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魔法騎士団試験
休日
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目覚め。
眩しい光が窓から差し込んでくる中、布団から起き上がる。
昨日の決勝戦とは打って変わって安静な瞬間だった。
まず始めに腕を大きく上げて伸びた。
「ふわぁー」
思わず声を出してしまった。
伸びるというのはとても気持ちいいものだと自覚する。さっきまで感じていた疲労がすこしおさまった。
一息つくと立ち上がり、服を着替えた。
その服はというと臭い。
土や汗が染み付いてボロボロ。
しかし、勲章のようにも見える。
昨日の歴戦を彩ったとても見事な装飾だ。
感心しながら輝いている服を着た。
そしていつも通りフードも被る。
魔法騎士団試験には合格したが、まだ授賞式は行われていない。僕はそれが終わるまで普段の生活でフードを外したくなかった。
今は「悪魔」と呼ばれるが一般人だが、授賞式を終えると魔法騎士だ。
立派になってから外したいと思ってしまう。
なによりも今日は休日だ。
決勝戦の後、軽くアナウンスが流れてそのことを知った。
今日しっかり休んで明日、最後の授賞式がある。
このイベントはいろいろあったがとても楽しかった。最終的に魔法騎士になれたのだ。
自分で言うのは変かもしれないがとても誇らしい。
久しぶりの休日を謳歌しょう!
元気を出してドアを開いた。
さて、休日のことを話す前にセクアナの決勝戦後の話をしよう。
今から数時間前。
それはセクアナがナンピを倒してからのことである。
決勝戦が終わったあと、セクアナは僕たち三人に肩を預けた。
それを優しくみんなで受け止める。
「私、勝てたんだね。よかった!」
「ああそうだ。みんな無事、魔法騎士になれたな。誇らしいことだ」
サナが優しく微笑みながら対応する。
いつもより頬が緩んでいるように見えた。
とても嬉しそうだ。
「・・・・・・・」
すぐにセクアナは寝てしまった。
「スピー」と小さな寝息を立てて。
「こんなに静かになるセクアナを見るのは初めてだな。相当疲れているようだ」
「さっきはギリギリだったからね。俺、酷いと思うよあの貴族。負けてしまっても反抗するなんて」
「あれは危なかったな。セクロさんに感謝しないとね」
「そうだな」
「二人とも静かにしよ。今はセクアナを休ませたいからな」
サナに注意されて自覚した。
冷静なサナの姿に思わずマネトと僕は顔を見合わせて「フフフ」と笑ってしまった。
そのまま静かに、優しく三人で医務室まで連れて行った。
ガチャ
ドアを開けると5、6人くらい白いベッドに寝かされていた。
数人の治癒魔術師が魔法をかけてひどい怪我をした人を治している。
痛がっていた人もすぐに落ち着いて寝つく。
王都ということもあり、治癒魔法も最先端だった。
レベルの高さに驚き、思わず感動してしまった。
その光景を見ながら、空いているベッドにセクアナを寝かした。
「これで、私達の今日の仕事は終わりだな」
白いカーテンがあり、サナは広げる。
それが終わるとサナは木の椅子に座った。
透き通る黄緑色の長い髪を揺らしながら静かにセクアナを見ていた。
長いまつげに綺麗なくびれ。
またエルフらしい長い耳。
こうして静かなサナを見る機会はあまりなく、思わず美しいなと思ってしまう。
自然と僕の顔は赤くなっていた。
今のサナはいつもと違うように見えた。
「よかった、本当にみんな魔法騎士になれたんだな」
ゆっくりとサナは語り出した。
そして優しくセクアナの頭を撫でる。
眠っているから聞こえないようだが、幸せそうな顔をしていた。
青髪が静かに揺れる。
二人の美少女がこうして触れ合っている姿はとても幻想的だ。
そして、
「本当にありがとう! 決勝に勝ってくれて」
いつも聞かないような心に響く口調に、鳥肌が立ってしまう。
今までの苦労が和むようだった。
「なんかいいよね、こういうの」
「うん、マネトの気持ちなんかわかる」
二人でほっこりする光景を見ていると、
「おっ、どうした? 二人とも私に頭を撫でて欲しいのか?」
僕とマネトをからかうように言ってきた。
思わず肩がぴくりと動く。
「い、いや別に・・・そんなことされなくてもな!」
「そっ、そうだよなマネト。別に僕たちのことなんか気にせず・・・」
僕とマネトは顔が赤くなって、てんぱってしまう。
サナのいたずらだったのか大笑いしていた。
「ハッハハハハハハ! その反応、可愛いな! しょうがない、二人にもやるよ!」
ズカズカと大股で寄ってきて、僕たちも頭を撫ぜられた。
「うっ・・・」
「あ・・・」
恥ずかしくて俯いたり、頬を掻いたりした。
サナの手は大きくて、力強く、正直痛かった。
それでも、幸福な気持ちになった。
最後、セクアナに軽く挨拶を交わすと僕たちは医務室を後にした。
ルーディニア・コロシアムを出る頃は人が少なかった。
それでも街の方は、決勝戦の余韻に浸って酔い潰れていると人や、肉や魚の夜間屋台が残っていて賑やかだった。
すこし屋台で楽しみたいという気持ちはあったが、三人の解散は意外と早かった。
「お疲れだね」
「そうだね」
「その通りだ」
「まだ、街は明るいからみんなで何か食べない?」
まだ晩ご飯を食べていない。思わず匂いにつられてそう提案した。
「ああ、確かになんか食べたいかも」
「そ・・・そうだな。し、しかしあれだ。セクアナを抜いて楽しむのはいけないと思うぞ・・・」
サナは空腹を我慢しているのか、汗を顔に垂らしながらも耐えていた。
さっきまでとはすこし異なり、いつもの通りに戻り始める。
やっぱりどこか抜けているサナの方がいい。
「あ、そうだね。セクアナなしで僕たちで楽しむのはダメだね・・・」
耐えているサナを面白がりながらも、正論だから反論ができない。
セクアナを抜くのはかわいそうだ。
「だから明日、みんなでどこか飲みに行こうじゃないか。楽しみは後に取っておく方が良いのではないか!」
「よし、そうしょう!」
「でもセクアナの怪我とか治るかな・・・」
「あっ・・・」
飲みに行くと言う意見に賛成しようとするがマネトの言葉に固まってしまう。
「ああ、そうだったな。もし治らないのであればまたの機会だな。セクアナの体が一番大切だからな」
友達思いのサナの言葉が心に染みる。
彼女はセクアナのことをしっかり考えてくれている。
自分のことじゃないが嬉しかった。
「まぁ、セクアナの容態は明日、僕が見に行くよ! 大丈夫そうなら連れてくるから安心して!」
「トモヤ、頼んだぞ」
「おう!」
サナに頼まれ、胸にポンと手をついて応じた。
「じゃあ、もし行けるなら明日の5時くらいでどうかな。店も俺たちの宿が美味しいし、そこで食べよ!」
マネトの提案をみんなで賛成した。
こうして祝杯をあげる時間、そして店が決まった。
最近充実した休日がなかったからこそ、楽しい企画がみんなで作れてドキドキした。
遠足前の小学生みたいに今日の夜は眠れないかも。
「あっ!」
いきなり大声をあげたのはマネトだった。
「そうだった。俺、家族に魔法騎士になったってこと報告しなくちゃ」
家族という言葉を聞いてすこし羨ましくなった。
お母さん、お父さんはいるが問題が起きて何年も会えていない。
特にお父さんは顔も知らない。
懐かしく思うが、悲しくもなった。
いつか会えるといいな。
「そっか、いいね家族がいて」
「うん! だから俺、一旦家に帰るよ!」
「そうか、明日の5時までには戻って来いよ!」
「分かってるよ。あっ、トモヤは宿の人に説明しといてくれないかな」
「オッケー、だけどちゃんと約束の時間には間に合ってよ!
あと、迷ったらダメだよ。迷ったりしたらダメだからね!」
「なんで二回言った?」
自分の方向音痴のことを思い出して、心配してしまう。
たぶん大丈夫だと思うが。
「じゃあ、俺は行くよ!」
それを言うとリレーをするようにスタンディングスタートの構えをした。
「どうでもいいけど、ここからどれくらい離れているところまで帰るの?」
軽いジョークで言ったつもりだった。
「うーーーん、100キロくらいかな・・・
じゃあ、また明日!」
「アハハ、いってらっしゃい」
「閃光!!」
高速で移動して、一瞬で姿が見えなくなった。
決勝をしてまだあんな体力が残っているなんてすごいな・・・
ん? 100キロ・・・?
全くあの子はなんていう冗談を言っているんだ。そんな距離一日で往復するなんてできないよね・・・
まるで聞こえなかったかのように、苦笑いをしながら見送った。
「マネトも帰ったなら私も宿に戻るか!」
「うん、分かった。また明日ね!」
コロシアム前の広場でみんな別々に解散した。
明日が楽しみだ。
そして現在。
希望に満ち溢れた気持ちでドアを開けた。
そして第一声はというと、
「っ……! ひゃっい! ……あっ……あの!」
「えっと、何を言っているかわかりません」
顔が真っ赤で手をもじもじとしながら恥ずかしそうに立っている。
目を合わせられず、横を向いたり下を向いたり。
不審者と言えるほど極度の挙動不審だ。
その主は何を言おう、サナだ。
最近は三人と慣れて、普通に話していたがこうのような姿を見るとやはり笑えてしまう。
何度も言うが歩ちゃんそっくりだ。
あの子は何をやっているんだ……
心の中で思いながらため息が出た。
そして階段を足早に降りる。
犬耳の受付店員は困っていた。
テンパリすぎてサナが何を言っているのか分からないからだ。
耳を凹ましているからすぐにわかる。
こう言う時の仲介役は僕! と言う冗談は置いておいて、
「えっと・・・サナどうしたの?」
話しかけると、ヒョイって力強く腕を引っ張られた。
「あの子犬はどこに行ったのだ? グフフ」
気持ち悪い笑顔を見せながら僕に聞いてきた。
あの子犬・・・あっ!
すこし前、サナが見つけたやつか!
魔法騎士団試験に集中していたのですぐに思い出せなかった。
自分が理解したあと、受付の人に犬のことを話すと、すぐに連れてきてくれた。
「犬ちゃーーん! うーん、だあーい好き!」
犬と対面するなり、顔を輝かして抱きついていた。
毛並みを堪能するためか、顔をすりすりしている。
わざわざ休日に犬と会いにくるなんて、可愛いもの好きなのだと改めて思う。
地味に犬が手足を振って、嫌がっている様子がまた面白い。
そんなことなど気にせず、サナは可愛がる。
幸せそうでなによりだ。
すこし僕もその犬と遊び、それが終わると宿を出ようとする。
「トモヤはどこに行くのだ?」
「僕はちょっとセクアナに会ってくるよ!
元気にしてるといいけど」
「わかった、セクアナはお前に任せるぞ!
私は……グフフフフ、犬ちゃんともう少し遊ぶよ!」
「ワン!」
犬もサナに慣れたのか楽しそうだった。
二人を横目で見ながら宿を出る。
そしてセクアナが眠っている、コロシアムの医務室へ向かった。
眩しい光が窓から差し込んでくる中、布団から起き上がる。
昨日の決勝戦とは打って変わって安静な瞬間だった。
まず始めに腕を大きく上げて伸びた。
「ふわぁー」
思わず声を出してしまった。
伸びるというのはとても気持ちいいものだと自覚する。さっきまで感じていた疲労がすこしおさまった。
一息つくと立ち上がり、服を着替えた。
その服はというと臭い。
土や汗が染み付いてボロボロ。
しかし、勲章のようにも見える。
昨日の歴戦を彩ったとても見事な装飾だ。
感心しながら輝いている服を着た。
そしていつも通りフードも被る。
魔法騎士団試験には合格したが、まだ授賞式は行われていない。僕はそれが終わるまで普段の生活でフードを外したくなかった。
今は「悪魔」と呼ばれるが一般人だが、授賞式を終えると魔法騎士だ。
立派になってから外したいと思ってしまう。
なによりも今日は休日だ。
決勝戦の後、軽くアナウンスが流れてそのことを知った。
今日しっかり休んで明日、最後の授賞式がある。
このイベントはいろいろあったがとても楽しかった。最終的に魔法騎士になれたのだ。
自分で言うのは変かもしれないがとても誇らしい。
久しぶりの休日を謳歌しょう!
元気を出してドアを開いた。
さて、休日のことを話す前にセクアナの決勝戦後の話をしよう。
今から数時間前。
それはセクアナがナンピを倒してからのことである。
決勝戦が終わったあと、セクアナは僕たち三人に肩を預けた。
それを優しくみんなで受け止める。
「私、勝てたんだね。よかった!」
「ああそうだ。みんな無事、魔法騎士になれたな。誇らしいことだ」
サナが優しく微笑みながら対応する。
いつもより頬が緩んでいるように見えた。
とても嬉しそうだ。
「・・・・・・・」
すぐにセクアナは寝てしまった。
「スピー」と小さな寝息を立てて。
「こんなに静かになるセクアナを見るのは初めてだな。相当疲れているようだ」
「さっきはギリギリだったからね。俺、酷いと思うよあの貴族。負けてしまっても反抗するなんて」
「あれは危なかったな。セクロさんに感謝しないとね」
「そうだな」
「二人とも静かにしよ。今はセクアナを休ませたいからな」
サナに注意されて自覚した。
冷静なサナの姿に思わずマネトと僕は顔を見合わせて「フフフ」と笑ってしまった。
そのまま静かに、優しく三人で医務室まで連れて行った。
ガチャ
ドアを開けると5、6人くらい白いベッドに寝かされていた。
数人の治癒魔術師が魔法をかけてひどい怪我をした人を治している。
痛がっていた人もすぐに落ち着いて寝つく。
王都ということもあり、治癒魔法も最先端だった。
レベルの高さに驚き、思わず感動してしまった。
その光景を見ながら、空いているベッドにセクアナを寝かした。
「これで、私達の今日の仕事は終わりだな」
白いカーテンがあり、サナは広げる。
それが終わるとサナは木の椅子に座った。
透き通る黄緑色の長い髪を揺らしながら静かにセクアナを見ていた。
長いまつげに綺麗なくびれ。
またエルフらしい長い耳。
こうして静かなサナを見る機会はあまりなく、思わず美しいなと思ってしまう。
自然と僕の顔は赤くなっていた。
今のサナはいつもと違うように見えた。
「よかった、本当にみんな魔法騎士になれたんだな」
ゆっくりとサナは語り出した。
そして優しくセクアナの頭を撫でる。
眠っているから聞こえないようだが、幸せそうな顔をしていた。
青髪が静かに揺れる。
二人の美少女がこうして触れ合っている姿はとても幻想的だ。
そして、
「本当にありがとう! 決勝に勝ってくれて」
いつも聞かないような心に響く口調に、鳥肌が立ってしまう。
今までの苦労が和むようだった。
「なんかいいよね、こういうの」
「うん、マネトの気持ちなんかわかる」
二人でほっこりする光景を見ていると、
「おっ、どうした? 二人とも私に頭を撫でて欲しいのか?」
僕とマネトをからかうように言ってきた。
思わず肩がぴくりと動く。
「い、いや別に・・・そんなことされなくてもな!」
「そっ、そうだよなマネト。別に僕たちのことなんか気にせず・・・」
僕とマネトは顔が赤くなって、てんぱってしまう。
サナのいたずらだったのか大笑いしていた。
「ハッハハハハハハ! その反応、可愛いな! しょうがない、二人にもやるよ!」
ズカズカと大股で寄ってきて、僕たちも頭を撫ぜられた。
「うっ・・・」
「あ・・・」
恥ずかしくて俯いたり、頬を掻いたりした。
サナの手は大きくて、力強く、正直痛かった。
それでも、幸福な気持ちになった。
最後、セクアナに軽く挨拶を交わすと僕たちは医務室を後にした。
ルーディニア・コロシアムを出る頃は人が少なかった。
それでも街の方は、決勝戦の余韻に浸って酔い潰れていると人や、肉や魚の夜間屋台が残っていて賑やかだった。
すこし屋台で楽しみたいという気持ちはあったが、三人の解散は意外と早かった。
「お疲れだね」
「そうだね」
「その通りだ」
「まだ、街は明るいからみんなで何か食べない?」
まだ晩ご飯を食べていない。思わず匂いにつられてそう提案した。
「ああ、確かになんか食べたいかも」
「そ・・・そうだな。し、しかしあれだ。セクアナを抜いて楽しむのはいけないと思うぞ・・・」
サナは空腹を我慢しているのか、汗を顔に垂らしながらも耐えていた。
さっきまでとはすこし異なり、いつもの通りに戻り始める。
やっぱりどこか抜けているサナの方がいい。
「あ、そうだね。セクアナなしで僕たちで楽しむのはダメだね・・・」
耐えているサナを面白がりながらも、正論だから反論ができない。
セクアナを抜くのはかわいそうだ。
「だから明日、みんなでどこか飲みに行こうじゃないか。楽しみは後に取っておく方が良いのではないか!」
「よし、そうしょう!」
「でもセクアナの怪我とか治るかな・・・」
「あっ・・・」
飲みに行くと言う意見に賛成しようとするがマネトの言葉に固まってしまう。
「ああ、そうだったな。もし治らないのであればまたの機会だな。セクアナの体が一番大切だからな」
友達思いのサナの言葉が心に染みる。
彼女はセクアナのことをしっかり考えてくれている。
自分のことじゃないが嬉しかった。
「まぁ、セクアナの容態は明日、僕が見に行くよ! 大丈夫そうなら連れてくるから安心して!」
「トモヤ、頼んだぞ」
「おう!」
サナに頼まれ、胸にポンと手をついて応じた。
「じゃあ、もし行けるなら明日の5時くらいでどうかな。店も俺たちの宿が美味しいし、そこで食べよ!」
マネトの提案をみんなで賛成した。
こうして祝杯をあげる時間、そして店が決まった。
最近充実した休日がなかったからこそ、楽しい企画がみんなで作れてドキドキした。
遠足前の小学生みたいに今日の夜は眠れないかも。
「あっ!」
いきなり大声をあげたのはマネトだった。
「そうだった。俺、家族に魔法騎士になったってこと報告しなくちゃ」
家族という言葉を聞いてすこし羨ましくなった。
お母さん、お父さんはいるが問題が起きて何年も会えていない。
特にお父さんは顔も知らない。
懐かしく思うが、悲しくもなった。
いつか会えるといいな。
「そっか、いいね家族がいて」
「うん! だから俺、一旦家に帰るよ!」
「そうか、明日の5時までには戻って来いよ!」
「分かってるよ。あっ、トモヤは宿の人に説明しといてくれないかな」
「オッケー、だけどちゃんと約束の時間には間に合ってよ!
あと、迷ったらダメだよ。迷ったりしたらダメだからね!」
「なんで二回言った?」
自分の方向音痴のことを思い出して、心配してしまう。
たぶん大丈夫だと思うが。
「じゃあ、俺は行くよ!」
それを言うとリレーをするようにスタンディングスタートの構えをした。
「どうでもいいけど、ここからどれくらい離れているところまで帰るの?」
軽いジョークで言ったつもりだった。
「うーーーん、100キロくらいかな・・・
じゃあ、また明日!」
「アハハ、いってらっしゃい」
「閃光!!」
高速で移動して、一瞬で姿が見えなくなった。
決勝をしてまだあんな体力が残っているなんてすごいな・・・
ん? 100キロ・・・?
全くあの子はなんていう冗談を言っているんだ。そんな距離一日で往復するなんてできないよね・・・
まるで聞こえなかったかのように、苦笑いをしながら見送った。
「マネトも帰ったなら私も宿に戻るか!」
「うん、分かった。また明日ね!」
コロシアム前の広場でみんな別々に解散した。
明日が楽しみだ。
そして現在。
希望に満ち溢れた気持ちでドアを開けた。
そして第一声はというと、
「っ……! ひゃっい! ……あっ……あの!」
「えっと、何を言っているかわかりません」
顔が真っ赤で手をもじもじとしながら恥ずかしそうに立っている。
目を合わせられず、横を向いたり下を向いたり。
不審者と言えるほど極度の挙動不審だ。
その主は何を言おう、サナだ。
最近は三人と慣れて、普通に話していたがこうのような姿を見るとやはり笑えてしまう。
何度も言うが歩ちゃんそっくりだ。
あの子は何をやっているんだ……
心の中で思いながらため息が出た。
そして階段を足早に降りる。
犬耳の受付店員は困っていた。
テンパリすぎてサナが何を言っているのか分からないからだ。
耳を凹ましているからすぐにわかる。
こう言う時の仲介役は僕! と言う冗談は置いておいて、
「えっと・・・サナどうしたの?」
話しかけると、ヒョイって力強く腕を引っ張られた。
「あの子犬はどこに行ったのだ? グフフ」
気持ち悪い笑顔を見せながら僕に聞いてきた。
あの子犬・・・あっ!
すこし前、サナが見つけたやつか!
魔法騎士団試験に集中していたのですぐに思い出せなかった。
自分が理解したあと、受付の人に犬のことを話すと、すぐに連れてきてくれた。
「犬ちゃーーん! うーん、だあーい好き!」
犬と対面するなり、顔を輝かして抱きついていた。
毛並みを堪能するためか、顔をすりすりしている。
わざわざ休日に犬と会いにくるなんて、可愛いもの好きなのだと改めて思う。
地味に犬が手足を振って、嫌がっている様子がまた面白い。
そんなことなど気にせず、サナは可愛がる。
幸せそうでなによりだ。
すこし僕もその犬と遊び、それが終わると宿を出ようとする。
「トモヤはどこに行くのだ?」
「僕はちょっとセクアナに会ってくるよ!
元気にしてるといいけど」
「わかった、セクアナはお前に任せるぞ!
私は……グフフフフ、犬ちゃんともう少し遊ぶよ!」
「ワン!」
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