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魔法騎士団試験
決着
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意識が朦朧とする中、昔のことを思い出していた。
セクアナと二人で一生懸命、修行をしている日々。
新技で苦しんでいたことや、筋トレを頑張っていたいる姿。
そう思えばこの決勝戦、一つの戦い方しかしていないな。
魔法で遠距離攻撃をするか、剣で真っ向勝負をするか。
ピンチになった時に自分のミスに気づく。
ドシドシ
コーウトが近づいてくる音が聞こえる。
刀を杖のように体を支えて、ゆっくりと立ち上がる。
まだ息苦しい。
体が動かない。
「これで終わりにしてやる。お前の負けだ」
負け・・・
僕はまだ立ち上がってるぞ。
勝手に決めつけてんじゃねえよ・・・
まだ俺は諦めてなんかいないぞ!
まだ自分の中に戦うという強い意志があった。
目に火がついている。
彼はゆっくりと近づいてくるが、恐怖はなかった。
辛い、痛い、苦しい。
でもまだ僕は負けてないんだ。
そうだ、負けてない。
まっすぐ、彼を見つめた。
「僕は、君を倒して魔法騎士になる! 僕だっていろんな覚悟をしてきているんだ!」
ここに立つまでたくさんの人にお世話になった。
いつもそばにいてくれるセクアナ。
小さい頃からずっと優しく育ててくれたお母さん。
決闘の時、助けてくれたセイラ姉さん。
雷魔法を操ると分かっても僕の友達になってくれたサナとマネト。
みんなの意志を僕は背負ってるんだ。
こんなところで負けられない!
アドレナリンが出たせいか息苦しさも痛みもなくなった。
戦える。彼と、ドルトムと戦える。
そして勝つ。
彼と同じように僕も走り出す。
「ほう、まだ立ち上がるか! 全力でこい!」
「ハアァァァァ、電気ショック!」
麻痺させるために同じ魔法を使った。
「ぐっ」
二度目の技だが、彼は避けれない。
ドゴッ!
「グハァァァ」
鈍い音がして、初めて彼に刀での攻撃を与えることができた。
雷を纏わせていたこともあり、攻撃された胸部は焦げていた。
ちゃんとダメージを与えられた気がする。
彼は膝をついて、息が荒くなっていた。
僕にも少し希望が見えてくる。
「・・・・・この技で潰す!」
そう言うと、彼は四つん這いの姿勢になっていた。
矛を地面に置き、低く構えている。
さっきまでとは違う構えだ。
おもわず目を見開く。
すると両手の漆黒の毛がブオッと音を立てながら逆立った。
続けて全身の毛も次々と逆立っていき、体が膨らんでいく。
僕は息を飲んだ。
さっきまでは人と牛の混ざった感じだったのが、野生の牛そのものへと変身したのだ。
体長はさっきよりもずっと大きくなっている。
「こ、これは・・・」
僕も技を隠していたように、彼もこの姿への変身を隠していたのだ。
「ふん、では行くぞ」
「ブオォォォォォォ!」
獣というべき鳴き声を上げると、四つん這いになって突進してきた。
「電撃波!」
魔法を放ったが、鋼鉄のような皮膚によって軽々しく跳ね返された。
彼の足は止まらず僕、目掛けて加速する。
「ふーーー、集中・・・」
精神統一をして突進してくるギリギリを狙う。
足に魔力を溜めて一瞬で動けるようにする。
ここだ、という時に「雷神」を使うため、魔力に余力を残す。
・・・今だ!
ビリッ
僕自身が雷になったように一瞬で横に移動した。
見事、彼の突進を避けきれた。
再度の突進も同じようにして避け切った。
それを五度くらい繰り返すと、彼の動きは止まった。
額に汗をかいてひどく疲れている。
この形態になるのはとても強力だと思うが、魔力の消費が大きいようだ。
僕も肩に、一度ぶつかられて少し痛めた。
それでも彼の隠し技を耐え切れた。
お互いが汗だくで必死に勝利を掴もうとする。
矛のある場所まで走ると、立っていた毛が縮こまって、元の姿に戻る。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・」
彼は荒い呼吸をしている。
ここだ! と思い、僕は魔法を発動した。
「雷神!」
体を青い雷が覆う。
髪が逆立ち、全身に電気がめぐる。
僕はこの時をずっと待っていた。
彼は強靭な肉体で防御力がとてもある。
始めから全力を出したら、彼を倒す前に僕の魔力がなくなって負けていたと思う。
だけど今は違う。何度も戦闘をして、僕にトドメを刺すつもりで隠し球である凶暴な牛そのものになった。
それによって彼の体力をものすごく削ることができた。
体力がなくなるにつれて魔法の効果も弱くなる。
結果、完璧だった防御力ができなくなるということだ。
証拠としてさっき、刀での攻撃は肉体に傷を負わせることができた。
ピンチな時もあったがやっとここまでたどり着いた。
この技で終わらせる。
「ここからが本番だ!」
「ま、負けねぇ! 家族を、みんなの暮らしを俺が変えてやるんだ!」
お互いに対峙する。
「オラァァァァァァ!」
「ブオォォォォォォ!」
汗ばんだ手で強く刀を握る。
「魔法騎士になるぅぅぅぅ!」
「俺もだぁぁぁ!」
彼は矛を横から振るが、それは僕に当たらない。
素早い動きで軽くそれを避け、魔法を込めた刀を彼にぶつける。
「ガアァァォァァ」
ビリビリビリビリッ
大きな電気が発生し、彼の体を蝕む。
後ろに吹き飛ばされて倒れ込んだ。
まる焦げになって所々から煙が出ている。
「雷神」で魔法の威力も上がった。
これで倒せるか、と思ったが彼は立ち上がった。
ゆっくり、ゆっくりと立ち上がる。
「負けられない、俺は絶対に負けられないんだ! ゲホッ 小人族の復興のために・・・
ハァァァ」
走るスピードが落ち、今にも倒れそうな状態だけど、気高く僕に立ち向かう。
「雷鷹電撃!」
ゲンブ決闘した時とは比べ物にならないくらい大きな鷹が、雷の形となって飛んでいく。
「グハァッ!」
それをもろにくらった。
大きな雷の音を立てながら膝をつく。
常人の人なら立てない。
でも彼はまだ倒れなかった。
「お、お・・・・俺は・・・・負けない、絶対に負けない!」
ここまで何度も立ち上がられると罪悪感が芽生えてしまう。
もう彼は限界だ。
体がボロボロで、体力もほとんどない。
一歩進むごとにバランスを崩している。
何もしなくても倒れそうだ。
だけど彼は立ち上がる。
僕は相手を痛めつけたくない。
悔しいかもしれないが、降参してほしい。
「もう、君は限界だよ。だから悔しいかもしれないけど降参してくれ! お願いだ!」
「ふ、ふざけるな・・・ 俺は負けない。勝つんだ・・・」
まだ僕に向かってくる。
でもほとんど走れていない。ゆっくり一歩一歩進んでいる。
もう見てられない。
「まだだ、まだまだ・・・あっ!」
ゆっくりと矛を振り回す。
力はほとんどなく、一度振るだけで体の軸が傾いてこけそうになる。
「もうやめてくれよ、それ以上やったら体が・・・」
「これは決闘だ! 相手に情けなどするな!
俺にはそんなもの必要ない!」
「・・・!?」
彼の怒鳴るような一言に我に帰る。
必死で戦っている人に向かって諦めろと言っていた。まだ勝負は終わっていないのに。
弱々しい矛の一撃がくる。
キーーーーン
両手で刀を強く握りしめ、矛に目掛けて一撃を放った。
カンっと音が鳴って矛が後ろに飛ばされた。
バタンと重そうな音を立てて地面に落ちる。
「コーウト、君は強かった。本当に強かった。でも僕が勝つよ! ありがとう!」
笑顔を彼に向けると、
「そうか。トモヤ、こちらこそありがとう!
だが最後は俺が勝つ!」
牛の顔だから笑顔が怖かったけど、それでも彼の温かさを感じた。
「オオオォォォォォォォォォォ!」
彼は右手を握りしめて、向かってくる。
その走りは汗水垂らした、とても輝いた姿だ。
僕は、それに応じて魔法を放つ。
「雷轟!!」
ゴロゴロ
天から強力な光が地面に落ちる。
「ふっ!」
彼の笑い声が聞こえた気がした。
コーウト・ドルトム。
彼はまる焦げになって地面に大きな音を立てて倒れた。
「長きに渡った勝負が決まったぁぁぁぁぁぁぁぁ! 勝者はトモヤ・フローレス。最弱である雷魔法を操るトモヤが勝負を決めた!」
この結果に、会場からは物を投げられたりした。
喜んでいる人、いや戦いに満足している人もたくさんいた。
相変わらず僕は嫌われ者であった。
最後は期待通りに罵倒されたが、無事、魔法騎士になれた。
本当は喜ぶものなのだろう。
しかし、彼の強い思いを感じたから、あまり気持ちよくならなかった。
僕より彼の方がいいのではないか。
名声も信頼もない僕なんかが魔法騎士になってもいいのだろうか。
思わず考え込んでしまう。
コーウトはいい奴だった。
家族や友人のために魔法騎士になって、小人族の名声を取り戻そうとしていた。
力はあるし、諦めない心もあって魔法騎士に向いている。
どれだけ痛い思いをしても立ち上がり、僕に立ち向かった。
こういう人が将来、役に立つのだと思う。
でも僕は彼を倒して魔法騎士になった。
本当にいいのだろうか・・・
浮かない顔でコロシアムの中へ入った。
「ふー、冷や冷やしたが、無事魔法騎士になれたな。いい勝負だったぞ!」
「トモヤも勝ててよかった! 最後は私だね!」
「どうしたんだよ? 魔法騎士になったのに気分が悪そうな顔をして」
戻るとすぐに3人が駆けつけてくれた。
みんな輝くような笑顔で迎えてくれるが、今の僕には眩しすぎて目を合わすことができない。
「いやー、えっと・・・本当に僕なんかが魔法騎士になってもよかったのかなって・・・
彼の方が名声とかもあるし、強いし。
ほら、僕ってみんなから嫌われてるじゃん?
しかもいつ魔法が暴走するかも分からないし・・・」
みんな、きょとんとしていた。
何を言っているのだこいつという雰囲気だ。
暗い顔で地面を向く。
そんな時、セクアナが前に出てきた。
「試合中、何があったのかは分からないけど、無事魔法騎士になったことをまずは喜んだらいんじゃないかな・・・」
頬をかきながら言いにくそうに語る。
「それに、あの子なら来年もチャンスがある。あれだけ強かったらたぶん魔法騎士になれると思うよ。
そんな深く考えているんなら、彼の思いを積んでこれから頑張って行こう!」
肩をポンと叩いて笑顔を見してくれる。
心がスッと晴れた。
僕はこの一週間、ずっとずっと考え込んできた彼に勝ったんだ。
何度も吹き飛ばされて、深傷を負ってまで決死の戦いをして勝ったのだ。
これはすごいことだ。
彼の強い思いを積んで、これから僕が頑張らないといけない。
僕は魔法騎士になったんだ。
深く考えるのはやめよう。
おめでたいことなんだ。
今は素直に喜ぶ。
「すぅーーーーーー」
大きく息を吸い込んだ。
これから大声でその言葉を言うためだ。
「サナ、マネト、セクアナ! 僕、魔法騎士になれたよ! やったあ!」
両手を空高く上げて、喜ぶ。
「フフフ、ああ、そうだな。あめでとう、トモヤ!」
「おめでとう! トモヤも無事、合格できた!」
「よかった。おめでとう!」
三人の笑顔に包まれて魔法騎士になった。
今までにないほどの達成感があった。
三歳からずっと十二年間この日のために修行を重ねてきた。
その努力が無事報われたのだ。
とても幸せだった。
セクアナと二人で一生懸命、修行をしている日々。
新技で苦しんでいたことや、筋トレを頑張っていたいる姿。
そう思えばこの決勝戦、一つの戦い方しかしていないな。
魔法で遠距離攻撃をするか、剣で真っ向勝負をするか。
ピンチになった時に自分のミスに気づく。
ドシドシ
コーウトが近づいてくる音が聞こえる。
刀を杖のように体を支えて、ゆっくりと立ち上がる。
まだ息苦しい。
体が動かない。
「これで終わりにしてやる。お前の負けだ」
負け・・・
僕はまだ立ち上がってるぞ。
勝手に決めつけてんじゃねえよ・・・
まだ俺は諦めてなんかいないぞ!
まだ自分の中に戦うという強い意志があった。
目に火がついている。
彼はゆっくりと近づいてくるが、恐怖はなかった。
辛い、痛い、苦しい。
でもまだ僕は負けてないんだ。
そうだ、負けてない。
まっすぐ、彼を見つめた。
「僕は、君を倒して魔法騎士になる! 僕だっていろんな覚悟をしてきているんだ!」
ここに立つまでたくさんの人にお世話になった。
いつもそばにいてくれるセクアナ。
小さい頃からずっと優しく育ててくれたお母さん。
決闘の時、助けてくれたセイラ姉さん。
雷魔法を操ると分かっても僕の友達になってくれたサナとマネト。
みんなの意志を僕は背負ってるんだ。
こんなところで負けられない!
アドレナリンが出たせいか息苦しさも痛みもなくなった。
戦える。彼と、ドルトムと戦える。
そして勝つ。
彼と同じように僕も走り出す。
「ほう、まだ立ち上がるか! 全力でこい!」
「ハアァァァァ、電気ショック!」
麻痺させるために同じ魔法を使った。
「ぐっ」
二度目の技だが、彼は避けれない。
ドゴッ!
「グハァァァ」
鈍い音がして、初めて彼に刀での攻撃を与えることができた。
雷を纏わせていたこともあり、攻撃された胸部は焦げていた。
ちゃんとダメージを与えられた気がする。
彼は膝をついて、息が荒くなっていた。
僕にも少し希望が見えてくる。
「・・・・・この技で潰す!」
そう言うと、彼は四つん這いの姿勢になっていた。
矛を地面に置き、低く構えている。
さっきまでとは違う構えだ。
おもわず目を見開く。
すると両手の漆黒の毛がブオッと音を立てながら逆立った。
続けて全身の毛も次々と逆立っていき、体が膨らんでいく。
僕は息を飲んだ。
さっきまでは人と牛の混ざった感じだったのが、野生の牛そのものへと変身したのだ。
体長はさっきよりもずっと大きくなっている。
「こ、これは・・・」
僕も技を隠していたように、彼もこの姿への変身を隠していたのだ。
「ふん、では行くぞ」
「ブオォォォォォォ!」
獣というべき鳴き声を上げると、四つん這いになって突進してきた。
「電撃波!」
魔法を放ったが、鋼鉄のような皮膚によって軽々しく跳ね返された。
彼の足は止まらず僕、目掛けて加速する。
「ふーーー、集中・・・」
精神統一をして突進してくるギリギリを狙う。
足に魔力を溜めて一瞬で動けるようにする。
ここだ、という時に「雷神」を使うため、魔力に余力を残す。
・・・今だ!
ビリッ
僕自身が雷になったように一瞬で横に移動した。
見事、彼の突進を避けきれた。
再度の突進も同じようにして避け切った。
それを五度くらい繰り返すと、彼の動きは止まった。
額に汗をかいてひどく疲れている。
この形態になるのはとても強力だと思うが、魔力の消費が大きいようだ。
僕も肩に、一度ぶつかられて少し痛めた。
それでも彼の隠し技を耐え切れた。
お互いが汗だくで必死に勝利を掴もうとする。
矛のある場所まで走ると、立っていた毛が縮こまって、元の姿に戻る。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・」
彼は荒い呼吸をしている。
ここだ! と思い、僕は魔法を発動した。
「雷神!」
体を青い雷が覆う。
髪が逆立ち、全身に電気がめぐる。
僕はこの時をずっと待っていた。
彼は強靭な肉体で防御力がとてもある。
始めから全力を出したら、彼を倒す前に僕の魔力がなくなって負けていたと思う。
だけど今は違う。何度も戦闘をして、僕にトドメを刺すつもりで隠し球である凶暴な牛そのものになった。
それによって彼の体力をものすごく削ることができた。
体力がなくなるにつれて魔法の効果も弱くなる。
結果、完璧だった防御力ができなくなるということだ。
証拠としてさっき、刀での攻撃は肉体に傷を負わせることができた。
ピンチな時もあったがやっとここまでたどり着いた。
この技で終わらせる。
「ここからが本番だ!」
「ま、負けねぇ! 家族を、みんなの暮らしを俺が変えてやるんだ!」
お互いに対峙する。
「オラァァァァァァ!」
「ブオォォォォォォ!」
汗ばんだ手で強く刀を握る。
「魔法騎士になるぅぅぅぅ!」
「俺もだぁぁぁ!」
彼は矛を横から振るが、それは僕に当たらない。
素早い動きで軽くそれを避け、魔法を込めた刀を彼にぶつける。
「ガアァァォァァ」
ビリビリビリビリッ
大きな電気が発生し、彼の体を蝕む。
後ろに吹き飛ばされて倒れ込んだ。
まる焦げになって所々から煙が出ている。
「雷神」で魔法の威力も上がった。
これで倒せるか、と思ったが彼は立ち上がった。
ゆっくり、ゆっくりと立ち上がる。
「負けられない、俺は絶対に負けられないんだ! ゲホッ 小人族の復興のために・・・
ハァァァ」
走るスピードが落ち、今にも倒れそうな状態だけど、気高く僕に立ち向かう。
「雷鷹電撃!」
ゲンブ決闘した時とは比べ物にならないくらい大きな鷹が、雷の形となって飛んでいく。
「グハァッ!」
それをもろにくらった。
大きな雷の音を立てながら膝をつく。
常人の人なら立てない。
でも彼はまだ倒れなかった。
「お、お・・・・俺は・・・・負けない、絶対に負けない!」
ここまで何度も立ち上がられると罪悪感が芽生えてしまう。
もう彼は限界だ。
体がボロボロで、体力もほとんどない。
一歩進むごとにバランスを崩している。
何もしなくても倒れそうだ。
だけど彼は立ち上がる。
僕は相手を痛めつけたくない。
悔しいかもしれないが、降参してほしい。
「もう、君は限界だよ。だから悔しいかもしれないけど降参してくれ! お願いだ!」
「ふ、ふざけるな・・・ 俺は負けない。勝つんだ・・・」
まだ僕に向かってくる。
でもほとんど走れていない。ゆっくり一歩一歩進んでいる。
もう見てられない。
「まだだ、まだまだ・・・あっ!」
ゆっくりと矛を振り回す。
力はほとんどなく、一度振るだけで体の軸が傾いてこけそうになる。
「もうやめてくれよ、それ以上やったら体が・・・」
「これは決闘だ! 相手に情けなどするな!
俺にはそんなもの必要ない!」
「・・・!?」
彼の怒鳴るような一言に我に帰る。
必死で戦っている人に向かって諦めろと言っていた。まだ勝負は終わっていないのに。
弱々しい矛の一撃がくる。
キーーーーン
両手で刀を強く握りしめ、矛に目掛けて一撃を放った。
カンっと音が鳴って矛が後ろに飛ばされた。
バタンと重そうな音を立てて地面に落ちる。
「コーウト、君は強かった。本当に強かった。でも僕が勝つよ! ありがとう!」
笑顔を彼に向けると、
「そうか。トモヤ、こちらこそありがとう!
だが最後は俺が勝つ!」
牛の顔だから笑顔が怖かったけど、それでも彼の温かさを感じた。
「オオオォォォォォォォォォォ!」
彼は右手を握りしめて、向かってくる。
その走りは汗水垂らした、とても輝いた姿だ。
僕は、それに応じて魔法を放つ。
「雷轟!!」
ゴロゴロ
天から強力な光が地面に落ちる。
「ふっ!」
彼の笑い声が聞こえた気がした。
コーウト・ドルトム。
彼はまる焦げになって地面に大きな音を立てて倒れた。
「長きに渡った勝負が決まったぁぁぁぁぁぁぁぁ! 勝者はトモヤ・フローレス。最弱である雷魔法を操るトモヤが勝負を決めた!」
この結果に、会場からは物を投げられたりした。
喜んでいる人、いや戦いに満足している人もたくさんいた。
相変わらず僕は嫌われ者であった。
最後は期待通りに罵倒されたが、無事、魔法騎士になれた。
本当は喜ぶものなのだろう。
しかし、彼の強い思いを感じたから、あまり気持ちよくならなかった。
僕より彼の方がいいのではないか。
名声も信頼もない僕なんかが魔法騎士になってもいいのだろうか。
思わず考え込んでしまう。
コーウトはいい奴だった。
家族や友人のために魔法騎士になって、小人族の名声を取り戻そうとしていた。
力はあるし、諦めない心もあって魔法騎士に向いている。
どれだけ痛い思いをしても立ち上がり、僕に立ち向かった。
こういう人が将来、役に立つのだと思う。
でも僕は彼を倒して魔法騎士になった。
本当にいいのだろうか・・・
浮かない顔でコロシアムの中へ入った。
「ふー、冷や冷やしたが、無事魔法騎士になれたな。いい勝負だったぞ!」
「トモヤも勝ててよかった! 最後は私だね!」
「どうしたんだよ? 魔法騎士になったのに気分が悪そうな顔をして」
戻るとすぐに3人が駆けつけてくれた。
みんな輝くような笑顔で迎えてくれるが、今の僕には眩しすぎて目を合わすことができない。
「いやー、えっと・・・本当に僕なんかが魔法騎士になってもよかったのかなって・・・
彼の方が名声とかもあるし、強いし。
ほら、僕ってみんなから嫌われてるじゃん?
しかもいつ魔法が暴走するかも分からないし・・・」
みんな、きょとんとしていた。
何を言っているのだこいつという雰囲気だ。
暗い顔で地面を向く。
そんな時、セクアナが前に出てきた。
「試合中、何があったのかは分からないけど、無事魔法騎士になったことをまずは喜んだらいんじゃないかな・・・」
頬をかきながら言いにくそうに語る。
「それに、あの子なら来年もチャンスがある。あれだけ強かったらたぶん魔法騎士になれると思うよ。
そんな深く考えているんなら、彼の思いを積んでこれから頑張って行こう!」
肩をポンと叩いて笑顔を見してくれる。
心がスッと晴れた。
僕はこの一週間、ずっとずっと考え込んできた彼に勝ったんだ。
何度も吹き飛ばされて、深傷を負ってまで決死の戦いをして勝ったのだ。
これはすごいことだ。
彼の強い思いを積んで、これから僕が頑張らないといけない。
僕は魔法騎士になったんだ。
深く考えるのはやめよう。
おめでたいことなんだ。
今は素直に喜ぶ。
「すぅーーーーーー」
大きく息を吸い込んだ。
これから大声でその言葉を言うためだ。
「サナ、マネト、セクアナ! 僕、魔法騎士になれたよ! やったあ!」
両手を空高く上げて、喜ぶ。
「フフフ、ああ、そうだな。あめでとう、トモヤ!」
「おめでとう! トモヤも無事、合格できた!」
「よかった。おめでとう!」
三人の笑顔に包まれて魔法騎士になった。
今までにないほどの達成感があった。
三歳からずっと十二年間この日のために修行を重ねてきた。
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とても幸せだった。
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