雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

トイレまでの道

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みんなと手を取り合って喜んだ。

マネト、サナ、トモヤ。
この三人が無事、魔法騎士になることができた。

残るはセクアナの試合だけだ。

「そろそろ、私の出番だね!」
その掛け声と共にセクアナの雰囲気は少し変わった。
さっきまで明るく楽しそうだったが、目を光らして試合のために意識を集中している。
深呼吸をして自分のペースを作り、一歩一歩ゆっくりと足を進める。

そんな覚悟を決めた顔をされたら、僕達にできることはただ一つだ。

彼女の背中に手を置く。
「僕は彼に勝ったよ。そしてありがとう!
みんなで魔法騎士になろう」

手に力を込めてセクアナを押し出す。

僕の次はマネト、サナが順番に背中に手を置いて押し出す。
「えっと、その・・・最後の試合、絶対勝ってよ!」
「フフフ、ありがとう!」
緊張のせいで顔が引きつりながらも、いつもの優しい笑顔をマネトに見せる。

バシッ

「痛っ!」
サナの気合いの入れ方は迫力があった。
力強く背中を叩いたため、大きな音が響く。

「信じているぞ、セクアナ。全力を尽くしてこい!」
「相変わらず痛いよ、サナの気合の入れ方。まぁサナらしくていいけど」
「ハッハハ、そうか、すまなかったな。観客席からだけど、私達は全力で応援する。だがら、頑張れ」

たくましいサナの姿にセクアナの背筋が伸びる。

「そ、それに・・・・あ、あんなたくさんの人が、いる中だしな・・・き、緊張するなよ・・・」
「アハハ、サナじゃあるまいし私はもう大丈夫だよ」

そう言い残すと、セクアナは再び歩き出す。

5メートルくらい離れたところでこちらへ向き直した。

「じゃあ、行ってきます!」
光に包まれているような美しい姿だった。



薄暗く、人気のないようなところを一人歩いていた。

本来なら、サナとマネトの三人で外に出ているはずなのだが、セクアナを送り出した後、なぜか僕が緊張してトイレに行きたくなった。
自分のこと以上に人のことになると、よくトイレに行きたくなる。
自分に呆れてしまう。
どうしてこんなことになるのやら・・・

だから、すこし試合に遅れそう。
さっきと比べて軽薄な態度で最低だ。

それでも早く見るために、走って移動した。

一人焦っている時、正面から二人、いや三人の足音が聞こえてきた。
もうすぐ試合だというのにまだ、コロシアム内に人がいることを不思議に思った。

しかし、目の前に現れた者の姿を見て思わず目を見開いてしまう。

「あーーー、試合とかめんどくせーな。どうせ、この俺が勝つのにわざわざ勝負なんてよー。俺様の服が汚れるじゃねえか」

僕の目の前にいるのは、今セクアナと闘っているはずのナンピ・グバードだ。
その後ろにはお付きの者が二人ついていた。
一人は屈強そうな男。もう一人は女性で、治癒魔術師なのか大きな杖を持っていた。

出会いが不意打ちすぎて思考が追いつかなかった。

え、なんでここにいるの?
もしかして試合辞退したの?
それとも、遅刻?

セクアナの覚悟を踏み躙る彼の行動に怒りを覚えた。

頭に血が上り、彼を睨む。

その気配を感じたのか、僕の存在に気がついた。
すると不敵な笑みを浮かべながら近づいてくる。
「くっせえ、くっせえなー。おっ! 何かと思ったらボロボロの服を着た悪魔さんではないですかー」

鼻を摘みながら、僕を煽る。
決勝戦の最後の試合前かつ、遅刻しているにもかかわらず、そのヘラヘラした態度に思わず怒鳴ってしまった。

「おい! 決勝はどうした。早く行けよ!」
「おい、近づくんじゃねえよ悪魔。お前が俺と同じ空気を吸っていることが罪なんだよ!」
「そうだぞ、田舎の下民が。ナンピ様に軽々しく口を聞きやがって」
「フフフ、まぁ落ち着きましょう。こんな悪魔なんて相手にするだけ時間の無駄ですナンピ様」

相変わらず、貴族というのはクズばかりだ。
自分のことしか考えていない。

「ナンピ様、わたくしがこの虫ケラを払い除けますので下がっていてください」
男が一歩前に出る。

「ああ、さっさと終わらせろ。俺はだるい泥試合をしなくちゃいけないんだ。
まぁ、簡単に勝って適当に魔法騎士やって、
いい思いできるからいいけどさ・・・」

適当に頑張る・・・

セクアナが侮辱されているのでさらに怒りがたまる。

「波動魔法・・・・・・衝撃波!」

気がついた時には屈強な男が手を前に出して魔法を放っていた。

震えるような空気が向かってくるが、こんな攻撃屁でもない。

少し魔法で身体能力を上げて素速く避ける。

そして男の背後に回り、刀を向ける。

ガラン、ガラン・・・・

「くっ・・・・・・」
男は身動きが取れないまま棒立ちになっていた。

ナンピとそのお付きの者も固まっていた。
「チッ、この・・・    お、おい何やってるんだ。なに一瞬で負けてるんだよ」

コーウトと闘った後ということもあり、付き人程度の魔法はあっさり避けれた。
というか弱すぎる。

皆、唖然とする中、男を解放してナンピと対面する。

「セクアナを舐めてると、痛い目見るぞ。僕は何度も負けているからな。属性の相性なんて関係ない!」

強い口調で言うと、またヘラヘラしだした。

「おいおい、冗談だろ。この間も言ったことをもう忘れたのか? ああ、下民だもんな。
学習能力というものがないからなー、ハッハハ!」

ナンピは腹を抱えて笑っているが、僕は動じない。
「ああ、そうだ。セクアナちゃん下民だけど可愛いからなー。いっそこの勝負で負けたら
俺の女としてやってもいいな。あの豊満な胸に、透き通った白い肌。あれが俺のものになるのか・・・・・・」

グヒヒ、と気持ち悪い笑みを向けている。

やはり怒りが溜まって拳に力が入る。
ここでこいつを倒してやりたいが、そんなことをしたら問題行動として魔法騎士という称号が剥奪されるだろう。
だからなにもできない。

それでもセクアナは強い、彼女が僕の代わりにこいつを倒してくれる。

僕はセクアナを信じてこう言った。
「お前は、セクアナに負けるよ。絶対に!」
「はぁ?」

侮辱するような言い方をしたせいか、いきなりナンピの態度が変わった。

「貴様、何様のつもりだ。さっきから自分の立場をわきまえろ!」

眉を潜めて、僕は睨まれる。

「グランド・ハンド!」
地面から巨大な石腕が発生する。
そのまま僕の方へ石の握り拳が飛んでくる。

ゆっくりだったから横に避けようとした。
しかし・・・

ぐぎゅうぅぅぅぅう
(あ、ヤバイ・・・)

タイミング悪く、お腹が鳴ってしまった。

ドカン!

大きな音を立てて、僕はその石腕の攻撃をモロに受けてしまった。
ものすごく飛ばされて、ごろごろと転がる。

「グハッ・・・・! ゲホッ、ゲホゲホ!」
そのまま地面に倒れて動けなくなる。

「へっ! 最弱にふさわしいな! 
悪魔は悪魔らしく地面に這いつくばってろ!
この場違いの薄汚い泥虫が。よし、お前ら行くぞ!」
「はっ! フフフ」
「負け組にふさわしいねぇー」

三人の足音が小さくなっていくのを聞きながら、ゆっくりと立ち上がる。

正直、今さっきは油断してしまった。
あのタイミングで急に漏れそうになるとは思わなかった。
お腹に溜まっていたのが一気にお尻まできた。漏らすのを耐えるために動けなかった。

それに少しダメージを受けすぎたようだ。
思うように体が動かない。
コーウトの試合でボロボロになり、まだ回復魔法をかけてもらっていない。
そんな時、あの一撃を喰らったのだ。
貴族だから強烈だった。

もう歩く気力がない・・・・・・・・

ぐぎゅうぅぅぅぅう!

・・・・・・・・・・・・ヤバイ!

意識が朦朧していたが、また漏れそうになったことでしっかりと意識を保てた。

でもさっきと比にならないくらいヤバイ! 
お尻の先まできている!

もう、ここで漏らしてしまいそう・・・

いやダメだ! 
男としてここで漏らすのはダメ!
恥だ!

必ずトイレへ、トイレへ行く!

魔力がなくなってもいい、倒れてもいい、でもせめてトイレに行ってからだ。

ナンピに対する怒りを忘れるくらい、危ない状況だった。

「雷神! 間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
ビリッ、ビリビリビリビリ!


バタン!

トイレのドアを開け、ギリギリのところで間に合った。


「おーい、遅いぞトモヤ。トイレに行くだけだったんだろ?」
「う、うん。いろいろあってね」
無事、試合が始まる前にサナとマネトに合流することができた。

しかし、ここに至るまでトモヤは様々な奇跡を乗り越えてきたのである。

一つ目は「雷神」の速度がとてつもなく上がったことである。
あと数秒遅かったら漏らしていた。
生命の危機を感じ、無意識にパワーアップすることができたのである。
まさに火事場の馬鹿力だ。

変な言い方だが、「トイレに間に合うか」という概念においてトモヤの魔法は成長したのである。

二つ目は、たまたま治癒魔術師が近くにいたということである。
トモヤは、トイレから出たあと全てをだし尽くして倒れてしまった。だが、近くに治癒魔術師がいたことでたまたま助けてもらえた。

こうして今、トモヤは奇跡的にここにいるのである。


「いやー、今日はやけに運がいいね!」
二人はポカンと首を傾げていた。
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