雷魔法が最弱の世界

ともとも

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異世界

学校

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モンスターを討伐をした次の日。

セクアナは怪我が酷かったからベッドに寝込んでいる。
あの後、母に回復魔法をかけてもらったので、数日間安静にしているといつものように戻るだろう。
昨日はとても危なかった。一歩間違えると今セクアナはこの世界にはいない。

もっと、もっと強くならないと。
こんなんじゃ魔王を倒す依然に魔法騎士に入れない。

強く強く。
自分の目標をイメージしながら修行した。
そして新しい技を考える。

修行が終わると、セクアナの様子を見に行った。
朝と昼に見た時はずっと寝込んでいたから心配になる。
中に入ると部屋のど真ん中に大きなベットがあり、そこでセクアナの目は開いていた。

よかった、やっと目を覚ましてくれた。

ただ手や足がしっかり動いていなくて、今までで一番元気がない。

「調子はどう? 」
そう言いながら、タオルを水で濡らしておでこの上に乗せる。
セクアナは、体のあらゆる場所に包帯が巻かれている。
たくさんこけて傷だらけだったからだ。

「まだ全身が痛いかな。骨折や打撲はしていないからすぐいつものように動けると思うよ。だけど・・・・」
俯いて震えた声が聞こえた。
「昨日の恐怖がまだ残っていて、少し怖いかな。いつものようにうまく笑えないや。ハハハハ」

昨日の猪の影が残っているのだろう。その通りだ、死にかけたから。
あの出来事を忘れようとしても印象が強すぎて無理だろう。
何か楽しいこと、笑えることがあったらいつものように心が戻るかもしれないが。

「ねぇ。今日はずっと一緒にいてくれない?」
「もちろんだよ」
僕ができることはセクアナに頼まれたことをやるくらいしかない。
あの時、セクアナと離れてしまったからあんなことになった。ちゃんと近くにいればここまで怪我をしなかった。
僕のせいだ。
もう絶対に傷つけさせない。
強く決意をかためた。

ガチャ!

母も入って来た。
「はい、今日の晩ご飯のおかゆだよ! 早く元気になりなさいよセクアナ。今日、トモヤなんてとっても心配してご飯を残したんだからね」
「あーーー、もう、言わないでよ」
顔を赤くして母に怒った。
「ウフ、ウフフ」
やっぱりセクアナはいつものように笑えていない。

「でもよかった。無事に帰ってきてくれて。本当びっくりしたんだよお母さん。
ただいまって言われたからドアを開けると傷だらけの二人がいたんだから」
僕は反省して自分の頬を掻いた。

「それにしても、あと少しで春が来るね。そっか、もう学校にいく季節かぁー」
「んんんん!!」
「んんんんん!!」

僕とセクアナはその言葉に大きく反応した。

あれ、セクアナも反応するということは学校のシステムがあることを知らなかった?

「あ母さん! 今なんて言った?」
「学校に行く季節って言ったけど・・・
あれ、言っていなかった?」
「聞いてません! それって7歳になってから行くの?」
「そうだね。だからあと4ヶ月後に入学するよ!」
「本当に?」
セクアナもこの話には食いついてきた。意外な話で、元気が少し戻ったかな。

それよりもちょっと待って。
この世界に小学校のようなものがあるのか。

えっ・・・・
勉強しないといけないのかな・・・
今まで異世界のことばかりだったが、元の世界っぽいこともあり、気分が少し落ち込んだ。
まぁ小学校の低学年くらいなら簡単か。

僕はすこし嫌だったが、セクアナはとても喜んでいた。
「私、ずっとみんなで一緒に勉強したり遊んだりするのが夢だったの。だから嬉しい。やったぁぁぁぁ!!」
この話を聞いて、いつものように笑えて、明るいセクアナに戻っていた。

よかった、よかった。

「そのためにこれからいろいろ準備しないといけないね。元気になったら手伝いなさいよ」
「うん!」

この話で盛り上がったから母の作ったおかゆは冷めていた。

「ああ、ご飯冷めたね。もう一回温めようか?」
「そのままでいいよ」
「そう、それじゃ食べさせるから口を開けて。 あーーーーん!」
「あーーーーん! うん、美味しい!」
楽しそだ。

「お母さん、今日はここでみんなで一緒に寝よ! 僕たちも無事に帰ってきたし、久しぶりにみんなで寝たいな」
僕は怖いと言っていたセクアナのことを思い出して母に提案した。
「そうだね、久しぶりにそうしよっか!」

大きくなってから大体、別々にみんな寝ていた。
久しぶりに家族で寝れる。

話が終わり、僕と母は布団を持ってきて床に敷いた。
仲良く川の字になって寝た。

ああ、なんだか温かいな。みんなの温もりが。


4か月が経った。

学校に制服とかはなく、持ち物は書くための鉛筆と、手提げ鞄くらいだった。

セクアナは大怪我をしても、5日間くらい安静にしているとすぐに治った。今は学校が楽しみでピンピンしている。

「今日は入学式だからお母さんも一緒に行くよ。でも一回しか着いていかないから道を覚えてね!」
「はい!」
「特にトモヤ、あなたは方向音痴だから気をつけなさいよ。初めての道なら必ず変な方向に行くから」
「ギクッ、わかってるよ」

修行の中でランニングは、何回も走っているコースだから覚えて、方向を間違えることはなくなった。あっ、でも始めは道を覚えるのに苦労したな。
猪の討伐はセクアナが怖がって手を引っ張りながら森の中に入ったから迷わなかったけど。今から行くところは方向を間違えそうで怖い。
まぁセクアナと母がいるから大丈夫だろう。

「じゃあ、出発するよ」
「行ってきまーす!!」
みんなで声を揃えて言った。

ここは田舎で学校までが遠い。
母の話によると3キロメートルくらい離れているらしい。

「あっ、セクアナたら手ぶらじゃない。鞄どこに置いたの?」
「えっと、忘れてた」
「じゃあ一緒に取りに行こう。悪いけどトモヤ、後で追いつくからまっすぐ進んでてくれない? すぐ戻るから」
「はい! まっすぐですね」
僕は言われた通りまっすぐ歩いた。

歩きながら自然を見るとやはりここは豊かだと思う。木も植物も生き物も、いきいきしている。

「・・・・・・・」
しばらく歩いていたが、二人は中々追いついてこない。
全く何しているんだ。

「トモヤーー。どこー?」

近くでセクアナたちの声がした。やっと見つけた。
一応僕は耳がいいから、遠くの声でも聞き取れる。

「おーい! やっと見つけた。全くどこ行ってたの? お母さん達行く方向間違えないでよ・・・・・」

空手チョップを頭に当てられた。
「痛ったぁぁぁぁ!」
「はあー、トモヤ馬鹿なの? まっすぐ進んでって言ったのにどうしてここを曲がったの?」
「あれ?」
僕の中でまっすぐ進んでいたのになぜか右に曲っていた。
あぁ、これが方向音痴か。
自分で認めざるを得なかった。

この後、母に手を繋がれていたから迷うことなく学校に着いた。
「やっと着いた! 結構距離があって疲れた」
「何言ってるの。明日からもこの距離を歩くんだよ」
「嫌だな、これを毎日か・・・」
ウキウキしているセクアナを横目で見たながら、ため息が出る。

学校は田舎だから木造建築で、歴史を感じる建物だった。
しばらくそれを見て中へ入った。
僕たちは、入学のために名前の手続きや、これからすることなどを簡単に説明してもらった。


そして入学式が始まる。

「スーーーー、ハァーーーー」
「緊張してる?」
「そりゃそうでしょ。だって待ちに待った学校だよ。あぁぁぁ、なんて嬉しい」
「フフフ、入場の行進で手と足が同時に出ないように気おつけてね。そんなことしたら恥だよ!」
「さすがに、そこまではしないよ。このために昨日練習したんだからね」
確かに昨日は家の中をよく歩いたり返事の練習をしていたな。
真面目すぎてすこし笑えてしまう。

セクアナは学校生活を体験したことがない。
女神の頃はいつも一人で大変だったと聞いた。
真面目で、いつも努力しているセクアナだからこそ楽しんで欲しい。
恥をかかないといいけど・・・

「新入生、入場!」
マイクのようなもので音が鳴った瞬間、並んでいた列が進んだ。
日本のように音楽は流れず、拍手が起こる中、歩いていく。
セクアナは僕の前だ。
緊張しているのかとてもうずうずしていた。

来た来た、そろそろ歩かないと・・・


はぁーーー。
セクアナはあれだけ張り切っていたのに結局、手と足を同時に出して恥ずかしい歩き方をしていた。
緊張のせいで体が思うように動かないんだろうな。

顔が真っ赤になっていた。
耳まで赤い。
いろいろ練習してたけど、ここで失敗していてかわいそうだ。

それぞれ椅子の前に立ち入場が終わった。
「入学生の皆さん、どうぞお座りください」
みんな一斉に座ったが、セクアナは一人遅れて座った。
もう恥をかくのをやめて欲しい。あまりにかわいそうで見てられない。

あたりを見渡すと生徒は二百人くらい並んでいた。こんな田舎でも意外に生徒が多くて驚く。

そんなことを考えていると、もう名前を呼ばれるところまで進んでいた。

「セクアナ・フローレス」

「っ! ・・・・はっ、・・・はい・・」
「ぷふっ」
思わず笑ってしまった。
結局練習していたけど全て失敗したな。なんかもう面白くなった。

「トモヤ・フローレス」
「はい!」

「・・・・・以上、入学生でした」

これであとは校長先生の話しだけになった。学校でいつも見ている通り、始めに礼をしてマイクのような魔道具の前に立った。

「みんな新一年生として、入学おめでとう。これからも頑張ろうね。以上です」
そして礼をして着席された。

えっ! おお!
この世界は校長先生の話が短いぞ。これはいい。やっぱり異世界はちょっと違うね。

「新入生、退場」

パチパチパチパチ、パチ、パチ。

こうして入学式は終わった。
そして僕たちの教室に案内された。
やっぱり、木造建築だから風情のある教室だった。

机に座ると同時にセクアナは、全身の力を抜いたように頭を机につけて倒れていた。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・!」

なんか怖い。変な呪文を言っているようだ。
「はぁぁぁぁぁーーー。死にたい・・」
小さくそんなことを言っていた。

「ぷっ、あはははははははぁぁぁぁ。ハッハハハハハ! 面白かった。本当に面白かった。あそこまで入学式で恥をかいた人、初めて見たよ」
「おい………後で覚えておけよ……」
これまで聞いたことのないドスの効いた声で言われた。

完全にキレている・・・・・

その声を聞いた途端、身の危険を感じ、すぐに謝った。

「はぁーーー。それにしても悲しいよ。せっかくの入学式だったのに」
「残念だったね、初めてがあんな大惨事になるなんて」
「本当だよー」
いろいろと話していると他の生徒達が続々と教室に入ってきた。
まだ小さいから入学式が終わると大体の子が親の元へ行っていたから、遅れてくるんだろう。

しかも、その無邪気な子ども達はセクアナに追い討ちをかける。

「あっ、あの子、歩き方や返事が変だった人だ」
「グサッ」
「本当だ。面白い子だ」
「グッ」
「ねぇねぇ、あんな歩き方していて恥ずかしくなかったの?」
「がぁはっ」
「うわぁぁぁん、もう、嫌ぁぁぁぁ!」
猛ダッシュで大泣きしながら教室を出ていった。

輝いた笑顔で無意識にそんなこと言えるから小さい子って憎めないよね。
ぷふっ、でも面白い。
おっと笑っているのがバレたら次は殺されるな。


「うわぁぁぁん、もう嫌。初日から大失敗したぁぁぁ、早く帰りたい!
お母さーーん!」
「うわっ!」
「きゃっ!」

思わず誰かにぶつかってしまった。泣いていたから前が見えなかった。
「あっ! ごめんなさい、ごめんなさーい」
謝りながら逃げていった。

ああ、最悪ーーーー!

私は誰もいなさそうな場所を見つけ、体操座りをして縮こまった。

恥ずかしいよーー。
せっかく練習したのに。
忘れたい。

しばらくそこに座って気持ちを落ち着かせた。
でもなぜだろうか。私はとても落ち込んでいたのに自然を感じているとすぐに開き直った。
そよ風や揺れる草木が私の気持ちを吸い込むように。

クヨクヨしていてもしょうがないと思い、勢いよく立った。

「よし! 教室に戻るか」

古い木だがピカピカになっている廊下を力強く歩いた。

「あのっ・・・・・    このハンカチ落としましたよ」
「あっ、ありがとう」
「さっきぶつかった時に落としちゃったから、ちゃんと渡せてよかったよ!」
「ごめんなさい。あの時いろいろ考えごとをしてたから周りを見えてなくて・・」
「いえいえ。大丈夫ですよ」
「ありがとね!」

青色の瞳でまっすぐ見て言った。そして綺麗な青髪を揺らしてながら通り過ぎる。

(美しいな・・・・)


「あっ、やっと戻ってきた。もう心は落ち着いた?」
「落ち着くわけないじゃん、あんな恥ずかしいことしてしまったんだから。でもメソメソしているとダメだなと思って。それにこのまま帰ったら、それもそれでまた恥をかくから」
「それもそうだね!」

色々あったがクラスは全員が集まった。残り
は先生を待つだけだ。
僕の前にセクアナの席があった。番号順に並んでいるらしい。
また生徒は田舎ということもあり、数が少なく十九人だった。

「あっ! 君、このクラスだったんだ。よろしくね! 名前なんて言うの?」
あたりを確認していると、セクアナがいきなり知らない人に話しかけたからびっくりした。

すごいな。もう友達できたんだ…
なんか羨ましい。

「ぼっ、僕の名前はカナメです」
「そっか、カナメ君か。席も隣だし、よろしくね!」
「うん、よろしくお願いします」
彼の顔が少し赤くなりながらも笑っていた。
僕と同じように初めての人には喋りにくいのかな。もしそうなら僕ともいい友達になれそうだ。

「その子、誰なの。知り合い?」
「今さっきハンカチを親切に拾ってくれたの。誰かと違って優しかったなぁー」

笑いながら地味に嫌味を言われた。
まぁ、和めてよかった。

そうこうしていると先生がきた。ガタイがいい男の先生だった。
怒ったら怖そう・・・・・

「よーし、みんな集まっているな。今日から担任になるイーグル・キャンベルだ。よろしくな! 今からホームルームを始めるぞ。今日は、めでたい日だからこの話が終わったら下校だ。しっかり聞いとけよ」
この学校のことやお祝いの言葉そして、明日の持ち物のことなどを話していた。最後に魔道具のような小さなペンダントを2つもらった。
エメラルドのような綺麗な石が埋め込まれていた。
こんなの小さな子に持たせて大丈夫なの?
壊したりしないのかな。
なんだか不思議な物だった。

「今からとっても大事なことを話すから聞いておけよ。これは、自分の魔力を少し使う代わりに身体能力が上がる道具だ。遠いgやつもいるし、これを靴につけて歩くと楽に、かつ早く歩ける。明日から遅刻しないように気をつけろよ。以上だ。では帰りの挨拶をだ。初めは俺が言おう」
「さようなら」
「さようなら!!」

今までの話は真面目にしていて、怖がっている子もいたが最後の挨拶だけは最高の笑顔で言っていた。
正直その笑顔はギャップがありすぎて可愛いかった。


学校が終わり母の元に戻った。まだ先生の可愛い笑顔が頭に残る。

早速、今日貰った魔道具を使ってみた。
カチャ、カチャ

靴につけた途端、魔石が強く光だした。

「うわあーー! お母さん綺麗だね」

セクアナも僕と同様につける。
「楽そうね。明日からはちゃんと二人で行くのよ。特にトモヤ! あなた1人で帰ると迷子になるからセクアナと一緒に帰りなさい」
「はーい」

僕たちは歩きだした。この魔道具のおかげで足が浮くかのように軽くなった。魔力をちょっとしか使わないから持続もできる。
とてもいい道具だ。
行きは少し疲れたけど、これをつけていると疲れるきがしない。

今日はみんなと手を繋ぎながら、ほのぼのと帰った。


帰った途端、
「オラァァァァ!」

ドッカン!!

恥ずかったことの腹いせにセクアナは強力な魔法を石にぶち込んでいた。

うわ……
怖いな。できるだけ近づきたくない。
バレないように家の中へ入ろうとしたが呼び止められた。

「さあ! トモヤも修行修行! みっちりと鍛えるからね!」
「ちょっと今日は疲れたから少し休ませてくれない……」
無理かなと思いながらもさりげなく断ろうとした。
「何言ってんの? 早くやるよ!」
「ええ……」

今日のセクアナはめんどくさくらりそうだ……

嫌な予感を感じた。
それは的中し、この日の修行はセクアナの気分が晴れる夜遅くまで続いたのだった。


学校に入学して数日たった。

今は勉強をせず、この学校の案内や一年生を迎える会や遠足など、仲良くなるために色々なイベントがあった。これのおかげで少し喋るのが得意じゃない僕でもクラスの子と仲良くなれた。
昨日、先生が学校の卒業までの予定を簡単に説明してくれた。大体の人は興味ないのか、寝てたり騒いだりしていた。先生も怒らなかったからこの話はそこまで重要なことじゃないかもしれない。でも僕は常識知らずだからしっかり聞いた。

その話によると、学校は9年生まで続いて、卒業すると自分の魔法を生かした職に就く。土魔法なら建築系、治癒魔法が得意な人は医者、他と比べると圧倒的に強い人は魔法騎士に推薦されるらしい。
基本的に魔法騎士試験は誰でも受けられるが、貴族がよく出るのでほとんどの人が諦める。
僕たちは目指す。

次に学問だ。
この世界の学問はあまり盛んではなく、大学や高校はないようだ。
魔法だけで色々なことができるから納得はできる。
平均寿命は日本と比べるととても低い。だから十五歳で立派な大人と判断されるらしい。
お酒やタバコなどはこの時から飲むことができる。
たぶん僕は躊躇して、成人してもすぐにお酒を飲めない気がする。


今日から授業が始まる。

一応、この一年の大まかな予定表をもらった。それによると、勉強は国語と算数くらいだった。あと月曜から金曜日まで4時間授業だった。
一年生だからそれくらいか・・・・

そんなことよりも異世界らしい魔法という授業があった。
先生によると生徒それぞれの魔力量や、応用力をみて将来、生徒に合う職業を判断するためにらしい。

魔法基礎、魔法文法、魔法実践などなど色々と分かれていた。


今から魔法の授業のため、みんな体操服に着替えている。運動着は、白の半袖と、青の短パンで動きやすい服だった。

この年だから男女混合で着替えるから少しセクアナが照れていた。

「あれ、セクアナ着替えないの?」
挑発するように言うと、こちらを睨みつけ、どこかへ行ってしまった。
多分トイレに行って着替えると思う。

まぁ、僕たち記憶を持ってこの世界に転生したから当たり前か。


「よーし、全員集まったか。今日はみんなの魔法の系統と、どれくらいの魔力なのか調べる。だから今出せる全力を打ち込んでくれ。じゃあ出席番号順にやってくれ。まずはアランだ。あの食害物を狙えよ!」
そして先生は指を刺した。その先には先生と同じ身長である木の的があった。

「はい! 僕から行きます!」

そう言って元気よくアランは一歩踏み出した。
得意げに立ちながら手を前に出す。

「すべてを燃やす炎よ、この手に宿りて敵を撃て、ファイアーショット!!」

ボンッ………

「よし!」

………えっ?

彼の放った炎は小さくて、木にあたってもすぐに消えてしまった。焦げ目はついているけど、これだけ? 
詠唱も長いし、威力も低いし、これがここでは普通なの?

僕はセクアナの耳元に近づいて聞いた。
「セクアナ、セクアナ、何あれ? もう終わりなの?」
セクアナも想像以上に威力が低かったから顔を引きつらせながらも答えてくれた。
「そうですね……私たちは修行をしているから威力が強いけど、何も教わってなかったらあれくらいかな……」
「あっ、そうなんだ……」
「目立ってしまうから全力ではなく、的を壊すくらいの力にしよ」
「そうだね」


それからも僕たちはレベルの低い魔法を見ていた。

あっ!
あれはカナメじゃん。
見たことがある顔と思ったらカナメが準備していた。
いつもみている優しい顔はしていなかった。魔法を出すためにとても集中している。
「ふぅ、グランドキャニオン!!」

その言葉と同時に、地面から石の柱のようなものが出てきた。

「ストーンクラッシュ!」
みるみる石は拳の形になり、的に向かって飛んでいった。

ドーーン

「おーーー」
「うぉーー」
ボロボロと音を立てて的が壊れた。
初めて的が潰れたので歓声が巻き起こった。

「すげぇー、お前すげーな」
みんなに囲まれてたくさん褒められていた。この中なら壊すだけでもレベルが高いからな。

セクアナの番になった。冷静に一番得意なアクアカッターで簡単に的を壊した。
あまりに簡単に倒していたからみんな呆然としていたが、少し遅れて大きな歓声が起こった。

次は僕の番だ。目立たないように頑張ってるような雰囲気を出そう。
みんな褒めてくれるかな。

「電気ショック!!!」
ビリビリッ!

大きな電気の音を立てて壊した。

「……え」
「……ねぇ、あれって」
「……うわっ、おい、あれは……」
「……おい、見ろよあいつの魔法」

嫌な視線が集まる。

この魔法を放った途端、みんな聞こえない程度にヒソヒソ話をやり始めた。
ある子は、僕と目を合わせると怖がって離れた。
先生も呆然と立っている。

これが雷魔術師の現実か……

「……あっ。トモヤ、おめでとう、よく倒した。さぁ次のやつ準備しろ」

「はい! では私、ホノカが次の番ですね」
「おっ、お前か。確か召喚魔法を操るようだな。お前は的じゃなくて、何か召喚してみろ」
「はい、ではいきますよ。
聖なる友よ、今現れて敵を撃ちなさい。いでよ私のパートナー!!」

下から魔法陣が出てきて、とても眩しく光る。ゆっくりと形が創られ、少し大きなウサギが現れた。
キュッ・・・・ シュッ、シュッ

そのウサギはスピードが速く目で追うのが大変だった。
すごいなこの人も。これが召喚魔法か。

ホノカさんによる魔法にみんな見惚れて、僕が魔法を出した時より空気は軽くなっていた。

こうしてみんな魔法を見せて今日の授業が終わった。

「フーーー、それにしてもみんな個性があって凄かったなアラン」
「そうだな、いろんな魔法があるんだな。それに的を壊す奴もいたからなあ」
「本当な、俺たちも頑張ろうぜ!」

授業が終わり、いつも話しているグループの人たちのところへ行こうとした。
「アラーン、君の魔法も凄かったね。いいね炎……」

笑顔でそう言いながらみんなの元へ行こうとしたが、彼らの言葉で足が止まってしまった。
「おい、僕たちに近づかないでくれ悪魔」
「そうだ。お前みたいな悪魔と話すことなんてねえよ」
「さわるな、服が汚れる」
「俺たちと同じ空気を吸ってんじゃねえよ!」
「行こうぜ……」
足早に彼らは去って行った。

今まで仲良くしていたのに雷魔法を見せただけで態度が変わった。
覚悟していたけど悲しい。まさかここまで変わるなんて。

今日、魔法をみせてからクラスでは白い目で見られるようになった。影で悪魔と言われたり、怖がられたり。
そして友達がいなくなった。

このことを母は言っていたのか。

悲しみながらセクアナと一緒に帰ろうとした。僕が落ち込んでいたため、セクアナは何も言えずにいた。

苦しい気持ちでいっぱいだった時、光が差し込んだ。

「ねぇぇぇーーー! そこの君、トモヤだったけ?」
「はっ、はい……」
いきなり声をかけられてびっくりした。呼んでいたのはホノカで召喚魔法の素質がすごくある人だった。
そんな人が僕に用事でもあるのかな。
彼女とはあまり話していないが、赤色の髪が長く伸びていて、とても明るい人だったような……

「はぁはぁ、名前が合ってて良かった。私はホノカ! 君の魔法がすごくて授業終わってからずっと気になってたんだ。
今から帰るんでしょ? 
私も一緒に帰っていい? 
色々聞きたいことがあるから!」

他の人とは別で明るく接してくれた。
とっても嬉しいな。

「あの、怖くないんですか? 悪魔と同じ魔法だけど……」
「なんで? 魔法が雷なだけで何も怖くないじゃん」
その言葉を聞いて救われた。
ああ、ちゃんと心で信じてくれる人もいるんだな。落ち込んでいた気持ちもそれによって晴れた。

そうして一緒に帰ろうとした。

「トモヤ!」
「ん?」
後ろを向くとカナメが立っていた。どうしたのかなと思っていると、腕を引っ張られて少しセクアナたちと離れた。

「ねぇ。セクアナ……たちと、一緒に帰るの? 僕も一緒に帰っていいかな?」
「いいよ。けど、どうして?」
質問するとカナメの顔は赤くなっていた。
「いや、その……なんかセクアナのことが……気になって、いろいろ知りたいなって思ったから……それにトモヤは兄弟だから何か知っていることを教えて欲しいし……」

あっ、わかった。たぶんカナメはいつからかわからないけどセクアナに恋してるな。
そんなことが分かると少し僕はニヤニヤしていた。
応援したいな。

僕は快く、いいよと返事した。
それにしてもカナメは僕を怖がらずに、態度も前と変わらず接してくれて嬉しいな。

「さて、みんな帰ろうか!」
セクアナとホノカは僕たちの方に寄ってきた。

「うん、そうだね。それにしても今、カナメとなんの話をしていたの?」
「うっ……それは男同士の秘密だから内容は話せないよ」
「そう」
少し気になるのか、カナメの方をセクアナは向いた。
カナメは絶対教えないと思うが。

でも今、2人は見つめ合ってる。いいね。青春だね。

カナメはもちろんほっぺが赤くなっていた。

こうして僕たち四人は並んで仲良く帰った。たくさんの非難をみんなから浴びせられた。
本当は悲しい。

けれど今は、友達がいなくならなかった事を喜んでもいいよね!





























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