雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

試験一日目の夜

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さっきまで歓喜に満ち溢れていた会場には静寂が訪れていた。
戦いに熱く熱狂していたやつ、面白い魔法を見て感動していたやつ、雷魔法を嫌っていて「早くやられてしまえ!」と罵声をぶつけるやつ、そんな人達がこの結果に唖然としていた。

そしてやっと頭で今の状況理解できたと同時にブーイングが発生した。

「ふざけるな!」
「この悪魔! なんで最弱のお前が勝つんだ!」
「イカサマだ。そうじゃなきゃ貴族様に勝てるわけがない!」

そんな中、僕は気持ちよく相手を倒したことで顔がにやけていた。

ブーイング? そんなの頭に入ってこない。

ただ、渾身の一撃を振るった自分の両手を見つめている。

これが、これが今の自分の実力なんだと。
やっとここまで来て大きな一歩を踏み出すことができたのだと。
そう心の中で噛み締めていた。

勝負が終わるとすぐに救急隊員が駆けつけて担架のようなものを持ってきて対戦相手を運んで行った。

いやー、やっぱ強いね雷魔法! これ、結構簡単に魔法騎士団試験に合格するんじゃね?
ておっと、少し調子に乗ってしまう。こういう時こそ冷静にならないと・・・・・

新技がうまく決まったことで少し興奮してしまっていた。
そんな感情を押し殺しながら元来た道を戻っていった。

一人が通れるくらいの入場門前。

そこへきたら最前線で見ていた観客が物を投げつけてきた。

「何、勝ってんだよ!」

当たる瞬間に電気を走らせて回避した。

心の中では少しイラついていたが、抑えて笑顔で対応した。

「俺、魔法騎士になりますから!」
俺という言葉を使って強気で言った。
笑顔ではあるが少し威嚇するような鋭い眼差しを向ける。

「ふん、そうか・・・・ 次も楽しみにしているよ・・・・・」
そう言って屈強そうな男はそっぽを向いた。
少し顔が赤くなっている。

「うん?」
少し思ってた反応とは違っていたので首を傾げてしまう。
なぜだろう・・・・・
さっきまでイラって感情があったのに、彼の顔を見ていると少し落ち着く。

そしてあるワードが頭の中からでてくる。

ツンデレ・・・・?

彼の反応はそのような感じだった。

そのあとは横で見ていた友達っぽい人が優しく僕に謝ってくれた。
それを見て少し微笑してしまう。

面白い観客もいるもんだな・・・・・

軽く笑いながら門の中へ入った。
近くにスタッフのような人がいて案内されるがままついていくと薄暗い広いところへ出た。
始めと違う道なのか控室は通らなかった。

まぁ、次の受験生がいるから当たり前なのかな・・・・

そんなことを考えていると後ろから女性の大きな声が聞こえた。
「トモヤ!!」
二人の女性が僕へと向かってくる。

セクアナはハイタッチをするためか両手を前に出していた。
そしてサナの目は輝いていた。

「イェイ!」
「イェ・・・イ」
まだ、セクアナのテンションについていけなくて少しぎこちなくなる。

それでも大きな「パチン!」という音は響いた。

「いやー、よかったよかった!」
少し気持ちを抑えたら僕の肩を強く叩いて喜ぶ。

「ああ、はい。よかったです・・・・」
試合のあとはもう少し優しく扱ってほしいな・・・・

そんな僕の心など聞こえないように二人は明るく振る舞う。
「トモヤ、トモヤ! 何あの魔法? 凄いよ、本当に凄い!」
サナもまた、興奮しすぎて顔が僕のすぐ近くまで来る。
女性慣れしていない僕は少し頬を赤らめてしまう。

二人のこの明るい対応に少し疲れた僕は我慢できなくなる。
「ちょっ・・・ちょっと! 二人とも落ち着いて!」
怒鳴るような声を出して周りからも変な目で見られる。

うう、恥ずかしい・・・・・

それでも大きな声を出した甲斐があって、すこし静かになってくれた。

「アハハハ、ごめんねトモヤ。一回戦に勝ったから思わず舞い上がってしまって・・・」
「こちらこそごめん。私もあの魔法を見たら気持ちが抑えられなくなった・・・・」
「本当、二人とも気をつけてよ。僕一回戦が終わって疲れているんだから!」
腕を組んで偉そうに言ったら、二人は縮こまった。

「アハハハ!」
二人同時に俯く姿を見たら思わず笑ってしまう。

こうしてみんなが笑っていると安心する。
だからこそ、悲しくもなる。
サナは僕が怖くないのかな。
またあの時のように捨てられるんじゃないのか。

不安になってしまい、怖がりながらも聞いてみた。
「サナは僕のことが怖くないの?」
笑っていたセクアナの笑顔がなくなった。

そしてサナはしばらく手を顎に乗せて考えていた。
「んーーー、トモヤが悪魔とか言われてみんなから怖がられていることだよね?」
「うん・・・・」

しばらく沈黙が訪れる。
そしてサナの口が開いた。

「私は良いと思うぞ!」

その言葉で気持ちがとても晴れた。
ずっと悪魔とか言われて罵倒されてきたからこそ感動した。

「本当!」
思わず興奮してしまって大きな声を出していた。

「うん! ほら、トモヤは強いじゃん。それに話していて面白い。だから大丈夫だよ!」
「そっか!」

セクアナが肩に手を置いて、「よかったね!」と笑顔を向けてくれた。
思わず泣きつきそうになった。

ブーーーー

また大きなサイレンの音が鳴る。

それと同時に二人は僕を休憩させるためか気を使って別々に会場の外へ行こうとした。
「じゃあ、私はこれで! すこしどんな魔法があるか見てくるよ」
サナはそう言って走って行った。

「トモヤ、ゆっくり休んでね!」
セクアナも会場の外へと出る。

「・・・・・」
結局、一人になった。

さっきの言葉を聞いたら、今はそばにいて欲しかった。
でも僕は一人だ。

ポカンと立ちながらも近くに石で作られている固そうなベンチがあった。
休むどころかケツが痛くなりそうだったが一応座った。

もちろん、石だから固かった。それでもリラックスはできた。
ぼうっとしながら一回戦のことを一人で反省していた。
一瞬で勝負は終わったが魔法で身体能力を上げるのは意外にも魔力を使うということが分かった。
修行してたけど、いざ本番になると緊張とかいろいろ混ざって疲れるな・・・・・

体がすこし疲労していてそのまま寝そうなった。
うっすらと瞳が重くなる。

寝るかなっと思ったが思わぬ音で叩き起こされる。
「わっ!」
何かと思うと空間ウィンドウが目の前にあった。映像では砂煙が上がっていた。

第二試合か・・・・・

寝そうになっていたが、一度見てしまったら魔道士の勝負に思わずハマっていた。

魔法の種類、細かい造形などなど勉強になるものがたくさんあった。

十五戦くらいやった頃か・・・・

外は夕暮れになっており、今日の試験は終了した。

ぞろぞろと観客が帰っている。すこし上からだったので人がアリのように見えた。

「トモヤ、私達も行こっか」
そんな風にすこし上から街を見下ろしているとセクアナがいつのまにか来ていた。

セクアナ達と別れた所の近くにいたため簡単に僕を見つけてくれた。

「うん!」
休んだおかげで元気な声が出せた。

僕はセクアナの後ろをついていく。

真っ暗になる頃、昨日泊まった宿に着いた。
人がたくさん一斉に帰ったので前に進むスピードがとても遅くすぐ近くにある宿へも数時間かかった。

正直、一回戦の戦いよりもここへたどり着く方が疲れた。人混みに酔い、満員電車に乗っているように暑苦しく、はぁはぁと息を吐くほど疲れた。

「はあぁぁー」
大きくため息をつく。

ここにくるまでの間、人混みに飲まれながらも僕達は話し合っていた。「同じ部屋に泊まるのはもうやめよう」と。
これに関してはお互いに納得した。
格安になるカードもあるし即答だった。
これからも寝不足になるのはごめんだ。

なによりももらったカードはなんと銀貨一枚で試験が終わるまで泊まれるということだ。
お金のない僕達にこれほどの嬉しい話はない。
これのおかげで随分余裕ができた。
これは将来、この国を守る英雄のためにと誰かがサービスとして考えてくれたらしい。
本当に嬉しい。

カードを見せようとすこし嬉しい気持ちをもちドアを開けた。

しかし開けた先には、さらに僕達を疲労させるめんどくさいことが・・・・・

「お願いぃぃぃぃぃぃ! どうか泊めさせてぇぇぇぇぇぇぇぇ! お金がぁぁぁぁ!」
鼻水まで垂らすような勢いで泣いている金髪の少年がいた。

今は聞きたくないその嫌な絶叫に耳を押さえる。

「申し訳ありません、それはできません」
困った顔をしながら犬耳の受付員は深く頭を下げていた。

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 泊まる泊まる泊まるのぉぉぉぉぉぉ!」
小さい幼児のように駄々をこねている。

僕達は呆れながら彼を見つめる。
と思わず目を開いた。

「この子って確か試験ギリギリに受付を済ませていたあのすばしっこい子・・・・・?」
「あっ!」
僕の発言にセクアナは確かにと言わんばかりに手をポンと叩く。

今日、ものすごいスピードで受付していた子が目の前にいる。
あの姿と照らし合わせると・・・・
うん、そのまんまだ。

泣き崩れていてあの時と何も変わっていなかった。

初めて見たときの魔法には圧倒された。
光のように速く、たぶん凡人には彼の姿が見えないくらいの速さだろう。
それくらい超スピードの魔法なのに・・・・

「はぁー」
またため息が出てしまう。
この姿は・・・・なんというか・・・・・
とっても残念だ。

たぶん泣き崩れていなくてしっかりしていたらかっこいいと思うだろう。
金髪に凄い魔法。
男のハイスペックみたいなものだ。
でも今の彼を見るとため息しか出ない。

「お願いぃぃぃぃぃぃぃぃ! タダで止めさせてぇぇぇぇ!」
足にすがるように受付員の手をつかんでいた。

関わりたくないなっと静かにここから離れようとすると、こういうのに敏感な獣人にバレた。

「あの、助けてください・・・・・」

本当に困っていそうだ。
一応、ローブを深くかぶっているから前と同じように優しく振る舞ってくれる。

彼女達に背中を向けてすこしセクアナと話し合った。
「ねぇ、どうしたらいい?」
「うーん、彼をどうにか説得するとか・・・」
頬をかきながら困った顔をしてセクアナも苦し紛れに提案する。

「でもさあの子、結構しつこそうじゃない?」
「うん、確かに・・・・」
ぐうの音も出ないようにセクアナは黙り込む。

「ねぇ、もういっそあの子の分を払ったらよくない? どうせ銀貨一枚くらいなら大丈夫だよね?」
「余裕はあるけど・・・・・うん、もう彼の分を払おう! もうこの呻き声聞きたくないしね」
「あの声聞くと余計に疲れがたまるからな・・・・・」

軽く話し合って彼の分を払うことになった。

「あの、彼の分を私達が払います!」
「そうですか!」
待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに返事をしていた。

「本当?」
潤んでいた目はすこし乾いていた。

「ありがとう!」
「うわっ!」
僕達二人に向かって抱きついてきた。

彼の涙で服がすこし汚れてすこし引き気味だった。

「ぐすん、ありがとう・・・・僕はマネト・グリーム。同じ魔法騎士の試験を受けようとしてたよね!」
涙を袖で拭いていつも間にか笑顔になっていた。

「う、うん。よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします」

意外明るい子だったのですこしぎこちなくなる。
「あ、えっと。僕はトモヤでこっちがセクアナだよ。マネトも頑張ろうね・・・」
「うん! お金ありがとう!」
そう言って鍵をもらうとすぐに部屋へ行ってしまった。

嵐のような人だった。
やりたいことができなかったら大声で泣いて、それが達成すると笑顔になる。幼児みたいだな・・・・

それにマネトって・・・・

「マネー」 英語でお金って意味の単語が出てくる。
フフフっとすこし笑ってしまった。

そのあとは軽く受付を済ませて部屋へ戻り僕は倒れるようにベッドに寝込んだ。

出会いはこんな形だったが、マネトとはこれからも長い付き合いになる。

この時の僕はまだ知らななかった。
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