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魔法騎士団試験
エキシビジョンマッチ
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めでたいとは言い難い、表彰式が終わりに差し掛かっていた。
三人に慰めてもらったのはいいけど、聖職者のやったことに対して怒りを収められなかった。
平等とか言いながら、気に入らない者には物を投げつけ罵声を浴びせる。
僕の順番が終わるとすぐに態度を急変さ背で優しい口調になる。
そんな態度に呆れた。
それと同時に悲しくもなった。
なぜならこれがずっと続くのだ。
今日はみんながいて怒りを鎮めてくれたからよかった。しかし、もし一人の時に怒りに支配されそうになったら押さえられるか心配だ。
一度、暴走してしまったことがあるからこそ心配になる。
思っていた以上に魔法とは危険なのかもしれない。
「これで表彰を終わりとします。
以下の三十名はこれからは魔法騎士へとお成りになります。
どうかご自分のお命を大切にしてください。
御武運を、そして神の御加護があらんことを!」
最後に両手を上げ、もう一度天にお祈りを捧げていた。
表彰式は大切な儀式なのか歓声はなく、小さな音の拍手が静かに鳴り響いた。
僕の気持ちは落ち着いていないが、今までの野蛮な雰囲気とは打って変わっていたから不思議な光景だった。
こうして静かに終わったのだ。
あとはこのミーティアの説明を聞き、魔法騎士としての仕事が始まる。
今日からやっとスタートだ。
握り拳を顔の前に出し、気合を入れていた。
しかし、まさかの出来事が起こる。
「・・・!?」
「っな!」
僕も含めた数人の合格者が気配を感じて空を見た。
そして唖然としながら皆すこし震えている。
でもそれは恐怖による震えではなく、憧れや喜び感動によって震えているようだった。
それとは逆に僕は恐怖で震えている。
こんな威圧的で迫力のある魔法を感じたことがないからだ。まだ姿を現していないにもかかわらず遠くにいるのに、目立っている。
どう考えてもおかしい。
どんな人物なんだ。
--- 六大天 ---
「お、やっぱりあの人は来るか!
まぁ、魔法大好き人間だからなー。
うんうん、初々しい魔法騎士の誕生だから、気になるのかな!
ガッハハハハハハ!」
両手を叩きながら大笑いする、セクロ・ルーカス。
「そうじゃな! やはりこういう祭りごとは好きそうじゃな!
全く、こんなもの観る暇があるならワシと酒でも揉み交わしたいもんじゃよ・・・
あやつも、大変そうじゃからな!
お、そうじゃ!
セクロ、お前このあと暇じゃろ?
酒でも飲み交わさんか?」
ゼットン・ギューザスも乗り気のようで、空から舞い降りる者の登場で気分が舞い上がっていた。
「あ、酒か・・・お前はよく飲むからな。
別に俺はいいが程々にしとけよ。
あと酔っぱらうな!
お前の後始末をするのは大変なんだぞ!」
「おっ、なんじゃその態度は。ワシは酒には強いんじゃ! 酔っぱらうという恥なんか、かくわけなかろう!」
顔を真っ赤にしながら怒る。
「まあまあ~、今は喧嘩をやめてください。
あの方が登場しているので静かに見守りましょうよ!」
セイラ・ラインハートはこの場をまとめるかのように話す。
緩い話し方だが、六大天の中ではしっかりしている方らしい。
「な・・・なんで俺がここに・・・ああ、しんどい・・・こんなに大勢前にいるなんて。
あの方と比べたら、所詮俺はゴミみたいに見られているんだろうな・・・うっ、帰りたい」
プルプルと震えながらネガティブ思考で俯くアンヤ・ゴースト。
「まあまあ~、あなたはちゃんと強いよ。堂々とするのが一番!
さぁ、胸を張って背筋を伸ばして!」
肩を優しく叩きながら、癒すセイラ。
「うむ! やはりあのお方は素晴らしいな!
俺もあの姿を見ていると燃えてくるぞ!
もっと強くなってたくさんの人を守れるようにしないとな!
シルフィ、お前も頑張れよ!」
「………」
拳を前に出して気合を入れる、レッカ・マニラン。
その横には静かに佇んでいるシルフィ・アンジェラがいた。
彼女はずっと静かに空や会場を眺めていた。
「そうだった、君は最近六大天になったからな。この景色が気になるのか?」
「………」
優しく微笑むレッカだが、何も答えなかった。
それでも、一人の少年に興味が湧くと彼女は軽く笑顔を見せた。
「えっ、魔法帝?」
「うん、そうだよ!」
セクアナの説明を聞いて、とてつもない魔力を持った人物の正体を知った。
魔法帝
ユリス・アトラテウス。
風魔法を操る、ナンバーワン魔法騎士。
この国で最強の男。
どんな時でも空を自由に飛んで駆けつけて仲間を助け、圧倒的な力で敵を撃退するだとか。
なにより一番強いと、称されていることが大きいようで、彼は国民憧れの的となっている。
簡単な説明が終わる時、小さかった点はすぐ近くまで来ていた。
ビュン!
大きな風を切る音が発生すると同時にコロシアムの頭上に立った。
それでも太陽の光に反射して魔法帝の姿は見えなかった。
「ああ、魔法騎士様だ!」
「なんと幸運なことだろうか、毎年忙しくてくることはないのに」
「そうだな。あの椅子、いつもは置いてあるだけ寂しいかったからな。
何年ぶりだ?
こういうところに姿をを見せたのは」
「おおなんと、魔法帝がわざわざ我々の民に・・・」
「なんともったいない・・・ワシにはこんな幸せなことがあるのか!」
いつものようにたくさんの人が興奮していた。
でも彼の登場はすこし違っていたこともあり、涙を流す者もいたのだ。
しかも泣いているのは、すこし汚れた服を着ている人々だった。
たぶん王都に住む人ではなく、どこか離れた街で暮らしている人たちだろう。
もしかしたら魔法帝は素晴らしいことをどこかの地で行っていたのかもしれない。
上からしばらく魔法帝は眺めていたが、再び空を飛び始めた。
ビュンっと風邪を切り、さっきのようにものすごいスピードで飛ぶ。
そしてサービスのためか民衆が座っている観客席を何周かしていた。
これには民衆の人々も歓喜の声を上げている。
やはりこの国の象徴となっている人はすごいと思った。
簡単な演出を終えると、一際目立つあの玉座の前に立った。
さっきまでスピードが早すぎて目で追うのがやっとだったが、この時やっと魔法帝の姿を見ることができたのだ。
しかし、その姿・・・いや違う。
その服装に衝撃を受けてしまったのだ。
黒髪の上に角帽を頭に被っている。
顔は丸メガネをかけているので光が反射してしっかりと把握できないが、意外に整っていた。
また黒いマントを纏い、靴はブーツを履いていた。
下にはカッターシャツのようなものを着て、黒いネクタイをしている。
と、東大生・・・?
そうツッコミを入れろと言わんばかりの格好をしていた。
角帽にメガネ、黒いマントの印象がまさにそれを連想させた。
ただただ唖然として、開いた口が塞がらなかった。
「ど、どうツッコミを入れたらいいのかな・・・?」
「ああ、うん・・・確かにトモヤから見たら変だよね。だ、だけど今は我慢しよ・・・」
顔を強張らせながらもセクアナは答えてくれた。
僕は衝撃で目が点になった。
それでもこの会場にいる人々の笑顔や喜び、涙などを見ると本物だと納得してしまう。
見た目はすこしあれだけど、頂点に立つ人の迫力は凄いものだった。
魔法帝はゆっくりと片腕を動かした。
かけていたメガネをくいっとあげる。
すると会場は一気に静かになった。
誰一人として無駄話をしないのだ。
そんな姿をみたら鳥肌が立ってしまう。
こんなにもたくさんの人から尊敬の気持ちを受けられている人を初めてみた。
コツ
ブーツが地面を打ち付ける音が響いた。
一歩、前に出ると話始めた。
「魔法帝、ユリス・アトラテウスである!」
さすがというべきか、魔法帝の声はよく通った。
「よく聞いてくれ、王都の住民よ。
この闘技場に立っている三十名は未来への希望だ!
皆を命がけで守り、魔族と戦ってくれる者達だ!
どうか温かい目で見守り、応援してやってくれ!」
魔法帝の話は簡単なこと挨拶程度のことであるが、威圧するような上からではなく、力がこもっており、一人一人にしっかりと語りかける口調であった。
思わず聞き入ってしまうような感じだ。
あの「おお神よ」や「御加護があらんことを」とずっと祈っていた聖職者とは違う。
というかあの人はずっと神、神ずっと言っていたから、話にうんざりしていた。
その後だからこそ、魔法帝の言葉に愛がこもっているように感じて、珍しく僕は真面目に聞いていた。
「そして、三十名の魔法騎士殿。
この国は君たちの力によって動かされる。
どんな時も国民を守り、誰もが恐れる困難にも立ち向かいなさい!」
「はっ!」
魔法帝の演説が終わると同時に赤い絨毯に並んでいた人たちが一斉に膝をついた。
すこし遅れたが僕もみんなに合わせる。
「ではこれからは同じ魔法騎士として迎え入れる。よろしく!」
もう一度メガネ上げる。
「あ、魔法帝ありがとうございました」
横で呆気にとられていた司会者も正気を取り戻して終わりよ言葉を述べようとする。
「えっと、それでは以上を持ちまして魔法騎士団試験を終了いたします・・・!?」
と言っていると一瞬で魔法帝は司会者の横に来ていた。
すると、体を縮こめて耳打ちしながらなんかを話し始めていた。
「えっ! いやでもそれは・・・」
トップであるのに両手を合わしてお願いしている。
さっきまで威厳に満ち溢れた姿だったが、すこし可愛い一面も見れて思わず笑ってしまう。
セクアナに睨まれたのは別の話だが。
目上の人に対してたまに失礼なことをする自分に反省した。
すると話がまとまったのか再び魔法帝は玉座の前まで移動し、気高く立った。
「民衆の皆さん、この魔法騎士合格者で最強の戦士を知りたくはないか?」
第一声の意図がわからずほとんどの人が困惑していた。
「おっ、なんか面白いこと考えそうじゃな魔法帝! ワシも参加したいもんじゃな!
ワッハハハ!」
「おお、俺も知りたいなそれ!」
六大天のゼットンさんとセクロさんが反応したことによってだんだん声が広がっていく。
「お、なんだなんだ。もしかしてまだ戦いは続くのか!」
「最強の戦士! なんか気になる」
「へっ! まさか、そんな最強の戦士なんて戦わなくても誰かわかるだろう。あの貴族様で決まり! それで終わり」
「いやいや、そんなものわからんぞ。
もしかしたら誰か下克上を果たすかもしれないだろ。お前も見たろ、決勝戦の激しい戦いを」
「言われてみればそうかもしれない。別々に分かれていたから結局は誰が最強なのか証明されていないよな・・・」
始めは陰口のように小さく話していたが、人間は探究心を持つもので、だんだん声が大きくなってきた。
「し、知りたい! 最強の魔法騎士が知りたい!」
「知りたい!」
「知りたい!」
皆が賛成する状況を作り出すと魔法帝は輝くような笑顔で言った。
「エキシビジョンマッチを開催することをここに宣言する!!」
その高らかな宣言と共に会場の人々はスタンディングオベーションをする。
「優勝した者には、私と決闘できる挑戦権をやろう!
戦いの始まりだ!!」
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
三人に慰めてもらったのはいいけど、聖職者のやったことに対して怒りを収められなかった。
平等とか言いながら、気に入らない者には物を投げつけ罵声を浴びせる。
僕の順番が終わるとすぐに態度を急変さ背で優しい口調になる。
そんな態度に呆れた。
それと同時に悲しくもなった。
なぜならこれがずっと続くのだ。
今日はみんながいて怒りを鎮めてくれたからよかった。しかし、もし一人の時に怒りに支配されそうになったら押さえられるか心配だ。
一度、暴走してしまったことがあるからこそ心配になる。
思っていた以上に魔法とは危険なのかもしれない。
「これで表彰を終わりとします。
以下の三十名はこれからは魔法騎士へとお成りになります。
どうかご自分のお命を大切にしてください。
御武運を、そして神の御加護があらんことを!」
最後に両手を上げ、もう一度天にお祈りを捧げていた。
表彰式は大切な儀式なのか歓声はなく、小さな音の拍手が静かに鳴り響いた。
僕の気持ちは落ち着いていないが、今までの野蛮な雰囲気とは打って変わっていたから不思議な光景だった。
こうして静かに終わったのだ。
あとはこのミーティアの説明を聞き、魔法騎士としての仕事が始まる。
今日からやっとスタートだ。
握り拳を顔の前に出し、気合を入れていた。
しかし、まさかの出来事が起こる。
「・・・!?」
「っな!」
僕も含めた数人の合格者が気配を感じて空を見た。
そして唖然としながら皆すこし震えている。
でもそれは恐怖による震えではなく、憧れや喜び感動によって震えているようだった。
それとは逆に僕は恐怖で震えている。
こんな威圧的で迫力のある魔法を感じたことがないからだ。まだ姿を現していないにもかかわらず遠くにいるのに、目立っている。
どう考えてもおかしい。
どんな人物なんだ。
--- 六大天 ---
「お、やっぱりあの人は来るか!
まぁ、魔法大好き人間だからなー。
うんうん、初々しい魔法騎士の誕生だから、気になるのかな!
ガッハハハハハハ!」
両手を叩きながら大笑いする、セクロ・ルーカス。
「そうじゃな! やはりこういう祭りごとは好きそうじゃな!
全く、こんなもの観る暇があるならワシと酒でも揉み交わしたいもんじゃよ・・・
あやつも、大変そうじゃからな!
お、そうじゃ!
セクロ、お前このあと暇じゃろ?
酒でも飲み交わさんか?」
ゼットン・ギューザスも乗り気のようで、空から舞い降りる者の登場で気分が舞い上がっていた。
「あ、酒か・・・お前はよく飲むからな。
別に俺はいいが程々にしとけよ。
あと酔っぱらうな!
お前の後始末をするのは大変なんだぞ!」
「おっ、なんじゃその態度は。ワシは酒には強いんじゃ! 酔っぱらうという恥なんか、かくわけなかろう!」
顔を真っ赤にしながら怒る。
「まあまあ~、今は喧嘩をやめてください。
あの方が登場しているので静かに見守りましょうよ!」
セイラ・ラインハートはこの場をまとめるかのように話す。
緩い話し方だが、六大天の中ではしっかりしている方らしい。
「な・・・なんで俺がここに・・・ああ、しんどい・・・こんなに大勢前にいるなんて。
あの方と比べたら、所詮俺はゴミみたいに見られているんだろうな・・・うっ、帰りたい」
プルプルと震えながらネガティブ思考で俯くアンヤ・ゴースト。
「まあまあ~、あなたはちゃんと強いよ。堂々とするのが一番!
さぁ、胸を張って背筋を伸ばして!」
肩を優しく叩きながら、癒すセイラ。
「うむ! やはりあのお方は素晴らしいな!
俺もあの姿を見ていると燃えてくるぞ!
もっと強くなってたくさんの人を守れるようにしないとな!
シルフィ、お前も頑張れよ!」
「………」
拳を前に出して気合を入れる、レッカ・マニラン。
その横には静かに佇んでいるシルフィ・アンジェラがいた。
彼女はずっと静かに空や会場を眺めていた。
「そうだった、君は最近六大天になったからな。この景色が気になるのか?」
「………」
優しく微笑むレッカだが、何も答えなかった。
それでも、一人の少年に興味が湧くと彼女は軽く笑顔を見せた。
「えっ、魔法帝?」
「うん、そうだよ!」
セクアナの説明を聞いて、とてつもない魔力を持った人物の正体を知った。
魔法帝
ユリス・アトラテウス。
風魔法を操る、ナンバーワン魔法騎士。
この国で最強の男。
どんな時でも空を自由に飛んで駆けつけて仲間を助け、圧倒的な力で敵を撃退するだとか。
なにより一番強いと、称されていることが大きいようで、彼は国民憧れの的となっている。
簡単な説明が終わる時、小さかった点はすぐ近くまで来ていた。
ビュン!
大きな風を切る音が発生すると同時にコロシアムの頭上に立った。
それでも太陽の光に反射して魔法帝の姿は見えなかった。
「ああ、魔法騎士様だ!」
「なんと幸運なことだろうか、毎年忙しくてくることはないのに」
「そうだな。あの椅子、いつもは置いてあるだけ寂しいかったからな。
何年ぶりだ?
こういうところに姿をを見せたのは」
「おおなんと、魔法帝がわざわざ我々の民に・・・」
「なんともったいない・・・ワシにはこんな幸せなことがあるのか!」
いつものようにたくさんの人が興奮していた。
でも彼の登場はすこし違っていたこともあり、涙を流す者もいたのだ。
しかも泣いているのは、すこし汚れた服を着ている人々だった。
たぶん王都に住む人ではなく、どこか離れた街で暮らしている人たちだろう。
もしかしたら魔法帝は素晴らしいことをどこかの地で行っていたのかもしれない。
上からしばらく魔法帝は眺めていたが、再び空を飛び始めた。
ビュンっと風邪を切り、さっきのようにものすごいスピードで飛ぶ。
そしてサービスのためか民衆が座っている観客席を何周かしていた。
これには民衆の人々も歓喜の声を上げている。
やはりこの国の象徴となっている人はすごいと思った。
簡単な演出を終えると、一際目立つあの玉座の前に立った。
さっきまでスピードが早すぎて目で追うのがやっとだったが、この時やっと魔法帝の姿を見ることができたのだ。
しかし、その姿・・・いや違う。
その服装に衝撃を受けてしまったのだ。
黒髪の上に角帽を頭に被っている。
顔は丸メガネをかけているので光が反射してしっかりと把握できないが、意外に整っていた。
また黒いマントを纏い、靴はブーツを履いていた。
下にはカッターシャツのようなものを着て、黒いネクタイをしている。
と、東大生・・・?
そうツッコミを入れろと言わんばかりの格好をしていた。
角帽にメガネ、黒いマントの印象がまさにそれを連想させた。
ただただ唖然として、開いた口が塞がらなかった。
「ど、どうツッコミを入れたらいいのかな・・・?」
「ああ、うん・・・確かにトモヤから見たら変だよね。だ、だけど今は我慢しよ・・・」
顔を強張らせながらもセクアナは答えてくれた。
僕は衝撃で目が点になった。
それでもこの会場にいる人々の笑顔や喜び、涙などを見ると本物だと納得してしまう。
見た目はすこしあれだけど、頂点に立つ人の迫力は凄いものだった。
魔法帝はゆっくりと片腕を動かした。
かけていたメガネをくいっとあげる。
すると会場は一気に静かになった。
誰一人として無駄話をしないのだ。
そんな姿をみたら鳥肌が立ってしまう。
こんなにもたくさんの人から尊敬の気持ちを受けられている人を初めてみた。
コツ
ブーツが地面を打ち付ける音が響いた。
一歩、前に出ると話始めた。
「魔法帝、ユリス・アトラテウスである!」
さすがというべきか、魔法帝の声はよく通った。
「よく聞いてくれ、王都の住民よ。
この闘技場に立っている三十名は未来への希望だ!
皆を命がけで守り、魔族と戦ってくれる者達だ!
どうか温かい目で見守り、応援してやってくれ!」
魔法帝の話は簡単なこと挨拶程度のことであるが、威圧するような上からではなく、力がこもっており、一人一人にしっかりと語りかける口調であった。
思わず聞き入ってしまうような感じだ。
あの「おお神よ」や「御加護があらんことを」とずっと祈っていた聖職者とは違う。
というかあの人はずっと神、神ずっと言っていたから、話にうんざりしていた。
その後だからこそ、魔法帝の言葉に愛がこもっているように感じて、珍しく僕は真面目に聞いていた。
「そして、三十名の魔法騎士殿。
この国は君たちの力によって動かされる。
どんな時も国民を守り、誰もが恐れる困難にも立ち向かいなさい!」
「はっ!」
魔法帝の演説が終わると同時に赤い絨毯に並んでいた人たちが一斉に膝をついた。
すこし遅れたが僕もみんなに合わせる。
「ではこれからは同じ魔法騎士として迎え入れる。よろしく!」
もう一度メガネ上げる。
「あ、魔法帝ありがとうございました」
横で呆気にとられていた司会者も正気を取り戻して終わりよ言葉を述べようとする。
「えっと、それでは以上を持ちまして魔法騎士団試験を終了いたします・・・!?」
と言っていると一瞬で魔法帝は司会者の横に来ていた。
すると、体を縮こめて耳打ちしながらなんかを話し始めていた。
「えっ! いやでもそれは・・・」
トップであるのに両手を合わしてお願いしている。
さっきまで威厳に満ち溢れた姿だったが、すこし可愛い一面も見れて思わず笑ってしまう。
セクアナに睨まれたのは別の話だが。
目上の人に対してたまに失礼なことをする自分に反省した。
すると話がまとまったのか再び魔法帝は玉座の前まで移動し、気高く立った。
「民衆の皆さん、この魔法騎士合格者で最強の戦士を知りたくはないか?」
第一声の意図がわからずほとんどの人が困惑していた。
「おっ、なんか面白いこと考えそうじゃな魔法帝! ワシも参加したいもんじゃな!
ワッハハハ!」
「おお、俺も知りたいなそれ!」
六大天のゼットンさんとセクロさんが反応したことによってだんだん声が広がっていく。
「お、なんだなんだ。もしかしてまだ戦いは続くのか!」
「最強の戦士! なんか気になる」
「へっ! まさか、そんな最強の戦士なんて戦わなくても誰かわかるだろう。あの貴族様で決まり! それで終わり」
「いやいや、そんなものわからんぞ。
もしかしたら誰か下克上を果たすかもしれないだろ。お前も見たろ、決勝戦の激しい戦いを」
「言われてみればそうかもしれない。別々に分かれていたから結局は誰が最強なのか証明されていないよな・・・」
始めは陰口のように小さく話していたが、人間は探究心を持つもので、だんだん声が大きくなってきた。
「し、知りたい! 最強の魔法騎士が知りたい!」
「知りたい!」
「知りたい!」
皆が賛成する状況を作り出すと魔法帝は輝くような笑顔で言った。
「エキシビジョンマッチを開催することをここに宣言する!!」
その高らかな宣言と共に会場の人々はスタンディングオベーションをする。
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