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異世界
差別
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長い月日が経ち、僕たちは14歳になった。
まだ季節は春だから魔法騎士団の試験まで約2年後。
雷魔法の新技に苦戦していたが、今は色々なレパートリーができた。
特に小学校へ入学した頃に練習していた強力な雷を落とす技は大変だった。
まず雷雲を作らないといけないが、それを作るためのイメージしづらい。その後には軽い静電気を空気中に含ませないといけないから微調整。
この技を完成させるために、たくさんの工程があった。
とても難しい技だったから、これができるようになってからは応用が簡単にでき、たくさんの新技が完成した。
努力し、魔力量も多くなったから試験に合格するかな……
父に会うためにも一生懸命取り組まないと!
猪と戦った時にたまたまできた、超スピードはずっと挑戦している。
でも、できない。
あれさえできれば絶対、試験に合格できるのに……
あっ、そうそう、最近は日本にあったこの世界でも使えそうな家電を製作中だ。
今は電球を作っている。
こう見えて電気に関しては発電所の息子としてエキスパートだからね。
それでも作るのは難しいな。
魔石の明かりはあるけど無限に光るものではないから、もしもの非常時に備えて作っている。
たぶん、使う機会はないと思う。
今日も学校があった。
「あはよう!」
校門をくぐろうとすると背後から元気な声が聞こえた。
ホノカだった。
14歳になったこともあり身長も伸び、きれいな赤髪も伸びてとても大人っぽくなった。元気すぎてすこし子供っぽいところや、なんでもストレートに言う正義感のある性格は変わらないがとても美しくなった。
セクアナも成長期が終わり、丸みを帯びた体になって、胸や身長が大きくなった。ショートカットの青髪は昔と変わらないがそれでも昔と雰囲気が違う。初めて出会った時の女神様とほとんど変わらない。
みんな美しくなっなたな!
「おはよう!」
すこし遅れてカナメが来た。
カナメは僕の身長よりすこし高くて、まさに美少年だ。腕も太くて筋肉質な体に、肩が広くて男らしい。
普通に僕がモブキャラみたいで悲しいな。
みんな揃って校舎に入った。
それにしても今までの学校の勉強が簡単すぎて面白くなかった。算数はマイナスまではやったけど二次関数や因数分解などそんな紛らわしいものはやなかった。
大体、暗算の掛け算、割り算、足し算、引き算を完璧にしようとコツコツこの年までやってきた。
国語は本が高いから文字を覚えたら、簡単な作文や手紙の練習くらいでほとんど授業がない。
日本とほとんどかわらなかったのは社会だった。地理や歴史そして法律がこの世界にもあるから一番深く勉強したと思う。
一番昔の歴史は5万年前まで遡る。
地球とは違う面白い内容だった。
--5万年前--
4つの種族が存在していた。
人族、海人族、獣人族、そして魔人族。
昔は誰も争いという考えがなく平和に暮らしていた。ただ食料を安定して得られず、生活は不安定だった。
そして1万年前
このころから魔人族が食料や領土をめぐりあらゆる種族に戦争を仕掛けた。そのことをきっかけに、魔人族と他の種族は対立関係になった。
始めは種族の中で一番、魔人族が強いから他の種族は戦っても負け、魔人族に滅ぼされそうになった。
そんな中、全ての種族が魔人族との戦争に勝つため、協力することによって、戦力が均衡になった。
だが、200年前魔王サタンが誕生する。
このサタンの出現により魔人族の力は強化され、また世界の均衡が崩れた。
今は僕達は魔人族に攻め込まれて、滅亡の危機を迎えている……
僕がこの世界に転生したのもこのサタンを倒すためなんだな。
頑張らないと。
魔法の歴史も学んだ。これは結構ざっくりしていた。
魔法は1万年前に起こった魔人族との戦いのさなか、耳長族。まぁエルフによって初めて魔法が完成して、それが今に継承されている。昔は剣術だったが、今は魔法の方が技術が発展して威力も強くなり、だんだん薄れてきている。
社会の授業が思ってた以上に充実していてびっくりした。
さて、今日はどんなことを学べるかな!
そんな淡い期待をしていたが今日は一日中、自習だった。こういう時、家に帰れないのは嫌だな。たぶん工作するか、ボードゲームで遊ぶくらいしかできない。
そのボードゲームは取り合いになるから結局暇になるんだよな……
いつも通り四人で適当に時間を潰した。
今日の学校も終わり、ぞろぞろと帰り出す。
「早く帰ろう!」
いつも元気なホノカが言ってきた。
それに合わせて他の二人も誘い、歩き始める。
「緊急ってなんだろうね。今日、一日中自習だったから何か大変なことでもあるのかな?」
「どうだろう。全部自習ってのは今までになかったから問題が起きたのは確かなことかもね。僕も心配だよ」
色々話し合いながら帰った……
次の日
いつもは教室に集まるが、今日はグラウンドに集まった。
「あー、あー、うっうん。皆さん聞こえますかー」
校長が一番前に立ちみんなに呼びかけている。
「えー、今日は近くの町に行きます。えーなんと貴族の方が今日こられているということで、せっかくだから見に行くことになりました。珍しい体験なので、ぜひたくさんのことを学んでください」
校長の話が終わりずらずらと移動をはじめた。
今から行く町はこの田舎の中で唯一買い物ができるところだ。たまに食材を買うために行っている。
貴族かぁ…
なんか嫌だな、見下してそうで……
「セクアナ、貴族ってやっぱり僕たちの平民のことを見下してる?」
「うーん、どうかな。一応優しい人もいるんだけどね。まぁ大体は私たちのことを見下すね」
「やっぱりそうだよね」
そのことを聞いてすこし落ち込んだ。
「優しい人だといいね!」
そんな僕にセクアナは笑顔を向ける。
明るいセクアナに僕もはにかんだ。
町に着くとたくさんの人たちもが集まっていた。
1500人くらい、いるんじゃないか。
とにかく人でいっぱいだった。
そんなことを考えていると高そうな馬車がこちらに走ってきて町民が集まっている前に止まった。
すると執事のような人が出てきて、貴族を馬車から降りろす為の階段を持って来る。
馬車のドアが開いた。
中から3人出てきた。
一人は僕と同い年くらいの男で、とても高そうな服を着ていた。町民たちを見ると何故だかにやけた。
まるで僕たちをなめているようだ。
真ん中には偉そうに立っているおじさんがいた。髭が長く、腕を組んでいた。
なんとなく印象が悪い。
多分あの男の親だろうな。
そして二人の右にはとてもガタイのいい黒い服を着た男性が立っていた。
見るからに怖い。あの人と戦ったら負けそうだ。
こうして全体で見ると、とてもヤバい奴らだ。だからこそ、生意気な貴族に見えてしまう。
関わりたくないな……
顔を曇らせていると、髭を生やした貴族は喋り出す。
「ワシの名はハンダン・ドミニカ! 今日からこの土地を納める領主になる。まぁこんな最果ての村で、将来は低レベルな職業につくお前らにワシたちが開拓するためにやってきたんだ。感謝しろ!」
やっぱり上から目線だ。
「そしてワシの息子がこの近くの学校に入学する。でもあと一年だけだが貴族の息子が入学するから低レベルなことをしないでくれ。わかったな。そこの下人ども」
「はっ、はい」
先生たちが怯えていた。
貴族にはここまで先生でもビビるのかな?
「ではクロード、後はお前に任せる……ふん、古臭いところだ。なぜわしがこんな所に……」
そのセリフを言うと馬車に乗り込んで帰っていく。
そのあとは執事の人が丁寧に説明してくれた。
貴族はあんなかんじだけど執事の人は優しい。
新たに貴族がこの町に来た。
この時、知りもしなかった。
彼らによって僕の平穏が徐々に壊されていくことを……
次の日から貴族の息子が学校に入学してきた。
グラウンドで校長先生が紹介した。
「えー、今日からこの学校に入学されるお方です。さぁ自己紹介をどうぞ」
「今日からこのぼろくさい学校に入学してやるカール・ドミニカだ。この俺が入学してやるんだ。無礼なことをするとどうなるか分かっていると思うが、よろしく」
横には昨日も護衛としてついていたガタイのいい怖い男性が立っている。
もう一度言うが関わりたくないな……
自己紹介が終わると解散し、教室に戻った。
戻るとみんな、カールの話題で持ちきりだった。
上級の貴族で町を1つカールの権力で潰したことがあるや、可愛い女子を見つけては誘拐して召使いとして働かしている、など根も葉もわない噂がクラス中にながれていた。
「怖いね、あのカールっていう貴族」
意外にもいつもクールなカナメがそんなことを言ってきた。
実力では勝てないものを要は恐れているのかな?
確かに貴族の権力はすごいからな。
「先生達がおととい、私達を自習にしたのはこれが理由だったのかな。それにしても面白くないな、先生達が生徒に敬語を使ってるなんて」
相変わらずホノカはいつもと変わらない。
するとセクアナが耳元に口を近づけて僕に言った。
「絶対にカールに魔法のことばれるとダメだよ。あの家族はサタンに殺された親族がいるらしいから、トモヤが雷魔法を操るなんて知られたらどんな酷い目に合うかわからないよ」
いつもセクアナは僕の事を心配してくれる。本当に面倒見がいい。
それとも、異世界に僕を連れてきた責任を感じてるのかな。
「関わりたくないね、あの貴族には。みんな気をつけないとだよ」
「そうだね」
ホノカも少し恐れているのか僕の言ったことに納得してくれた。
「ねぇ! 貴族の人ってそんなに怖い? 隣のクラスに行ってみようよ!
私達でも仲良くなれるかもしれない!」
いや違う。
ホノカは貴族など恐れていなかった。
相変わらずいつも通りの明るさだ。
そんな、軽々しい発言にカナメが真面目な顔になる。
「ホノカ、そんな簡単に言ったらダメだよ。貴族とはそんな簡単なものじゃない。
カールだったらこの村のことを嫌っているから、この発言を聞いただけで何か罰を与えるかもしれない。
カールに関してはこれからも気をつけないといけない。
分かった?」
よっぽどカナメは貴族のことを恐れているのか詳しく説明していた。
こんなカナメ、なんか変だな。
そのおかげで改めて発言に注意しようと自覚した。
学校も終わり、帰る前に少しみんなと遊んだ。僕は魔法を出したら他の学年にバレるから出さないが、みんなの魔法を見るだけでも楽しい。
「はぁ……はっ!」
「うわー、セクアナすごく綺麗」
小さな水の粒を空中に出して、ゆっくりと地面に落ちていく。
太陽の光とも重なり合っていてとても幻想的な景色だ。
まるで雪のようだった。
セクアナも成長してたくさんの応用技ができるようになった。
「まだまだあるよ!」
バチャ
僕の顔に水がかかった。
前を向くとセクアナが笑っていた。
「フフフフフ、水鉄砲! いつも苦労かけてるお仕置きだよ」
地味にうざい……
「やり返し、してやる。こら待てー」
「ハハハハハハ。喧嘩するほど仲がいいだね」
「本当だね」
追いかけたが足が速くて捕まえられなかった。
「私の魔法も見て!」
いつものように召喚のための魔法陣が出てきた。魔法が成長したから大きなウサギが出てくるかなと思ったが少し違う。
キュッ。キュッキュ。キュ?
ウサギの赤ちゃんが5匹くらい出てきた。
可愛い!!
すぐにセクアナは抱き上げてとても可愛がっていた。
「うわー、すごく面白い」
僕も抱き上げながらそう言っていた。
体は小さくて、ぴょんぴょんと飛び跳ねている姿が微笑ましい。
「ふふん。私も色々試行錯誤したんだよ!」
褒められて嬉しそうだった。
なんか僕だけ魔法が使えなくて少し寂しいな。誰もいないところでまたみんなに面白いのを見せたい。
「次は僕の番だね。いくよ!」
ゴボゴボゴボ
地面が揺れた。そしてだんだん泥のようになり硬かった地面が溶けた。
これだけだと普通に汚い……
こんなので終わらないよね、カナメ。
「今から本番だよ。まずは木、そして花、最後はトモヤと作った露天風呂!」
カナメの言った通り溶けた泥から木、花、そして露天風呂の順番に形が変化した。とても細かく出来上がっていた。
特に露天風呂は日本を思い出すとても綺麗なものだった。
「すごいね。昔、努力して作っていたものを一瞬で作れるようになるなんて」
「うん。イメージがしっかりしてるから。これもトモヤのおかげだよ」
照れているのか頬を人差し指でかいていた。
みんな楽しく遊んでいたが一人の言葉によって絶望に変わった。
「おい!!」
「………」
「……」
みんな何があったのか分からず固まっていた。ゆっくり後ろを振り向くと貴族のカールが立っていた。
「そこのお前! お前のせいで俺の服に泥がついたじゃないか。どうなるか分かってんだろうな!
これは連帯責任だな……」
カナメはすぐに土下座をしていた。
え?
周りを見るとみんな怖がっていた。いつも明るいホノカでさえ顔が真っ青だった。
「申し訳ありません。申し訳ありません。僕だけならともかく、後ろの三人は関係ありません!
自分だけにしてください!」
頭を地面に擦り付けながら必死に謝っていた。
「ふんっ。いい眺めだな。下人が頭を擦り付けて謝るか。もっと深く頭を下げろ。こうだ、こうやってやるんだ」
そう言いながらカナメの頭を足で押さえつけた。
カナメの姿を見て、徐々に頭に血が登る。
友達があんなことされてるのだ。
止めに行かないといけない。
一歩踏み出そうとすると、セクアナに止められた。
セクアナを見ると、息が荒く、とても焦っていた。
「トモヤ、耐えて……カナメがあんなことになっているけど耐えて……あなたが行けば矛先がこれからずっとあなたに向けられる。
しかも全学年がいる中で雷魔法を使ったら終わりだよ……
だからお願い……耐えて!」
必死だった。僕を抑えてカナメを助ける方法を、セクアナは必死に考えていた。
「ふんっ。お前本当に男か? こんなに恥をかく男なんて初めて見たよ」
「どうか、どうかお許しください!」
「俺がお前たちを許す? ふざけるな!!」
それと同時にとてつもない風が襲った。
「うわ!」
風圧が強く、離れている僕たちで立っているのがやっとだった。
それをモロにくらったカナメは大きく飛ばされて僕たちの後ろに倒れていた。
風によって地面を転がったせいで擦り傷がいっぱいあった。
「キャッ!」
「カナメ!!」
たくさんの人が見ていたが貴族の権力に恐れ、誰もカナメを助けなかった。
ホノカはここまで傷ついた人を見るのが初めてのようで、腰が抜けて座ったまま動けない。
「お前のやったことは重罪なんだよ。下人のくせ貴族様に泥をつけるなんて有り得ない。お前の顔をぐちゃぐちゃにして誰も近寄らせないようにしてやる。
簡単に言うと化け物だな、ハッハハハハ!
後ろのお前たちもだ!」
それを言うと拳に風の凝縮したものが集められていた。
「ふんっ、どんな顔をするんだろうな。鏡で自分の顔を見たとき。クックククク、楽しみだな」
「やめろ……やめろ!」
カールを睨めつけてそんな事を言っていた。
僕は何もできないのか。
いじめられる中、いつも仲良くしてくれた友達を守ることもできないのか。
何のために修行してきた。
何のために今まで努力してきた。
助けるためにやってきたんだろ。
助けろ、今助けるんだ。
強く決意した。
「ごめんね、セクアナ……僕やっぱりカナメを助けるよ!」
僕は満面の笑みをセクアナに向けて飛び出した。
「待って……」
その言葉は小さく響いてすぐに消えた。
「おら!!」
ガシ! ビリッビリビリ
拳に電気を溜めてカールが殴ろうとした手を片手で受け止めた
「……」
「そろそろやめろ……」
カールを睨みつけて、威嚇するように言った。
そして手に力を込めて強く握りしめる。
「お、お前っ! その魔法は……」
「そうです雷魔法です!」
僕がカールの拳を止めた時、しばらく見ていた人たちは動揺していた。
「おい、あいつ貴族に逆らったぞ」
「貴族の魔法をとめやがった」
など言っていたが僕の魔法を見ると、冷たい視線に変わる。
怒り、恨み、恐れ、様々な感情の目を向けられた。
ああ、全学年に知られたな……
でも後悔はしていない。
ちゃんとカナメを助けれた。それだけで十分だ。
「俺に触ってんじゃねえ。この世のゴミが!」
カールは手を払いのけて距離を取った。
この隙に護衛のためについていたガタイのいい奴が、僕たちの目の前に立つ。
「遅いぞ、ゲンブ。何をやっていたんだ。俺に無礼を働いたこいつらに罰を与えてやれ」
そう言うと静かにゲンブという男は魔法を唱え始めた。
手のひらから赤いものが凝縮され始める。
ヤバい……ヤバイヤバい!
こいつの魔法は強力だ。
逃げないと。
「セクアナ早くホノカを引っ張って安全な場所へ逃げて!」
「あっ、わかった。でもトモヤは……」
「僕は大丈夫、カナメを連れて必ず戻るから早く連れて行って!」
「分かった。絶対に戻ってきてね!」
「必ず」
そう言いながらカナメを抱き上げてとにかく森の方へ逃げた。
「フレイム・ショック!」
ボン……ドッカン!!?
大爆発が起こり、すごい衝撃がきた。
「うわぁぁぁぁぁ!」
ドカッ、ドカン!
地面に何度も打ち転がった。
「はぁはぁ、よかった、危なかった……
カナメ、カナメ! 大丈夫か、生きてるか」
仰向けに倒れるカナメはゆっくりと目を開ける。
「うん、大丈夫。ありがとう、僕のために」
「いいんだよ。こちらこそいつも友達でいてくれてありがとう。これからもよろしくね!」
「これからは僕がトモヤを守るよ」
「フフフ、ありがとう!」
爆発にギリギリ巻き込まれず大火傷はしなかった。
だが高熱の爆発だったから無傷ということはなく、足を少し火傷してしまった。
カナメは僕が覆いかぶさったこともあり、あまり大きな怪我はなかった。でもカールに与えられた傷が深くて痛そうだ。
「今日は大変だったな。まさかあんだけ注意していた僕が問題を起こすなんて」
「本当だよ。僕、とっても焦ったんだからね」
「それにしてもトモヤ、顔丸こげだよ!」
「そんなこと言うならカナメだって頭ボサボサじゃないか!」
「フフフ、アハハハハ!!」
僕達は大声で笑った。
今日は貴族に目をつけられカナメは酷い目に遭い、僕は雷魔法を使ったことにより学校の生徒全員にバレた。
信頼、信用を失っただろう。
だが、友達を守ることはできた。
まだ季節は春だから魔法騎士団の試験まで約2年後。
雷魔法の新技に苦戦していたが、今は色々なレパートリーができた。
特に小学校へ入学した頃に練習していた強力な雷を落とす技は大変だった。
まず雷雲を作らないといけないが、それを作るためのイメージしづらい。その後には軽い静電気を空気中に含ませないといけないから微調整。
この技を完成させるために、たくさんの工程があった。
とても難しい技だったから、これができるようになってからは応用が簡単にでき、たくさんの新技が完成した。
努力し、魔力量も多くなったから試験に合格するかな……
父に会うためにも一生懸命取り組まないと!
猪と戦った時にたまたまできた、超スピードはずっと挑戦している。
でも、できない。
あれさえできれば絶対、試験に合格できるのに……
あっ、そうそう、最近は日本にあったこの世界でも使えそうな家電を製作中だ。
今は電球を作っている。
こう見えて電気に関しては発電所の息子としてエキスパートだからね。
それでも作るのは難しいな。
魔石の明かりはあるけど無限に光るものではないから、もしもの非常時に備えて作っている。
たぶん、使う機会はないと思う。
今日も学校があった。
「あはよう!」
校門をくぐろうとすると背後から元気な声が聞こえた。
ホノカだった。
14歳になったこともあり身長も伸び、きれいな赤髪も伸びてとても大人っぽくなった。元気すぎてすこし子供っぽいところや、なんでもストレートに言う正義感のある性格は変わらないがとても美しくなった。
セクアナも成長期が終わり、丸みを帯びた体になって、胸や身長が大きくなった。ショートカットの青髪は昔と変わらないがそれでも昔と雰囲気が違う。初めて出会った時の女神様とほとんど変わらない。
みんな美しくなっなたな!
「おはよう!」
すこし遅れてカナメが来た。
カナメは僕の身長よりすこし高くて、まさに美少年だ。腕も太くて筋肉質な体に、肩が広くて男らしい。
普通に僕がモブキャラみたいで悲しいな。
みんな揃って校舎に入った。
それにしても今までの学校の勉強が簡単すぎて面白くなかった。算数はマイナスまではやったけど二次関数や因数分解などそんな紛らわしいものはやなかった。
大体、暗算の掛け算、割り算、足し算、引き算を完璧にしようとコツコツこの年までやってきた。
国語は本が高いから文字を覚えたら、簡単な作文や手紙の練習くらいでほとんど授業がない。
日本とほとんどかわらなかったのは社会だった。地理や歴史そして法律がこの世界にもあるから一番深く勉強したと思う。
一番昔の歴史は5万年前まで遡る。
地球とは違う面白い内容だった。
--5万年前--
4つの種族が存在していた。
人族、海人族、獣人族、そして魔人族。
昔は誰も争いという考えがなく平和に暮らしていた。ただ食料を安定して得られず、生活は不安定だった。
そして1万年前
このころから魔人族が食料や領土をめぐりあらゆる種族に戦争を仕掛けた。そのことをきっかけに、魔人族と他の種族は対立関係になった。
始めは種族の中で一番、魔人族が強いから他の種族は戦っても負け、魔人族に滅ぼされそうになった。
そんな中、全ての種族が魔人族との戦争に勝つため、協力することによって、戦力が均衡になった。
だが、200年前魔王サタンが誕生する。
このサタンの出現により魔人族の力は強化され、また世界の均衡が崩れた。
今は僕達は魔人族に攻め込まれて、滅亡の危機を迎えている……
僕がこの世界に転生したのもこのサタンを倒すためなんだな。
頑張らないと。
魔法の歴史も学んだ。これは結構ざっくりしていた。
魔法は1万年前に起こった魔人族との戦いのさなか、耳長族。まぁエルフによって初めて魔法が完成して、それが今に継承されている。昔は剣術だったが、今は魔法の方が技術が発展して威力も強くなり、だんだん薄れてきている。
社会の授業が思ってた以上に充実していてびっくりした。
さて、今日はどんなことを学べるかな!
そんな淡い期待をしていたが今日は一日中、自習だった。こういう時、家に帰れないのは嫌だな。たぶん工作するか、ボードゲームで遊ぶくらいしかできない。
そのボードゲームは取り合いになるから結局暇になるんだよな……
いつも通り四人で適当に時間を潰した。
今日の学校も終わり、ぞろぞろと帰り出す。
「早く帰ろう!」
いつも元気なホノカが言ってきた。
それに合わせて他の二人も誘い、歩き始める。
「緊急ってなんだろうね。今日、一日中自習だったから何か大変なことでもあるのかな?」
「どうだろう。全部自習ってのは今までになかったから問題が起きたのは確かなことかもね。僕も心配だよ」
色々話し合いながら帰った……
次の日
いつもは教室に集まるが、今日はグラウンドに集まった。
「あー、あー、うっうん。皆さん聞こえますかー」
校長が一番前に立ちみんなに呼びかけている。
「えー、今日は近くの町に行きます。えーなんと貴族の方が今日こられているということで、せっかくだから見に行くことになりました。珍しい体験なので、ぜひたくさんのことを学んでください」
校長の話が終わりずらずらと移動をはじめた。
今から行く町はこの田舎の中で唯一買い物ができるところだ。たまに食材を買うために行っている。
貴族かぁ…
なんか嫌だな、見下してそうで……
「セクアナ、貴族ってやっぱり僕たちの平民のことを見下してる?」
「うーん、どうかな。一応優しい人もいるんだけどね。まぁ大体は私たちのことを見下すね」
「やっぱりそうだよね」
そのことを聞いてすこし落ち込んだ。
「優しい人だといいね!」
そんな僕にセクアナは笑顔を向ける。
明るいセクアナに僕もはにかんだ。
町に着くとたくさんの人たちもが集まっていた。
1500人くらい、いるんじゃないか。
とにかく人でいっぱいだった。
そんなことを考えていると高そうな馬車がこちらに走ってきて町民が集まっている前に止まった。
すると執事のような人が出てきて、貴族を馬車から降りろす為の階段を持って来る。
馬車のドアが開いた。
中から3人出てきた。
一人は僕と同い年くらいの男で、とても高そうな服を着ていた。町民たちを見ると何故だかにやけた。
まるで僕たちをなめているようだ。
真ん中には偉そうに立っているおじさんがいた。髭が長く、腕を組んでいた。
なんとなく印象が悪い。
多分あの男の親だろうな。
そして二人の右にはとてもガタイのいい黒い服を着た男性が立っていた。
見るからに怖い。あの人と戦ったら負けそうだ。
こうして全体で見ると、とてもヤバい奴らだ。だからこそ、生意気な貴族に見えてしまう。
関わりたくないな……
顔を曇らせていると、髭を生やした貴族は喋り出す。
「ワシの名はハンダン・ドミニカ! 今日からこの土地を納める領主になる。まぁこんな最果ての村で、将来は低レベルな職業につくお前らにワシたちが開拓するためにやってきたんだ。感謝しろ!」
やっぱり上から目線だ。
「そしてワシの息子がこの近くの学校に入学する。でもあと一年だけだが貴族の息子が入学するから低レベルなことをしないでくれ。わかったな。そこの下人ども」
「はっ、はい」
先生たちが怯えていた。
貴族にはここまで先生でもビビるのかな?
「ではクロード、後はお前に任せる……ふん、古臭いところだ。なぜわしがこんな所に……」
そのセリフを言うと馬車に乗り込んで帰っていく。
そのあとは執事の人が丁寧に説明してくれた。
貴族はあんなかんじだけど執事の人は優しい。
新たに貴族がこの町に来た。
この時、知りもしなかった。
彼らによって僕の平穏が徐々に壊されていくことを……
次の日から貴族の息子が学校に入学してきた。
グラウンドで校長先生が紹介した。
「えー、今日からこの学校に入学されるお方です。さぁ自己紹介をどうぞ」
「今日からこのぼろくさい学校に入学してやるカール・ドミニカだ。この俺が入学してやるんだ。無礼なことをするとどうなるか分かっていると思うが、よろしく」
横には昨日も護衛としてついていたガタイのいい怖い男性が立っている。
もう一度言うが関わりたくないな……
自己紹介が終わると解散し、教室に戻った。
戻るとみんな、カールの話題で持ちきりだった。
上級の貴族で町を1つカールの権力で潰したことがあるや、可愛い女子を見つけては誘拐して召使いとして働かしている、など根も葉もわない噂がクラス中にながれていた。
「怖いね、あのカールっていう貴族」
意外にもいつもクールなカナメがそんなことを言ってきた。
実力では勝てないものを要は恐れているのかな?
確かに貴族の権力はすごいからな。
「先生達がおととい、私達を自習にしたのはこれが理由だったのかな。それにしても面白くないな、先生達が生徒に敬語を使ってるなんて」
相変わらずホノカはいつもと変わらない。
するとセクアナが耳元に口を近づけて僕に言った。
「絶対にカールに魔法のことばれるとダメだよ。あの家族はサタンに殺された親族がいるらしいから、トモヤが雷魔法を操るなんて知られたらどんな酷い目に合うかわからないよ」
いつもセクアナは僕の事を心配してくれる。本当に面倒見がいい。
それとも、異世界に僕を連れてきた責任を感じてるのかな。
「関わりたくないね、あの貴族には。みんな気をつけないとだよ」
「そうだね」
ホノカも少し恐れているのか僕の言ったことに納得してくれた。
「ねぇ! 貴族の人ってそんなに怖い? 隣のクラスに行ってみようよ!
私達でも仲良くなれるかもしれない!」
いや違う。
ホノカは貴族など恐れていなかった。
相変わらずいつも通りの明るさだ。
そんな、軽々しい発言にカナメが真面目な顔になる。
「ホノカ、そんな簡単に言ったらダメだよ。貴族とはそんな簡単なものじゃない。
カールだったらこの村のことを嫌っているから、この発言を聞いただけで何か罰を与えるかもしれない。
カールに関してはこれからも気をつけないといけない。
分かった?」
よっぽどカナメは貴族のことを恐れているのか詳しく説明していた。
こんなカナメ、なんか変だな。
そのおかげで改めて発言に注意しようと自覚した。
学校も終わり、帰る前に少しみんなと遊んだ。僕は魔法を出したら他の学年にバレるから出さないが、みんなの魔法を見るだけでも楽しい。
「はぁ……はっ!」
「うわー、セクアナすごく綺麗」
小さな水の粒を空中に出して、ゆっくりと地面に落ちていく。
太陽の光とも重なり合っていてとても幻想的な景色だ。
まるで雪のようだった。
セクアナも成長してたくさんの応用技ができるようになった。
「まだまだあるよ!」
バチャ
僕の顔に水がかかった。
前を向くとセクアナが笑っていた。
「フフフフフ、水鉄砲! いつも苦労かけてるお仕置きだよ」
地味にうざい……
「やり返し、してやる。こら待てー」
「ハハハハハハ。喧嘩するほど仲がいいだね」
「本当だね」
追いかけたが足が速くて捕まえられなかった。
「私の魔法も見て!」
いつものように召喚のための魔法陣が出てきた。魔法が成長したから大きなウサギが出てくるかなと思ったが少し違う。
キュッ。キュッキュ。キュ?
ウサギの赤ちゃんが5匹くらい出てきた。
可愛い!!
すぐにセクアナは抱き上げてとても可愛がっていた。
「うわー、すごく面白い」
僕も抱き上げながらそう言っていた。
体は小さくて、ぴょんぴょんと飛び跳ねている姿が微笑ましい。
「ふふん。私も色々試行錯誤したんだよ!」
褒められて嬉しそうだった。
なんか僕だけ魔法が使えなくて少し寂しいな。誰もいないところでまたみんなに面白いのを見せたい。
「次は僕の番だね。いくよ!」
ゴボゴボゴボ
地面が揺れた。そしてだんだん泥のようになり硬かった地面が溶けた。
これだけだと普通に汚い……
こんなので終わらないよね、カナメ。
「今から本番だよ。まずは木、そして花、最後はトモヤと作った露天風呂!」
カナメの言った通り溶けた泥から木、花、そして露天風呂の順番に形が変化した。とても細かく出来上がっていた。
特に露天風呂は日本を思い出すとても綺麗なものだった。
「すごいね。昔、努力して作っていたものを一瞬で作れるようになるなんて」
「うん。イメージがしっかりしてるから。これもトモヤのおかげだよ」
照れているのか頬を人差し指でかいていた。
みんな楽しく遊んでいたが一人の言葉によって絶望に変わった。
「おい!!」
「………」
「……」
みんな何があったのか分からず固まっていた。ゆっくり後ろを振り向くと貴族のカールが立っていた。
「そこのお前! お前のせいで俺の服に泥がついたじゃないか。どうなるか分かってんだろうな!
これは連帯責任だな……」
カナメはすぐに土下座をしていた。
え?
周りを見るとみんな怖がっていた。いつも明るいホノカでさえ顔が真っ青だった。
「申し訳ありません。申し訳ありません。僕だけならともかく、後ろの三人は関係ありません!
自分だけにしてください!」
頭を地面に擦り付けながら必死に謝っていた。
「ふんっ。いい眺めだな。下人が頭を擦り付けて謝るか。もっと深く頭を下げろ。こうだ、こうやってやるんだ」
そう言いながらカナメの頭を足で押さえつけた。
カナメの姿を見て、徐々に頭に血が登る。
友達があんなことされてるのだ。
止めに行かないといけない。
一歩踏み出そうとすると、セクアナに止められた。
セクアナを見ると、息が荒く、とても焦っていた。
「トモヤ、耐えて……カナメがあんなことになっているけど耐えて……あなたが行けば矛先がこれからずっとあなたに向けられる。
しかも全学年がいる中で雷魔法を使ったら終わりだよ……
だからお願い……耐えて!」
必死だった。僕を抑えてカナメを助ける方法を、セクアナは必死に考えていた。
「ふんっ。お前本当に男か? こんなに恥をかく男なんて初めて見たよ」
「どうか、どうかお許しください!」
「俺がお前たちを許す? ふざけるな!!」
それと同時にとてつもない風が襲った。
「うわ!」
風圧が強く、離れている僕たちで立っているのがやっとだった。
それをモロにくらったカナメは大きく飛ばされて僕たちの後ろに倒れていた。
風によって地面を転がったせいで擦り傷がいっぱいあった。
「キャッ!」
「カナメ!!」
たくさんの人が見ていたが貴族の権力に恐れ、誰もカナメを助けなかった。
ホノカはここまで傷ついた人を見るのが初めてのようで、腰が抜けて座ったまま動けない。
「お前のやったことは重罪なんだよ。下人のくせ貴族様に泥をつけるなんて有り得ない。お前の顔をぐちゃぐちゃにして誰も近寄らせないようにしてやる。
簡単に言うと化け物だな、ハッハハハハ!
後ろのお前たちもだ!」
それを言うと拳に風の凝縮したものが集められていた。
「ふんっ、どんな顔をするんだろうな。鏡で自分の顔を見たとき。クックククク、楽しみだな」
「やめろ……やめろ!」
カールを睨めつけてそんな事を言っていた。
僕は何もできないのか。
いじめられる中、いつも仲良くしてくれた友達を守ることもできないのか。
何のために修行してきた。
何のために今まで努力してきた。
助けるためにやってきたんだろ。
助けろ、今助けるんだ。
強く決意した。
「ごめんね、セクアナ……僕やっぱりカナメを助けるよ!」
僕は満面の笑みをセクアナに向けて飛び出した。
「待って……」
その言葉は小さく響いてすぐに消えた。
「おら!!」
ガシ! ビリッビリビリ
拳に電気を溜めてカールが殴ろうとした手を片手で受け止めた
「……」
「そろそろやめろ……」
カールを睨みつけて、威嚇するように言った。
そして手に力を込めて強く握りしめる。
「お、お前っ! その魔法は……」
「そうです雷魔法です!」
僕がカールの拳を止めた時、しばらく見ていた人たちは動揺していた。
「おい、あいつ貴族に逆らったぞ」
「貴族の魔法をとめやがった」
など言っていたが僕の魔法を見ると、冷たい視線に変わる。
怒り、恨み、恐れ、様々な感情の目を向けられた。
ああ、全学年に知られたな……
でも後悔はしていない。
ちゃんとカナメを助けれた。それだけで十分だ。
「俺に触ってんじゃねえ。この世のゴミが!」
カールは手を払いのけて距離を取った。
この隙に護衛のためについていたガタイのいい奴が、僕たちの目の前に立つ。
「遅いぞ、ゲンブ。何をやっていたんだ。俺に無礼を働いたこいつらに罰を与えてやれ」
そう言うと静かにゲンブという男は魔法を唱え始めた。
手のひらから赤いものが凝縮され始める。
ヤバい……ヤバイヤバい!
こいつの魔法は強力だ。
逃げないと。
「セクアナ早くホノカを引っ張って安全な場所へ逃げて!」
「あっ、わかった。でもトモヤは……」
「僕は大丈夫、カナメを連れて必ず戻るから早く連れて行って!」
「分かった。絶対に戻ってきてね!」
「必ず」
そう言いながらカナメを抱き上げてとにかく森の方へ逃げた。
「フレイム・ショック!」
ボン……ドッカン!!?
大爆発が起こり、すごい衝撃がきた。
「うわぁぁぁぁぁ!」
ドカッ、ドカン!
地面に何度も打ち転がった。
「はぁはぁ、よかった、危なかった……
カナメ、カナメ! 大丈夫か、生きてるか」
仰向けに倒れるカナメはゆっくりと目を開ける。
「うん、大丈夫。ありがとう、僕のために」
「いいんだよ。こちらこそいつも友達でいてくれてありがとう。これからもよろしくね!」
「これからは僕がトモヤを守るよ」
「フフフ、ありがとう!」
爆発にギリギリ巻き込まれず大火傷はしなかった。
だが高熱の爆発だったから無傷ということはなく、足を少し火傷してしまった。
カナメは僕が覆いかぶさったこともあり、あまり大きな怪我はなかった。でもカールに与えられた傷が深くて痛そうだ。
「今日は大変だったな。まさかあんだけ注意していた僕が問題を起こすなんて」
「本当だよ。僕、とっても焦ったんだからね」
「それにしてもトモヤ、顔丸こげだよ!」
「そんなこと言うならカナメだって頭ボサボサじゃないか!」
「フフフ、アハハハハ!!」
僕達は大声で笑った。
今日は貴族に目をつけられカナメは酷い目に遭い、僕は雷魔法を使ったことにより学校の生徒全員にバレた。
信頼、信用を失っただろう。
だが、友達を守ることはできた。
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