雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

下人の力

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険悪な空気が漂う中、睨み合いが続く。

どちらかが動けば、すぐに殺し合いが始まる。それくらい緊迫していた。

その時、
「そこまでにしなさい!」
一瞬で魔法帝が横まで来ていた。
音もないから分からなかった。

ただ、さっきまでとは違い、深刻な表情をしている。

それをいいことと思ったのか、クリフは口を開き、
「ああ、よかった魔法帝。この身の程も知らない下人どもに教えてやってくださいよ。
俺たちに逆らったらどうなるか!」

まるで見下ろすような眼差しを、僕たちに見せる。

その態度に僕たちはもちろん逆上したが、魔法帝の顔に変化が見られた。
「どうしてそんなに平然としていられるのだ。君は人を同じ魔法騎士である仲間を殺そうとしたのだ!
身の程?
そんなもの関係ない。
君は信用以前の問題だ!」

怒鳴るわけではないが、圧のある強い口調だった。

「チッ……」

相変わらず態度は変わらない。
僕は拳を強く握ってどうにか気持ちを抑えられているが、できるなら今すぐにでも殴りたい。

「おっほん、雷の少年に光の少年。この子は必ず元気にするから安心してくれたまえ」
肩にぽんと手をおかれた。

魔法帝の優しさですこし気持ちが落ち着いた。

「ふん、魔法帝。僕がこんな奴らと仲間?
冗談はやめてくださいよ!
こいつら薄汚い下人なんて魔法騎士どころか、存在が邪魔なんですよ。

あの山猿も、こいつらみたいな野蛮な下人はこの世にいなければいい!
俺に歯向かうクズが!
消えろ!」

それを言うとさっきのように大きく腕を振り上げる。
巨大な蔓が発生した。

「お前は、俺たちの大切な人に酷い目を合わせた・・・許さない!」
「ふざけたこと言いやがって、サナの痛みを今から晴らしてやるよ!」

クリフの行動に応じて、僕たちも動いた。

マネトは拳に光を集め、僕は刀に魔力を込めて鞘を掴む。

「くたばれぇぇぇぇぇ!」
「ハァァァァァァァァ!」

ドカッン!

クリフの巨大な蔓とマネト、トモヤの渾身の一撃が物凄い爆音と共に激突した。

その衝撃は被害は出なかったものの、凄まじかった。
会場にも広がり、悲鳴の声がちらほらと聞こえた。

発生した暴風はあまりに強すぎて誰もが目が閉じてしまう。
そして、うっすらと目を開くことができるようになり、目の先を見ると驚愕の光景があった。

攻撃がぶつかったとされるところに、上昇気流が起きていたのだ。
地面から風が吹き上がり、まるで風による壁が形成されていた。
僕たちとクリフを遮るように高さは十メートル以上あった。

そしてその風で形成された壁の上には魔法帝が。

「まったく、双方とも落ち着きたまえ」
冷静な顔で、メガネを光らしていた。

「こんな強力な魔法をぶつけ合うなんて危険極まりない。
怪我で済む話じゃなかったかもしれない。
雷の少年に光の少年。
後ろを見てみな!」

上から魔法帝が手のひらを向ける先には、サナが眠っていた。

「っ!?」

それを見て、固まった。

「君たち、後ろの少女が大切ではないのか?
確かに仲間を傷つけられて、怒り狂うのはわかるが、本当に大事なことを君たちは履き違えている。
私が衝撃を和らげていなかったらどうなっていたか。
君たちもしっかり自分の行った行為を反省しなさい!」

「はっ、はい……」

セクアナの怯えている表情を見て、自分たちの行いがどれだけ危なかったのか実感した。

静かに二人の元へ駆け寄って謝った。

次に、魔法帝はクリフの方へ体の向きを変える。

「クリフ君、魔法騎士とは市民を守り、愛する者だ。
君の力は誰もが認めるが、心が足りない。
そんな状態なら、魔法騎士をやめてもらうことだってありえるよ」

クリフは説教をされたことが気に入らず、憎悪に満ち溢れた顔をしている。

「何が心だ、ふざけるな。そんな綺麗事、実現なんかしないんだよ!
魔法騎士の全ては力だ! 
力があれば何でもできる!
この特別な存在で最強の俺が全て正しい!
他のやつなんて、クズなんだよ!
それを証明するために魔法帝、お前に勝つ!」

「そうかい、君の覚悟はわかった」
メガネを上げると、手をゆっくりと前に出した。

「はっ!」
かけ声で風によって作られた壁が消える。

「もう準備はできているかな、雷の少年?」

サナの無事をしっかり確認すると、拳に力を込めて立った。

「トモヤ、お願い! サナの努力を無駄にしないで、絶対に勝ち上がって!」
「ああ、セクアナの言う通りだ。俺もクリフを許せない、ぶっ飛ばしてやりたい!
けど参加してないからできない・・・
戦わない俺が言うのは無神経かもしれないけど、勝って!」

二人の強い視線が僕の目に映る。

それに背中を押された。

いざ、決戦の場に向かおうとした時、ゆっくりとサナの体が動いた。

「サナ、大丈夫! 無理しないで」
「・・・ああ」
セクアナに上半身を起こしてもらう。

虚な目しながらも、光を浴びていた。
ゆっくりとサナの拳が動く。

そして、握り拳をを作ると、
「後は・・・トモヤに任せるぞ!」

傷だらけになりながらも、うっすらと笑顔を見せてくれる。

それぞれから、言葉をもらい僕は彼のもとに突き進んでいった。

怒りはまだ収まらない。
というか収まるはずがない。
仲間を傷つけられたのだから。
でもみんなからのバトンを受け継いだ。
必ず勝ってみせる。


「エキシビジョンマッチ、決勝戦の準備だ。
怪我人もいる。早急に治癒魔術師の準備を!」
「はっ、はい!」

魔法帝の言葉に合わせて、さまざまな人が忙しそうに動いた。

特に治癒魔術師は数人がサナの元へ集まった。
痛めつけられていたから相当の怪我だろう。

「うっ、酷い怪我だ・・・」
「さっきまでよくこんな怪我で立ち上がれていたものだ」
「魔力も相当浪費している。これは大変そうね」

そんな会話を聞いて、セクアナとマネトは不安な顔になる。

思わず僕も駆け寄ろうとしたが、マネトに止められた。

「トモヤ、サナのことは安心して。俺たちが絶対に治すから。だから今は目の前のことに、クリフを倒すことだけ考えて!
そうじゃないとサナの努力が無駄になる」
「そうだよ、サナなんて私の魔法ですぐに治せる! 私たちを信じて!」

二人の真剣な顔をみて、迷いがなくなった。

ゆっくりとサナは運ばれて行った。



会場には、もうエキシビジョンマッチ決勝戦を邪魔する者はおらず、二人の戦士が立っていた。

もうすぐ、戦いが始まろうとする。

「さーて、とうとうこれで最強の魔法騎士が決定することとなります!
残った戦士は二名。
数々の戦いを最弱の魔法で制してきた男、トモヤ・フローレス!
はたまた、大樹魔法でねじ伏せる最強の貴族、クリフ・エストル!
勝利の女神はどちらに風を吹くか見ものです。
それでは最終決戦・・・始め!」

ドーーーン!


鐘が鳴り、走り出す。

「最初から全力だ!」
鞘から剣を抜いて構える。

相手も対応は早く、すぐに巨大な大樹を出現された。
僕の足を奪わず、始めから大樹を生成したあたり、クリフも全力で戦おうとしている様子が窺える。

「ふん、使えない下人が! 最弱魔法のお前が何思い上がってるんだよ!
勝つのは俺って決定してんだ!」

すぐに大量の蔓や分厚い根が僕を襲いにかかった。

「雷神!」
全身に電気が回り、髪の毛が逆立つ。

ビリッ

「神速!」

小さな静電気の音と同時に、高速移動でクリフの攻撃を避けた。

僕は近距離型に対し、クリフは範囲攻撃。
どうにかして近づかないと相手に攻撃できないのは難点だ。

「チッ、ちょこまかと動きやがってハエが!」

攻撃は当たらないものの、僕を迎え撃つ蔓の量が多すぎて、なかなか近づけなかった。

避けても避けても何度も襲われる。

攻撃どころか、避けることに神経を使いすぎてしまう。

「ぐ、なかなか近づけない・・・あっ!」

思わず不覚をとってしまい、背中に蔓のダメージを受けた。

吹き飛ばされはしないものの、背中への鈍痛は走る。

「所詮、素早く動いてても、数には劣るんだよ!」

僕が攻撃を一度受けると、魔力温存のためなのか、クリフは動きを止めた。
僕も攻撃されない間は「雷神」を解く

「くそ、全然近づけない」
「雷神」を使っても全然間合いを詰められない。
悔しがる言葉が自然と出てしまう。

だが、追い詰められる状態はまだまだ終わらない。


クリフの攻撃が止み、一瞬の休憩として下を向いた時、何かを感じた。
(何だこの嫌な感じは・・・)

何もしていないにもかかわらず全身から力が抜けるのだ。
おかしな気分だった。

それでも僕は魔力の感知が得意なのか、正体がすぐに分かった。

「なっ!」
思わず素っ頓狂な声を上げる。

その正体は闘技場全体に広がっていた根だった。僕から白い霧状のようなものをゆっくりと吸っていた。
それは自分の魔力だった。

普通の景色としてはとても幻想的なものなのだろう。
だけど、今の僕にそんな悠長なことを考えている暇なんかなかった。

「雷神」は魔力消費が激しく、持続力が短いのが弱点だった。
それを見抜かれてしまったのだ。

これ以上にピンチなことはない。
「雷神」が使えないと、クリフと対等に戦うことができない。

この時、冷や汗が止まらなかった。

「雷神!」
もう一度技を発生し、すぐにクリフに立ち向かう。

「ふん、どうした最弱の悪魔。焦り始めたのか? お前の魔法は弱点がありすぎなんだよ! 絶対、俺には勝てない!
あの使えない、クズと同じように無様に負けるんだな!」
不敵な笑みを浮かべながら、大量の根や蔓が猛攻する。

「使えないって・・・サナのことか!」
激しい剣幕でクリフの発言に憤怒する。

「ああ、そうだよ! あの無能なやつのことだ! 俺に逆らった挙句、ボロボロにやられやがってよ!
あの悲鳴は、何とも哀れな姿だったな!」

「ふ、ふざけるな! 仲間を大切に思うサナのどこが無能か! 
すぐ相手を見下して、力尽くで解決するお前なんかよりよっぽどマシだ!」
クリフの罵詈雑言に、怒りが頂点になる。

「俺が、あの女に劣っているだと・・・ふざけるな! 力が全てなんだよ!」

激しい乱戦の中、すこしずつ雷神に慣れ始める。

「くそ、スピードがだんだん上がっているだと」
僕の姿にすこし怯むクリフ。

「ふっ、生憎ちょっとした出来事で、スピードが上がったんだよ! すぐに終わらせる!」

そう、あのトイレに行く行動においてトモヤの技は成長したのである。

ビリッ、ビリッ!

目が慣れるにつれ、動きがすこしずつ分かり始めた。

そして、クリフに近づくまでの動き電光石火。

横からくる蔓を避け、その蔓を足場として一気に駆け抜た。

すると意図もたやすくクリフとの間合いを詰めた。

「汚らわしい、俺様に近づくんじゃねぇ!」

すこしずつクリフに焦りが見え始める。

次に迎え撃つ蔓は右斜からきた。
それもすぐに交わし、ついにゼロ距離まで到達した。

怒り、憎しみもあるが、仲間の強い思いを乗せ、力強く刀を握る。

「これで止めだ!」

クリフは根による防御はない。
丸腰だ。

そのチャンスを逃さず、僕は刀を振り下ろした。

「ハアァァァァ!」

ギジジジジ!

ギリギリでクリフは拳に大樹の根を巻き付けていた。

「ガアァァァァァ!」

それでも全身に纏わせている高圧の雷が、クリフの体を蝕んだ。

そのせいで膝が崩れた。

そして、刀を振り下ろし切る時、クリフは壁まで吹き飛ばされていた。

まだ息はあった。
うまく大樹の根を利用してクッションにしていた。

まだ勝負に決着はつかなかったがサナでもなし得なかった大ダメージを、ようやくクリフに与えることができた。

そして、もうこれからのことは決まっている。

気絶させるためにトドメを刺すのだ。

手をゆっくりと前に出す。

「うぐっ・・・俺が俺が負けるはずない」

「さあ、終わりだ!」

手に集中する。

「ハッ・・・」

その時、最大の問題が唐突に発生した。

「雷神」が消え、手に集めていた魔法もスッとなくなった・・・

「えっ・・・」

何度も何度も何度も魔法を出すイメージをしたが発生しなかった。

「何で・・・どうしてこんな時に・・・」
僕は魔法を使いすぎてしまったようで、魔法が出せなくなった。

「な、ならば刀で!」
そして刀を握り、近づこうとするも、時すでに遅し。

ダメージを負いながらも、鬼の容貌をしたクリフが立っていた。

「随分と生意気に俺を攻撃してくれたな・・・ゲボゲボ!」

あの時と同じように彼はニヤけた。

「お前にも罰が必要だな!」



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