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異世界
父の日
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学校に通い始めてから約半年が経った。
相変わらず、僕は悪魔と言われ、みんなからの信頼は最悪だった。だがカナメ、ホノカ、そしてセクアナは友達として接してくれた。
僕以外のクラスメイトは、みんな仲良しだから羨ましい。けれどこの三人との生活は楽しいものだった。
また幸いなことがある。それは他の学年との合同訓練がないことや、バレないように魔法の力を弱めていることもあり、雷魔法を使うことを知っているのは僕の学年と、この学校の先生だけだ。先生は一応魔法の制御ができているので、他の生徒と同じように接してくれる。
最近は国語の授業でこの世界の文字を全部覚えた。紙が高いこともあり、大体みんなボードに白い粉の出る石、チョークみたいなものを使って勉強している。まぁ、家に本が数冊あったからだいたいの文字は知っていたんだけど。
次に算数だ。
この世界は計算が大事なのか知らないけど、とても丁寧に教えて、進むスピードが遅い。ちょっとレベルが低すぎて面白くない。
授業で目立ちすぎると僕のことが嫌いな子たちに、「調子乗ってる」と陰で言われるからめんどくさい。
意外だったことがあり、いつも真面目で優等生なセクアナは算数が苦手だったことだ。答えが10以上になる足し算が今でも何かに書かないと計算できない。
「7+6は……」
「えっと……7と1、2、3………14!!」
「あ、おしい! 13だよ」
「はぁー、難しい」
こんなふうにまだ暗算ができない。
まぁ……セクアナ頑張れ!
勉強のことは置いといて次に魔法の訓練だ。
クラスの中で優秀な人と、まだ修行が足りない人に分けて練習するようになった。
運がいいことに優秀なメンバーがいつも仲良くしている三人と僕だけだから嫌がらせをされることもない。
「見て見て! 最近、魔力が少し上がってウサギが大きくなったんだよ」
「本当だ、すごいね」
「大きくなったけどまだ可愛い」
「そうだね」
召喚魔法は珍しいから僕たちは魔力の上がったホノカに感心していた。
魔法の練習時は先生たちが5、6人くらいきて、詳しく教えてくれる。始めは全然魔力がなかった子でも結構成長している。でも僕とホノカは滅多にない魔法だから専門の先生がいなく、あまり教えてくれない。
でも基礎や新技のためにアドバイスをくれたりする。
僕も頑張らないと。
今は奇襲を仕掛けるため、上空から雷のように威力のある攻撃で、かつ避けれらないくらい速く落とせるような新技を練習している。
空からだと距離もあるし、電気ショックくらい速く落とせるいいなと願っている。
なによりも上空に雷雲を作るのが難しい。奇襲のためだからバレないようにちょっとずつ電気を雲に送らないといけないから時間がかかるし、落とす時の操作も難しいそうだ……
今は小さな雷雲を作るまでできるようになった。
まだまだ先は長い。
今日の魔法の授業も終わり、ホームルームが始まった。
「お前ら、席につけ。おい、そこうるさいぞ。よし、今からホームルームを始めるぞ。大事なことだからしっかり聞いておけよ。一週間後に何があるかわかるか? ほら、カナメ答えてみろ」
「父の日です」
「そうだ。君たちを産んでくれた大切なお父さんのための日だ。だから喜ばせるために、どんなプレゼントをあげるか考えておけよ」
「はい」
「はーーい」
「以上。じゃあみんな、さようなら!」
「さようなら!」
やっぱり先生の最後の挨拶だけは優しい笑顔だな。
僕は今、いじめを受けている。
物を隠されたり、悪口を言われたりした。誰もいないところに連れて行かれて三人の男子から暴力を振られたこともあった。
しかし、セクアナとの修行のおかげもあり全てを受け流して、何もなかったかのようにいつも教室に戻っていた。カナメたちに「トモヤとは一緒にいない方がいいぞ」と言って僕を1人にしようとしていたこともあったが、それを断って僕と仲良くしてくれる。
色々されるが、カナメ、ホノカ、セクアナがいて、僕は1人じゃないから全然苦しくない。
そして今日は帰ろうとしたら靴がゴミ箱に捨てられていた。
「はぁー、それにしても毎日こんなことをやって飽きないんだな」
「みんなトモヤに対して理不尽だよねー
雷魔術師は悪い噂があるけどそんなの関係なく、トモヤは優しいのに・・・・」
ああ。なんていい人たちなんだ。ちゃんと内面を見てくれる。
僕が感動しているとセクアナがニヤニヤしていた。
「トモヤ、照れてるよね。フフフフ」
「ああぁ。もう、友情という言葉に感動しているのに壊さないでよ」
「いやー、トモヤが照れてるのあんま見ないからちょっとからからかいたくて」
「最低だね」
「まぁまぁ……」
今日もみんなで帰った。
家に帰ると早速、先生に言われた通り父へ何をプレゼントするか考えた。
それでも僕は父と会ったことがない、どんな人がわからない。
結果、母に父のことを聞こうという考えに至った。
「ただいま!」
「おかえり」
「晩ご飯なに?」
「今日は、野菜をたっぷり入れたグラタンだよ。速く手を洗ってきなさい。もう少しで、できるから」
「はい!」
こうして僕たちは手を綺麗に洗って、テーブルを囲んで座った。
「お母さんもうすぐお父さんの日だよね。僕たちまだ一度も会ったことないから教えてよ。産んでくれた感謝のためにプレゼントをあげたい!」
「私もお父さんについて聞きたい!」
「そう、貴方達も成長したね」
そう言って優しく微笑んでくれた。
「お父さんについて話す前にちょっとセクアナと2人になっていい?」
「……? はい」
そうして僕は家の外に出た。暇だし、魔法の修行でもするか。
セクアナはなにを話されるのかわからず、首を傾げていた。
トモヤが外に出ると静寂が訪れた。
しばらく黙っていたが、お母さんは覚悟を決めると話を切り出した。
「ごめんねセクアナ、実は貴方は私の子どもではないの」
「え?」
あぁ……ごめんなさい知っていました。
天界で色々設定したから……
そんなことは言えない。
というか私の設定のせいでお母さんを悩ましていたので、罪悪感が芽生えてしまう。
「今まで黙っていてごめんね。セクアナはある時、玄関前に置かれていて親も誰かわからないの」
「あ……そうだったんだ。ありがとうお母さん、ちゃんと話してくれて。両親は誰かわからないけど、これからもお母さんはずっと私のお母さんだよ!」
「よかった! これからもセクアナは私の大切な、娘だよ。トモヤのこともよろしくね!」
「はい!」
力強く抱きしめてくれた。
私は幸福な気持ちになった。
話が終わり、トモヤを呼びに行く。
「もういいよ入ってきて」
「ぐぬぬぬぬぬ……」
「トモヤ!」
呼ばれる声など聞こえないくらい雷を落とす練習をしていた。
「てい!」
「あ、痛い!」
頭にチョップされてやっと気づいた。
「魔法の修行するのはいいけど、お父さんについてお母さんが話してくれるから早く行くよ」
セクアナに連れられて家に入った。
「なに話していたの?」
「大人の話だよ」
そう言って何の話をしていたのか教えてくれなかった。
「お母さーん、僕のお父さんはどんな人なの、何で帰ってこないの?」
「今から話すから落ち着いて座りなさい」
「はーい」
席に座ると話し始める。
「この国には大事なルールがあってそのせいでお父さんは帰ってこれないの」
悲しい事実を話すと母の声は暗くなった。
でも、
「実はお父さんは貴族で今、魔法騎士なのよ。とても勇敢な人だわ。もしトモヤたちが魔法騎士団の試験に合格したら会えるかもよ」
「本当!」
父に会えるかもという淡い期待に喜んでしまう。
「話を戻すよ。お父さんがいないのはね、身分が違う人間同士が結婚するのはダメというルールや、魔法騎士の仕事で大変だから会えないの。昔はお母さんも王都で暮らしてしていたのよ。そしてお父さんが一目惚れして猛烈にアピールされたから付き合ってて、その時はとってもかっこよかったな!」
母が父の話をしている時の顔が今までに見たことないほど生き生きしていた。
大好きなんだな……
「だけどやっぱり身分が違うこともあり、相手の両親からとても反対されたんだよね。お父さんが何度も何度も親に頼んだこともあって、お父さんの両親も子どもが欲しいという思いがあったから結婚できたのよ。でも国のルールがあるから、王都を離れて暮らすという条件が出されたんだ。
だから私たちはこんな田舎にいるんだよ。それにお金も支援してくれているから安心してお母さん達は暮らせてるわ。
今は手紙くらいでしか繋がりがないし、この機会にお父さんへ最高のプレゼントをあげようね!」
思ってた以上に複雑だった。だけどお父さんは、僕たちの目指している魔法騎士なんだな。
誇らしい。
いつか会えると嬉しいな。
「さぁ、ご飯を食べましょう! 冷めてしまうよ」
今日のグラタンはいつも以上に美味しかった。
プレゼントは何を渡そうかな……
父の人柄がわかったが、プレゼントを決めるのは難しかった。
結局、何も案は出ず今日もベッドに入って眠るのであった。
今日は学校でお父さんに何をプレゼントするかみんなで話し合ったり、工作したりをした。
「トモヤ、君は何をあげるの? 僕はお父さんがいつも家の建築や農業で疲れているから、癒せる物を作りたいと思っているんだけど何かあるかな・・・・」
「うーん。僕も今は考えに中かな。なんか普段しないことだから難しいね」
あれ?
そう思えばセクアナ達はいないね。どこ行ったのだろう…
いつもは四人で相談するが、どこかに行っているのか教室にいなかった。
癒せるものか・・・・
「そうだ! カナメの技術なら露天風呂とか作れないかな!」
「ロテンブロ?」
あっ、そうかこの世界では露天風呂の意味がわからないのか。
カナメにちゃんと説明するためにボードを持ってきて説明した。
「ここをこうやって、ここに石を置くと簡単に、ほら! どうかな?」
「うわー、すごくいいアイデアだよ!
それに外で見る星空はとっても綺麗だからね」
「うん!」
こうしてカナメが送るものは決まった。
「ただいま!」
大きな声が教室に響いた。
そこにはホノカが帰ってきていた。
「見て見て! どう、この花束綺麗じゃない? これでネックレスを私達は作るの」
目をキラキラさせて楽しそうだった。
イベントってやっぱり準備している時が一番楽しいよね。
「でもホノカそんな器用なことできるの?」「細かい工作とか作る時、大体セクアナに手伝ってもらっているから」
「まぁ、セクアナが教えてくれるから大丈夫かな……」
「うん、私も全力で教えるよ!」
「そっか」
あとは僕だけだな。
何をプレゼントしよっかな。喜んでくれるものか。
「うーん」
頭を抱えて深く考えた。
「トモヤ」
「うーーーん」
「トモヤ!」
「っ、はい!」
「僕のことも助けてくれたから、何でも相談に乗るよ」
「ありがとう!」
頼もしいな。
でもアイデアが全然浮かばない。
小学生の時は折り紙を折っていたような……
紙が欲しいな。
そうだ! 自分で作ろう。
確か、草を乾燥させると紙のようなものになるって教えてもらった気がする。
すぐに挑戦し始める。
そうして僕はまず紙の形を作るための型を作った。木で形を作ったが、ひっつけるものがないからカナメの粘り気の強い泥を出してもらいどうにかひっつけた。
次に草を取りそれをゆでた。
そのゆでた草を包丁で細かく切って下に板か何かを引いてその上に細かくした草をのせる。草を使っているからお母さんに不思議な視線を向けられ恥ずかしかった。
どうにか草の繊維だけ残ったら紙のようになるんだけどな……
失敗しないためにも10個くらい余分に作った。そしてあとは日当たりの良いところに置き乾燥するることを待った。家にも3個おいた。
成功すると良いな。
僕は大きな賭けをした。
父の日まであと3日になった。僕達の父は王都にいるから届けることを考えると実質あと2日だ。
紙は家に置いてある3個は失敗してほとんど固まらなかった。草が破けて紙になっていなかったり、湿り気が多く明日までに乾かないものばかりだ。だが学校に置いてある紙が1つだけ成功しそうだ。
そこはちょうど日の当たる場所だったから上手くできた。
周りがすこしだけ乾いてなかったから明日には完成するといいな……
翌日、成功していることを願いながら学校へ行った。
あれ?
いつも置いていたところに草の紙がなかった。
あれ? あれ?
僕は必死に周りを探した。
風に飛ばされているかもしれない。
一応、重りは置いていたけどその石も無くなっていた。
「トモヤ、大丈夫。何かあった?」
「あはよう! トモヤ、朝からドタバタしてどうしたの?」
セクアナ達が寄ってきてくれた。
「お父さんのために作っていた手作りの紙がなくなったの」
「それはたいへんだ! 僕達も探すよ」
「わっ! 大変じゃん。早く探さないと」
みんな僕のために必死に探してくれた。
本当僕の友達は頼もしいな……
結局、見つからず教室に戻った。
「わはははは」
「おい、何だこれ。草じゃねえか」
大きな笑い声が聞こえた。
中を見るときれいではないがちゃんと紙として成立しているものをいつも僕をいじめるアラン達が持っていた。
「あっ! それトモヤのだよ。早く返しなさい」
僕が声を出そうとした瞬間、ホノカが注意してくれた。意外に正義感が強いんだな。
「おいおい、この草がお父さんにあげるプレゼントか! お前、産んだ親にも感謝できないのか? 悪魔だな」
「こら、いい加減にしなさい」
僕はできるだけ堪えていた。
こんな力を使う価値のない奴らに、魔法を使ってボコボコにするなんて、自分もこいつらと同じ土俵に立つことになる。そんなのは絶対に嫌だ。
耐えろ、耐えるんだトモヤ
「大丈夫、トモヤ……」
静かにセクアナが心配してくれた。カナメも僕のそばで慰めてくれる。
「お前ら馬鹿なんじゃねえのか。こんな草なんてあげても嬉しいと思わないだろ。しかも臭えし。みんなそう思うだろ」
「ふん!」
「最低だな!」
「なんだよあのプレゼント」
「あーあ、お父さんかわいそう」
「心まで悪魔かよ。さすが魔王と同じ雷魔法だな」
クラスにいる子達も笑ったり、僕のプレゼントに呆れていたり、とても見下していた。
「いい加減にしなさいよ。プレゼントは思いでしょ。トモヤはとても努力して、高い紙を再現しているんだよ」
「これが紙……はぁ? どう見ても、臭い草だろ。庭に生えてる草よりも臭いじゃねえか!」
「今すぐ謝りなさい、人の努力を馬鹿にするな!」
「ふっ、こんなゴミこうやるのが一番なんだよ」
そう言うと、紙を床に落とし踏みつける。
ドン、ドンドン。
「そしてこれはおまけだ、おらよ!」
一生懸命作った僕の紙はあっけなく粉々に燃やされた。
ビリビリッ!
「………おい!」
「なっ……!」
クラス中が一気に静まり返り、唖然としていた。
僕は耐えられず、キレていた。
今の状況は差別される身としてはヤバイ。このことが先生や他のクラスにバレたら
、この学校を辞めさせられるかもしれない。母に迷惑をかけるかもしれない。
だが、必死に父のために作った紙がこんな奴に壊されるのは許せなかった。
「おい…… あれ、いいの?」
「ねぇ、危ないよ!」
「誰か先生呼んできて!」
この魔法を出した途端、教室の空気が一気に重くなった。
ある子はビビって泣き、ある子は僕を恐れて教室の端に行った。
先生がもうすぐしたら来ることに希望を感じたのかアランは、ヘラヘラ笑おうとするも……僕の目を見たら顔が引きつる。
完全にキレている目で、今にも僕は攻撃しそうだ。
「お前を許さない……覚悟はいいな」
低い声でそう威圧し、攻撃をしようとした瞬間、僕の手は止まった。
何か柔らかいものが僕の頭を撫でていた。
セクアナだった。
「そんなことしないで」
耳下でそう呟かれた瞬間、僕の力は抜け、体の周りに発生していた電気もおさまった。
しばらく落ち着くまでずっと頭を撫でてくれた。
「……ありがとう、セクアナ」
「いいよ。トモヤが危ないことをしなくてよかった!」
笑顔でそう答えてくれた。
真似をするように僕も笑った。
騒動は終わったが、教室は静かなまま。
そんな時、教室のドアが開いて先生が入ってきた。
「どうした! 何があった!」
ホノカがことの顛末を詳しく先生に話し、僕とアランは放課後、職員室に呼び出された。
そして僕は雷魔法を授業以外では絶対に使うな、危険だからと注意された。アランは父の日のために努力して作っていたものを壊したことで僕以上に説教されていた。
地味に半泣きになっていて面白かった。
ざまぁみろ!
そんなことを思っているけど、父の日のプレゼントはない。
「どうしよう……」
「今日は大変だったね……私すこし怖かったよ、トモヤが本気で怒ったから」
「あぁ、ごめんね怖がらせて」
ホノカの声にいつもの覇気がなかった。
すこし怯えさせたかもしれない。
これからは気をつけないと。
「トモヤ、よかったね! セクアナに頭撫でてもらって」
カナメはすこし苛立っているのか、いつも違う口調で言われた。笑っていたけど目が怖かい。
「どうにかセクアナといい感じになれる雰囲気を作るから許して、マジすみません……」
耳元で小さく言った。
一応、カナメは許してくれた。
「でもみんないいな、ちゃんとプレゼントを用意できていて」
「うん、そうだね。私もきれいにセクアナと作れた!」
2人同時に花のネックレスを見せつけられた。
こんな時に明るく言われるとすこし傷つくが、ホノカの笑顔を見ているとなんか憎めない。
「カナメも露天風呂、ほぼ完成?」
「完成かな……色々アドバイスありがと。トモヤのおかげで喜んでくれそうだよ」
「そっか。それにしても花も露天風呂もいいね……」
すぐ作れるもの何かあるかな……?
これまで準備してきたことを思い出す。
そして一つの案を思いついた。
「みんな僕のプレゼントを作るのに協力してくれない?」
始めは落ち込んでいたがまたいいアイデアが浮かぶと、すぐにいつもの自分に戻っていた。
「おっ、何かいいの思いついたのかな」
「僕たちはいつでも手伝うよ」
「いつものトモヤに戻ってよかった。なんでも言って!」
僕はみんなに指示を出した。
カナメにはできるだけ乾いた土で石板のようなものををの2枚作ってもらい、セクアナとホノカにはきれいな花を採りに行ってもらった。
そして材料が集まると石板の上に花を置いてその上に石板をのせた。
よし、これで多分王都に着く頃にはできているだろう。
「……? ねぇ、トモヤ馬鹿なの? せっかくきれいな花を採ってきたのになんで石板で潰すの? 私悲しいよ」
意外なことをしたのか、ホノカは落ち込んでいた。
「今はわからないと思うけど今、"押し花"を作っているんだよ。また数日経ったら見してあげるから楽しみにしていて」
「ふーん」
珍しく無関心だった。
「よし! これでプレゼントが完成。みんなありがとう!」
「お疲れ!」
「またね!」
こうしてみんなと別れ僕たちも家に帰った。
「父上、おかえり。仕事大変だったでしょう。だからこれを見て!」
「うぉ! カナメお前すごいじゃないかこの技術」
「ロテンブロって言うらしいよ。早く入って!」
「ありがとな。父さん嬉しくて涙が出るよ」
「ふふふ、喜んでくれてよかった」
「今日は父さんと一緒にお風呂に入ろうか。いつも遊んでやれなくて悪いな」
「本当! やったあ。じゃあ今日はお風呂で思いっきり遊ぶよ」
「おう!」
「お父ちゃん。見てこの花のネックレス」
「あわわわー、なんて可愛い娘からのプレゼントなんだ。ありがとう、俺のお姫様。」
「お姫様っていわないで、もう子どもじゃないんだから」
「それにしてもホノカがこんな細かいもの作れるのはすごいな!」
「これをお父ちゃんにあげるために友達から教えてもらったんだ嬉しい?」
「あぁぁぁ! 嬉しいに決まっているでしょう。なんて可愛いんだ」
「うわぁぁ。痛い痛い。お父ちゃん痛いよ。強く抱きしめないで」
「すまんすまん。つい感動しちゃって」
「もう、ウフフフ」
僕たちも家に帰った。
みんな父の日は成功したかな?
成功してるといいね。
家に入ると、プレゼントを渡すための木箱があり、そこにプレゼントを入れた。僕はそこに父への手紙も書いて入れた。手紙って言っても紙がないから木に文字を書いたんだけど。
「お父さん。あなたの息子のトモヤです。この箱には"押し花"という面白い花が入っています。これは乾燥しているため、いつまでもきれいなまま保てるお花です。僕は15歳で必ず魔法騎士に入団して会いに行きます。それまで死なずこれお守りとして大切に持っていてください。尊敬しています。
トモヤ」
「初めての手紙ね。二人とも早くお父さんに会って欲しいよ」
母も喜んで入れてくれた。
「お父さんが喜んでくれると、嬉しいね」
本当、セクアナの言う通りだ。
しっかり想いを詰めて作ったんだ。
魔法騎士に入って出会うまでは枯れない花だから御守りとして、大切にして欲しいな。
相変わらず、僕は悪魔と言われ、みんなからの信頼は最悪だった。だがカナメ、ホノカ、そしてセクアナは友達として接してくれた。
僕以外のクラスメイトは、みんな仲良しだから羨ましい。けれどこの三人との生活は楽しいものだった。
また幸いなことがある。それは他の学年との合同訓練がないことや、バレないように魔法の力を弱めていることもあり、雷魔法を使うことを知っているのは僕の学年と、この学校の先生だけだ。先生は一応魔法の制御ができているので、他の生徒と同じように接してくれる。
最近は国語の授業でこの世界の文字を全部覚えた。紙が高いこともあり、大体みんなボードに白い粉の出る石、チョークみたいなものを使って勉強している。まぁ、家に本が数冊あったからだいたいの文字は知っていたんだけど。
次に算数だ。
この世界は計算が大事なのか知らないけど、とても丁寧に教えて、進むスピードが遅い。ちょっとレベルが低すぎて面白くない。
授業で目立ちすぎると僕のことが嫌いな子たちに、「調子乗ってる」と陰で言われるからめんどくさい。
意外だったことがあり、いつも真面目で優等生なセクアナは算数が苦手だったことだ。答えが10以上になる足し算が今でも何かに書かないと計算できない。
「7+6は……」
「えっと……7と1、2、3………14!!」
「あ、おしい! 13だよ」
「はぁー、難しい」
こんなふうにまだ暗算ができない。
まぁ……セクアナ頑張れ!
勉強のことは置いといて次に魔法の訓練だ。
クラスの中で優秀な人と、まだ修行が足りない人に分けて練習するようになった。
運がいいことに優秀なメンバーがいつも仲良くしている三人と僕だけだから嫌がらせをされることもない。
「見て見て! 最近、魔力が少し上がってウサギが大きくなったんだよ」
「本当だ、すごいね」
「大きくなったけどまだ可愛い」
「そうだね」
召喚魔法は珍しいから僕たちは魔力の上がったホノカに感心していた。
魔法の練習時は先生たちが5、6人くらいきて、詳しく教えてくれる。始めは全然魔力がなかった子でも結構成長している。でも僕とホノカは滅多にない魔法だから専門の先生がいなく、あまり教えてくれない。
でも基礎や新技のためにアドバイスをくれたりする。
僕も頑張らないと。
今は奇襲を仕掛けるため、上空から雷のように威力のある攻撃で、かつ避けれらないくらい速く落とせるような新技を練習している。
空からだと距離もあるし、電気ショックくらい速く落とせるいいなと願っている。
なによりも上空に雷雲を作るのが難しい。奇襲のためだからバレないようにちょっとずつ電気を雲に送らないといけないから時間がかかるし、落とす時の操作も難しいそうだ……
今は小さな雷雲を作るまでできるようになった。
まだまだ先は長い。
今日の魔法の授業も終わり、ホームルームが始まった。
「お前ら、席につけ。おい、そこうるさいぞ。よし、今からホームルームを始めるぞ。大事なことだからしっかり聞いておけよ。一週間後に何があるかわかるか? ほら、カナメ答えてみろ」
「父の日です」
「そうだ。君たちを産んでくれた大切なお父さんのための日だ。だから喜ばせるために、どんなプレゼントをあげるか考えておけよ」
「はい」
「はーーい」
「以上。じゃあみんな、さようなら!」
「さようなら!」
やっぱり先生の最後の挨拶だけは優しい笑顔だな。
僕は今、いじめを受けている。
物を隠されたり、悪口を言われたりした。誰もいないところに連れて行かれて三人の男子から暴力を振られたこともあった。
しかし、セクアナとの修行のおかげもあり全てを受け流して、何もなかったかのようにいつも教室に戻っていた。カナメたちに「トモヤとは一緒にいない方がいいぞ」と言って僕を1人にしようとしていたこともあったが、それを断って僕と仲良くしてくれる。
色々されるが、カナメ、ホノカ、セクアナがいて、僕は1人じゃないから全然苦しくない。
そして今日は帰ろうとしたら靴がゴミ箱に捨てられていた。
「はぁー、それにしても毎日こんなことをやって飽きないんだな」
「みんなトモヤに対して理不尽だよねー
雷魔術師は悪い噂があるけどそんなの関係なく、トモヤは優しいのに・・・・」
ああ。なんていい人たちなんだ。ちゃんと内面を見てくれる。
僕が感動しているとセクアナがニヤニヤしていた。
「トモヤ、照れてるよね。フフフフ」
「ああぁ。もう、友情という言葉に感動しているのに壊さないでよ」
「いやー、トモヤが照れてるのあんま見ないからちょっとからからかいたくて」
「最低だね」
「まぁまぁ……」
今日もみんなで帰った。
家に帰ると早速、先生に言われた通り父へ何をプレゼントするか考えた。
それでも僕は父と会ったことがない、どんな人がわからない。
結果、母に父のことを聞こうという考えに至った。
「ただいま!」
「おかえり」
「晩ご飯なに?」
「今日は、野菜をたっぷり入れたグラタンだよ。速く手を洗ってきなさい。もう少しで、できるから」
「はい!」
こうして僕たちは手を綺麗に洗って、テーブルを囲んで座った。
「お母さんもうすぐお父さんの日だよね。僕たちまだ一度も会ったことないから教えてよ。産んでくれた感謝のためにプレゼントをあげたい!」
「私もお父さんについて聞きたい!」
「そう、貴方達も成長したね」
そう言って優しく微笑んでくれた。
「お父さんについて話す前にちょっとセクアナと2人になっていい?」
「……? はい」
そうして僕は家の外に出た。暇だし、魔法の修行でもするか。
セクアナはなにを話されるのかわからず、首を傾げていた。
トモヤが外に出ると静寂が訪れた。
しばらく黙っていたが、お母さんは覚悟を決めると話を切り出した。
「ごめんねセクアナ、実は貴方は私の子どもではないの」
「え?」
あぁ……ごめんなさい知っていました。
天界で色々設定したから……
そんなことは言えない。
というか私の設定のせいでお母さんを悩ましていたので、罪悪感が芽生えてしまう。
「今まで黙っていてごめんね。セクアナはある時、玄関前に置かれていて親も誰かわからないの」
「あ……そうだったんだ。ありがとうお母さん、ちゃんと話してくれて。両親は誰かわからないけど、これからもお母さんはずっと私のお母さんだよ!」
「よかった! これからもセクアナは私の大切な、娘だよ。トモヤのこともよろしくね!」
「はい!」
力強く抱きしめてくれた。
私は幸福な気持ちになった。
話が終わり、トモヤを呼びに行く。
「もういいよ入ってきて」
「ぐぬぬぬぬぬ……」
「トモヤ!」
呼ばれる声など聞こえないくらい雷を落とす練習をしていた。
「てい!」
「あ、痛い!」
頭にチョップされてやっと気づいた。
「魔法の修行するのはいいけど、お父さんについてお母さんが話してくれるから早く行くよ」
セクアナに連れられて家に入った。
「なに話していたの?」
「大人の話だよ」
そう言って何の話をしていたのか教えてくれなかった。
「お母さーん、僕のお父さんはどんな人なの、何で帰ってこないの?」
「今から話すから落ち着いて座りなさい」
「はーい」
席に座ると話し始める。
「この国には大事なルールがあってそのせいでお父さんは帰ってこれないの」
悲しい事実を話すと母の声は暗くなった。
でも、
「実はお父さんは貴族で今、魔法騎士なのよ。とても勇敢な人だわ。もしトモヤたちが魔法騎士団の試験に合格したら会えるかもよ」
「本当!」
父に会えるかもという淡い期待に喜んでしまう。
「話を戻すよ。お父さんがいないのはね、身分が違う人間同士が結婚するのはダメというルールや、魔法騎士の仕事で大変だから会えないの。昔はお母さんも王都で暮らしてしていたのよ。そしてお父さんが一目惚れして猛烈にアピールされたから付き合ってて、その時はとってもかっこよかったな!」
母が父の話をしている時の顔が今までに見たことないほど生き生きしていた。
大好きなんだな……
「だけどやっぱり身分が違うこともあり、相手の両親からとても反対されたんだよね。お父さんが何度も何度も親に頼んだこともあって、お父さんの両親も子どもが欲しいという思いがあったから結婚できたのよ。でも国のルールがあるから、王都を離れて暮らすという条件が出されたんだ。
だから私たちはこんな田舎にいるんだよ。それにお金も支援してくれているから安心してお母さん達は暮らせてるわ。
今は手紙くらいでしか繋がりがないし、この機会にお父さんへ最高のプレゼントをあげようね!」
思ってた以上に複雑だった。だけどお父さんは、僕たちの目指している魔法騎士なんだな。
誇らしい。
いつか会えると嬉しいな。
「さぁ、ご飯を食べましょう! 冷めてしまうよ」
今日のグラタンはいつも以上に美味しかった。
プレゼントは何を渡そうかな……
父の人柄がわかったが、プレゼントを決めるのは難しかった。
結局、何も案は出ず今日もベッドに入って眠るのであった。
今日は学校でお父さんに何をプレゼントするかみんなで話し合ったり、工作したりをした。
「トモヤ、君は何をあげるの? 僕はお父さんがいつも家の建築や農業で疲れているから、癒せる物を作りたいと思っているんだけど何かあるかな・・・・」
「うーん。僕も今は考えに中かな。なんか普段しないことだから難しいね」
あれ?
そう思えばセクアナ達はいないね。どこ行ったのだろう…
いつもは四人で相談するが、どこかに行っているのか教室にいなかった。
癒せるものか・・・・
「そうだ! カナメの技術なら露天風呂とか作れないかな!」
「ロテンブロ?」
あっ、そうかこの世界では露天風呂の意味がわからないのか。
カナメにちゃんと説明するためにボードを持ってきて説明した。
「ここをこうやって、ここに石を置くと簡単に、ほら! どうかな?」
「うわー、すごくいいアイデアだよ!
それに外で見る星空はとっても綺麗だからね」
「うん!」
こうしてカナメが送るものは決まった。
「ただいま!」
大きな声が教室に響いた。
そこにはホノカが帰ってきていた。
「見て見て! どう、この花束綺麗じゃない? これでネックレスを私達は作るの」
目をキラキラさせて楽しそうだった。
イベントってやっぱり準備している時が一番楽しいよね。
「でもホノカそんな器用なことできるの?」「細かい工作とか作る時、大体セクアナに手伝ってもらっているから」
「まぁ、セクアナが教えてくれるから大丈夫かな……」
「うん、私も全力で教えるよ!」
「そっか」
あとは僕だけだな。
何をプレゼントしよっかな。喜んでくれるものか。
「うーん」
頭を抱えて深く考えた。
「トモヤ」
「うーーーん」
「トモヤ!」
「っ、はい!」
「僕のことも助けてくれたから、何でも相談に乗るよ」
「ありがとう!」
頼もしいな。
でもアイデアが全然浮かばない。
小学生の時は折り紙を折っていたような……
紙が欲しいな。
そうだ! 自分で作ろう。
確か、草を乾燥させると紙のようなものになるって教えてもらった気がする。
すぐに挑戦し始める。
そうして僕はまず紙の形を作るための型を作った。木で形を作ったが、ひっつけるものがないからカナメの粘り気の強い泥を出してもらいどうにかひっつけた。
次に草を取りそれをゆでた。
そのゆでた草を包丁で細かく切って下に板か何かを引いてその上に細かくした草をのせる。草を使っているからお母さんに不思議な視線を向けられ恥ずかしかった。
どうにか草の繊維だけ残ったら紙のようになるんだけどな……
失敗しないためにも10個くらい余分に作った。そしてあとは日当たりの良いところに置き乾燥するることを待った。家にも3個おいた。
成功すると良いな。
僕は大きな賭けをした。
父の日まであと3日になった。僕達の父は王都にいるから届けることを考えると実質あと2日だ。
紙は家に置いてある3個は失敗してほとんど固まらなかった。草が破けて紙になっていなかったり、湿り気が多く明日までに乾かないものばかりだ。だが学校に置いてある紙が1つだけ成功しそうだ。
そこはちょうど日の当たる場所だったから上手くできた。
周りがすこしだけ乾いてなかったから明日には完成するといいな……
翌日、成功していることを願いながら学校へ行った。
あれ?
いつも置いていたところに草の紙がなかった。
あれ? あれ?
僕は必死に周りを探した。
風に飛ばされているかもしれない。
一応、重りは置いていたけどその石も無くなっていた。
「トモヤ、大丈夫。何かあった?」
「あはよう! トモヤ、朝からドタバタしてどうしたの?」
セクアナ達が寄ってきてくれた。
「お父さんのために作っていた手作りの紙がなくなったの」
「それはたいへんだ! 僕達も探すよ」
「わっ! 大変じゃん。早く探さないと」
みんな僕のために必死に探してくれた。
本当僕の友達は頼もしいな……
結局、見つからず教室に戻った。
「わはははは」
「おい、何だこれ。草じゃねえか」
大きな笑い声が聞こえた。
中を見るときれいではないがちゃんと紙として成立しているものをいつも僕をいじめるアラン達が持っていた。
「あっ! それトモヤのだよ。早く返しなさい」
僕が声を出そうとした瞬間、ホノカが注意してくれた。意外に正義感が強いんだな。
「おいおい、この草がお父さんにあげるプレゼントか! お前、産んだ親にも感謝できないのか? 悪魔だな」
「こら、いい加減にしなさい」
僕はできるだけ堪えていた。
こんな力を使う価値のない奴らに、魔法を使ってボコボコにするなんて、自分もこいつらと同じ土俵に立つことになる。そんなのは絶対に嫌だ。
耐えろ、耐えるんだトモヤ
「大丈夫、トモヤ……」
静かにセクアナが心配してくれた。カナメも僕のそばで慰めてくれる。
「お前ら馬鹿なんじゃねえのか。こんな草なんてあげても嬉しいと思わないだろ。しかも臭えし。みんなそう思うだろ」
「ふん!」
「最低だな!」
「なんだよあのプレゼント」
「あーあ、お父さんかわいそう」
「心まで悪魔かよ。さすが魔王と同じ雷魔法だな」
クラスにいる子達も笑ったり、僕のプレゼントに呆れていたり、とても見下していた。
「いい加減にしなさいよ。プレゼントは思いでしょ。トモヤはとても努力して、高い紙を再現しているんだよ」
「これが紙……はぁ? どう見ても、臭い草だろ。庭に生えてる草よりも臭いじゃねえか!」
「今すぐ謝りなさい、人の努力を馬鹿にするな!」
「ふっ、こんなゴミこうやるのが一番なんだよ」
そう言うと、紙を床に落とし踏みつける。
ドン、ドンドン。
「そしてこれはおまけだ、おらよ!」
一生懸命作った僕の紙はあっけなく粉々に燃やされた。
ビリビリッ!
「………おい!」
「なっ……!」
クラス中が一気に静まり返り、唖然としていた。
僕は耐えられず、キレていた。
今の状況は差別される身としてはヤバイ。このことが先生や他のクラスにバレたら
、この学校を辞めさせられるかもしれない。母に迷惑をかけるかもしれない。
だが、必死に父のために作った紙がこんな奴に壊されるのは許せなかった。
「おい…… あれ、いいの?」
「ねぇ、危ないよ!」
「誰か先生呼んできて!」
この魔法を出した途端、教室の空気が一気に重くなった。
ある子はビビって泣き、ある子は僕を恐れて教室の端に行った。
先生がもうすぐしたら来ることに希望を感じたのかアランは、ヘラヘラ笑おうとするも……僕の目を見たら顔が引きつる。
完全にキレている目で、今にも僕は攻撃しそうだ。
「お前を許さない……覚悟はいいな」
低い声でそう威圧し、攻撃をしようとした瞬間、僕の手は止まった。
何か柔らかいものが僕の頭を撫でていた。
セクアナだった。
「そんなことしないで」
耳下でそう呟かれた瞬間、僕の力は抜け、体の周りに発生していた電気もおさまった。
しばらく落ち着くまでずっと頭を撫でてくれた。
「……ありがとう、セクアナ」
「いいよ。トモヤが危ないことをしなくてよかった!」
笑顔でそう答えてくれた。
真似をするように僕も笑った。
騒動は終わったが、教室は静かなまま。
そんな時、教室のドアが開いて先生が入ってきた。
「どうした! 何があった!」
ホノカがことの顛末を詳しく先生に話し、僕とアランは放課後、職員室に呼び出された。
そして僕は雷魔法を授業以外では絶対に使うな、危険だからと注意された。アランは父の日のために努力して作っていたものを壊したことで僕以上に説教されていた。
地味に半泣きになっていて面白かった。
ざまぁみろ!
そんなことを思っているけど、父の日のプレゼントはない。
「どうしよう……」
「今日は大変だったね……私すこし怖かったよ、トモヤが本気で怒ったから」
「あぁ、ごめんね怖がらせて」
ホノカの声にいつもの覇気がなかった。
すこし怯えさせたかもしれない。
これからは気をつけないと。
「トモヤ、よかったね! セクアナに頭撫でてもらって」
カナメはすこし苛立っているのか、いつも違う口調で言われた。笑っていたけど目が怖かい。
「どうにかセクアナといい感じになれる雰囲気を作るから許して、マジすみません……」
耳元で小さく言った。
一応、カナメは許してくれた。
「でもみんないいな、ちゃんとプレゼントを用意できていて」
「うん、そうだね。私もきれいにセクアナと作れた!」
2人同時に花のネックレスを見せつけられた。
こんな時に明るく言われるとすこし傷つくが、ホノカの笑顔を見ているとなんか憎めない。
「カナメも露天風呂、ほぼ完成?」
「完成かな……色々アドバイスありがと。トモヤのおかげで喜んでくれそうだよ」
「そっか。それにしても花も露天風呂もいいね……」
すぐ作れるもの何かあるかな……?
これまで準備してきたことを思い出す。
そして一つの案を思いついた。
「みんな僕のプレゼントを作るのに協力してくれない?」
始めは落ち込んでいたがまたいいアイデアが浮かぶと、すぐにいつもの自分に戻っていた。
「おっ、何かいいの思いついたのかな」
「僕たちはいつでも手伝うよ」
「いつものトモヤに戻ってよかった。なんでも言って!」
僕はみんなに指示を出した。
カナメにはできるだけ乾いた土で石板のようなものををの2枚作ってもらい、セクアナとホノカにはきれいな花を採りに行ってもらった。
そして材料が集まると石板の上に花を置いてその上に石板をのせた。
よし、これで多分王都に着く頃にはできているだろう。
「……? ねぇ、トモヤ馬鹿なの? せっかくきれいな花を採ってきたのになんで石板で潰すの? 私悲しいよ」
意外なことをしたのか、ホノカは落ち込んでいた。
「今はわからないと思うけど今、"押し花"を作っているんだよ。また数日経ったら見してあげるから楽しみにしていて」
「ふーん」
珍しく無関心だった。
「よし! これでプレゼントが完成。みんなありがとう!」
「お疲れ!」
「またね!」
こうしてみんなと別れ僕たちも家に帰った。
「父上、おかえり。仕事大変だったでしょう。だからこれを見て!」
「うぉ! カナメお前すごいじゃないかこの技術」
「ロテンブロって言うらしいよ。早く入って!」
「ありがとな。父さん嬉しくて涙が出るよ」
「ふふふ、喜んでくれてよかった」
「今日は父さんと一緒にお風呂に入ろうか。いつも遊んでやれなくて悪いな」
「本当! やったあ。じゃあ今日はお風呂で思いっきり遊ぶよ」
「おう!」
「お父ちゃん。見てこの花のネックレス」
「あわわわー、なんて可愛い娘からのプレゼントなんだ。ありがとう、俺のお姫様。」
「お姫様っていわないで、もう子どもじゃないんだから」
「それにしてもホノカがこんな細かいもの作れるのはすごいな!」
「これをお父ちゃんにあげるために友達から教えてもらったんだ嬉しい?」
「あぁぁぁ! 嬉しいに決まっているでしょう。なんて可愛いんだ」
「うわぁぁ。痛い痛い。お父ちゃん痛いよ。強く抱きしめないで」
「すまんすまん。つい感動しちゃって」
「もう、ウフフフ」
僕たちも家に帰った。
みんな父の日は成功したかな?
成功してるといいね。
家に入ると、プレゼントを渡すための木箱があり、そこにプレゼントを入れた。僕はそこに父への手紙も書いて入れた。手紙って言っても紙がないから木に文字を書いたんだけど。
「お父さん。あなたの息子のトモヤです。この箱には"押し花"という面白い花が入っています。これは乾燥しているため、いつまでもきれいなまま保てるお花です。僕は15歳で必ず魔法騎士に入団して会いに行きます。それまで死なずこれお守りとして大切に持っていてください。尊敬しています。
トモヤ」
「初めての手紙ね。二人とも早くお父さんに会って欲しいよ」
母も喜んで入れてくれた。
「お父さんが喜んでくれると、嬉しいね」
本当、セクアナの言う通りだ。
しっかり想いを詰めて作ったんだ。
魔法騎士に入って出会うまでは枯れない花だから御守りとして、大切にして欲しいな。
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