17 / 29
戦慄のお茶会(その2)
しおりを挟む
一方その頃、裏山詩歌はまた、如月邸に来ていた。
ボディガードというより、もはや話し相手の様な状況になりつつあったが雇われている以上文句は言えないのだった。
「暇ね」
「そうですね」
「なんかこの前のリベンジをしたいって顔をしてない?」
「え?全く!微塵も!」
「そう、そんなに言うならもう一度やりましょうか、暇だし」
「えー!」
なんというか、このお嬢様は恐ろしくマイペースな事がわかりだした。
「まぁ、まぁ、勝ったら旧友に会わせてあげるという特典がついてるんだから、損はないでしょ?」
いや、その特典がこのゲームを罰ゲームにしてるんですけど!
と素直に言うわけにはいかない、ボディガードとして何者も恐れていない所を見せなくてはならないのだから。
「旧友.......でもないんですけどねぇ、むしろ知り合いていうか、まぁ、名前は知ってるってくらいで.......」
「じゃあ、この前と同じお題で良いわね?」
聞いちゃいない!
「も、勿論良いですけど.......え?それじゃ同じ結果になりませんか?」
「大丈夫、大丈夫、主張を逆にすれば」
「逆?逆でいいんですか?」
「もちろん、だから今度は私が死刑廃止をうったえる方ね」
「り、了解」
え?それだと、こっちが有利なんじゃない?
間違っても勝っちゃいけないという変なプレッシャーがのしかかってきた。
「では詩歌からどうぞ」
必ずこっちからなんだなぁ、ハンデなんだろうか?
「そ、そうですね。やはり、今の現状では死刑を廃止すると殺人などの罪を償わせる手段がないですからね。抑止力という意味からも必要と言わざる負えません」
「なるほど、罪を償わせる為に必要であると」
「そういう事です」
「よく罪を償うっていうけど、それって日本の刑務所では無理だとおもうのだけど」
「え?でも.......償ってますよ」
「例えば五千万の損害を被った被害者がいたとして、刑務所で何年か加害者が収監されたら、その五千万は国が被害者に返してくれるの?」
「いや、そんな事にはなりませんよ」
「じゃあ、誰が返してくれるの?」
「そりゃ、加害者でしょ」
「何年も刑務所に入ってた加害者にそんな経済的余裕があるかしら?」
「おそらくないでしょう」
「だったら、収監しないで、働いて貰ってた方が罪を償ってる事にならない?」
「え?ええまぁ.......確かに」
「なんなら、そういう犯罪をおかした人には安全な刑務所で食事付きの些《いささ》か不自由な生活じゃなくて危険な場所で辛い労働などに就いて貰って、最大限被害者に損害賠償するようにしたほうがよっぽど被害者の利益になると思のだけど」
「はぁ、まぁ、その.......如鏡さん論点がズレてる気がしますけど」
「あら本当、つい熱く語ってしまったわね」
「本当に」
「でも、それだけ罪を償うって簡単ではないってことが言いたいわけ」
そこまで言うと紅茶に一口口を付けて一呼吸置いた。
「あの、だとすると尚更、死刑は必要なんじゃないですか?ハンムラビ法典ではないですけど、死刑は唯一被害者と同じ目に加害者をあわせるわけですから文字通り罪を償う事になるのでは?」
「被害者の無念が晴らせるとしたらそうね」
「晴らせるでしょ?」
「そのような研究結果でもでたの?」
「え?研究結果?」
「つまり、被害者の無念が晴らせた。若しくは被害者の意向に沿っている。あるいはその事で被害者が何らかの利益を得る。うかばれる。なんでも良いんだけど、そういう事を立証するような科学的検証がなされたの?」
「.......いえ」
「だったら、罪を償ったかどうかわからないわよね?」
「ええ、まぁ。しかし、少なくとも被害者遺族の無念は晴らせるのでは?」
「確かにそうだけど、被害者遺族の無念を晴らす為に死刑にするということ?」
「そういう側面もあるかと」
「被害者遺族と被害者は明確に違うと思うんだけど」
「しかし、被害者がもはや居ないのであれば一番被害者の心情に寄り添えるのは被害者遺族だと思いますけど」
「被害者遺族が納得しても被害者が納得した事にはならないわよね?」
「しかし、それしか他に方法がないのでは?」
「他にやりようがないし、そういう慣例だし、風潮だからなんとなくどうなるかわからないけど死刑にしてみようってことね?」
「え、あ、まぁ.......いや、そんないい加減な事じゃないと思いますけどね」
「でも、加害者を死刑にする事が被害者の利益になるという明確な根拠はないわよね?」
「.......それはないですけど」
「だったら、その根拠が示せるまで死刑は廃止したら良いとおもいます」
「ええと、それだと殺人などの凶悪犯罪が増えてしまいます」
「それが理由なら、拷問でもなんでも死ぬより辛い刑を考えれば済むんじゃない?最近では死刑になりたいという理由で凶悪犯罪を犯す人までいるんだから」
「え?それじゃ人権問題が」
「人権問題を言うなら一番の人権侵害が死刑じゃない?」
「.......あ」
そこまで話が進んだところで詩歌に電話が来た。
如鏡《しきょう》に目とゼスチャーで出ていいか?と聞いた。
如鏡もゼスチャーでどうぞ、と促した。
「あ、お嬢様いる?」
「あの、すみません、ちょっと番号、お間違えの様ですよ?」
「いや間違ってないから!裏山。俺だよ刑事!如月のお嬢様に繋いで欲しいんだけど。今、忙しいか?」
「いや、まず俺に挨拶!そして季節の移り変わりなどを話してから、如鏡《しきょう》さんだろ?」
「.......ちょっと何言ってるのかわからん」
「お前、もしかして如鏡《しきょう》さんとの連絡係みたいな役回りをさせる為に俺をボディガードに推したとか?」
「ほう.......裏山くん。今度なにか奢るからその話は後にしないか?」
「.......特大ステーキで頼む」
詩歌はそういうと、如鏡に携帯を渡しながら
「あの、お嬢様にお話があるそうです」
と言った。
「あら、ステーキ屋さんが私に?」
「.......い、いえ、刑事です。池照刑事からです」
「冗談よ」
そういうと、如鏡は携帯を受け取った。
この、お嬢様.......本当にどこまで本気なのかわからないな。
詩歌はそう思った。
「もしもし、池照です」
「どうも、如月です」
「ちょっとまた厄介な事になりまして.......見てもらってもよろしいですか?」
「もちろん良いですよ、私も勉強になりますし。犯人特定に繋がる一助が出来れば嬉しいです」
「あの、実は犯人.......特定できてるんです」
「え?」
「ですが.......見てもらいたいんですよ。駄目ですか?」
「いえ、もちろん良いですよ。池照さんがそう仰《おっしゃ》るなら」
「ありがとうございます。後ほど今までの音声記録や映像記録を送りますので」
「一応聞きますけど池照さんの腑に落ちない所ってなんでしょう?」
「それは…その…犯人がですね…ちょっと」
「ちょっとなんでしょう?」
「幼《おさな》すぎるんです」
「幼すぎる、どのくらいですの?」
「ええと同じくらいです」
「誰と?」
「その.......貴女とです。あ、すみません先輩から連絡が.......後でまた」
そういうと、電話は切れた。
如鏡《しきょう》は少し考える様な仕草をすると、徐《おもむろ》に席を立った。
「ごめんなさい、今日はこれでお開きにするわ」
詩歌にそう告げると二階へ続く螺旋階段を上がって行った。
ボディガードというより、もはや話し相手の様な状況になりつつあったが雇われている以上文句は言えないのだった。
「暇ね」
「そうですね」
「なんかこの前のリベンジをしたいって顔をしてない?」
「え?全く!微塵も!」
「そう、そんなに言うならもう一度やりましょうか、暇だし」
「えー!」
なんというか、このお嬢様は恐ろしくマイペースな事がわかりだした。
「まぁ、まぁ、勝ったら旧友に会わせてあげるという特典がついてるんだから、損はないでしょ?」
いや、その特典がこのゲームを罰ゲームにしてるんですけど!
と素直に言うわけにはいかない、ボディガードとして何者も恐れていない所を見せなくてはならないのだから。
「旧友.......でもないんですけどねぇ、むしろ知り合いていうか、まぁ、名前は知ってるってくらいで.......」
「じゃあ、この前と同じお題で良いわね?」
聞いちゃいない!
「も、勿論良いですけど.......え?それじゃ同じ結果になりませんか?」
「大丈夫、大丈夫、主張を逆にすれば」
「逆?逆でいいんですか?」
「もちろん、だから今度は私が死刑廃止をうったえる方ね」
「り、了解」
え?それだと、こっちが有利なんじゃない?
間違っても勝っちゃいけないという変なプレッシャーがのしかかってきた。
「では詩歌からどうぞ」
必ずこっちからなんだなぁ、ハンデなんだろうか?
「そ、そうですね。やはり、今の現状では死刑を廃止すると殺人などの罪を償わせる手段がないですからね。抑止力という意味からも必要と言わざる負えません」
「なるほど、罪を償わせる為に必要であると」
「そういう事です」
「よく罪を償うっていうけど、それって日本の刑務所では無理だとおもうのだけど」
「え?でも.......償ってますよ」
「例えば五千万の損害を被った被害者がいたとして、刑務所で何年か加害者が収監されたら、その五千万は国が被害者に返してくれるの?」
「いや、そんな事にはなりませんよ」
「じゃあ、誰が返してくれるの?」
「そりゃ、加害者でしょ」
「何年も刑務所に入ってた加害者にそんな経済的余裕があるかしら?」
「おそらくないでしょう」
「だったら、収監しないで、働いて貰ってた方が罪を償ってる事にならない?」
「え?ええまぁ.......確かに」
「なんなら、そういう犯罪をおかした人には安全な刑務所で食事付きの些《いささ》か不自由な生活じゃなくて危険な場所で辛い労働などに就いて貰って、最大限被害者に損害賠償するようにしたほうがよっぽど被害者の利益になると思のだけど」
「はぁ、まぁ、その.......如鏡さん論点がズレてる気がしますけど」
「あら本当、つい熱く語ってしまったわね」
「本当に」
「でも、それだけ罪を償うって簡単ではないってことが言いたいわけ」
そこまで言うと紅茶に一口口を付けて一呼吸置いた。
「あの、だとすると尚更、死刑は必要なんじゃないですか?ハンムラビ法典ではないですけど、死刑は唯一被害者と同じ目に加害者をあわせるわけですから文字通り罪を償う事になるのでは?」
「被害者の無念が晴らせるとしたらそうね」
「晴らせるでしょ?」
「そのような研究結果でもでたの?」
「え?研究結果?」
「つまり、被害者の無念が晴らせた。若しくは被害者の意向に沿っている。あるいはその事で被害者が何らかの利益を得る。うかばれる。なんでも良いんだけど、そういう事を立証するような科学的検証がなされたの?」
「.......いえ」
「だったら、罪を償ったかどうかわからないわよね?」
「ええ、まぁ。しかし、少なくとも被害者遺族の無念は晴らせるのでは?」
「確かにそうだけど、被害者遺族の無念を晴らす為に死刑にするということ?」
「そういう側面もあるかと」
「被害者遺族と被害者は明確に違うと思うんだけど」
「しかし、被害者がもはや居ないのであれば一番被害者の心情に寄り添えるのは被害者遺族だと思いますけど」
「被害者遺族が納得しても被害者が納得した事にはならないわよね?」
「しかし、それしか他に方法がないのでは?」
「他にやりようがないし、そういう慣例だし、風潮だからなんとなくどうなるかわからないけど死刑にしてみようってことね?」
「え、あ、まぁ.......いや、そんないい加減な事じゃないと思いますけどね」
「でも、加害者を死刑にする事が被害者の利益になるという明確な根拠はないわよね?」
「.......それはないですけど」
「だったら、その根拠が示せるまで死刑は廃止したら良いとおもいます」
「ええと、それだと殺人などの凶悪犯罪が増えてしまいます」
「それが理由なら、拷問でもなんでも死ぬより辛い刑を考えれば済むんじゃない?最近では死刑になりたいという理由で凶悪犯罪を犯す人までいるんだから」
「え?それじゃ人権問題が」
「人権問題を言うなら一番の人権侵害が死刑じゃない?」
「.......あ」
そこまで話が進んだところで詩歌に電話が来た。
如鏡《しきょう》に目とゼスチャーで出ていいか?と聞いた。
如鏡もゼスチャーでどうぞ、と促した。
「あ、お嬢様いる?」
「あの、すみません、ちょっと番号、お間違えの様ですよ?」
「いや間違ってないから!裏山。俺だよ刑事!如月のお嬢様に繋いで欲しいんだけど。今、忙しいか?」
「いや、まず俺に挨拶!そして季節の移り変わりなどを話してから、如鏡《しきょう》さんだろ?」
「.......ちょっと何言ってるのかわからん」
「お前、もしかして如鏡《しきょう》さんとの連絡係みたいな役回りをさせる為に俺をボディガードに推したとか?」
「ほう.......裏山くん。今度なにか奢るからその話は後にしないか?」
「.......特大ステーキで頼む」
詩歌はそういうと、如鏡に携帯を渡しながら
「あの、お嬢様にお話があるそうです」
と言った。
「あら、ステーキ屋さんが私に?」
「.......い、いえ、刑事です。池照刑事からです」
「冗談よ」
そういうと、如鏡は携帯を受け取った。
この、お嬢様.......本当にどこまで本気なのかわからないな。
詩歌はそう思った。
「もしもし、池照です」
「どうも、如月です」
「ちょっとまた厄介な事になりまして.......見てもらってもよろしいですか?」
「もちろん良いですよ、私も勉強になりますし。犯人特定に繋がる一助が出来れば嬉しいです」
「あの、実は犯人.......特定できてるんです」
「え?」
「ですが.......見てもらいたいんですよ。駄目ですか?」
「いえ、もちろん良いですよ。池照さんがそう仰《おっしゃ》るなら」
「ありがとうございます。後ほど今までの音声記録や映像記録を送りますので」
「一応聞きますけど池照さんの腑に落ちない所ってなんでしょう?」
「それは…その…犯人がですね…ちょっと」
「ちょっとなんでしょう?」
「幼《おさな》すぎるんです」
「幼すぎる、どのくらいですの?」
「ええと同じくらいです」
「誰と?」
「その.......貴女とです。あ、すみません先輩から連絡が.......後でまた」
そういうと、電話は切れた。
如鏡《しきょう》は少し考える様な仕草をすると、徐《おもむろ》に席を立った。
「ごめんなさい、今日はこれでお開きにするわ」
詩歌にそう告げると二階へ続く螺旋階段を上がって行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる