雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

歩ちゃん

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ピアノ少年と別れてなんちゃらコロシアムに向かっていく。

あっ! そう思えば彼の名前を聞くのを忘れたな・・・・・

また会うといいながら大事なことを聞き忘れていた。
「ああ、やってしまった。あの子、とっても喜んでいたのに・・・・」
僕と出会ったときのあの輝いていた顔を思い出すと、頭を抱えてしまう。

まぁ、もう一度どこかで会えるだろう・・・
服についているフードをもう一度深くかぶる。

「ここのコロシアムの反対側に入り口があるからもうちょっと歩かないといけないよ!」
「う、うん・・・ そうだな。頑張らないと!」
僕は気合いを入れるために顔の前に拳を上げて力強く握りしめる。
「・・・? 何やってるの・・・」
いきなり変なことをしたからセクアナが首を傾げている。

しばらく歩いていると装飾がしてある看板があり、その下には試験を受ける人だけが通れる道が作ってあった。道の横からは街の人達が頑張れよなどと声援を送っている。

そしてその奥には受験申請するための役員の人達がいて、そこへ受ける人は自己紹介をしている。

周りにもこの魔法騎士になるための若き少年少女達が集まっている。

この光景を見ると、本当に試験が始まるんだと自覚する。

「よし、合格するぞ!」
そう決意して僕も道を渡ろうとする。

するとある噂が聞こえた。

「ねぇ知ってる? 今年は実力者揃いらしいね。特に貴族様が例年と比べると多く参加しているらしいよ」
「あっ、知ってる。その貴族様の中に最強の人がいるらしいね」
「ああ、そうだぞ。性格は最悪だけど、子どもの頃からずっとモンスター狩りをしている貴族様だ。実践に慣れているから余裕で勝つと思うぞ。ハッハハハ!」

ふーん。貴族か・・・・

差別されていた記憶が蘇る。

「ふん、貴族を倒した時の他の奴らの顔を見てみたいぜ。どんな顔をするんだろな、ハッハハハ!」
不気味な笑みを浮かべて、すこし黒い感情が出てきた。プライドの高い貴族が僕みたいな最弱魔法にやられる。その顔を想像するだけでなんだかスカッとして笑みが溢れてしまう。
セクアナが僕の笑みに引いている。

「あ、あのあのトモヤさん。なんか怖いこと言っているけど早くいきましょう・・・」
「ああ、ごめんごめん。つい復讐したいと思いまして」
「いや本当怖いよ、今の発言!? まぁ勝てればいんだけど」
「そうだよね・・・」

また他の人の噂が聞こえた。
「いや、その貴族様もすごいけどやっぱあの猛獣みたいなエルフの少女だろ」

なに!? エルフ!
まだ見たこともないファンタジーの種族に期待が高まった。どんな人だろう。

「あぁ、確かにあの子もすごいよな。どこの森から来たのか知らないけど、なんたって王都の正門を通ってきたんだろ。何十メートルもあるモンスターを何十体も倒してきたんだろ」
「そうよね。いやもしかしたら百体くらい倒しているかもしれないよ」
「うわっ、まじか。それはヤバいな・・・」
「野獣じゃないそれ・・・・」
「あはは・・・・」

話している会話が途切れた。

女剣士かな、なんかかっこいい。でも話を聞いていると怖いな・・・・

まだ噂に耳を傾けて一歩も進んでなかった。
「他の人の情報を探るのはいいことだと思うよ。でもそろそろ行かないと受付時間終了しちゃうよ」
「あぁ、ごめん。ちょっと興奮してつい明日が止まっちゃって・・・・・   早くいこっか!」

受付に行こうとした時、後ろの方から、悲鳴や歓喜など、さまざまな声がした。

「おい、モンスター少女が来たぞ!」
「道を開けないと殺されるぞ」
「おい、すげえな。あの子」

うう、人がたくさんが集まっていてどんな人か見えない。

すこしでも姿を見るために近づくと大きな黒い影が見えた。それはもうとっても大きくて噂されていたようにモンスターのようだった。

「ひっ!?」
セクアナもこの影が一瞬見えて、すこしびびっていた。

受付をするためにだんだんこちらへ近づいてくる。
緊張感や恐怖心が高まってくる。

人が僕の前から逃げていき、とうとうその姿を見た。

「・・・・嘘だろ・・ 歩ちゃん・・・?」
自然に涙が出る。
一歩一歩足が前に出る。
初めはゆっくり進んでいたが次第に走っていた。

そして僕はいきなりハグをしてしまった。
その反動でフードがめくれてしまう。
「歩ちゃん、歩ちゃん歩ちゃん!!」

周りからは悲鳴が聞こえた。
野獣のような少女に抱きついたこと、雷魔法を操る悪魔が目の前にいることなどなど、いろいろ問題はあるが、近くにいた街の人は気付くと離れていた。

「って、いつまでこんなことしているんだ!?」
「ぐはぁ!」
僕は見事な背負い投げをされて地面に激突する。早すぎる動きに何をされたかわからなかった。
気付くと地面に転んでいる。時間差で背中に痛みが走った。

「痛って!」
「いっ・・・ 痛いじゃない! 
いき、いきなりなんなのだあなたは」

ああ、歩ちゃんだ。人見知りだし顔も同じだ。緊張して言葉が詰まっている。

黒い大きな影は木でできたキャリーワゴンに荷物をいっぱい詰めていたからか・・・
誕生日にくれた無駄に沢山入ったプレゼントを思い出す。昔から出張には荷物を沢山持って行ってたからな。

やっぱり歩ちゃんだ。

「僕だよ僕。トモヤだよ。ほら覚えてない? 発電工場の息子のトモヤ。歩ちゃん社長だったじゃない!」
「さっ・・・さっきから歩ちゃんって誰のことを言っているんですか? 私、私の名前は、サナ・・・・です」

名前をいう時だけすこし声が小さくなる。

あぁ、こうやって照れてる姿も懐かしいな。久しぶりに知り合いと会えて落ち着く。

「なんの冗談言ってるの? そう言う嘘はもういいから、正直に言ってよ!」
「冗談なんて言っていない。さっきからずっとあなたのことは知らないって言っているでしょ!!」
「え・・・?」

これ本当に僕のこと知らないの?
性格や顔はほとんど同じだ。

そう思えばすこし若く見える。それに髪の毛が黄緑色だ。それでも髪の毛が長くて清楚な印象を与える。

あ! 耳だ。耳が普通の人間とは異なり、長く尖っているエルフだ。

でもほとんど同じ。
本当に歩ちゃんじゃないのかな・・・

最後にもう一度だけ確認した。
「本当に歩ちゃんじゃないの? 僕のことを覚えてない?」

「しっ、知りません。もういいか?」
「あ、すいません。迷惑をかけました。人違いだったようで・・・・   いきなりハグなんかして申し訳ございません・・・」

「あっ、それはどうも。こちらこそいきなり地面に叩きつけてしまいすいませんでした。そろそろ私はいきます・・・・」

キャリーワゴンをギリギリと音を立てながら静かに受付のところへ行かれた。
そして今僕はさまざまな人から非難を受けている。

「そう思えば、あいつも来ていたな。小さな村を潰そうとした悪魔」
「悪魔か。どうせ最弱なんだしすぐに負けるんだろうな」
「キャァ! 怖い。早く出て行って!」

悪口を言われているがそんな声など聞こえない。

せっかく知っている人に会えたけど人違いだったことに絶望している。

「あの・・・  トモヤ・・・いろいろあると思うけど、早く受付しよう・・・」
「うん、そうだね・・・」
元気のない声。
信じてくれている人がいるから、昔ほど絶望はしないけど今は悲しい。


応援に満ち溢れていたコロシアムに入る道は街の人の恐怖や怒りに包まれてさっきまでとは大違いだった。

その最悪の気分の中、試験の申請をしに行く。受付は優しそうな顔をしたお兄さんだった。

「名前をどうぞ」
「はい、私はセクアナです」
「そうですか……セクアナっと、ちなみにどこの村から来たんですか?」

「結構遠くにあるサフラ村です」
「はい、わかりました」
そういって何かカードのようなものを作っていた。魔道具によって出身地や名前を書き、本当さの数分で申請は完了した。

「ではこれをどうぞ」
「ありがとうございます」
「このカードは試験の時、必ず必要になるものなので大切に持っていてください。また、ちょっとしたサービスですが、宿代もこれによって安くなったりするので便利ですよ」

優しい笑顔を向けて丁寧に説明している。そして宿代が安くなると聞いてセクアナがとっても喜んでいる。

「本当ですか! ありがとうございます!」
頭を深く下げて横へ移動する。

「次の方どうぞ・・・・ふん!」
顔が変わった。優しそうな顔をしていたお兄さんはこちらを睨み、荒々しい声になる。
ここまで態度が変わるとは思わず、すこし怖くなる。

「はい、で、なんで悪魔がこんなところに来てるんだ。ここは何をする場所か分かっているのか? 
魔法騎士になるための試験だぞ。そんなところに来てんじゃねえ。さっさと出て行け!」
「あ、あの申請を・・・」

さっきまで本当に優しそうな人だったからなぜか強く言い返せなかった。

「はあぁぁ。わからないやつだな。出て行けって・・・」

ドン!

机を叩く大きな音が聞こえた。
「トモヤのことを知らないあなたが生意気に言わないでください・・・」
セクアナ鋭い目つきで受付の人を睨んだ。

「は・・・はい・・・・」
そのあと彼はただ怯えていた。その分何も言われず簡単に受付が終了した。

「セクアナ・・・なんかごめんね」
「フフフ、ありがとうって言ってよ。感謝された方がうれしんだから」

あれ? どこかで聞いたことがあるような・・・・ 
とにかく、嬉しかった。すこし歩ちゃんのことで落ち込んではいたけど気持ちも開き直っていた。

「ありがとうセクアナ」
「うん!」

僕達の受付も最後の方だったらしく、すぐに終わろうとしていた。

大きなマイクの音が聞こえた。また音魔法とかの魔道具でも使っているのかな・・・・

「以上をもち・・・」
「待ってぇぇぇぇ!?」

受付終了の放送をしようとする時、街の方から叫び声と一緒に一筋の光がこちらに飛んできた。

すごいスピードだった。

「はぁはぁはぁはぁ!」
すごい汗をかいていて、目を見開いている。顔も鼻水と涙でボロボロ。そんな変な青年が受付を訪れていた。

思わず僕達はその顔に吹き出してしまった。
「アッハハハハハハ!!」

やっと気分がいつものように晴れやかになり、やる気が出てきた。

「フフフ。私達も頑張らないとね!」
「そうだな」
お互いに勇気づけながらコロシアムの中へ入って行った。

あの青年は申請するのが大変そうだった。ぎりぎりにきていたからしばらく話して、無事受けれることになったらしい。

すこし笑い物にしていたが、彼のスピードはとても早かった。たぶん厄介になる・・・

改めてライバルが多いことを自覚した。




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