雷魔法が最弱の世界

ともとも

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異世界

お別れ

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朝日が昇る頃、僕達は屋敷を出て庭を歩いていた。

酷い怪我をしていた体も、眠っている間にセクアナが回復魔法をかけてくれたから元気だ。

居心地の悪い屋敷から出るための門が目の前にある。 

苦しい、憎しみ、怒り、などの悪の感情がまだ残っていた。でもそれを吹き飛ばすほどの光を知った。

そのことを胸に一歩、踏み出した。

今まで見ていた景色とは違う、まるで全てのものが輝いているように見えた。

そうだな、あの時からだったな……

魔法が暴走してから視界にずっと黒いモヤがかかっているように見えて、僕自身の気持ちが暗くなっていた。

……たぶん、余裕がなかったんだろうな。

そんな気持ちだったから、セクアナに酷いことを言ってしまった。
でも見捨てず、僕のそばにいてくれた。

数十年、一緒にいたのに何も気づけなかった。

(セクアナ、君も僕の恩人だよ!)

気恥ずかしくて、今は言えない。

門を出た瞬間、セクアナが膝をついて座り込んでしまった。
「はっ……かかっ……た……」

手足をとても震わしていた。今までにないほど、とても大きく。

「とっ……トモヤ……腰が抜けた。たっ………立てない………助けて………!」

「ぷっふ! 」

セクアナは今になって恐怖心が訪れたのか、本当に立てなさそうだった。
恐怖の代償も大変そうだな……

「ワッハハハハハハハ!!」

この時、久しぶりに大きな声で笑えた。
顔が引きつったりして不気味だった笑顔が、苦しみを感じない、とても幸せそうな笑顔に。

「セクアナ、本当にいろいろありがとう!」
その満面の笑みで感謝を伝えた。

まぁその言葉は、腰が抜けて焦っている人に届いてるかわからないが……

そのまま、僕はセクアナをおんぶして家に帰った。


帰る途中にこれから僕はどうしたいか、セクアナに伝えた。

「僕はもうこの街、生まれた家からお別れしたい! ここまで問題を起こしたら貴族だけでなく、町民の人達も僕を狙うかもしれないから……いいかな?」
「うん、わかった! 私はどこへでもついていくよ」

迷いもせず、即答で答えてくれた。

「それじゃあ、これから私達は旅に出るんだね!」
「うん、まぁそんな感じかな……」

しばらく沈黙が続いた。

「トモヤ………もう苦しい思いをしないで、どこか、のどかなところで暮らしてもいんだよ。私のせいで苦しめたから……」

この世界に僕を連れてきたことにまだ責任を感じているのか、そんなことを言い出した。

「僕はまだ、魔法騎士になることも、魔王サタンを倒すことも諦めていないよ。この世界に来たからには、ちゃんと使命を果たさないと!」
「でも、またあんなことが起こったら……」

「大丈夫! 君がそばにいてくれるんでしょ?」
「うっ、うん、それはそうだけど……」

昨日の言葉を聞いて僕はセクアナを信じた。君なら絶対に裏切らない。僕のそばにいてくれる。

そんな僕の発言にセクアナは顔を赤面していた。

「ありがとう……」
小さくそんな声が聞こえた。


朝の寒さがなくなり、だんだん温かくなってくる頃、家に着いた。

焼け焦げていて無残な姿だ。

腰が抜けたセクアナは「もう大丈夫」と言ったので背中から下ろした。

いまから、旅をするためにできるだけ使えるものを集めようとする。

そんな行動を起こそうとした時、魔法騎士の六大天、セイラ・ラインハートがまるで僕達を待っていたかのように現れた。

「あらあら~~奇遇ね~~」
その姿を見て、セクアナがひざまずいた。

「こっ、これはセイラ様。こんにちはでございます」
セクアナは緊張のせいか、すこし変な挨拶になっている。

「あっ! おばさん、こんにちは!」
僕は前と同じように馴れ馴れしい口調で挨拶をした

ガッコン!!

「馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿!! 六大天の魔法騎士様になんてこと言ってるの!」

一発ではなく、ゲンコツを十発以上された。意外に痛い。

「すいません、すいませんすいません! 
本当に申し訳ありません」
そして何度も頭を下げて謝っていた。僕も無理やり頭を掴まれて謝らせられた。

「いっ……いえ………いいのよ」

セイラの顔が引きつっていた。

ヤバイ、怒ってそうだ……
さすがにすこし怖かったので丁寧に謝った。

「失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした。おばさんと言ったこと、心より反省しております」

「って! またおばさんって言った! やっぱり君は本当に失礼な子だね!」

「申し訳ございません。本当にすいません! うちの子が無礼を働いて……」

セクアナがまるで母のように必死に謝っている。

僕もできるだけ丁寧に話そうと試みる。
「つかぬことをお伺いしますが、どうして六大天でもあろう騎士様がこんな家にいらっしゃるのですか?」

「それは少しあなた達に話があるからよ~~」

「はい、これはどうもわたくし達のためにありがとうございます。しかしてその理由をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

「はっ、はい……私がここに来たのは……
ん? なんで私が敬語で返事しているの? やっぱり変、その敬語やめて!」

「はっ、はい?」
普通に会話したら怒られるし、丁寧に言ってもやめろって言われるしどうしたらいいの? 

言ってることが無茶苦茶で呆れる。

「あと、六大天の騎士様っていうのもなんか変だからその呼び方もやめて!」
「はっ……はい。じゃあ……セイラ!」

ガッコン!

強烈なゲンコツをセクアナから受けた。
タンコブができるくらいの痛みがひりひりと感じる。

「セイラお姉さんって呼んでくれるかしら~~~」
「えー……」

嫌な顔をしたが、強くセクアなに睨まれたので了承した。

「話、それてますけど、セイラ姉さんはなんでここにいるのですか?」
「そうだったわね~~~」
やっと話が戻って本題に入った。

「あなた達、もしかして魔法騎士を目指しているの~~?」
二人で目を合わせて、同時にうなずいた。

「そう、やっぱりそうなのね……
なら、もっと強くなりなさい!」

六大天様からの直接の話ということで、真面目に聞いた。

「大体の人達は試験に合格したら喜んでいるけど、それで終わりではなく、始まり。軽い気持ちで合格して、すぐに死んでしまった人を何人も私は見てきた」

少し悲しげな顔をしていた。大切な人を失ってしまったのかな……

「だから、強くなって生きなさい。私はあなた達に死んで欲しくない。だってこんな運命みたいによく会うでしょ~~」

悲しい顔もするも、すぐにいつものセイラ姉さんに戻っていた。

「あっ、そうそう。強くなるためのアドバイスがあるの~~」

手を合わせてこちらを向き、なぜかウキウキしていた。

「たくさんの騎士は、魔法によって身体能力を上げているの。それを二人とも全然できていない。
確かに細かい作業やセンスはあるんだけどね~~~ 魔法で身体能力をあげる応用技、これを完璧にすると、もっと強くなれると思うわ~~ 頑張れ~」

握り拳をあげて、僕達を応援してくれた。

「言いたいことはこれだけよ。私とはしばらくお別れね。また出会えることを楽しみにしているわ~~」

そう言って僕が貸していた懐中電灯を返してくれた。
ゆっくりと歩き始めて森の中に入っていく。

ここに来るまで、セクアナからセイラ姉さんに昨日、助けてもらったことを聞いていた。

正直、絶望や憎しみに囚われていたからあまり記憶にはない。
でも最大のピンチを救ってくれたのは事実。
だから僕とセクアナは頭を大きく下げて言った。

「ありがとうございました!!」

セイラ姉さんはふっと笑うと、森の中へ消えて行った。

セイラ姉さんが帰ったあと、僕達は改めて使えるものなどを集めた。古い小さな入れ物くらいしかなく、持っていけるものも探したがあまりなかった。


出発のほとんど使えるものはないまま、準備してが終わる。

「ええ……こほん、ではこれから出発する前に軽く僕達が魔法騎士になるまでの予定を説明します……もうここには帰ってこないので……」
「ああ、そうだったね。ここには帰らないんだね……」

少し悲しげな顔をしていた。

「僕達は今、一文無しです。だからどこか働けるところを探さないといけません。あと修行も」

「簡単に言えば、お金を設けて、それプラス修行をするってことだよね!」
「はい、その通りです。ですから、まずはここから近くの街にいきましょう! 僕に着いてきてね、出発!!」

僕達はノリノリで出発しようとした。

と言いながらも、

「では、道案内お願いします……」

「はぁー、結構リーダーっぽくなっていたのに頼りない!」

「うう……それは自分でも思った。
すいません、着いてこいとか言いながら道、全然わかりません」
方向音痴だということを思い出した。
これにより、ノリノリだったモチベーションが下がった。


まぁ、いつものように楽しく出発を試みる。荷物を持ち、新たな暮らしをするためにとうとう歩き出した。


この街や家ともお別れだ。
学校、友達との出会い、貴族の差別。さまざまな体験をした。

何よりもこの家で楽しく家族三人で暮らした日々を思い出す。たくさんの思い出がこの家には詰まっている。修行やお風呂はもちろん、母が作ってくれたおいしいご飯や昔三人で川の字で寝た夜。苦しんでいる時に助けてくれた母の温もり。

あとカナメとホノカとの出会いもだ。
最後は最悪だったけど、いつかまた仲良く話せるといいな。
魔法騎士になったらすこしは見直してくれるかな……

さまざまなことが鮮明に思い出される。

思い返すと、苦しいこともあったが何気に楽しい日々だった。

大きく足を踏みしめながら僕とセクアナはこの町と、僕達の家に別れを告げた。












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