疑いが晴れたんよ」
「いくらくらいなんですか?」
「500や」
「それは…少ないですか?」
「その当時の旦那の住んでた家や家財道具など合わせたら数千万くらいになったらしいからな…それを燃やしてまでって所で動機として弱かったらしい」
「なるほど」
「でもそこらかがまた悲惨やねん」
「というと?」
「父親が居なくなったショックかしらんけど…今度は母親が酒乱になってな」
「なんか…因果を感じますね」
「せやろ?それでも最近はかなり良くなってるってゆうてたわ」
「え?誰がです?」
「山村もみ.......や」
もみじ、と言いたいのを堪えてる様な言い方に池照は吹きそうになった。
「また、あの方に会ったんですか?」
「おう、お前が行から寂しそうやったで?」
「…あ、そろそろ着きますね」
「おい、わざと着いたやろ?」
「なんですかそれ?わざと着くって意味がわかりませんけど!」
「まあ、エエわ、ほないこか?」
岩井は新喜劇の言い回しみたいな台詞で車から降りた。
「突然の訪問ですみません。警察の者です」
一応アポイントはとっておいたが、池照はさらに丁寧な印象を与えるために敢えてそう言って警察手帳を見せた。
「いえ、片付いてないですけど…どうぞ」
そういって中に入れてくれた山野吉美はやつれていたが、もともとは美人だった様な面影があった。
「では、お邪魔いたします」
一礼して、部屋に入った二人は驚いた。
本当に片付いてない!
足の踏み場もないという訳ではないにろ…これは家事放棄と言えるくらいの惨状であった。
もしかして、やはり、旦那が亡くなったショックをひきずって居るのだろうか?
「すみません、なにも出すものがなくて…。」
「いえ、本当にお気遣いなく!」
逆に何を出されてもちょっと怖い。
「あの、旦那さんのことなんですけども.......常習的に薬とか服用されてました?」
「はい。お医者様に言われて必ず飲んでました」
「そのなかに、ハルシオンとかありました?」
「え?ハル.......なんですか?具体的なお薬の名前はわかりませんけども、なにかしら飲んでました」
「.......なるほど」
「その傷、新しいみたいやけど、どこでつけたん?」
いきなり横にいた岩井が話しかけたので山野吉美は焦った。
「え?これですか?.......どこだったかしら最近物忘れがひどくて」
吉美は右腕の包帯をさすりながらそう言った。
「そうなん?怪我して覚えてないって相当やとおもうけど」
「ごめんなさい」
「いや、あやまらんでもええねんけど.......あんまり隠し事すると変に疑われるよってにきいつけなはれや?」
池照は横で笑いそうになるのを堪えた。
シリアスな内容が全然相手に伝わらないだろう。
どこで怪我をしたにしても、吉美が犯人であるとは考えにくい…と池照は思った。
あのときカメラに写っていた中で唯一素性のしれないのは黄色い服の女と小学生くらいの女の子だが…小学生は論外だが黄色い服の女も吉美には見えなかったからだ。
「あの…そういえば。」
「なんでしょう?」
「お子さん居ましたよね?小学生くらいの女の子。」
「美羽のことですか?」
「そう、その美羽ちゃんには会えませんか?」
「…なんでです?」
「いえ、なんでと言われましても…。ちょっと確認したいことがありまして…。」
少し何か考えてる様だったが奥の部屋に声を掛けた。
「美羽!ちょっと来てくれる?」
奥から出てきた女の子を見て池照と岩井は思った。
似てるな.......これは、あるかもしれない、と。
奥から出てきた女の子は何も言わずペコんとお辞儀をした。
資料では年令は如月のお嬢様と同じ12才という事だが、小さな身長と幼い顔立ちが実年令より下に見せている。
「あの.......美羽ちゃん?」
やはり何も言わずお辞儀をした。
池照は例の防犯カメラの映像に写っている小学生の映像を取り出して言った。
「あの.......2日前にこの近くのコンビニで録られたものなんだけど.......ここに写ってるのもしかして美羽ちゃん?」
一応、お父さんがここで亡くなったことは伏せて聞いてみた。
すると、しばらく考えてる様子だったがやがて顔をあげると、ゆっくりと首肯いた。
「どうですか?なにか伸展ありました?」
池照は山野宅に向かう車内でハンドルを握りながら岩井に聞いた。
「せやな、ちょっと真理亜の過去について洗ってみたんやけど…結構な苦労人やで」
「苦労人?」
「真理亜が小学生くらいの頃の父親が酒乱だったらしくてな…真理亜も全身に痣《あざ》拵《こしら》えた事があったらしくて一度児相(児童相談所)に連絡が入っとったわ。まあ、父親は否定してたみたいやけど」
「なんと…。それで前の旦那と別れたんですか?友里亜さん…でしたっけ?真理亜の母親」
「いや、それがそれで別れた訳ではないんや」
「え?ちがうんですか?」
「どうやら、その友里亜さんが居ない時に火事があってな…そこで死別しとるねん」
「死別…亡くなったんですか?」
「せや、その時、真理亜は気が付いて逃げられたらしいんやけど…まあ、トラウマになるわな…まだ12歳くらいの時に親が目の前で亡くなってるんやから」
「悲惨ですね」
「で、実はこの話は続きがあってな、この父親に保険金が掛かってたって事で母親の友里亜が疑われたんやけど」
「えぇえ、まさか?」
「アリバイもあったし、保険金殺人にしては額が少ないって事で疑いが晴れたんよ」
「いくらくらいなんですか?」
「500や」
「それは…少ないですか?」
「その当時の旦那の住んでた家や家財道具など合わせたら数千万くらいになったらしいからな…それを燃やしてまでって所で動機として弱かったらしい」
「なるほど」
「でもそこらかがまた悲惨やねん」
「というと?」
「父親が居なくなったショックかしらんけど…今度は母親が酒乱になってな」
「なんか…因果を感じますね」
「せやろ?それでも最近はかなり良くなってるってゆうてたわ」
「え?誰がです?」
「山村もみ.......や」
もみじ、と言いたいのを堪えてる様な言い方に池照は吹きそうになった。
「また、あの方に会ったんですか?」
「おう、お前が行から寂しそうやったで?」
「…あ、そろそろ着きますね」
「おい、わざと着いたやろ?」
「なんですかそれ?わざと着くって意味がわかりませんけど!」
「まあ、エエわ、ほないこか?」
岩井は新喜劇の言い回しみたいな台詞で車から降りた。
「突然の訪問ですみません。警察の者です」
一応アポイントはとっておいたが、池照はさらに丁寧な印象を与えるために敢えてそう言って警察手帳を見せた。
「いえ、片付いてないですけど…どうぞ」
そういって中に入れてくれた山野吉美はやつれていたが、もともとは美人だった様な面影があった。
「では、お邪魔いたします」
一礼して、部屋に入った二人は驚いた。
本当に片付いてない!
足の踏み場もないという訳ではないにろ…これは家事放棄と言えるくらいの惨状であった。
もしかして、やはり、旦那が亡くなったショックをひきずって居るのだろうか?
「すみません、なにも出すものがなくて…。」
「いえ、本当にお気遣いなく!」
逆に何を出されてもちょっと怖い。
「あの、旦那さんのことなんですけども.......常習的に薬とか服用されてました?」
「はい。お医者様に言われて必ず飲んでました」
「そのなかに、ハルシオンとかありました?」
「え?ハル.......なんですか?具体的なお薬の名前はわかりませんけども、なにかしら飲んでました」
「.......なるほど」
「その傷、新しいみたいやけど、どこでつけたん?」
いきなり横にいた岩井が話しかけたので山野吉美は焦った。
「え?これですか?.......どこだったかしら最近物忘れがひどくて」
吉美は右腕の包帯をさすりながらそう言った。
「そうなん?怪我して覚えてないって相当やとおもうけど」
「ごめんなさい」
「いや、あやまらんでもええねんけど.......あんまり隠し事すると変に疑われるよってにきいつけなはれや?」
池照は横で笑いそうになるのを堪えた。
シリアスな内容が全然相手に伝わらないだろう。
どこで怪我をしたにしても、吉美が犯人であるとは考えにくい…と池照は思った。
あのときカメラに写っていた中で唯一素性のしれないのは黄色い服の女と小学生くらいの女の子だが…小学生は論外だが黄色い服の女も吉美には見えなかったからだ。
「あの…そういえば。」
「なんでしょう?」
「お子さん居ましたよね?小学生くらいの女の子。」
「美羽のことですか?」
「そう、その美羽ちゃんには会えませんか?」
「…なんでです?」
「いえ、なんでと言われましても…。ちょっと確認したいことがありまして…。」
少し何か考えてる様だったが奥の部屋に声を掛けた。
「美羽!ちょっと来てくれる?」
奥から出てきた女の子を見て池照と岩井は思った。
似てるな.......これは、あるかもしれない、と。
奥から出てきた女の子は何も言わずペコんとお辞儀をした。
資料では年令は如月のお嬢様と同じ12才という事だが、小さな身長と幼い顔立ちが実年令より下に見せている。
「あの.......美羽ちゃん?」
やはり何も言わずお辞儀をした。
池照は例の防犯カメラの映像に写っている小学生の映像を取り出して言った。
「あの.......2日前にこの近くのコンビニで録られたものなんだけど.......ここに写ってるのもしかして美羽ちゃん?」
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