46 / 76
魔法騎士団試験
再び戦い
しおりを挟む
僕とサナはエキシビジョンマッチの参加申し込みを終えて、二人の元へ戻る。
すこし前まで三十人ほどいたが、戻った頃には片手で数えれるくらいの人しかいなかった。
どうやらみんなそれぞれに行動を始めたらしい。
魔法帝の登場で忘れられがちかもしれないが、魔法騎士団試験は終わったのだ。
合格した人はもうここにいる意味がない。
だからミーティアの説明を聞きに行く者やコロシアムから出ていく者などの姿を見た。
これから任務をこなしてこの国を守っていくのだろう。
すれ違った人の大抵は誇らしげな顔をしていた。
とは言ってもほとんどの人がコロシアムに残っている。
なぜなら、今からもっとすごい魔道士の決戦が見れるからだ。
参加する側だが、それでも強い者同士の闘いはやはり興奮する。
僕も無事勝てるといいな。
あとサナと戦うことがありませんように…
空間ウィンドウが出現するまでの間、いつものように薄暗いコロシアム内で石のベンチに座り談笑していた。
ここで話すのも最後か、と悔やみながらも会話を楽しんだ。
お昼過ぎになる頃、やっと空間ウィンドウが展開された。
それと同時に外から騒がしい音が響いてくる。
「やっと、エキシビジョンマッチの詳細が知れる。長かったなぁ」
「まったくだ。ずっとウズウズしてたのに」
「ええ、そんな戦うの好きなの・・・」
「よ、よかったね、やっと始まって・・・」
冷めた目をしながら二人は受け答える。
二人にとってはサナと僕は異常なのだろうか。
「あっ、映ってるの魔法帝じゃん!」
マネトの指を刺す先で魔法帝の姿があった。
服装は相変わらず角帽に黒い服、そして丸メガネ。
それ本当にかっこいいと思っているのだろうか・・・
それともスタイリストみたいな人からのおすすめか、僕以外の異世界転生者がいるのか。
いろいろ考えたがこれだけは言える。
東大生に見えてしょうがない。
ファッションに疎そうだな。
「我が国民の皆さん、しばらく待たせてして申し訳なかった。だがこれでようやくエキシビジョンマッチを始めることができる。
存分に楽しんでくれたまえ!」
メガネを上げて少し間を開けると、
「ではこの決戦に参加する名誉ある魔法騎士を発表しよう!」
その言葉を言った途端、映像が変わった。
空間ウィンドウにはずらりと参加した魔法騎士の名前が張り出されていた。
「え!」
「なっ!」
それを見て、僕とサナは驚きのあまり声が漏れてしまう。
エキシビジョンマッチに参加している魔法騎士の数・・・四人。
目を擦り本当か疑ったが、たったの四人しか参加していなかったのだ。
貴族がほとんど魔法騎士になって膨大な魔力量を持っているのにほとんどが参加していない。
その事実は僕にとって衝撃的だった。
でも、その理由はすぐに分かった。
それは会場の外から聞こえた中年男性の声だった。
「ほらな、やっぱりあの貴族様が最強ってことなんだよ!
魔法帝と直々に戦うことができるっていう二度と味わえない素晴らしい賞があるにもかかわらず、他の貴族は参加してないんだろ?
圧倒的実力差があるって分かっているんだよ!
そこまでやらせるあの貴族様はやはりすげぇぜ!」
「貴族でも怯えて参加しないとかへたればかりだなガッハハハハ!」
「おい、やめてとよ。俺ら平民が貴族のこと悪く言うのがバレたらどうなるか」
「ハッハハ、そうだったなでもほぼ決まりだな!」
「いや、下克上とかあり得るかもしれないぞ!」
ほとんどの人達が最強の貴族、クリフ・エストルの噂をしていた。
「そして、これが・・・トーナメントだ!」
全力で、思う存分戦ってくれ!」
魔法帝が大きく叫ぶと同時に、四人のトーナメントが組まれている画面に変わった。
とうとう激戦のバトルが始まる。
僕とサナは食い入るようにその画面を睨むように見た。
「僕は、一回戦で・・・相手は・・・フランクリン・バン・シマウス?」
正直、考えていた相手と違っていたから困惑した。
「おお! 私があの最強といわしめている、クリフと戦うのか!
それは楽しみだな」
腕を組んで、ウキウキしながらうなずいている。
気分が良さそうだ。
その後ろではガタガタと肩を震わせている二人がいる。
「ああ、サナがあんな強い人と・・・怪我しないといいけど」
「かか、回復魔法を・・・」
セクアナは戦ってもいないのにサナに回復魔法をかける始末だ。
「心配するな、私は諦めない!
というか今はトモヤの方だろ?
勝ってくるんだぞ。そして決勝で戦いたいものだ!」
「うん、まぁ頑張ってくるよ
サナも緊張とかしてすぐ負けないでね!」
「ッ! はっ、はいわかって・・・わかってる」
ピクリと肩が動いた。
まだまだあがり症は克服できそうにないな。
しばらく話していると、係の人に呼ばれてすぐにコロシアムの中心、闘技場へと連れて行かれた。
「そう思えば、トモヤは大丈夫なのか?
私達以外ほとんど興味持たないから、相手の魔法知らないんじゃ・・・」
「あ、ほんとだ。いつも聞いてくるから答えていたけど、今回は知らないまま行ってる。
決闘とかの魔法はよく見て、学習しているのはわかるけど、重要なところは抜けてるんだよねー」
セクアナは「はぁー」とため息をついた。
「トモヤなら大丈夫だよ、絶対!
だって俺と同じですごいスピードで移動するじゃん。俺みたいにビビリじゃないから積極的に突っ込むし、技も多彩だから」
「それもそうだね!」
「ほんと、何があったのか知らないけど、もっと他のやつにも興味を持ってほしいものだな・・・」
「昔いろいろあったからね・・・」
セクアナは気まずそうに下を向く。
「ああ、すまない。セクアナたちにも思い出したくない過去はあるよな」
おどおどと困りながら慌てるサナ。
「全然いいよ、今はこうして幸せだから!」
「俺はそういうトモヤ好きだよ。他に興味がない分、僕たちには優しいからね!」
「そうだな」
みんな納得して、トモヤの試合を観戦するべく外へ出た。
その頃、トモヤは・・・
ああ、やばい!
相手の魔法聞き忘れてた!
係の人に急ぎで呼ばれたせいで、情報を仲間から聞けず、頭を抱えていた。
仲間以外にほとんど興味を示さない自分に後悔する。
もっと考えて行動しないといけないことを悟った。
「はぁー」とため息をつきながら闘技場に入場した。
そこにはいつもの罵声と大きな歓声。
やっぱりこの光景は好きだ!
でも男だからか理由はわからないが、戦いの場というのは興奮するようで、少し気持ちが落ち着いていた。
ナレーターのマイク音が響く。
「さーて、やってきましたエキシビジョンマッチ!
再び、ナレーターを務めることになりましたコリーダです。
魔法騎士団試験とは違い、より激戦となるでしょう!
このひとときを楽しみましょう!」
やはり図体が大きいからか、耳を押さえたいほど大きな声だった。
しばらく歩くと、前の門から僕の対戦相手が出場してきた。
相手はきれいな装飾をしている男性だ。
見た目からして貴族。
茶髪の上、リンスみたいなのを使っているのか、さらさらな髪。
真っ白の羽織を着ていてまるで白馬の王子みたいな印象だ。
「さーて、登場しました、
フランクリン・フォン・ニーストロ」
やけに長い名前だった。
もしかしたら前に行っていた伯爵とかいう高い地位の人なのかもしれない。
だから魔力量が半端なく多いかも。
だけど、応用系の魔法は得意じゃない。
まるでセクアナと戦った人みたいに。
とかだといいけど・・・
情報がないから自分で勝手に推理し始める。
一応、司会の簡単な紹介もあるから珍しく、真面目に聞きいた。
「花魔法を操る、美しい男!
圧倒的に魔力量で相手を苦しめる。
今回はどんな美しいパフォーマンスを見してくれるのか!」
「そう、私は美しい!」
茶色い髪をすっと払って、たなびかせるフランクリン。
そしてまるで太陽が彼を導いているように、光が差し、一人ライトアップされた。
まるで彼自身が輝いているかのように。
「まったく、太陽まで私に味方をするなんて・・・なんと美しい!
アッハッハハハ、アッハハハハハハ!」
一人何かぶつぶつ言って、手を空に上げている。
ほんと、なんなんだこのキラキラした人は・・・
複雑な気持ちで足を進めて彼の元へ行き対面する。
もう魔法騎士団試験は終わり、エキシビジョンマッチは作法などもなく始まる。
それぞれ距離を取り、準備ができていると判断されたら大きな鐘が鳴ってスタートだ。
「ふっ、私の相手はお前か。
まったく美しくないではないか、というかな近づかないでくれそんな小汚い服装で。
この美しい顔が汚れてしまうのだよ!
しっしっ!」
手を返して、追い返すように払う。
この変な茶番を無言で頷くことしかできなかった。
あまりにナルシストすぎて呆れてしまう。
なんか痛い人だな・・・
「おや、どうしたんだい、小汚い下人。
もしかして私の美しさに惚れているのかい?
まったくしょうがない奴だ。
私の美しさは世界一だからな!
アッハハハハハハ!」
また、さらりと髪を払う。
「どうして私はこんなにも美しく生まれてしまったのだろうか
そしてこの世界にはなんで美しくない人がこんなにもいるのだろうか。悲しいことだよ・・・」
なんか始まったよ・・・
「わかるよ醜い下人よ、この美しい私に嫉妬をする気持ち。
君みたいな薄汚いものにはわからないよな。
うん、そして誰にも頼られず一人最後まで時を過ごすのだろう。
まったくもって美しくないね」
「はいはい。ナルシスト、乙」
「ん、何を言っているのだい?
下人の方言かい?」
流石に通じなかったようだ。
「なによりも君、私の魔法そして美貌は世界一なのだよ!」
「へ、へぇ・・・」
だんだん美しいアピールに飽きてきて、適当に促していると、
「すいませーん、早く準備をしてくださいますか?」
審判の声が入って、僕は開放された。
彼のせいで少し気持ちが狂わされた。
もう早く勝ってみんなの元に戻りたい。
「それでは始めます! エキシビジョンマッチ、第一試合・・・始め!」
ドーーーン
鐘が鳴る。
そして僕はすぐに剣を抜いた。
すると、
「花魔法、満開の花吹雪!」
彼が両手を上げると同時に、凄まじい風と細かい花びらが飛んできた。
さっきまでの茶番のせいで油断していたが、やっと魔法の本性が見えた。
一瞬、花びらが固い刃になっていると思い身構えた。
雷魔法でかき消そうと考えたがそれは違った。
飛んできた花びらが顔をかする。
「痛っ・・・くない?」
風によって飛んできたのは普通のいい匂いがする、柔らかい花びらだった。
なんだ、と思い安心したがそれもまた違ったようだ。
前を見ると散らばった花びらだらけで、まるで霧のように曇り、前が見えなかったのである。
「どうだい、私の魔法は!
美しい、なんと美しいのだろう!」
そして次に出される魔法でまた僕の心を焦らす。
「花びらの誘惑!」
格好をつけるようなポーズを相手はとる。
すると、
「なに!?」
まるで相手が影分身したかのように数人のフランクリンが現れたのだ。
どれが本物かわからない。
どの影も同じ声、似た動きをするのだ。
思わずフリーズしてしまった。
「おやおやもう終わりかい。君はもっと身の程をわきまえてこの決戦に挑むべきだよ!」
刀に手汗が滲むほどピンチな中、相手がすぐに攻撃してこなかったのは不幸中の幸いである。
気持ちを落ち着かせて、魔法の流れを感じる時間をもらえた。
「美しい私の相手ではなかったね。
私が魔法帝に勝ち、美しさを知らしめるから見ていなさい。
止めよ!」
片手を上げ、相手が決め技をしようとした時。
ビリッ・・・
小さな静電気が経つと同時に、
バキバキ、ドッカン!
「雷・・・」
ビリッ、ビリビリ
巨大な雷が天から落ちてきた。
また、すこし経つと花びらによる霧が消えた。
「ゴッホ・・・ガハ・・・」
相手はまる焦げになりながらゆっくりと地面に倒れた。
「おっと! 強烈な技で決まりました!
勝者はトモヤ・フローレス!」
すこし前まで三十人ほどいたが、戻った頃には片手で数えれるくらいの人しかいなかった。
どうやらみんなそれぞれに行動を始めたらしい。
魔法帝の登場で忘れられがちかもしれないが、魔法騎士団試験は終わったのだ。
合格した人はもうここにいる意味がない。
だからミーティアの説明を聞きに行く者やコロシアムから出ていく者などの姿を見た。
これから任務をこなしてこの国を守っていくのだろう。
すれ違った人の大抵は誇らしげな顔をしていた。
とは言ってもほとんどの人がコロシアムに残っている。
なぜなら、今からもっとすごい魔道士の決戦が見れるからだ。
参加する側だが、それでも強い者同士の闘いはやはり興奮する。
僕も無事勝てるといいな。
あとサナと戦うことがありませんように…
空間ウィンドウが出現するまでの間、いつものように薄暗いコロシアム内で石のベンチに座り談笑していた。
ここで話すのも最後か、と悔やみながらも会話を楽しんだ。
お昼過ぎになる頃、やっと空間ウィンドウが展開された。
それと同時に外から騒がしい音が響いてくる。
「やっと、エキシビジョンマッチの詳細が知れる。長かったなぁ」
「まったくだ。ずっとウズウズしてたのに」
「ええ、そんな戦うの好きなの・・・」
「よ、よかったね、やっと始まって・・・」
冷めた目をしながら二人は受け答える。
二人にとってはサナと僕は異常なのだろうか。
「あっ、映ってるの魔法帝じゃん!」
マネトの指を刺す先で魔法帝の姿があった。
服装は相変わらず角帽に黒い服、そして丸メガネ。
それ本当にかっこいいと思っているのだろうか・・・
それともスタイリストみたいな人からのおすすめか、僕以外の異世界転生者がいるのか。
いろいろ考えたがこれだけは言える。
東大生に見えてしょうがない。
ファッションに疎そうだな。
「我が国民の皆さん、しばらく待たせてして申し訳なかった。だがこれでようやくエキシビジョンマッチを始めることができる。
存分に楽しんでくれたまえ!」
メガネを上げて少し間を開けると、
「ではこの決戦に参加する名誉ある魔法騎士を発表しよう!」
その言葉を言った途端、映像が変わった。
空間ウィンドウにはずらりと参加した魔法騎士の名前が張り出されていた。
「え!」
「なっ!」
それを見て、僕とサナは驚きのあまり声が漏れてしまう。
エキシビジョンマッチに参加している魔法騎士の数・・・四人。
目を擦り本当か疑ったが、たったの四人しか参加していなかったのだ。
貴族がほとんど魔法騎士になって膨大な魔力量を持っているのにほとんどが参加していない。
その事実は僕にとって衝撃的だった。
でも、その理由はすぐに分かった。
それは会場の外から聞こえた中年男性の声だった。
「ほらな、やっぱりあの貴族様が最強ってことなんだよ!
魔法帝と直々に戦うことができるっていう二度と味わえない素晴らしい賞があるにもかかわらず、他の貴族は参加してないんだろ?
圧倒的実力差があるって分かっているんだよ!
そこまでやらせるあの貴族様はやはりすげぇぜ!」
「貴族でも怯えて参加しないとかへたればかりだなガッハハハハ!」
「おい、やめてとよ。俺ら平民が貴族のこと悪く言うのがバレたらどうなるか」
「ハッハハ、そうだったなでもほぼ決まりだな!」
「いや、下克上とかあり得るかもしれないぞ!」
ほとんどの人達が最強の貴族、クリフ・エストルの噂をしていた。
「そして、これが・・・トーナメントだ!」
全力で、思う存分戦ってくれ!」
魔法帝が大きく叫ぶと同時に、四人のトーナメントが組まれている画面に変わった。
とうとう激戦のバトルが始まる。
僕とサナは食い入るようにその画面を睨むように見た。
「僕は、一回戦で・・・相手は・・・フランクリン・バン・シマウス?」
正直、考えていた相手と違っていたから困惑した。
「おお! 私があの最強といわしめている、クリフと戦うのか!
それは楽しみだな」
腕を組んで、ウキウキしながらうなずいている。
気分が良さそうだ。
その後ろではガタガタと肩を震わせている二人がいる。
「ああ、サナがあんな強い人と・・・怪我しないといいけど」
「かか、回復魔法を・・・」
セクアナは戦ってもいないのにサナに回復魔法をかける始末だ。
「心配するな、私は諦めない!
というか今はトモヤの方だろ?
勝ってくるんだぞ。そして決勝で戦いたいものだ!」
「うん、まぁ頑張ってくるよ
サナも緊張とかしてすぐ負けないでね!」
「ッ! はっ、はいわかって・・・わかってる」
ピクリと肩が動いた。
まだまだあがり症は克服できそうにないな。
しばらく話していると、係の人に呼ばれてすぐにコロシアムの中心、闘技場へと連れて行かれた。
「そう思えば、トモヤは大丈夫なのか?
私達以外ほとんど興味持たないから、相手の魔法知らないんじゃ・・・」
「あ、ほんとだ。いつも聞いてくるから答えていたけど、今回は知らないまま行ってる。
決闘とかの魔法はよく見て、学習しているのはわかるけど、重要なところは抜けてるんだよねー」
セクアナは「はぁー」とため息をついた。
「トモヤなら大丈夫だよ、絶対!
だって俺と同じですごいスピードで移動するじゃん。俺みたいにビビリじゃないから積極的に突っ込むし、技も多彩だから」
「それもそうだね!」
「ほんと、何があったのか知らないけど、もっと他のやつにも興味を持ってほしいものだな・・・」
「昔いろいろあったからね・・・」
セクアナは気まずそうに下を向く。
「ああ、すまない。セクアナたちにも思い出したくない過去はあるよな」
おどおどと困りながら慌てるサナ。
「全然いいよ、今はこうして幸せだから!」
「俺はそういうトモヤ好きだよ。他に興味がない分、僕たちには優しいからね!」
「そうだな」
みんな納得して、トモヤの試合を観戦するべく外へ出た。
その頃、トモヤは・・・
ああ、やばい!
相手の魔法聞き忘れてた!
係の人に急ぎで呼ばれたせいで、情報を仲間から聞けず、頭を抱えていた。
仲間以外にほとんど興味を示さない自分に後悔する。
もっと考えて行動しないといけないことを悟った。
「はぁー」とため息をつきながら闘技場に入場した。
そこにはいつもの罵声と大きな歓声。
やっぱりこの光景は好きだ!
でも男だからか理由はわからないが、戦いの場というのは興奮するようで、少し気持ちが落ち着いていた。
ナレーターのマイク音が響く。
「さーて、やってきましたエキシビジョンマッチ!
再び、ナレーターを務めることになりましたコリーダです。
魔法騎士団試験とは違い、より激戦となるでしょう!
このひとときを楽しみましょう!」
やはり図体が大きいからか、耳を押さえたいほど大きな声だった。
しばらく歩くと、前の門から僕の対戦相手が出場してきた。
相手はきれいな装飾をしている男性だ。
見た目からして貴族。
茶髪の上、リンスみたいなのを使っているのか、さらさらな髪。
真っ白の羽織を着ていてまるで白馬の王子みたいな印象だ。
「さーて、登場しました、
フランクリン・フォン・ニーストロ」
やけに長い名前だった。
もしかしたら前に行っていた伯爵とかいう高い地位の人なのかもしれない。
だから魔力量が半端なく多いかも。
だけど、応用系の魔法は得意じゃない。
まるでセクアナと戦った人みたいに。
とかだといいけど・・・
情報がないから自分で勝手に推理し始める。
一応、司会の簡単な紹介もあるから珍しく、真面目に聞きいた。
「花魔法を操る、美しい男!
圧倒的に魔力量で相手を苦しめる。
今回はどんな美しいパフォーマンスを見してくれるのか!」
「そう、私は美しい!」
茶色い髪をすっと払って、たなびかせるフランクリン。
そしてまるで太陽が彼を導いているように、光が差し、一人ライトアップされた。
まるで彼自身が輝いているかのように。
「まったく、太陽まで私に味方をするなんて・・・なんと美しい!
アッハッハハハ、アッハハハハハハ!」
一人何かぶつぶつ言って、手を空に上げている。
ほんと、なんなんだこのキラキラした人は・・・
複雑な気持ちで足を進めて彼の元へ行き対面する。
もう魔法騎士団試験は終わり、エキシビジョンマッチは作法などもなく始まる。
それぞれ距離を取り、準備ができていると判断されたら大きな鐘が鳴ってスタートだ。
「ふっ、私の相手はお前か。
まったく美しくないではないか、というかな近づかないでくれそんな小汚い服装で。
この美しい顔が汚れてしまうのだよ!
しっしっ!」
手を返して、追い返すように払う。
この変な茶番を無言で頷くことしかできなかった。
あまりにナルシストすぎて呆れてしまう。
なんか痛い人だな・・・
「おや、どうしたんだい、小汚い下人。
もしかして私の美しさに惚れているのかい?
まったくしょうがない奴だ。
私の美しさは世界一だからな!
アッハハハハハハ!」
また、さらりと髪を払う。
「どうして私はこんなにも美しく生まれてしまったのだろうか
そしてこの世界にはなんで美しくない人がこんなにもいるのだろうか。悲しいことだよ・・・」
なんか始まったよ・・・
「わかるよ醜い下人よ、この美しい私に嫉妬をする気持ち。
君みたいな薄汚いものにはわからないよな。
うん、そして誰にも頼られず一人最後まで時を過ごすのだろう。
まったくもって美しくないね」
「はいはい。ナルシスト、乙」
「ん、何を言っているのだい?
下人の方言かい?」
流石に通じなかったようだ。
「なによりも君、私の魔法そして美貌は世界一なのだよ!」
「へ、へぇ・・・」
だんだん美しいアピールに飽きてきて、適当に促していると、
「すいませーん、早く準備をしてくださいますか?」
審判の声が入って、僕は開放された。
彼のせいで少し気持ちが狂わされた。
もう早く勝ってみんなの元に戻りたい。
「それでは始めます! エキシビジョンマッチ、第一試合・・・始め!」
ドーーーン
鐘が鳴る。
そして僕はすぐに剣を抜いた。
すると、
「花魔法、満開の花吹雪!」
彼が両手を上げると同時に、凄まじい風と細かい花びらが飛んできた。
さっきまでの茶番のせいで油断していたが、やっと魔法の本性が見えた。
一瞬、花びらが固い刃になっていると思い身構えた。
雷魔法でかき消そうと考えたがそれは違った。
飛んできた花びらが顔をかする。
「痛っ・・・くない?」
風によって飛んできたのは普通のいい匂いがする、柔らかい花びらだった。
なんだ、と思い安心したがそれもまた違ったようだ。
前を見ると散らばった花びらだらけで、まるで霧のように曇り、前が見えなかったのである。
「どうだい、私の魔法は!
美しい、なんと美しいのだろう!」
そして次に出される魔法でまた僕の心を焦らす。
「花びらの誘惑!」
格好をつけるようなポーズを相手はとる。
すると、
「なに!?」
まるで相手が影分身したかのように数人のフランクリンが現れたのだ。
どれが本物かわからない。
どの影も同じ声、似た動きをするのだ。
思わずフリーズしてしまった。
「おやおやもう終わりかい。君はもっと身の程をわきまえてこの決戦に挑むべきだよ!」
刀に手汗が滲むほどピンチな中、相手がすぐに攻撃してこなかったのは不幸中の幸いである。
気持ちを落ち着かせて、魔法の流れを感じる時間をもらえた。
「美しい私の相手ではなかったね。
私が魔法帝に勝ち、美しさを知らしめるから見ていなさい。
止めよ!」
片手を上げ、相手が決め技をしようとした時。
ビリッ・・・
小さな静電気が経つと同時に、
バキバキ、ドッカン!
「雷・・・」
ビリッ、ビリビリ
巨大な雷が天から落ちてきた。
また、すこし経つと花びらによる霧が消えた。
「ゴッホ・・・ガハ・・・」
相手はまる焦げになりながらゆっくりと地面に倒れた。
「おっと! 強烈な技で決まりました!
勝者はトモヤ・フローレス!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる