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魔法騎士団試験
再び戦い
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僕とサナはエキシビジョンマッチの参加申し込みを終えて、二人の元へ戻る。
すこし前まで三十人ほどいたが、戻った頃には片手で数えれるくらいの人しかいなかった。
どうやらみんなそれぞれに行動を始めたらしい。
魔法帝の登場で忘れられがちかもしれないが、魔法騎士団試験は終わったのだ。
合格した人はもうここにいる意味がない。
だからミーティアの説明を聞きに行く者やコロシアムから出ていく者などの姿を見た。
これから任務をこなしてこの国を守っていくのだろう。
すれ違った人の大抵は誇らしげな顔をしていた。
とは言ってもほとんどの人がコロシアムに残っている。
なぜなら、今からもっとすごい魔道士の決戦が見れるからだ。
参加する側だが、それでも強い者同士の闘いはやはり興奮する。
僕も無事勝てるといいな。
あとサナと戦うことがありませんように…
空間ウィンドウが出現するまでの間、いつものように薄暗いコロシアム内で石のベンチに座り談笑していた。
ここで話すのも最後か、と悔やみながらも会話を楽しんだ。
お昼過ぎになる頃、やっと空間ウィンドウが展開された。
それと同時に外から騒がしい音が響いてくる。
「やっと、エキシビジョンマッチの詳細が知れる。長かったなぁ」
「まったくだ。ずっとウズウズしてたのに」
「ええ、そんな戦うの好きなの・・・」
「よ、よかったね、やっと始まって・・・」
冷めた目をしながら二人は受け答える。
二人にとってはサナと僕は異常なのだろうか。
「あっ、映ってるの魔法帝じゃん!」
マネトの指を刺す先で魔法帝の姿があった。
服装は相変わらず角帽に黒い服、そして丸メガネ。
それ本当にかっこいいと思っているのだろうか・・・
それともスタイリストみたいな人からのおすすめか、僕以外の異世界転生者がいるのか。
いろいろ考えたがこれだけは言える。
東大生に見えてしょうがない。
ファッションに疎そうだな。
「我が国民の皆さん、しばらく待たせてして申し訳なかった。だがこれでようやくエキシビジョンマッチを始めることができる。
存分に楽しんでくれたまえ!」
メガネを上げて少し間を開けると、
「ではこの決戦に参加する名誉ある魔法騎士を発表しよう!」
その言葉を言った途端、映像が変わった。
空間ウィンドウにはずらりと参加した魔法騎士の名前が張り出されていた。
「え!」
「なっ!」
それを見て、僕とサナは驚きのあまり声が漏れてしまう。
エキシビジョンマッチに参加している魔法騎士の数・・・四人。
目を擦り本当か疑ったが、たったの四人しか参加していなかったのだ。
貴族がほとんど魔法騎士になって膨大な魔力量を持っているのにほとんどが参加していない。
その事実は僕にとって衝撃的だった。
でも、その理由はすぐに分かった。
それは会場の外から聞こえた中年男性の声だった。
「ほらな、やっぱりあの貴族様が最強ってことなんだよ!
魔法帝と直々に戦うことができるっていう二度と味わえない素晴らしい賞があるにもかかわらず、他の貴族は参加してないんだろ?
圧倒的実力差があるって分かっているんだよ!
そこまでやらせるあの貴族様はやはりすげぇぜ!」
「貴族でも怯えて参加しないとかへたればかりだなガッハハハハ!」
「おい、やめてとよ。俺ら平民が貴族のこと悪く言うのがバレたらどうなるか」
「ハッハハ、そうだったなでもほぼ決まりだな!」
「いや、下克上とかあり得るかもしれないぞ!」
ほとんどの人達が最強の貴族、クリフ・エストルの噂をしていた。
「そして、これが・・・トーナメントだ!」
全力で、思う存分戦ってくれ!」
魔法帝が大きく叫ぶと同時に、四人のトーナメントが組まれている画面に変わった。
とうとう激戦のバトルが始まる。
僕とサナは食い入るようにその画面を睨むように見た。
「僕は、一回戦で・・・相手は・・・フランクリン・バン・シマウス?」
正直、考えていた相手と違っていたから困惑した。
「おお! 私があの最強といわしめている、クリフと戦うのか!
それは楽しみだな」
腕を組んで、ウキウキしながらうなずいている。
気分が良さそうだ。
その後ろではガタガタと肩を震わせている二人がいる。
「ああ、サナがあんな強い人と・・・怪我しないといいけど」
「かか、回復魔法を・・・」
セクアナは戦ってもいないのにサナに回復魔法をかける始末だ。
「心配するな、私は諦めない!
というか今はトモヤの方だろ?
勝ってくるんだぞ。そして決勝で戦いたいものだ!」
「うん、まぁ頑張ってくるよ
サナも緊張とかしてすぐ負けないでね!」
「ッ! はっ、はいわかって・・・わかってる」
ピクリと肩が動いた。
まだまだあがり症は克服できそうにないな。
しばらく話していると、係の人に呼ばれてすぐにコロシアムの中心、闘技場へと連れて行かれた。
「そう思えば、トモヤは大丈夫なのか?
私達以外ほとんど興味持たないから、相手の魔法知らないんじゃ・・・」
「あ、ほんとだ。いつも聞いてくるから答えていたけど、今回は知らないまま行ってる。
決闘とかの魔法はよく見て、学習しているのはわかるけど、重要なところは抜けてるんだよねー」
セクアナは「はぁー」とため息をついた。
「トモヤなら大丈夫だよ、絶対!
だって俺と同じですごいスピードで移動するじゃん。俺みたいにビビリじゃないから積極的に突っ込むし、技も多彩だから」
「それもそうだね!」
「ほんと、何があったのか知らないけど、もっと他のやつにも興味を持ってほしいものだな・・・」
「昔いろいろあったからね・・・」
セクアナは気まずそうに下を向く。
「ああ、すまない。セクアナたちにも思い出したくない過去はあるよな」
おどおどと困りながら慌てるサナ。
「全然いいよ、今はこうして幸せだから!」
「俺はそういうトモヤ好きだよ。他に興味がない分、僕たちには優しいからね!」
「そうだな」
みんな納得して、トモヤの試合を観戦するべく外へ出た。
その頃、トモヤは・・・
ああ、やばい!
相手の魔法聞き忘れてた!
係の人に急ぎで呼ばれたせいで、情報を仲間から聞けず、頭を抱えていた。
仲間以外にほとんど興味を示さない自分に後悔する。
もっと考えて行動しないといけないことを悟った。
「はぁー」とため息をつきながら闘技場に入場した。
そこにはいつもの罵声と大きな歓声。
やっぱりこの光景は好きだ!
でも男だからか理由はわからないが、戦いの場というのは興奮するようで、少し気持ちが落ち着いていた。
ナレーターのマイク音が響く。
「さーて、やってきましたエキシビジョンマッチ!
再び、ナレーターを務めることになりましたコリーダです。
魔法騎士団試験とは違い、より激戦となるでしょう!
このひとときを楽しみましょう!」
やはり図体が大きいからか、耳を押さえたいほど大きな声だった。
しばらく歩くと、前の門から僕の対戦相手が出場してきた。
相手はきれいな装飾をしている男性だ。
見た目からして貴族。
茶髪の上、リンスみたいなのを使っているのか、さらさらな髪。
真っ白の羽織を着ていてまるで白馬の王子みたいな印象だ。
「さーて、登場しました、
フランクリン・フォン・ニーストロ」
やけに長い名前だった。
もしかしたら前に行っていた伯爵とかいう高い地位の人なのかもしれない。
だから魔力量が半端なく多いかも。
だけど、応用系の魔法は得意じゃない。
まるでセクアナと戦った人みたいに。
とかだといいけど・・・
情報がないから自分で勝手に推理し始める。
一応、司会の簡単な紹介もあるから珍しく、真面目に聞きいた。
「花魔法を操る、美しい男!
圧倒的に魔力量で相手を苦しめる。
今回はどんな美しいパフォーマンスを見してくれるのか!」
「そう、私は美しい!」
茶色い髪をすっと払って、たなびかせるフランクリン。
そしてまるで太陽が彼を導いているように、光が差し、一人ライトアップされた。
まるで彼自身が輝いているかのように。
「まったく、太陽まで私に味方をするなんて・・・なんと美しい!
アッハッハハハ、アッハハハハハハ!」
一人何かぶつぶつ言って、手を空に上げている。
ほんと、なんなんだこのキラキラした人は・・・
複雑な気持ちで足を進めて彼の元へ行き対面する。
もう魔法騎士団試験は終わり、エキシビジョンマッチは作法などもなく始まる。
それぞれ距離を取り、準備ができていると判断されたら大きな鐘が鳴ってスタートだ。
「ふっ、私の相手はお前か。
まったく美しくないではないか、というかな近づかないでくれそんな小汚い服装で。
この美しい顔が汚れてしまうのだよ!
しっしっ!」
手を返して、追い返すように払う。
この変な茶番を無言で頷くことしかできなかった。
あまりにナルシストすぎて呆れてしまう。
なんか痛い人だな・・・
「おや、どうしたんだい、小汚い下人。
もしかして私の美しさに惚れているのかい?
まったくしょうがない奴だ。
私の美しさは世界一だからな!
アッハハハハハハ!」
また、さらりと髪を払う。
「どうして私はこんなにも美しく生まれてしまったのだろうか
そしてこの世界にはなんで美しくない人がこんなにもいるのだろうか。悲しいことだよ・・・」
なんか始まったよ・・・
「わかるよ醜い下人よ、この美しい私に嫉妬をする気持ち。
君みたいな薄汚いものにはわからないよな。
うん、そして誰にも頼られず一人最後まで時を過ごすのだろう。
まったくもって美しくないね」
「はいはい。ナルシスト、乙」
「ん、何を言っているのだい?
下人の方言かい?」
流石に通じなかったようだ。
「なによりも君、私の魔法そして美貌は世界一なのだよ!」
「へ、へぇ・・・」
だんだん美しいアピールに飽きてきて、適当に促していると、
「すいませーん、早く準備をしてくださいますか?」
審判の声が入って、僕は開放された。
彼のせいで少し気持ちが狂わされた。
もう早く勝ってみんなの元に戻りたい。
「それでは始めます! エキシビジョンマッチ、第一試合・・・始め!」
ドーーーン
鐘が鳴る。
そして僕はすぐに剣を抜いた。
すると、
「花魔法、満開の花吹雪!」
彼が両手を上げると同時に、凄まじい風と細かい花びらが飛んできた。
さっきまでの茶番のせいで油断していたが、やっと魔法の本性が見えた。
一瞬、花びらが固い刃になっていると思い身構えた。
雷魔法でかき消そうと考えたがそれは違った。
飛んできた花びらが顔をかする。
「痛っ・・・くない?」
風によって飛んできたのは普通のいい匂いがする、柔らかい花びらだった。
なんだ、と思い安心したがそれもまた違ったようだ。
前を見ると散らばった花びらだらけで、まるで霧のように曇り、前が見えなかったのである。
「どうだい、私の魔法は!
美しい、なんと美しいのだろう!」
そして次に出される魔法でまた僕の心を焦らす。
「花びらの誘惑!」
格好をつけるようなポーズを相手はとる。
すると、
「なに!?」
まるで相手が影分身したかのように数人のフランクリンが現れたのだ。
どれが本物かわからない。
どの影も同じ声、似た動きをするのだ。
思わずフリーズしてしまった。
「おやおやもう終わりかい。君はもっと身の程をわきまえてこの決戦に挑むべきだよ!」
刀に手汗が滲むほどピンチな中、相手がすぐに攻撃してこなかったのは不幸中の幸いである。
気持ちを落ち着かせて、魔法の流れを感じる時間をもらえた。
「美しい私の相手ではなかったね。
私が魔法帝に勝ち、美しさを知らしめるから見ていなさい。
止めよ!」
片手を上げ、相手が決め技をしようとした時。
ビリッ・・・
小さな静電気が経つと同時に、
バキバキ、ドッカン!
「雷・・・」
ビリッ、ビリビリ
巨大な雷が天から落ちてきた。
また、すこし経つと花びらによる霧が消えた。
「ゴッホ・・・ガハ・・・」
相手はまる焦げになりながらゆっくりと地面に倒れた。
「おっと! 強烈な技で決まりました!
勝者はトモヤ・フローレス!」
すこし前まで三十人ほどいたが、戻った頃には片手で数えれるくらいの人しかいなかった。
どうやらみんなそれぞれに行動を始めたらしい。
魔法帝の登場で忘れられがちかもしれないが、魔法騎士団試験は終わったのだ。
合格した人はもうここにいる意味がない。
だからミーティアの説明を聞きに行く者やコロシアムから出ていく者などの姿を見た。
これから任務をこなしてこの国を守っていくのだろう。
すれ違った人の大抵は誇らしげな顔をしていた。
とは言ってもほとんどの人がコロシアムに残っている。
なぜなら、今からもっとすごい魔道士の決戦が見れるからだ。
参加する側だが、それでも強い者同士の闘いはやはり興奮する。
僕も無事勝てるといいな。
あとサナと戦うことがありませんように…
空間ウィンドウが出現するまでの間、いつものように薄暗いコロシアム内で石のベンチに座り談笑していた。
ここで話すのも最後か、と悔やみながらも会話を楽しんだ。
お昼過ぎになる頃、やっと空間ウィンドウが展開された。
それと同時に外から騒がしい音が響いてくる。
「やっと、エキシビジョンマッチの詳細が知れる。長かったなぁ」
「まったくだ。ずっとウズウズしてたのに」
「ええ、そんな戦うの好きなの・・・」
「よ、よかったね、やっと始まって・・・」
冷めた目をしながら二人は受け答える。
二人にとってはサナと僕は異常なのだろうか。
「あっ、映ってるの魔法帝じゃん!」
マネトの指を刺す先で魔法帝の姿があった。
服装は相変わらず角帽に黒い服、そして丸メガネ。
それ本当にかっこいいと思っているのだろうか・・・
それともスタイリストみたいな人からのおすすめか、僕以外の異世界転生者がいるのか。
いろいろ考えたがこれだけは言える。
東大生に見えてしょうがない。
ファッションに疎そうだな。
「我が国民の皆さん、しばらく待たせてして申し訳なかった。だがこれでようやくエキシビジョンマッチを始めることができる。
存分に楽しんでくれたまえ!」
メガネを上げて少し間を開けると、
「ではこの決戦に参加する名誉ある魔法騎士を発表しよう!」
その言葉を言った途端、映像が変わった。
空間ウィンドウにはずらりと参加した魔法騎士の名前が張り出されていた。
「え!」
「なっ!」
それを見て、僕とサナは驚きのあまり声が漏れてしまう。
エキシビジョンマッチに参加している魔法騎士の数・・・四人。
目を擦り本当か疑ったが、たったの四人しか参加していなかったのだ。
貴族がほとんど魔法騎士になって膨大な魔力量を持っているのにほとんどが参加していない。
その事実は僕にとって衝撃的だった。
でも、その理由はすぐに分かった。
それは会場の外から聞こえた中年男性の声だった。
「ほらな、やっぱりあの貴族様が最強ってことなんだよ!
魔法帝と直々に戦うことができるっていう二度と味わえない素晴らしい賞があるにもかかわらず、他の貴族は参加してないんだろ?
圧倒的実力差があるって分かっているんだよ!
そこまでやらせるあの貴族様はやはりすげぇぜ!」
「貴族でも怯えて参加しないとかへたればかりだなガッハハハハ!」
「おい、やめてとよ。俺ら平民が貴族のこと悪く言うのがバレたらどうなるか」
「ハッハハ、そうだったなでもほぼ決まりだな!」
「いや、下克上とかあり得るかもしれないぞ!」
ほとんどの人達が最強の貴族、クリフ・エストルの噂をしていた。
「そして、これが・・・トーナメントだ!」
全力で、思う存分戦ってくれ!」
魔法帝が大きく叫ぶと同時に、四人のトーナメントが組まれている画面に変わった。
とうとう激戦のバトルが始まる。
僕とサナは食い入るようにその画面を睨むように見た。
「僕は、一回戦で・・・相手は・・・フランクリン・バン・シマウス?」
正直、考えていた相手と違っていたから困惑した。
「おお! 私があの最強といわしめている、クリフと戦うのか!
それは楽しみだな」
腕を組んで、ウキウキしながらうなずいている。
気分が良さそうだ。
その後ろではガタガタと肩を震わせている二人がいる。
「ああ、サナがあんな強い人と・・・怪我しないといいけど」
「かか、回復魔法を・・・」
セクアナは戦ってもいないのにサナに回復魔法をかける始末だ。
「心配するな、私は諦めない!
というか今はトモヤの方だろ?
勝ってくるんだぞ。そして決勝で戦いたいものだ!」
「うん、まぁ頑張ってくるよ
サナも緊張とかしてすぐ負けないでね!」
「ッ! はっ、はいわかって・・・わかってる」
ピクリと肩が動いた。
まだまだあがり症は克服できそうにないな。
しばらく話していると、係の人に呼ばれてすぐにコロシアムの中心、闘技場へと連れて行かれた。
「そう思えば、トモヤは大丈夫なのか?
私達以外ほとんど興味持たないから、相手の魔法知らないんじゃ・・・」
「あ、ほんとだ。いつも聞いてくるから答えていたけど、今回は知らないまま行ってる。
決闘とかの魔法はよく見て、学習しているのはわかるけど、重要なところは抜けてるんだよねー」
セクアナは「はぁー」とため息をついた。
「トモヤなら大丈夫だよ、絶対!
だって俺と同じですごいスピードで移動するじゃん。俺みたいにビビリじゃないから積極的に突っ込むし、技も多彩だから」
「それもそうだね!」
「ほんと、何があったのか知らないけど、もっと他のやつにも興味を持ってほしいものだな・・・」
「昔いろいろあったからね・・・」
セクアナは気まずそうに下を向く。
「ああ、すまない。セクアナたちにも思い出したくない過去はあるよな」
おどおどと困りながら慌てるサナ。
「全然いいよ、今はこうして幸せだから!」
「俺はそういうトモヤ好きだよ。他に興味がない分、僕たちには優しいからね!」
「そうだな」
みんな納得して、トモヤの試合を観戦するべく外へ出た。
その頃、トモヤは・・・
ああ、やばい!
相手の魔法聞き忘れてた!
係の人に急ぎで呼ばれたせいで、情報を仲間から聞けず、頭を抱えていた。
仲間以外にほとんど興味を示さない自分に後悔する。
もっと考えて行動しないといけないことを悟った。
「はぁー」とため息をつきながら闘技場に入場した。
そこにはいつもの罵声と大きな歓声。
やっぱりこの光景は好きだ!
でも男だからか理由はわからないが、戦いの場というのは興奮するようで、少し気持ちが落ち着いていた。
ナレーターのマイク音が響く。
「さーて、やってきましたエキシビジョンマッチ!
再び、ナレーターを務めることになりましたコリーダです。
魔法騎士団試験とは違い、より激戦となるでしょう!
このひとときを楽しみましょう!」
やはり図体が大きいからか、耳を押さえたいほど大きな声だった。
しばらく歩くと、前の門から僕の対戦相手が出場してきた。
相手はきれいな装飾をしている男性だ。
見た目からして貴族。
茶髪の上、リンスみたいなのを使っているのか、さらさらな髪。
真っ白の羽織を着ていてまるで白馬の王子みたいな印象だ。
「さーて、登場しました、
フランクリン・フォン・ニーストロ」
やけに長い名前だった。
もしかしたら前に行っていた伯爵とかいう高い地位の人なのかもしれない。
だから魔力量が半端なく多いかも。
だけど、応用系の魔法は得意じゃない。
まるでセクアナと戦った人みたいに。
とかだといいけど・・・
情報がないから自分で勝手に推理し始める。
一応、司会の簡単な紹介もあるから珍しく、真面目に聞きいた。
「花魔法を操る、美しい男!
圧倒的に魔力量で相手を苦しめる。
今回はどんな美しいパフォーマンスを見してくれるのか!」
「そう、私は美しい!」
茶色い髪をすっと払って、たなびかせるフランクリン。
そしてまるで太陽が彼を導いているように、光が差し、一人ライトアップされた。
まるで彼自身が輝いているかのように。
「まったく、太陽まで私に味方をするなんて・・・なんと美しい!
アッハッハハハ、アッハハハハハハ!」
一人何かぶつぶつ言って、手を空に上げている。
ほんと、なんなんだこのキラキラした人は・・・
複雑な気持ちで足を進めて彼の元へ行き対面する。
もう魔法騎士団試験は終わり、エキシビジョンマッチは作法などもなく始まる。
それぞれ距離を取り、準備ができていると判断されたら大きな鐘が鳴ってスタートだ。
「ふっ、私の相手はお前か。
まったく美しくないではないか、というかな近づかないでくれそんな小汚い服装で。
この美しい顔が汚れてしまうのだよ!
しっしっ!」
手を返して、追い返すように払う。
この変な茶番を無言で頷くことしかできなかった。
あまりにナルシストすぎて呆れてしまう。
なんか痛い人だな・・・
「おや、どうしたんだい、小汚い下人。
もしかして私の美しさに惚れているのかい?
まったくしょうがない奴だ。
私の美しさは世界一だからな!
アッハハハハハハ!」
また、さらりと髪を払う。
「どうして私はこんなにも美しく生まれてしまったのだろうか
そしてこの世界にはなんで美しくない人がこんなにもいるのだろうか。悲しいことだよ・・・」
なんか始まったよ・・・
「わかるよ醜い下人よ、この美しい私に嫉妬をする気持ち。
君みたいな薄汚いものにはわからないよな。
うん、そして誰にも頼られず一人最後まで時を過ごすのだろう。
まったくもって美しくないね」
「はいはい。ナルシスト、乙」
「ん、何を言っているのだい?
下人の方言かい?」
流石に通じなかったようだ。
「なによりも君、私の魔法そして美貌は世界一なのだよ!」
「へ、へぇ・・・」
だんだん美しいアピールに飽きてきて、適当に促していると、
「すいませーん、早く準備をしてくださいますか?」
審判の声が入って、僕は開放された。
彼のせいで少し気持ちが狂わされた。
もう早く勝ってみんなの元に戻りたい。
「それでは始めます! エキシビジョンマッチ、第一試合・・・始め!」
ドーーーン
鐘が鳴る。
そして僕はすぐに剣を抜いた。
すると、
「花魔法、満開の花吹雪!」
彼が両手を上げると同時に、凄まじい風と細かい花びらが飛んできた。
さっきまでの茶番のせいで油断していたが、やっと魔法の本性が見えた。
一瞬、花びらが固い刃になっていると思い身構えた。
雷魔法でかき消そうと考えたがそれは違った。
飛んできた花びらが顔をかする。
「痛っ・・・くない?」
風によって飛んできたのは普通のいい匂いがする、柔らかい花びらだった。
なんだ、と思い安心したがそれもまた違ったようだ。
前を見ると散らばった花びらだらけで、まるで霧のように曇り、前が見えなかったのである。
「どうだい、私の魔法は!
美しい、なんと美しいのだろう!」
そして次に出される魔法でまた僕の心を焦らす。
「花びらの誘惑!」
格好をつけるようなポーズを相手はとる。
すると、
「なに!?」
まるで相手が影分身したかのように数人のフランクリンが現れたのだ。
どれが本物かわからない。
どの影も同じ声、似た動きをするのだ。
思わずフリーズしてしまった。
「おやおやもう終わりかい。君はもっと身の程をわきまえてこの決戦に挑むべきだよ!」
刀に手汗が滲むほどピンチな中、相手がすぐに攻撃してこなかったのは不幸中の幸いである。
気持ちを落ち着かせて、魔法の流れを感じる時間をもらえた。
「美しい私の相手ではなかったね。
私が魔法帝に勝ち、美しさを知らしめるから見ていなさい。
止めよ!」
片手を上げ、相手が決め技をしようとした時。
ビリッ・・・
小さな静電気が経つと同時に、
バキバキ、ドッカン!
「雷・・・」
ビリッ、ビリビリ
巨大な雷が天から落ちてきた。
また、すこし経つと花びらによる霧が消えた。
「ゴッホ・・・ガハ・・・」
相手はまる焦げになりながらゆっくりと地面に倒れた。
「おっと! 強烈な技で決まりました!
勝者はトモヤ・フローレス!」
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