9 / 46
曖昧な博士と純粋な少年
しおりを挟む母娘は悩んでいた。
病院に出頭しろといわれている。
普通なら出頭すべきだろう。
何もしらない、自分たちよりも、出頭して専門家に頼んだ方が安心だ。
しかし、問題は専門家などと言うものが居るのかどうかだ。
「いやぁ、ほんとうに困るよ、ワガハイの大相撲はこれからどうなるのかね?」
なんとなく情報を得ようとしてつけたテレビからは派手なメイクをした相撲評論家が一連の異変をうけて話をしていた。
「強い衝撃を避けるように、などといわれても相撲に限らず、ほとんどのスポーツは強い衝撃を避けられないですからねぇ」
メインの司会者らしき人がまともな意見をのべる。
「いやいや他のスポーツはなんとか接触を避けることも可能じゃないかね?それに、相撲は国技であるからして・・・」
化粧の濃い評論家はしきりに国技の行く末を心配していた。
テレビをつけてわかった事は、思ったほどの混乱を生んでるわけではないという事くらいだった。
いや、もしくは、嵐の前の静けさなのかもしれないが...。
暫くして司会者がなにかを見て驚いたように喋り出した。
「えーここで、政府のほうからLIVE中継が繋がりそうですね、なにか、専門家から重大な発表があるのでしょうか、しばらくお待ちください。」
しばらくして、LIVE中継らしい映像が繋がって、脳科学の権威といわれている百樹健二郎博士が映った。
親子は固唾を呑んで聞いた
「ど...どうも、百樹(ももき)です。えー今回の一連の騒動はですね...わたしの見解によると、一時的意識の混濁...そして混乱による自我の不安定の連鎖現象とおもわれ...。」
なにを言ってるかわからない!
「とにかく、精密な検査が必要ですので最寄りの国立病院に急いで下さい」
結局、新しい事は全く聞かされなかった。
ふたりが失望してると誰かが博士の後ろに立ったのがわかった。
若い青年だ
青年は言った。
「意識の混濁?これが混濁かどうか自分で味わって下さい!」
そう言うがはやいか、博士のうなじのあたりに手刀のようなものを食らわせた
次の瞬間
博士はフッとわらって、ゆっくりと青年をふりかえって言った
「どんな気分ですか?」
やった!
画面に食らいついていた2人は青年がなにをやったのかわかった
いや、入れ替わりを体験した人間なら誰しもわかったはずだ。
わからず屋の博士に入れ替わりを体験させたのだ!
2人は青年が(博士が)なにを言うか、固唾を呑んで待った。
青年の言葉は予想外だった。
「いやぁ、なんか、突然すみません・・・冗談なんです。」
博士はぎょっとした顔になった。
「な、なに?」
「一旦終了しましょう!みなさんすみません!」
青年は深々と頭を下げた。
え?なにがどうなって?
母娘は唖然として見守ってると突然ブラックアウトして、画面が切り替わった。
しばらくお待ちください
テロップと同時にカワイイぬいぐるみが画面に映って、しばらくすると、前のスタジオに切り替わった。
司会者は一瞬気を抜いていたと見えてポカンとした顔で黙っていたが、映ってることがわかると慌ててスイッチが入った様に喋りだした。
「え...えー只今ご覧いただけたように、なにかしら病状に該当する方は、お早めに最寄りの国立病院に...行かれた方が良さそうですね...。」
なんとも、歯切れの悪いコメントだが、致し方ないだろう。
母娘は決めた。
先ほどの母の思いつきを試してから
もう一度考えよう...と。
国も国民も脳科学の権威も未だに何が起こってるかワカラナイノダという事がわかったので。
しかし、気になるのは先ほどの博士と青年のやりとりである。
母娘は納得のいくような様々な仮説を立ててみたが、腑に落ちそうな答えにはならなかった。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる