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潔癖
しおりを挟む観月光(みずきひかり)は憤っていた。
ここまで、頭に来たのは高校生1年の夏以来だ、近所の夏祭りの催しにお気に入りの浴衣姿でウキウキした気持ちで出掛けたのだったが、会場の人混みに紛れて痴漢にあってしまった。
と...普通ならそこで終わるのだけど、観月は父親の勧めで空手を習っていたので、それでは終わらなかった。
痴漢の手を掴むと、ぐるっとそのまま捻り(空手の先生から合気道もすこし習っていたのが咄嗟にでたのだ)男を後ろ手に捻りあげたのだ。
男は思わぬ反撃にたじろいだが、そこは男女の体格差でなんとか逃れようと暴れて観月から離れる事に成功した。
問題なのはその拍子に肘で観月のコメカミを直撃してしまった事だ。
そして、そのまま逃走、観月はしばらくその場に卒倒してしまった...。
気がついた時には泥だらけの道端にひとりで突っ伏している自分がいた、あいにく近所ということで、親とも別行動している時だった。
誰かが救急車だけは呼んでくれたらしく、遠くからサイレンの音が近づいてくるのがわかった・・・。
観月はなぜか、お気に入りの浴衣がドロドロになってしまった事が最もゆるせなかった。
あの時とおなじだ・・・。
観月は髪で上手に隠しているコメカミのキズが疼くのを感じた
あの時から私は潔癖になったのだ。
といっても、清潔でなければ許せないということでは無い、なんというか...性格的な潔癖である。
つまり卑怯なことがとことん許せないのだ、その性格のせいで、非の打ち所のない彼氏ができてもすぐに別れてしまうのだ。
いや...卑怯な彼氏なら別れて当然という意見もあるだろう、しかし、デートの遅刻の言い訳で嘘をついただけで別れるのはすこし...やりすぎだろう。
観月も、その自覚はある...自分はすこし潔癖すぎである、と。
しかし、どうにもこうにも、許せないとなったらテコでも許せないのだ。
その度に左のコメカミの傷が痛む。
そして、目の前にいる男は観月にとって、絶対に許せない男だった。
最初は痴漢かひったくりの類いだとおもった。
人気がないとはいえ朝っぱらから、人にタックルをしてくるような男はそういう人種であろう...だったら、あの時から更に磨きをかけた空手の腕前を見せる時である。
そうおもっていたのだが...ちがった。
なに?なにをした?え?あの逃げていく後ろ姿は?紛れもなく私じゃないか?
そして、私の服装は...ひどい汚れと異臭がする...なにこれ?え?入れ替わった?え?まさか?
そして、走り去ろうとする自分に叫んだ
「ま、まって!!!」
その声で少し、こちらを振り向いた私の顔は・・・すこし笑っていた!
そして、すべてを理解した。
方法や理屈はわからない、しかし、理解した、あいつは、やろうとして、やったんだということを!
間違いや不測の事態ではなく、計画的であると言う事を理解した!
その時、私の怒りは沸点に達したのだ。
このヤロウ!!!
こいつは、どんな手段を使っても倒さなくてならない
許されざる者だ!
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