CHANGE syndrome

ハイブリッジ万生

文字の大きさ
41 / 46

光の子

しおりを挟む





山村ゆり子は、すぐ近くで仰向けになって足を押さえている娘に話しかけた。

痛む場所は人によって違うらしい。

ゆり子「...大丈夫なの?」

みすず「ぅぅぅ...なんとか...ていうか...あれなんだろ?」

ゆり子「あれ?」

みすずは天井の真ん中当たりに出来た光の輪を指さした。

ゆり子「あら...なにかしらね...」

ゆり子がまるで世間話でもするように言うと光の輪はみるみると拡がっていった。

みすず「...うわぁ!」

ゆり子「まぁ...」

輪の中心から誰かが降りて来るのがみえた。

その人の足元から細い光が一直線に伸びて雫と繋がっている様だった。

みすず「あ、あの時の光の糸って...これだったのか!」

ゆり子「え?なに?なんの糸?」

百樹「どうしました?」

近くにいた面々が山村親子の異変に気がついた。

ゆり子「いえ、人が...たぶん人が上から...」

優「え?なにも見えませんが...いてて」

みすず「え?本当に?見えないの?」

山崎「たしかに...私にも見えません...」

観月「くぅ...なんでもいいけど...これ以上厄介なのが増えるのは...勘弁して欲しいわね...」

たしかに...というように一同が頷く。

優「あの...もしかしてなんですけど...」

百樹「なにかね?」

優「山村さんたちにだけ見えて...雫ちゃんと関係あるって...例の...」

百樹「あ...そういえば統君が言ってた...六番目の...誰だっけ?」

弥生「つばさ」

百樹「そう!それだ!というか弥生くん無事だったんだね!よかった」

みすず「弥生!おかえり!」

弥生「ただいま...あんまり無事でもないですけど...やっぱり自分の体がしっくりくるので戻りました…痛みは変わらないみたいだし…」

優「そか...よかった。」

弥生「......うん。」

山崎「あの、すみません、全くお話が見えないんですけど...結局どうなるんですか?...我々」

やはり空気を読まない山崎が割って入った。

「もう一度やる気じゃないのか?広範囲なんとかってやつを...」

茶髪の少年が話しかけてきた。

優「やっぱりそれか......ていうか誰?」

「俺だよ!瀬戸友也!気絶した奴と入れ替わったら痛みが無くなるかと思って試したんだよ!」

優「あぁ、あのビビりの先生か」

「ビビってねーし!」

山崎「あの、そんなことよりなんですか広範囲なんとかって...」

百樹「...話せば長くなる」










その人を詳しく観察すると、肩の辺りから光がオーロラの様に波打って見ようによっては翼のように見えなくもない。

それゆえ、ゆっくりと降りてくる姿は天使に見えなくもない。

ただし、見ることが出来たらの話だが...。

翼(おひさしぶり)

統(急に呼び出してすみません)

翼(いいのよ…そろそろオーストラリアの未知の生物探検も飽きたところだったし…)

雫(素敵...)

翼(聞きたい?)

鏡(そのお話はまた今度ね...また今度が有ればだけど...)

統(あの時は我々はほとんど意識がなかったんですが...率直に言ってどうなると思います?)

翼(...そうね)

ゆっくりと光を閉じながら降りてくる翼の思念が流れてきた。

翼(...よくわからないわ)

凶(おい!ふざけんなよ!)

翼(あら、乱暴者の凶ちゃん、元気?)

凶(あ?あぁ、まぁ、ぼちぼち...じゃなくてだな!)

翼(そうね...唯一記憶のある私がよくわからなくて大丈夫かって聞きたいんでしょ?)

凶(わかってるならはぐらかすなよ)

翼(でも、それはあんまり意味がないわねぇ)

凶(は?なぜ?)

翼(あの時とは...明らかに違う...貴方も...鏡も...護も...統も...そして1番変わったのが雫かしらね)

雫(そ、そう...かな?)

翼(そして、1番違うのが、あの時は無理やりさせられた事を自発的にやるわけでしょ?全然違うわ…どうなるか...予測不可能...鏡もわかってて提案したんでしょ?)

鏡(...ええ)

統(事後承諾みたいな形になって...すみません)

翼(いいのよ…いずれにしても雫の意思を尊重したのであれば…結果がどうあれ...)


凶(...まじかよ)










みすず「観て!光が雫ちゃんに集まっていってる!」

ゆり子「あら、本当ね」

相変わらず世間話みたいな会話をするゆり子。

しかし、その光景のあまりの神々しさに2人は、しばし痛みを忘れてしまうほどだった。

百樹「あの?どうなってるんです?」

みすず「え?えーと…今、光ってる天使みたいなお姉ちゃんがゆっくりと降りてきてて雫ちゃんに入るところ」

山崎「あの...それで広範囲なんとかって...」

優「広範囲絶対感応です。」

山崎「はぁ...それが起こると、我々はどうなるんです?」

優「え?と、どうなるんでしょう?先生?」

瀬戸「そりゃあ、狂っちまうんじゃないか?」

山崎「狂うんですか!」

百樹「いやいや狂うっていうのは違うとおもう...それぞれが自我を失ってなかったし、それを言うなら狂った様に見えるくらいに影響を受ける…が、正解かな?」

山崎「なんですかそれ...いづれにしてもやばそうじゃないですか!止めさせないと!」

瀬戸「そうだそうだ!あのビジョンを見たやつならわかるだろ?危険だって!」

弥生「...でも、この状況も相当危険だけどね」

優「危険を承知で賭けにでたって事か...」

瀬戸「そんな賭けに乗れるかよ!」

みすず「乗れるか乗れないか…ていうより...乗るしかないみたいよ?」

百樹「どうしました?!」

みすず「光の集合が終わった。これは私のカンなんだけど...」

百樹「はい?」

みすず「なにか起こるよ!」

百樹は思った...その何かが何なのか知りたいんだが...と。









翼(じゃあ...いいのね?みんな)

雫(...うん。)

統(もとより、異論はありません)

護(む...無論だ)

鏡(凶?わかってるわよね?)

凶(うるせーな、みなまで言うな!ただちょっとな)

鏡(ちょっとなによ?)

凶(みんなで居るのが楽しかったなぁ...て、思ったんだよ)

鏡(......)

統(みんな同じ気持ちですよ)

雫(ごめんなさい)

翼(私の勘だと...またみんなで笑い合えるわ)

凶(なんだよ勘かよ)

翼(ふふ...勘て言っても...高次元の方の勘よ)

凶(はは...なんだよそれ)

翼(じゃあ...いいわね、復唱して...雫と心を一つに)

護(む...雫と心を一つに...)

統(了解、雫と心を一つに...)

鏡(もちろん、雫と心を一つに...)

凶(わかってるよ、雫と心を一つに...)

雫(みんな......ありがとう)


瞬間的に時間が止まったと思えるほどの精神の圧縮が起こり...


瞬時に弾けた。










山村みすずは至近距離で爆弾が爆発するのを見たことがなかった。

もちろんそんな人間が居たら大ニュースになってるはずだが...もし仮に、みすずがその経験者であればこう言ったはずだ。

『見たことのない規模の爆弾が破裂した様な光の爆発』
であったと...

そして、その体感の爆発範囲は部屋全体どころか街をそのまま飲み込むほどの範囲に威力が届いようにみすずは感じた。

その場にいた全員が撃たれたようになって、誰一人苦痛の声を漏らさなくなった...。

そして、静かに泣いていた、悲しいわけでもなく、悔しいわけでもなく、ただ無心に涙が出てきたのだ。

百樹「これは...あのビジョンと同じ...いや、違う...」

確かに皆が涙してる所までは似ていたが、誰も叫んだり暴れたりしてる人がいない...それよりなにより自分の中の表現しずらい心理状況を整理できずにいた。

いままで感じていた痛みがなくなった訳ではない、それを凌駕する感情に驚いていた。

この感情はたぶんあれだ...感謝。

ジャック(なんやそれ..人間業ちゃうやろ…てゆか神業でもない...なんなんやこれ)

未有「う...うぅ」

ビリビリと見えない精神波が部屋中の空気を震わせていた。

未有「なんなのこれ?」

ジャック(たぶんやけど...恐ろしい圧力のシンパシーシンクロウェイブを至近距離でくらってるんちゃうか?)

未有「そ...そうなんだ...で?私は神様になれないの?」

ジャック(どうやろな、心が神格化をはじめて心が神になるまで、何をしても止まった試しがないけど...てゆか、あんた強いな、ワシもうなんか...泣きそうやわ)

未有「泣く?なんで?私はとっくの昔に泣けなくなったの」

ジャック(さよか...やっぱりお嬢ちゃんの方が神様向きやで)

石川「おい、ちょっと待て」

石川がヨタヨタと車椅子を引いて未有の前に現れた。

未有「なによ?」

石川「神様になる前に言っておきたい」

未有「なにそれ?神になったら文句が言えなくなるから?」

石川「文句って言うか...人の言葉が通じなくなるかもしれないしな。」

未有「...は?」


石川「おまえの痛み...」


未有「まだそんなことを...」



石川「教えてくれて...ありがとな。」

バシィッ

何かに亀裂が入る音がした。



ジャック(おい!未有!)



未有「なによ?」



ジャック(おまえ......泣いてるぞ)













しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...