雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

コーウト・ドルトム

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覚悟を決めて、立ち上がる。

そして控室まで歩く。
後ろにはサナ、マネト、セクアナがついてきている。

「トモヤの決勝は苦戦しそうだな。私でも勝てるかわからないような相手だ。強敵だが頑張れよ!」
「痛いって!」
サナは気合いれるためか強く僕の背中を叩いた。
 
「せめてもうちょっと手加減してよ」
「私の元気を分けているのだ。そういうのは力強いほうが体に刻まれるんだぞ」
「ええ、そうなの。でも僕の相手、サナでも苦戦しそうなやつなんだ。すこし心配に・・・」

「何言ってんのトモヤ、弱気になっちゃって。私にバトン渡してよ!」
肩をぽんと叩いてセクアナは笑顔を向ける。

「俺、賞金もらえるよ! トモヤも勝ってもらわないと」
さっきまでお金お金と呪文を唱えていたが、やっとマネトが正気に戻った。
今はいつもよりすこしテンションが高い。

「ほらっ!」
セクアナの大きな声にびくりと肩を震わす。

「頑張ってきなさい!」
笑顔で僕の背中を強く押した。

それに続いてマネトとサナも一緒に押してくれた。

最後まで三人に見送られて、控室まで行った。


「さーて、これから始まります第二十三回戦! 今回の目玉でもある試合です。お互いに一回戦で貴族を倒し、ここまで上り詰めた男達だ!」

僕が闘技場に出た時、もう夕方になっていた。

「まず入場してきたのはトモヤ・フローレス! 最弱の雷魔法であり、誰にも期待されていなかったが、それを大きく変えて今、決勝まで勝ち抜いた。最後の戦いでどんな技を見してくれるか!」

いつも通り、会場からはブーイング。
ツンデレのおじさんはというと僕を小さな声で応援してくれた。
この人以外にもちらほらと僕を応援してくれている。

イメージがすこしでも変わって嬉しいな。

あたりを見渡すと外にみんな僕を見てくれていた。
安心する。
僕は勝たないと。

その反対側には六大天の席がある。
といっても今日いるのは一人だけ。
水魔法を操る、セクロ・ルーカス。
濃い青色の髪をして楽しそうに見ている。

他の人たちは任務と考えるたら、大変だと思う。

何故かわからないけど、僕はそのセクロ・ルーカスに親近感が湧いて見惚れていた。

年齢は三十代くらいで優しそうなおじさんって感じだから、なんかいい。

すこし逸れたことを考えていると、
「おっと、出てきましたコーウト・ドルトム! 小さな体とは裏腹に魔法でその相貌が凶暴になるぞ。変身すると強靭な体になってそんじゃそこらの攻撃なんて、はじき飛ばされるぞ!」

見た目は可愛い、彼が「よいしょっ」と大きな矛を引きずってゆっくりと入場してくる。

本当、見た目だけは可愛い。

闘技場の真ん中ら辺までくると矛を下ろした。

すこしずつ距離を詰めて握手を交わす。

「えっと・・・ お互い頑張ろうね!」
彼が可愛いからか、それとも決勝戦だからか、初めて自分から挨拶した気がする。

「うん、よろしく!」
無邪気な彼の笑顔に思わず癒される。

すこし頬がたるんでいると、
「でも僕は負けないから。お前に絶対勝つ!」
小さい子だが、鋭い目で睨まれた。

少しビビってしまったが、それによって気が引き締まった。

お互いに間合いを取ると、アナウンスが流れた。

もうすぐ始まる。

僕は中段に刀を構える。
力強く握って手汗が滲んだ。

それに対して、彼は矛を引きずるように持つ。まだ魔法を使っていないからちゃんと持てていない。

「それでは決勝戦、第二十三回戦・・・始め!」

「電気ショック!」

始まると同時に速攻を仕掛けようとした。
これは一年前の決闘で大いに役立った。
魔法騎士相手に通用したのだから、まだ見習いである彼は驚くだろう。
しかも「電気ショック」はまだ奥の手として試合で使っていなかった。
威力は弱いけど、このスピードには誰も避けきれないから必ず当たる。

すこししびれさせたところを刀に魔力を込めて一撃だ。
これで終わらせる。


僕は強い一撃を与えるために走った。

放たれた青い雷は、一直線に見えないスピードで進み、彼に当たった。

「グハッ!」

さすがというべきか、開始してすぐに体長二メートルもある姿に変身していた。

でも僕の攻撃を避けることはできず、今は体が麻痺している。

「はああぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
咆哮をあげながら彼に近づき、刀に魔力を込める。
刀が青い雷に包まれてる。


「いっけええぇぇぇぇぇ!」
大きく背中に振り被り、顔を狙い、振り下ろした。

ギンッ!

会場に響いた音は、刀が皮膚にぶつけられた鈍い音ではなく、お互いの武器が打ち付けられた金属音だった。

絶好のチャンスだったが、彼は僕が間合いを詰めるまでに麻痺を打ち消して、1秒もない短い時間で矛を動かして刀による斬撃を受け止めたのだ。

その光景には驚きしかなかった。

あの魔法騎士のゲンブと同じことを彼はやってのけたのだ。

ギシギシと音を立てながらお互いの武器がぶかり、静止する。

「オオオオオオオオオオオッ!」

始めは力が均衡していたが、彼の雄叫びに合わして、僕が押される。
すこしずつ麻痺がなくなってきたせいか、本来の力が発揮される。

「ハアァァァァ!」
「ウグッ!」

メキメキと彼の腕に力が入る筋肉の音がした。
気がついた時、僕は空を舞っていた。
一瞬、何が起こったのかわからなかったが、地面に転がった時に激痛を感じて、吹き飛ばされたことを自覚する。

ダメージはそこまでなかった。
服が泥まみれになって、軽い擦り傷を負ったくらいだ。
しかし、精神がすこし削られた。
彼の一撃の強さ、それに僕を優に越す巨大な姿に体が震えた。

地面に倒れたがすぐに立ち上がった。
でもその時、手が軽く震えていた。

僕の前にいるのは狂牛だ。

覚悟をしていたが、やっぱり強い。

「オオオオオオオオオオオッ!」
呼吸を整える暇など与えず、彼は弾丸のように走り出して突撃する。

巨大な体に似合わず、恐ろしい速度で突っ切り、僕との間合いを喰らいつくす。

恐怖で刀を構えられない。
足も動かない。
という状況に陥ってしまった。

かすかに手を動かせたので、すこしでも足止めするために魔法を放つ。

「電撃波!」
「ヴゥオッ!」

ビリビリ!

とてつもない強さの電圧が彼を襲う。
矛で防御しているようだが、体にも当たって動きが止まった。

やっぱり、雷魔法ををくらうと彼は痺れて足が止まってしまう。

恐怖に支配されていたが、相手の弱点を見つけられたので気持ちが楽になった。

ギシギシ・・・

小さな足音が耳に届く。
痺れながらもゆっくりとこちらに近づいているのだ。

僕も魔法を放出しまくると魔力を結構使うので、すぐにやめた。

ここから接近戦が始まる。

攻撃をやめるとすぐに咆哮をあげながらこちらに向かってくる。

「グオォォォォォ!」
「・・・・!」

顔が思わず引きつってしまう。
雷の魔法をあれだけ放出したのにダメージがほとんどない。
すこし体が痺れて動きは遅くなっているが、強靭な肉体に傷はついていなかった。
攻撃があまり通用しないということに無力感を覚える。

ドゴン、ドゴン

力強い足音を聞いて、ハッと彼に意識を向ける。
巨大な矛を後ろに振り被りながらに走ってきている。

避けないと・・・
差し向けられた視線に、首筋がぞくっとする。そしてまた足が動かない。

そんな中、一歩一歩近くなる。

ついに間合いに入ってしまい、巨大な矛は振り下ろされた。

終わりだ。
負けてしまった。

そう思ったが、僕の体は本能で危険を感じたのか横へ飛び込むように避けた。

バコン!

大きな音が響く。
彼の手から振り下ろされた矛は地面を破壊し、ものすごい衝撃が飛んできた。

凄まじ強風がきて、また吹っ飛ぶ。

「うわっ!」
吹っ飛ぶだけならよかったのだが、彼が壊した岩盤の破片が腕をかすって血が出てしまった。

怪我をしたのは左手だ。
まだ腕は動くが少し力が入らない。

離してしまった刀を拾い、片手を押さえながら立ち上がる。

会心の一撃は避けれた。
でも僕の体は恐怖に支配されている。
また次の攻撃を避けれるとは限らない。

まだ手が震えていた。

「トモヤ! 頑張れ!」
「みんなで魔法騎士になろう!」

遠くから声が聞こえた。

視線を移すと三人が全力で応援してくれていた。
たまに声が裏返っている時もあった。

「ふっ」
ピンチだという時に思わず笑ってしまった。

「そうだね、僕は勝たないと・・・」
手の震えが収まっていた。

そして彼に勝とうと僕の頭に火がつく。
やっと自分に戻れた。
恐怖心がなく、素直に戦える自分に。

「ふーーー」
体の力を抜いて空を仰ぐ。
深く深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

「俺への恐怖心がやっとなくなったか。お前は普通の奴とは違うな、いくぞ!」
「望むところだ」

軽く会話を挟んで、激しい勝負が再開される。

「ハアァァァァァァァ!」
「ウオォォォォォォォォ!」

会場中に響き渡る、大きな雄叫びに合わせて走り出す。

キーーーーン!

初めとは比べ物にならないくらい大きな金属音と衝撃が発生した。

もちろん力では必ず負ける。
だからぶつかった瞬間押し返されないようにうまく受け流した。

どうにか強い一撃を刀で受け切れたが、まだ追撃がくる。
刀だけで凌ぐことは難しく、避けることもあったが、そのたびに破片が飛び散って体を傷つける。

お互い一歩も引かず、凄まじい剣劇を繰り広げた。
何度も金属同士がぶつかって火花をあげ、地面が破壊される。
それでも、彼の方が一枚上手で防戦的になるしかできなかった。

ギーン

大きく横から振られた矛を受け流しきれず、滑るように後ろに吹き飛ばされる。

ギギギっと剣を地面について足に力を入れブレーキをかける。

「はぁはぁはぁ・・・・」
「はぁー、はぁー」

彼にダメージはないものの、体力は今の攻防で削れたらしい。
もちろん僕も体力がなくなったが。

見上げるほどの身の丈にすさまじい筋肉をした体軀。
漆黒の色をした彼の相貌はモンスターのように恐ろしい。

「・・・・?」

しかし、彼の動きが止まった。

さっきまで激しい勝負に、たくさんの人を怯えさせる咆哮をしていたとは思えないほどの静けさが訪れる。

じっとこちらを凝視している。

「名前はなんだ・・・」
「・・・?」
低い声で彼はゆっくりと話し始めた。

勝負とは全然関係ないことを話し出したので首を傾げてしまう。

「名はなんて言うのだ」
「と、トモヤです・・・」

「そ、そうか。俺はコーウトだ。君は強い、でも絶対に負けられない!」

彼は駆け出し、再び僕に向かい打つ。

彼は戦いながら自分の幼少期の暮らしについて語り出した。

「ぐっ!」

キーーーーン

「俺は子供の頃! 小人族だからってよく虐められた。親もそうだし、小人族は他の種族と比べると、潜在能力は低くて、魔法も弱い!」

大きく振った矛が地面に激突して、僕に衝撃を与える。

「悔しくて、小さい頃から俺はずっと修行してきた。そして今俺はここにいる」

彼も僕達と同じように小さい頃から努力している。
その事実を知って、ここに上がってきた人は強い思いがあるのだと悟る。
強い人はやっぱり努力しているんだ。

同調して油断してしまい、矛が当たりそうになった。

「危ね・・・」

「俺は一族に復興をするために魔法騎士になる。小人族は弱くなんかないって証明するんだ。だから負けない!」

彼は大きく矛を振り上げる。
その時、少しだけ隙ができた。

僕は確実に倒すために相手の側面に回り込もうとする。
彼にとっての死角、つまり唯一の安全地帯で強力な魔法を放とうとする。

そして僕がそこに回り込もうとした時、彼の瞳が、光った。

「・・・ふっ」
彼は矛を振り下ろすと思ったが、横に回して、後ろにいた僕に攻撃したのだ。

「・・・なっ!」
ぎりぎりで気づいたから刀で防いだ。
しかし反応するのが遅く、矛が腹部にめり込んだ。

「ぐっ・・・ グハァッ!」
すさまじい衝撃と痛みが走った。
僕は今までで一番吹き飛び、会場の壁に当たった。

「ガハッ、ゲホッ。ゲホゲホ・・・」
大きな深傷を負ってしまった。

意識が朦朧とする。
足が動かない。
息ができない。
吐き気がする。

カウンター。
まんまと相手の策略にハマってしまい、最大のピンチが訪れた。














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