雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

サナの本気

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エキシビジョンマッチの初戦を無事勝ち上がることができた。
喜びを噛みしめながら僕は普段通り、みんなのところへ戻ろうとする。

今回は外で観戦しているところを発見した。
このまま直接行くのもいいのだが、民衆の人たちがうるさそうなので、一度中に入ってから外に出るというルートで向かった。


「おーい、こっちだよ!」
マネトに呼ばれて小走りになった。

セクアナはというとすこし呆れている表情が窺える。
「はぁー、今回勝てたのはよかったけど、トモヤ、相手の魔法絶対知らなかったでしょう!」
腕を腰に当てて、体前のめりにしながらムスッとしている。

「ああ、えっと・・・その通りです」
「もっとしっかりしてよ、これからはもっと危ないんだから!
あと魔法をじっくり見て学習するのはいいけど、相手の情報を知らないのはダメだからね!
重要なところがいつも抜けているんだよ、分かってる?」
「はい・・・面目ありません」
帰っていきなり説教をされた。

まぁ、言われていることが全て正論なので、言い返すことができないんですけど。

と思っていると、マネトが白い歯を見せていた。
「ウハハ、セクアナはもっと素直になったらどう? 一番トモヤのこと心配してそうだったし」
「なっ! そんなことありません!
変な冗談言わないで!」
強い口調でセクアナは怒鳴った。

あれれ、顔が赤いな。
これは照れているのでは・・・

「ありがとう!」
「ち、違うよ! もう!」
すこしツンツンしている姿が可愛い。
思わず笑ってしまう。

みんなの姿で心が穏やかになる。
このコロシアムで決戦するのが好きなのは、終わった後、みんながこうして楽しく迎え入れてくれるからかもしれないな。

「はい、ここに座って!」
「えっ? う、うん」
セクアナが平常に戻ると何をするのか、僕を座らせた。

「ん? ねぇセクアナ、何するの?」
「何って、回復魔法かけるだけだよ。
ほら、言ったでしょ!
私は参加しないから裏方で二人をサポートするって」
ニコッと笑うセクアナ。

「おお、女神様ぁ・・・」
「フフフ、何言ってるの?」
優しい口調でゆっくり手を前に出す。

そしていつものように気持ちいい、霧状の疲労を回復してくれる水が、僕の体を包んだ。

「回復してくれる人がいるとすごく楽だな!」
「私、回復魔法とか向いてるかもね。これからもどんどん怪我していいよ!
私があなたのために治すから!」
「しないよ、そんな痛い思いしたくない」
「アハハハ」
「回復は女神パワーとか残ってそうだね」
「そうなのかな?」

片手を前に出してグー、パーと動かす。

「僕も使えるかな・・・」
「うーん、どうだろう。
これは生まれ持った才能だからね」
「うん、だよね」

無理だとは考えていたけど、回復魔法が使えないことに肩を落とす。

「トモヤは強いからそれで十分じゃない?
私はその方が羨ましいよ!
一時期ずっと負けてたし・・・」

ポンポンと肩を叩いてくれる。

僕とセクアナのやりとりを見ていたマネトは無言で、
「えっと、あの俺もいるんですが・・・
というか何イチャイチャしてるの?」
「はっ!」
「へっ! ゲボゲボ」

思わずテンパる二人。

「何言ってるの!?」
「そうだよ、マネト。今の発言はおかしい!」
「ん? そうなのかな・・・」
「そうです!」

これは意図的にマネトにからかわれたのか、それとも天然な発言なのかわからないが、
僕とセクアナの顔は赤くなった。

「それはそうと、さっきの戦い、トモヤはあの霧の中でよくピンポイントで魔法を命中できたね!
俺、どうやったか全然わからないやー」
話の内容が変わり、これは良い逃げ道だと思い、僕は的確にマネトへさっきの試合の解説を始めた。

「さっきのことだよね! 
あれ、実は結構やばかったんだー!」
「へ、へぇー、そうなんだー!」

セクアナも話を切り替えるため、わざとらしい口調で乗ってくる。


「相手が分身したときあったでしょ?
あのとき、すぐにとどめを刺されたら真面目に負けてたんだ!

だけど、すぐに攻撃が来なかったよね?
だから、ここだって思って魔力の流れを感じたんだ。
貴族は魔力量が多いから見分けられるかなって。
もちろん周りは全然見えてなくて、相手の分身に囲まれてピンチだと思ったよ。

でもこんな時だからこそ、僕は賭けをしてたんだ。
相手の止めが早いか、僕が相手を見つけるスピードが早いか。
その賭けに勝ったから、ああやって雷を落とせたんだよ!」
「ふぅーん」

説明が長かったせいか、あくびをするように途中から飽きていた。
さっきの変な発言はもう言わないだろう。

よかったと一息つく。

「やっぱ、どうやったのかわからないや。けど、次トモヤが戦うのはサナかあの貴族だね!」

とマネトが闘技場を指差すと、いつの間にか、彼は登場していたのである。


「おっと登場してきました、クリフ・エストル! 何度も何度も圧倒的力で相手をねじ伏せてきました!
この最強の貴族を倒す者は現れるのか!」

怖い目つきをしたクリフはどしどしと大きな足音を立てながら登場した。

その次は、サナがゆっくりと歩いてくる。

今回は緊張せず、落ち着いていた。
手を胸に当てて深く深呼吸をしている。

勝利して欲しい。

「さあ、現れました! 
モンスター少女、サナ!
全て一撃で終わらせてきましたが今回はどうだ! 
最強の貴族に立ち向かう挑戦者!
下克上を果たせるか。
今ここに、頂上決戦が今始まろうとしています!」

それぞれ十メートルほどの間合いを取ると、
直立する。

会話もなく、すぐに始まった。

「さぁ、ではエキシビジョンマッチ、第二回戦・・・始め!」

「いくぞ、クレイモア!」
「チッ……」

小さな声と、ともにそれぞれの素早い行動を起こした。
剣を変身魔法によって素早く生成すると一歩踏み込んむ。

それを止めるため、クリフは地面から素早く木の根のような蔓を発生させて、足に絡ませた。

サナはそれによって一瞬、前に進むことができなくなった。

「ふっ、やけに強い力のある蔓だな。
だが、これくらいじゃ私は止められないぞ!
グッググググ、ハァァ!」

メキメキメキメキ!

剣で切るでもなく足の筋力だけで、重い根を断ち切る。

数秒で足止めは終わり、常人には出せないようなスピードで、またクリフとの間合いを縮める。

「所詮、奥深い森に住んでいる山猿が調子に乗ってんじゃねえ!
この俺が特別な存在ってのをその身に叩き込んでやるよ!」
「ほう、ならばやってみろ!」

口の悪い言葉をいうと、クリフは前に手を出した。

「はっ!」
後ろに大きく振りかぶる。
そして前に出すと地面から先の尖った図太い根っこが芽生え、接近するサナに突撃していった。

ドカッ!

「くっ・・・!」
間合いは近かったが、どうにか見切ることができ、剣で受け止めたようだ。

だが威力は相当なもので、壁近くまで押し戻されていた。

普通はすこし精神にダメージがあるものだが、サナはこの戦いを楽しんでいるように目を輝かせていた。

「まだまだ、こんなものではないぞクリフ!」
「ギャアギャア、うるせんだよ!
さっさと負けて、無様に森へ帰れ。
薄汚い!」

頂上決戦と言えるべきスピードだ。
さすが、口喧嘩も同じくらい頂上決戦…

「ならばどんどん攻めるぞ!」
「チッ……    タ・プローム」

ガタガタガタ!

再びサナが走り出した時、地面が揺れた。

闘技場に転がる石は大きく震え、少しずつ地盤が変化してくる。

どんどん揺れは強くなり地震かと思えるほど震えた。
そして地割れが起き、
「ドドドドドドッ!」と音が鳴るとそれは現れた。

メキメキと音を立てながら、大きくて立派な大樹が闘技場に生える。

一度見たことがある一回戦の樹木とは比にならない。

「そうか、お前もこういう時のために技を隠していたのか・・・」
驚きながらも、ニヤリと笑うサナ。

「圧倒的力で潰してやる」
「やってみろ!」

深い深呼吸を数回すると、鋭い目つきになった。
足に力が入ると、地面が少し凹んだ。
「ガッ!」と蹴りつけるとクリフに向かって疾走していた。

それを迎え撃つように、クリフは大樹を操作し、木ぶかい根が四、五本飛び出す。
メキメキと音を立てて、見るからに丈夫な根だ。

「ハァァァァァァァ!」
サナは化物のような遠吠えをあげ、剣でその一刀両断にする。

一つは美しく切れた。

それに調子が出てきたのか、嬉しそうな顔をしていた。
そして二本目、サナは強力な斬撃を喰らわした。しかし、びくともしなかった。

「何!?」

その一瞬の心が乱れが発生した瞬間、残りの根がサナを襲った。

「グハッ!」
そのまま壁に叩きつけられる。

胸部や顔面にクリンヒットし、大きなダメージを負ってしまう。
そう思っていたが、すんなりと立ち上がったのだ。

「やはり、猿レベルの頭だな。
俺の大樹は硬い部分と簡単に切れる柔らかい部分がある。
一つ切ったくらいで、喜ぶ弱者が!
思いあがるんじゃねえよ!」
「ふっ、いいのか?
相手に自分の魔法の情報を与えて」
「教えたところで、俺の勝負に支障はきたさない」

すぐに立ち上がるとサナは笑顔になる。
「やはり強いものはいいな・・・
これで思う存分、全力で私は戦うことができる! ありがとな、クリフ!」

「チッ……
お前の態度には虫唾が走る。
なんだ、その全力でこの特別な存在である俺に勝つというのか?」
「当たり前だ!」
「実力も分かってねぇ、クズが・・・
どんな目に合うか思い知らせてやる!」

強い憎悪を感じるような目つきをすると、再び大樹が動き出す。

ゴゴゴゴゴ!

「裁きの醜草!」

新たな詠唱をクリフがすると、壁おも切り裂く、硬い葉っぱが大量に発生する。
しばらく宙を彷徨うと、手の動きに合わせて、狙いをサナに定められる。

「切り刻まれろ!」
号令一下、ひらひらと風向きを変えて、大量の切れる葉っぱは突撃し始めた。

そんな極地の中だが、サナは静かに気持ちを整えている。

そして、
「天輪の剣!」
詠唱をすると、眩しい光が発生した。

変身魔法による新たな技が会場中に広がった。

光のせいで何が起こったかわからないが、クリフが放出した大量の葉っぱは、みじん切りされたように細かく散っていた。

そしてその中、太陽に照らされ、輝いているサナがいた。

新たな魔法。
それは、背中の後ろで何十本もの剣がサークル状に舞っていた。
手には銀色に光る、双剣。

まるで天使の輪のようでとても美しかった。

しばらく直立すると、サナは射抜くように相手を見た。

「まだまだ始まったばかりだ!」
「くそが!」

そこからの動きは早かった。

舞っている剣をまるで自分が手に持っているように操り、大樹を断ち切る。

クリフも操作には慣れており、たくさんの剣が移動しているにもかかわらず攻撃を避けることができていた。
お互いにハイレベルな魔法の操作。
力は五分五分といった勝負だった。

だが、そこにサナ自身が乱入することによって、均衡が少しずつ崩れていった。

「ハァ!」

双剣になったことで攻撃頻度が上がり、次々と大樹が切られていく。
もちろん硬い根は断ち切れない。
これでも彼女はクリフとの実力の差を認めていたので、潰せないものは無視し、上手く避けていた。
こうして着実に押し始めたのだ。
さっきまで苦戦していたとは思えない動きだった。

いつものように暴れ、それプラス数十本の舞う剣によって苦しめられ、大樹の操作が少し遅れ始めた。
クリフが劣勢になりはじめる。

まだサナはクリフに攻撃を当てれていない。だから一撃を与えることだけを考え、彼女は無我夢中に攻めていた。

そしてついに、その時が。

スッ!

一本の舞っていた剣が、クリフの頬をかすったのである。

「何!?
この最強の俺に傷をつけただと・・・」
「さっきまでの余裕はどうした?
まだまだ先に行くぞ!
これが私の本気だ!」

サナの声は会場中に響いた。

すると、押されている最強の貴族を見て、会場中の人々がサナの応援を始めたのである。

士気がよく上がるいい状況になってきた。

(決勝戦は、尊敬するサナと戦うな)
そのように感じた・・・


さっきまで暑いほど太陽に照らされ、晴れていた。
しかし、少しずつ黒雲に支配され、ゆっくりと薄暗くなっていった。

すこし胸騒ぎがした。
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