CHANGE syndrome

ハイブリッジ万生

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同時感応の統

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統(これから送るのは僕らが産まれて来る前の会話です、わかりやすい様に今いる5人とそちらの5人の精神を繋げさせてもらったので、こちらの記憶を送り込めるはずです...それに、口に出さなくても簡単な会話なら心の中で呟くだけでお互いに共有できます)

百樹「前に雫さんと会話したような感じかな?」

統(それに近いですけど、今回はすこし範囲が広いですね)

鏡(統は同時感応が得意なのよ)

百樹「例えるとチャットみたいな感じかね?」

統(ですね、でも、打ち込む時間も要らないので驚異的に速いですけどね)

弥生「まるで攻殻機動隊みたいね!」

統(まぁ、似てなくもないけど...)

友也「なんか、不安しかないが...」

統(まぁ...慣れますよ)

鏡(あと、チャットとかと違うのはこれから統がやる記憶の投下かしらね)

みすず「記憶の投下?」

弥生「記憶の弾丸みたいな?」

みすず「なにそれ?」

統(まぁ、ほぼ当たってますね)

友也「当たってるのかよ!」

優「い、意味がわからん」

百樹「と、とにかく見せてもらおうか?その...記憶の投下とやらを」

統(わかりました、すこし気分が悪くなるかもしれませんけど...いきますよ)

友也「まじかよ」

弥生「OK!」

みすず「ちょっと、弥生ちゃん」

優「ま、まぁ仕方ない」

百樹「では、たのみます」

統(では...)

統が自分の記憶の深い部分の扉を一つ開いた。













古い研究所のような部屋の中に夥しい数の試験管が整列しているのが見える

ブクブクブクブク・・・

一つひとつの試験管中には何かが蠢いていて、時折なんらかの泡が下から湧いている。

ぎぃぃぃ

鉄製の古いドアが開く音がして二人の研究員らしき男が入ってきた

研究員A「このドアなんとかなりませんかね?苦手なんですよこの音...仮にも国家の施設なんですよね?」

研究員B「まぁ、そういうな...予算がおりてるだけでも奇跡みたいなものなんだからな」

研究員A「そうなんですか?...まぁ、いいですけど、それにしてもいつ来てもなんか嫌なものを感じる部屋ですね」

研究員B「ん?なんだ?何を感じるんだ?呪いでも感じるのか?」

研究員A「いや...まぁ...それはないですけどね、ここにあるほとんどの卵が孵らないと思うとね...」

研究員B「研究っていうのはそういうもんだ...」

研究員A「しかもまた電磁波を当てるって意味がわかりかねますよ」

研究員B「俺に聞くなよ...上からの指示だ...なんでも数値の異常変化が見られたらしい」

研究員A「でも、そのおかげで更に孵らない卵が増えますよ…下手すると0かも?」

研究員B「そんなことは上もわかってるはずだ...それでもやれって事は意味があるんだろ?」

研究員A「結局僕らは雇われ研究員ってわけですね?」

研究員B「愚痴は職務が終わってからにしてくれよ、モチベーションが下がる。」

研究員A「へいへーい」

2人の研究員はいそいそと作業に取り掛かった

(おまえら・・・)

研究員B「ん?なにか言ったか?」

研究員A「いえ、なにも...」

研究員B「そうか…だよな?」

研究員A「このプラグってこっちでしたっけ?」

研究員B「あ、ああ、そうだ早いとこやっちまおう」

研究員Bの額から汗が滲んでいる。




研究員A「あの...そういえば...へんな事聞いて良いですか?」

研究員B「ん?なんだ?」

研究員A「このことをあの人に教えないのは何故ですかね?」

研究員B「あ...あぁ、そのことか…別に大した意味はないだろ...まぁ、念の為ってことじゃないか?」

研究員A「念の...為?」

研究員B「まぁ...そうだろ?仮にも遺伝子的な意味では我が子なんだからな...」

研究員A「あの人にそういう、その...母性みたいなものがあるとは...」

研究員B「だ、か、ら...念の為って言ったろ?突然母性に目覚めるなんて事も...絶対にないとは言いきれんだろ?」

研究員A「...なるほどね」

研究員B「そんな事気にしてないで...ほら、あと一息だ」

(や...)

研究員B「ん?」

研究員A「へ?」

(や...ろ)

2人の研究員はお互いの顔をみた

その顔は「聞こえたか?」と言っていた

(やめろ!)

研究員B「うおおおお!」
突然研究員Bは近くにあった消火器を振り上げてどこかに振り下ろそうとした。

研究員A「何やってるんですか先輩!」

慌てて後ろから羽交い締めにして抑える研究員A

研究員A「だれか!誰か来てください!」

声を聞き付けて何人かの研究員が駆けつけて事態は収集した。

研究員Bは疲労による軽い錯乱状態にあったということで、休みをとらされた。

その数日後...実験は行われた

ギィィィィン

立て付けの悪い鉄製の扉の開く音が部屋いっぱいに広がった。








ブクブクブクブク・・・

小さな硝子の入れもののなかで六つの魂が会話していた

(やばいぞこれは...)

(むっ...そうだな)

(そうだなじゃねぇよ)

(まぁ、まぁ落ちつきましょう...)

(なんで落ち着けるんだよお前は!)

(とりあえず、そうやって叫んでもなにも変わらないわね…)

(わかんねぇだろ?あいつの体を乗っ取ったの見たろ?)

(一瞬だけね…)

(なんだよそれ...もっと評価しろよ!)

(うふふ、よく喧嘩できるわね?あなたたち面白い)

(誰だおめーは!)

(喧嘩なんかしてないわよ…思ったことを言ってるだけ...)

(むっ...喧嘩は良くない...)

(だから、喧嘩じゃねぇって言ってたろ!)

(あなたはなにか意見がないの?)

(あ...あの...)

(ん?)

(みなさんの決定に従います)

(ん?なんで?なんでそうなるの?)

(わたし...なにもできそうにないし...)

(そんなことないと思うけどなぁ...あなた結構すごいわ)

(なにがどうすごいんだよ!)

(全然すごくないです…)

ガガガガガガガガガ

ものすごい音がして電磁波が試験管を透過していった

(私に良い案がある...)

(なんだ?)

(この子を中心にしてみんな球体状になるの...)

(そんな...)

(なんだよそれ?)

(むっ...わかった)

(なんでわかるんだよ?)

(それしかないみたいね…)

(じゃあお願い)

(みなさん!やめてください!)

(このままでは全員全滅しちゃうのよ)

(だからって…)

(その...男の人を囲んだほうが...さきほども憑依する事に成功してましたし)

(バカかお前...俺が女に守られるなんて...死んでもゴメンだ!しかも...おまえみたいな...)

(わかったでしょ?もう一択なのよ!)

ガガガ・・・ガガガガガガガガガ

(来るわ!)

(むっ...早く私の後ろに!)

(この人強い!でも後ろからも反響がくるから他の人はそこを守って!)

(了解)

(しゃーねーな)

(...ごめんなさい)

(......)

数時間後

実験室は静寂に包まれていた

研究員C「結局...この個体しか残りませんでしたね…」

研究員A「...そうだな…」


研究員C「どうしたんです?たしかに成果は良くなかったですけど...我々のせいではありませんよ」

研究員A「...そうだな…」

研究員C「とりあえず運びますよ...これ」

研究員Cは試験管を指で弾いた

ピーンと透明な綺麗な音が響いた

研究員A「なにすんだお前!」

研究員C「え?」

研究員Aはまるで我が子をとられそうになった猛禽類の様な目で睨んで言い放った「馬鹿かお前!下がってろ!」


研究員C「ひっ!」

研究員A「大事な......サンプルだぞ…」

研究員C「す...すみません」

研究員Aは慎重に試験管を保管室に運んでいった。

研究員Aが居なくなったのを見計らって研究員Cは呟いた。

「なんだよ、先輩がおかしくなって気がたってるのか?とんだトバッチリだよ...」



そこで一旦ビジョンが途切れた


統(どうです?)

百樹(あの...なんていったらいいのか…)

統(いや...同情とかは良いですよ…もう12年も前の話ですし…)

百樹(一つ気になることがあるんだが…)

統(なんでしょう?)

百樹(胎児?もしくはそれ以前の状態で会話してたようなきがしたけど…)

統(あ...それは簡単です…まだ前世の記憶などがかなり残ってたので会話もスムーズにできました…我々の仮の年齢設定もそれに準じてますので...)

百樹(...はぁ)

統(なにか問題でも?)

百樹(問題というか...)

みすず(すごい!前世ってあるんだ!)

弥生(え?当たり前でしょ?)

優(そう思ってるのはお前だけだ)

友也(あの...お水ください)

統(やはり記憶酔いした方がいるみたいですね…いっきに人の記憶を受け止めるのは負担が大きいですからね…)

弥生(私はまだまだ平気よ)

みすず(私も!)

優(僕はちょっと休みたいかも)

弥生(だらしないわね)

優(いや...だらしないとか、おかしいから)

百樹(わたしも大丈夫かな?)

優(なに若ぶってるんですか?)

百樹(いや、若ぶってるとかじゃないから)

統(まぁまぁ...一旦休憩しましょうか)

雫は近くに給水器が置いてあったので人数分の水を紙コップに注いで回していった。







統は皆が一旦落ち着くのを待ってから話し出した。

統(まぁ、本来なら僕らの生い立ちを知ってもらう為にはここまでの記憶の投下で充分なんですけど、ある事情を考慮してもう少し先のお話も投下したいんですが...)

百樹(それは是非お願いしたい...今までので充分信じ難い話だが、まだなにか新事実が浮かび上がるかもしれない。)

優(そ、それはそうですが…ちょっとインターバルが欲しいですね、ほら...そこの友也くんも相当こたえてますよ。)

弥生(お兄ちゃんもでしょ?)

統(そのようですね...では、インターバルの意味も含めて、先ほどのビジョンの補足説明をさせて貰いましょうか...何か質問はありませんか?)

百樹(それはありがたい、そうだね...まずその秘密の研究はテレパシーの研究で君たちの様に先天性多重人格を作る目的を持っていたのかね?)

統(いえ、それは違います...あくまで、先天性多重人格になったのは双方にとってイレギュラーな事だったんです、彼らは双子以上のテレパスが欲しかったんですから)

百樹(なるほど...え?双方にとってとは?)

統(もちろん、我々にとっても不測の事態という事です...なにせ、あの時、雫を生かすためにみんな犠牲もやむなしと思っていたんですからね...精神だけ残るなんて予想だにしてませんでしたよ...1人を除いては)

百樹(1人を除いて?)

統(ええ、訳あって、ここにはいない、もう1人です。)

弥生(そういえば、ずっと気になっていたんだけど...もう1人居るはずよね?)

みすず(なんで出てこないの?)

優(寝てるとか?)

統(いえ、寝てる訳では無いんですが、まぁ、そのうち会える時もあるかもしれません、僕の居ない時に...)

みすず(え?仲が悪いとか?)

統(いえいえ、とんでもない)

百樹(まぁ、あまり詮索しないでおこう、言いたくなさそうだし...)

統(いいたくない訳では無いんですが、説明が難しいのですよ)

そういって統は肩を竦めて苦笑いをした。

その時みすずには見えていた…

彼の頭の辺りから、よく見ないとわからない糸のような光が伸びている。

みすずは気のせいではないかと目をこすったが...やはり光の糸は消えなかった。








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