雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

祝杯

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ドアを開ける。

すると目の前には賑わいのやまない商店街が広がっていた。

朝っぱらからお酒を飲んで酔い潰れている、ドワーフ。
大きな声をあげて食べ物を販売している人々。
「祭りだー」と騒ぎながらリーダーを中心に走り回る子ども。

魔法騎士団試験は終わったが、まだ熱が覚めていない。それとも王都は、いつもこんなに賑やかなのかもしれない。

何よりも平和な景色だった。


しばらく歩いていると、ふとで足が止まった。
横を見ると、緑の布を屋根にしている果物屋さんがあることに気づく。
それと同時に自分のお腹が鳴った。

「そう思えばまだ朝ごはん、食べていなかったな・・・」

たぶんセクアナも食べていないと考え、そこへ寄ってお見舞いの品を買おうとした。
しかし、実際に近寄ってみるとみたことがない果物しか並んでなかった。

その光景を見て、ため息が出る。

どれが美味しいのか、どれを買ったらいいのかわからない。
いつもならセクアナが横にいて、いろいろ教えてくれるが、今日はいない。

出会いに行ったらお礼を言わないとな。

日頃の感謝を実感するのであった。



すぐにコロシアムまで着き、医務室へ入った。

「あれ・・・」
中の光景を見て、思わず声が漏れてしまった。

その理由はというと昨日、5、6人負傷者がいたはずなのに医務室に残っていたのはセクアナだけだったからだ。

そのセクアナはというと魔力不足症と診断されていたのに、一日で元気になっているのだ。子供の頃は一週間くらい安静にしていてやっと治ったという病気なのに。

不思議がりながらセクアナの方へ行く。

「フフフ、どうしたのそんな驚いたような顔して」

微笑しながら僕に笑顔を向けてくれた。
なんとも安心する。
そして、感謝していた。

「ありがとう!」
「えっ、どうしたのいきなり? えっと、なんのことかわからないけど、どういたしまして・・・?」

そばに椅子を置いて、買ってきた果物を見せた。

「はい、お見舞いの品」
「これはご丁寧にありがとう! って言っても今日でもう退院できるんだけどね」
「そうなの?」
「そうだよー、約束してたじゃん。四人で祝杯あげようって」
「それはそうだけど・・・」

負傷者の異常な回復力に何もかもが理解できない。
本当にセクアナは大丈夫なのだろうか。
もしかしたら僕達がいない間に何か変な薬とかされていたり・・・

そう心配性になっていたが、セクアナがすぐに説明してくれた。

「でもみんな回復するの早くない? 大丈夫なの?」
「そんなの大丈夫に決まってるじゃん!」

やけに明るい声だった。

「トモヤ、分かってる? ここは王都なんだよ。ということは魔法も最先端の技術を持っているってこと。
治癒魔法もすごいから、私たちが昔、田舎で苦労していた怪我や病気もここじゃすぐに治せちゃうんだよ!」
「へぇー、やっぱ王都って凄いな!」

言われてみればそうかもしれない。
トイレに行ったあと、気絶してしまったが目覚めた時には体の痛みはほとんどなかった。

確かに王都の魔法技術はとてつもなく進んでいる。
思わず感心してしまった。

それと同時にこうも思った。
これが王都だけでなくて他の地域でも増えると死んでしまう人は減るのではないか。

そんな高位な治癒魔術師が増えると嬉しい。

「私は次、治癒の魔法頑張ってみようかな・・・」
少し自信なさげに俯いていた。

「うん、確かにそれもいいと思うよ。セクアナ、治癒魔法すごく上手だったからね」

そう思えば、ここ最近セクアナは治癒魔法を使っていなかった。魔法騎士になるための修行に専念していたからだ。

セクアナはまた新たに目標を立てている。
本当に努力家で真面目だと思う。

「魔法騎士は戦うだけでは守れない命もあるし、戦えて命を救える治癒魔術師になりたいな」
「君ならできるよ、応援してる!」
「うん! あ、もちろんだけどサタンも倒すよ。一番の目的忘れないでね!」
「分かってるよ」

話に区切りがつくと僕の買ってきた果物を食べた。

「あっ! これヤガリとジリコだ。これどんな味か知ってるの?」
「ギグッ、えっと・・・すいません。適当に買ってきました。お腹さへ満たせればいいのかなと・・・」

ヤガリ、ジリコ、なんか不味そうな名前の果物に思わず冷や汗を掻く。

「ああ、やっぱりトモヤならそうだよね。大丈夫だよ、これはどちらも美味しいから!」

茶化すように微笑む。
セクアナが言うなら真実だろう。

袋から果物を取り出すと皮を剥き、一緒に食べた。
緑、紫と不気味な色だったが、案外食べてみると美味しいものだった。


一通り食べ終わると昼過ぎ。

「さぁ! 食べ終わったし行くよー!」

セクアナはバンとベッドを叩くと勢いよく床に立ち上がった。

「えっと・・・どこへ?」
「何言ってるの、せっかくの休みなんだから王都を観光しないと! 
ほら、せっかくきたのに、忙しくて何もできなかったでしょ? 
夜まで時間あるしさ、私の観光に付き合ってよ!」
「えっ、え、うんいいけど」
「じゃあ、早く行こう!」

僕はテンションの高いセクアナに手を掴まれて勢いよく引っ張られた。
大きな音をたててドアを開け、医務室を後にする。

「今までの緊迫した気持ちを吐き出すよぉぉぉ!」
「まっ、待ってえぇぇぇぇ!」



まずは「服を見に行きたい」とセクアナが言い、大きな店に入った。
実際に服を買うお金などない。
たぶん試着だけで終わるだろうが、それでも楽しかった。
賑わっている広場にはピエロのような人が芸を見せたり、魔法によるイルミネーションなど様々なショーが行われていた。
それを見ながら笑い合う。

セクアナと久しぶりに過ごす二人の時間はあっという間に過ぎた。


気づくと夕方に差しかかり、約束の時間までもう少しだった。

「そろそろ終わりだね。サナやマネトはもうついているかな?」
「そうだね。とっても楽しかった! 次はサナたちも一緒だといいね」

楽しんだのはいいが、結構歩き回ったのでヘトヘトになっていた。
とぼとぼとゆっくりと歩きながら目的地まで行く。

そして待ち合わせ場所に行くと、
「ワン! ワンワン」

サナの頭の上に犬が乗っていた。
もう完全に懐いている様子だ。
あの後からずっとこの犬と過ごしていたのかもしれない。
サナならやりかねないな。

「キャー、可愛い! サナ、私にも触らせて」
「ワン!」
「ああ、いいぞ。犬も喜んでいる」

セクアナに抱き上げられた犬は尻尾を振っていた。
こっちはすぐに懐いてどちらも嬉しそうだった。

「名前、名前まだつけていないよね!」
「そういえばそうであったな。どうしようか・・・セクアナ、何か案はないか?」

顎に手を当てて考えるサナ。

「それはサナが決めるのが一番だよ。この子の一番の親は君なんだから」
「そうだな! でもそう言われても難しいな・・・よし、決めたぞ!」

考えがまとまり僕らの前を向いた。

「私は親だが助けたのはみんなだ。だからこの子の名前は頭文字を使って・・・」

僕達はサナのつける名前に期待をしながら待っていると、
「セーーーーフ!!」
「マセサトだ」

マネトが全力ダッシュで僕達の前に参上したのだ。

「っ・・・・・うぐっ・・・・は、恥ずかしいよー、セクアナ!」
「ガハガハガハ・・・疲れたよ! トモヤ!」

サナは顔を真っ赤にして涙目でセクアナに抱きつき、マネトは涙を流しながら汗だくで僕に抱きつく。


道ゆく人に二度見され、セクアナと僕はまるで拷問のような辱めを受けた。


「えっと、再会して早々最悪の状況になったけど二人は大丈夫?」
「ああ、せ、せっかくの名前だったが、うぐ、こんなに恥ずかしい結末になるとは・・・」
「俺はもう大丈夫だよ、もう体力も戻ったし。それにしてもこの犬可愛い・・・ウギャア! 痛って! 噛んだよこの犬!
おでぇ、やっぱ怖い!」

全く話が噛み合わない。
これをまとめるのは大変そうだ。

サナはというと決め言葉を言おうとしたが、マネトの登場で台無しになり、公衆の面前で赤っ恥をかいたため、立ち直るのに少し時間がかかりそう。

「サナ、犬ちゃんが、マセサトが悲しんでるぞ」
「くぅぅぅん」
「はっ! マセサト!」

いや、ちょろかった。

可愛いもので釣るとすぐに立ち直ってくれた。

「さぁ、今日は存分に食べるぞ! 
お祝いだぁぁぁ!」
気合が入ると魔法で剣を出し、天井に突き出した。
まるで戦場の指揮官のように。

軽くマネトをあやしながら食堂へ入った。

僕たちは四角いテーブルに座り、サナとセクアナ、マネトと僕という並びになった。

四人が座るとみんなすぐに注文をした。
マネトはもちろんだが、サナが頼む品の量が半端なかった。
十五品くらい頼んだ気がする。
お金大丈夫だろうか・・・

そんな心配をしている暇に料理は次々と運ばれてきた。

「さて、注文はほとんど揃ったな。あとは乾杯だけだ。じゃあ、私が今回はやろう」
「あれ、こんな人がいる中でできるの?」

軽くからかうつもりで言ったが、
「は・・・・っ、えっ・・・・では、私が・・・・・」
「サナ、無理しなくていいよ。全くトモヤも余計なことを言わない!」
「ごめんごめん」

「はー」っとセクアナがため息をつく。

サナをからかった代償として僕が乾杯を言う大役を命じられた。

すこし緊張しながらも木のジョッキに入ったドリンクを上にあげる。

「みんな、魔法騎士団試験合格おめでとう! 
今日はたくさん楽しもう!」

輝く笑顔を向けて一息つくと、

「乾杯!」

「乾杯!!」
木で作られた大きなコップを持ち上げて祝杯は始まった。



「えっと、これは・・・」
僕とセクアナは唖然とすることしかできなかった。

祝杯といえば、やはり楽しく会話をして、ゆっくりとご飯を食べるものだ。

なのにこれはなんということでしょう・・・

「うまい! ☆\$€$<〒○=|〒→!」
「そうだな、@#☆→○%€<~~~だな!」

サナとマネトは口いっぱいに食べ物を積み込んでリスになっている。

僕たちの前には大食いファイターがいた。

「えっと・・・これは祝杯って言えるのかな? 想像してたのとちょっと違うんだけど・・・」
「間違ってはないと思うよ。私もこの状況から今すぐ抜け出したいです。
ていうかこの二人と合流してから、私たち辱めしか受けていない気がする・・・」
「う、うん確かに・・・」

二人でヒソヒソと話していると、
「注文追加!!」
「わっ、私もおね・・・お願いします!」

またたくさんのお皿が並べられた。

「もう、あれだね。他人のフリして静かに、二人で食べよう・・・」
「それが一番かもね・・・」

僕とセクアナは楽しいと妄想していた祝杯は壊され、静かに横で食事をするのでした。


「フーー、食べた、食べた!」
「プッハー、やっぱり戦いの後の食事は最高だな!」

お腹を膨らした二人を呆れながら見ていた。

これで今日は解散だと思った。だが不運なことはまだ続いた。
「お客様、お支払いの方をお願いします」

食べ終わると同時に店員さんがきた。

「はい、分かりました」
「ではこちらへ」

お会計を払いにセクアナは行ったが、すぐに戻ってきた。

とんでもなく青ざめた顔をしている。

「ど、どうしよう・・・お金が足りない!」
とても焦っているセクアナが飛んできた。

「サナ、マネト、お金足りない分払って!」

涙目でお願いするが、
「俺、お金なんて持ってきてないよー、ゲホ」
「お金? なんだそれは。そんなの宿代で全て使ったぞ」

・・・・はっ?

マネトを残高ゼロ。
サナも同じく無一文。
僕とセクアナの共同金、足りない・・・

借金!

魔法騎士になる前日、僕たちは数十万円の借金をした。

真面目だったセクアナは、
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ひどく落ち込んだ。
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