CHANGE syndrome

ハイブリッジ万生

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小さな凱旋団

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警護責任者の海野一は一般の人達には分からないように、周りの隊員に目配せをした。

その一瞬の目の動きを見て隊員達はさらに他の隊員に、目配せをした。

程なく全隊員が隊長の
「緊急時即時行動に移れるように準備せよ!」
という意思が伝わる。

優れた部隊の中には時に以心伝心や阿吽の呼吸のようなものが存在する...それは、他の一般の人々を圧倒する力ではあり、そういう部隊に海野は誇りと自信を持っていた。

が、あくまで、普通の人に対してである。

ほんとうに、あの人の言う通りテレパシーなんてものが実在するなら話は全然違ってくる。

海野は不満の声が臨界点に達するのを、肌で感じはじめていた...。

海野は目配せで「何かあったら躊躇なく動け!」そう、部下に伝えた。

(その必要はありませんよ)

え?いきなり心の中に誰かが語りかけてきた。

海野「誰だ!」

(失礼...今そちらに伺います)

その時、部屋のドア開き百樹博士が顔をだした。

百樹「やぁ、待たせたね」

海野「お待ちしてました…あの、先程の...声は?」

百樹「声?」

海野「い、いえ!なんでもないであります!」

そういうと少し顔を高潮させた…

海野(なにを言ってるんだ俺は...テレパシーなんてあるわけないだろ)

百樹「あぁ、もしかして、心に直接声が聴こえたのかね?」

海野「え?まさか!」

百樹「いやいや、私じゃないよ...ほら、後ろにいる雫くんじゃないかな?」

後ろから女の子がひょこっと顔を出して何か言おうとして、思いとどまった。

海野「え?女の...子?」

(すみません、私ですよ、何か異常な緊張が壁越しにも伝わって来たので危険かなと思い、つい語りかけてしまいました、ご容赦ください)

そういうと、統は優雅にお辞儀してみせたのだが…もちろん、みすずとゆり子以外にはその様子は見えない。

海野「なんと...て、テレパシー?まさか...ほんとうだったのか…」

百樹「ん?なにがだね?」

海野「...いえ、ほんとうに、こんな不思議な事が起こり得るんだな…と...」

みすず「ようやく信じる様になった?」

そこに遠くから声が聞こえた。

「おーい、ようやくの凱旋かよ?収穫はあったのか?」

石川である。








石川の言葉でその周りにいた人々が百樹達の帰還に気がついた。

山崎「やぁ、みなさん!ご無事でなによりです。」

山村ゆりこ「みすず!遅かったじゃない?足を引っ張らなかった?...あら、そちらにいるのは弥生ちゃん?」

山村みすず「なによそれ?足を引っ張るはずがないじゃない!てゆかそう!そこで弥生ちゃんにバッタリ会ってビックリ!」

如月弥生「どうも、叔母様お久しぶりです。」

そういうと、弥生はしゃなりとお辞儀をした。

優はこういう時に妹がキチンとしているのを見て変に感心するのだった。

優「おまえ、こういう時はちゃんとしてるな。」

弥生「なにを、仰ってるの?お兄様。」

優はもしかしたら、これもなにかのキャラクターを妹が演じてるだけなのかもしれないという考えに至って感心した自分を恥じた。

ゴホン

一行の無事な帰還に1通りのねぎらいの会話がなされたところで石川がわざとらしく咳払いした。

石川「無事はいいけどよ、いい加減にココから出して高級ホテルとやらに案内してくれないかな?もうそろそろ皆限界だと思うぜ?」

百樹はたしかにというように一度頷いた後に言った。
「みなさん、大変お待たせしました。すぐにそうしたいところなんですが、一つだけ懸念があります。それは...皆さんが元に戻ってからのほうが、より良いのではないか?という事なんです。」

石川「それは、そうかもしれんけど…どうやってそれを調べるんだ?そして、どうやってもどす?」

百樹「それが、できそうなんですよ。」

そういうと百樹は後ろにいる雫の方を見て言った。
「どうだね?わかりそうかね?」

雫は部屋全体を見回すと耳を澄ました。

雫には入れ替わっている人の声だけが聴こえるのだ。

(どうゆうこと?)
(なにしてるんだ?)
(子供に何ができるんだ?)
(早く返してほしい...)
(なんでこんな事に...)
(あ、俺だ...手当されてる...こいつらを信じた方がいいのか…あ、サトシ!アイツも逃げようとしたのか?)

雫は言った「だいたい把握できました。」

百樹は頷いて言った。

「ありがとう。誰とだれが入れ替わっているのかはわかるかい?」

統(それは僕が把握しました)

百樹「助かるよ。」

凶(俺が無理やり戻してやってもいいぜ)

百樹「いや...気持ちは有難いがそれは最終手段にとっておこう。」

それを見ていた石川が言った。
「先生?あんた誰と話してるんだ?」








ゴホン

百樹は一つ咳払いをすると石川の質問にには答えず全体に聴こえるように言った。

「これから呼ばれた人はちょっと、詳しい話を聞かせて貰いますので別室へお願いします、それが終わりましたらココを移動したいとおもいますので...。」

そう言ってニコっと笑った。

やはり、雫の秘密はあまり大勢に知らせるべきではないと思えたからだ、世の中にはどんな輩が居るかわからない、我々だけでも多すぎたくらいだ。

とくに石川の様な男はなんとなく安心出来ない様な雰囲気を持っている様に思えた。

石川はフンと鼻を鳴らすとそれ以上聞こうとはしなかった。

その後、何人かの入れ替わっている人々を別室に呼んで、元に戻る方法を百樹、優、弥生、みすず、ゆりこで手分けしてレクチャーした。

皆一様に驚いていたが、戻った事に感謝した。

ただ1組、麻酔の効いている山里先生と瀬戸友也は、どうすることも出来ないようなので、起きるまで待つことになった。

百樹はよしよしと頷いた。

色々なハプニングがあり、様々な疑問が未だに未解決ではあるが、ひとまずここは上手く収まりそうだと安堵した。

しかし、このあと、この安堵が嵐の前の静けさであることを思い知らされるのだった。

そして、嵐はやってきた。

扉を開けて。














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